2017年に創設した「株式会社ぴんぴんころり」の代表として、家事代行でもベビーシッターでもない”お母さん”代行サービス「東京かあさん」を立ち上げた小日向えりさん。「起業のきっかけは90歳の祖母」と語る小日向さんに起業時の想いから、サービスへの想い、今後の展望をお聞きしました
(語り:株式会社ぴんぴんころり 代表取締役 小日向えり)。
東京かあさんの詳細はこちら
―株式会社ぴんぴんころり、東京かあさんの立ち上げの経緯を教えてください
目次
元気なうちは続けられるような仕事を作りたい

株式会社ぴんぴんころりという社名からもおわかりいただけると思いますが、高齢者の方の支援がしたいと思って立ち上げた会社です。
私はもともと、小さい頃からおばあちゃん子で、その祖母は80歳近くまで仕事をしていました。しかし、仕事を辞めてから元気がなくなってしまって、電話をしても声に覇気がなく、心配していた矢先に怪我で入院をしてしまいました。
その姿を見てすごくショックで。「働くことが外部との繋がりになり、日々の生活のほどよいプレッシャーになっていたんじゃないか、それが健康の源だったんじゃないかな」と思うようになりました。
周りにも「定年後に父親の元気が無くなった」などと同じような体験をしている人もいて、「働くことがビタミン剤なんじゃないか」と思うようになりました。
元気だから仕事をするんじゃなくて、仕事をしているから元気でいられるんじゃないかなという思いが強くなっていったんです。
最初は仕事だけじゃなく、何か生きがいになる、シニアの方の知識や経験を活かすことできることがいいのではないかとぼんやり考えていて、そこで就業支援はどうだろう、と思ったんです。
「シニアの方が元気なうちはずっと続けられるお仕事を作りたい!」と思い起業しました。
仕事のために子どもを産むのをあきらめてほしくない
東京かあさんを作ろうと思った理由はもう一つあります。
姉がこどもを授かったときに、仕事をどうしようと悩んで抱え込んでいる姿を見て、女性が働きやすい環境がまだ整ってない中で、仕事と子育ての両立ってすごく大変だなと思ったんです。自分の身の回りにも仕事の為にこどもを産むのを諦めようと思っている人もいたりして、本来喜ばしいはずの妊娠や出産に不安がつきまとうのは悲しいな。育児と仕事との両立は、