【厳選】ママスマ編集部 おすすめ書籍を紹介

新たな生活に踏み出したシングルマザーの私たち。しかし、足元を見ればお金、教育、仕事、養育費などなど、不安と悩みは尽きません。それらの悩みに対し各方面の専門家、そして先輩たちが、書籍を通してたくさんの知恵を提供してくれています。ママスマ編集部では、そんな知恵とアドバイスの詰まった書籍を厳選、内容を抜粋して紹介してまいります。

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制服が買えない、おなかすいた、塾に行けない

日本は世界的に見ると豊かな国だといわれているけど、経済的にめぐまれていない家庭はたくさんあるよね。シングルマザーで時給の低いパートしかできなかったり、親が病気で働けなくなってしまったり、生活保護を受けていたりといろいろな事情がある。
日本には、どれくらいの貧困家庭があるのだろう。

全国で、貧困家庭は六、七家族に一家族とされている。子どもでも、六、七人に一人の子どもは貧困だといわれている。シングルマザーの家庭においては、二人に一人が貧困なんだ。

僕は、貧困家庭に生きる子どもたちが「不幸」だとは思わない。

お金がなくても、お父さん、お母さんが優しくしてくれたり、きょうだいが仲良くしていたりすれば、毎日を楽しくすごすことができるだろう。ソフトバンクという会社をつくった孫正義(そんまさよし)さんのように、まずしい家庭から大成功する人だってたくさんいる。

とはいえ、貧困家庭の子どもは、お金のある家の子どもと比べて、損をしている部分もある。

・塾に通うことができない。
・一人だけ古い服を着なければならない。
・給食費や部活のお金がはらえない。
・高校や大学に進学できるかどうかわからない。

一部のおとなは、「まずしいことをバネにして人一倍がんばれ」と言うかもしれない。でも、みんな がそうできるわけじゃない。貧困の中でいろんなイヤな思いをすることで、「自分なんてどうでもいい」「がんばったってしかたない」「将来のことは考えられない」と希望をいだけなくなってしまう人もいるからだ。

僕は、そんな子どもをたくさん見てきた。だからこそ、言いたい。

「貧困は社会の責任なのに、そのせいで子どもが損をするのはバカげている」

君が損をしない方法はたくさんある。ここまで社会に貧困が広がっている今、社会には貧困家庭の子どもをいろんな形でサポートする仕組みが生まれている。そこには国からのお金や、寄付がたくさんあつまっていて、君の人生を変えるだけの環境が整っている。これを利用するという方法があるんだ。

でも、どういうところがあるのか、なかなか情報がないよね。知っていても、そこへ行くには勇気もいる。だからこそ、僕はそこがどういうところであり、利用したときにどんなにいいことがあるのかを紹介したいと思う。

子ども食堂

「子ども食堂」という名前を聞いたことがあるかな?

主にNPOがやっていて、町の公民館だとか、学校だとか、施設といったところで定期的に開かれる子どものための無料の食事会だ。どこがやっているかによって、少しずつ場所も活動内容もちがってくる。

探しかたは簡単だ。インターネットで「こども食堂ネットワーク」というホームページから、地域を選んで探してみてほしい。君の家の近くにある子ども食堂が出てくるはずだ。

 子ども食堂は、子どもがひとりだけでも入れる食堂です。
子ども食堂をやっている人は、みんなにおなかいっぱいごはんを食べてほしいと思っています。だから、みんなが子 ども食堂に来てくれると、とてもうれしいです。

−こども食堂ネットワーク

子ども食堂は、どういうシステムなんだろう。まず、NPOは国や市民からもらった寄付などで、たくさんの食材を集める。そして子どもたちといっしょにごはんをつくり、みんなでカレー、ぎょうざ、からあげ、ハンバーガー、スパゲティといったものを食べる。デザートやおかしなど甘いものだって出してくれる。

子ども食堂の目的は、家でちゃんとしたごはんを食べられない子どもたちに食事をあたえることだ。お母さんがいそがしくて料理ができなかったり、お金がなくて十分な食事を出してあげられない家庭があるよね。そんな家の子どもに、おいしいものを好きなだけ食べさせようという取り組みだ。

実は子ども食堂には、これとは別の目的がある。それは次のようなものだ。

▼遊び場をつくる

家で子どもがひとりにならないように、いつでも集まれる場所をつくる。たとえば、シングルマザーの子どもが家でひとりにならないように、同じような子どもたちと集まれる機会を提供する。

▼家でできないことをやる

シングルマザーの家庭だと、お母さんにキャッチボールやサッカーの相手をしてはもらえない。子ども食堂には、大学生のボランティアなんかがいて、男の子と思いきり遊んでくれる。趣味も近いのでいろんなことを教えてくれるはずだ。また、小さな家ではできない、「流しソーメン」「クリスマスの飾りつけ」「スイカわり」「バーベキュー」といったものもやらせてくれる。

▼レンタル

小学校の卒業式にはちゃんとした服が必要だし、中学生になれば制服、部活に入ればスポーツの道具が必要だ。でも、まずしい家庭だと新品を買うことができない。そんなとき、子ども食堂の人たちがそれらをくれたり、貸してくれたりする。

▼相談

家でのなやみ、学校のなやみ、進学のなやみ、もちろん、貧困とは関係なく恋愛なんかのなやみもあるよね。そういうものを子ども食堂の人たちがきちんと聞いてアドバイスをくれる。

このように、子ども食堂はごはんを無料で提供するだけでなく、子どもたちの居場所となってさまざまなイベントを用意してくれている。遊びから生活、それに将来のなやみまで、ここで解決してもらえる。もちろん、いじめ相談みたいなことにものってくれる。地域で君をサポートしようという場所なんだ。

たとえば、こんな子がいた。

まみさんの場合

シングルマザーのもとで、まみさんはひとりっ子として育った。おかあさんは二つのパートをかけもちしてギリギリの生活をしていた。まみさんは、いつも留守番をして、ごはんはスーパーで買ったものだった。

小学六年生のある日、お母さんが子ども食堂があることを知り、まみさんを連れていった。週二回、みんなでごはんをつくって食べるのだ。大学生のお姉さんたちもボランティアで来ていて、料理のしかたを教えてくれた。シチューやケーキ、それにおまんじゅうまで毎回いろんなものをつくらせてくれた。

まみさんは料理がじょうずで、すぐに年下の子に教える係になった。

子ども食堂の人たちはいろんなところでまみさんをサポートしてくれた。卒業式には子ども用のスーツを用意してくれたし、中学校の制服はお古を用意してくれた。夏と春には、バスを借りてみんなで旅行に出かけた。山のペンションでバーベキューをするのだ。

まみさんのお母さんも、子ども食堂が気に入った。ボランティアの人たちに仕事のことを相談したり、グチを言ったりすることで、気持ちが明るくなったらしい。お母さんと遊ぶ時間も増えた。

まみさんは、高校を卒業する年までお母さんと子ども食堂に通い、仕事をはじめてからはそこでボランティアをはじめた。自分と同じようにこまっている子どもたちの手助けをしたいと思ったのだ。

今、まみさんは子ども食堂のボランティアとしてがんばっている。

親がいそがしい家では、できることは限られてしまう。でも、子ども食堂では、家ではできないことをボランティアやお母さんとともに楽しむことができる。

また、子どもだけでなく、親も子ども食堂を利用することができる。お母さんが別のお母さんと仲よくなってグチを言ったり、相談をしたりする場になる。それでお母さんの気持ちが晴れれば、家での生活だって楽しくなるよね。

子ども食堂は、家ではできないことを実現するための「もう一つの家」なんだ。不登校の子も、ひきこもりの子も、いじめられている子も、差別されている子も、だれでも受け入れてくれるし支えてくれる。そんな場所を自分の居場所にしてみてもいいんじゃないかな。


 


人生の歩きかた図鑑

石井光太(いしい・こうた)
1977年、東京生まれ。『物乞う仏陀』でデビューし、国内外を舞台したノンフィクションを精力的に発表。『レンタルチャイルド』『浮浪児1945-』『「鬼畜」の家』『43回の殺意』『漂流児童』など、子どもの問題を扱った作品も多い。児童書に『ぼくたちはなぜ、学校に行くのか。』『みんなのチャンス』『幸せとまずしさの教室』『君が世界を変えるなら(シリーズ)』などがある。他に小説など著書多数。

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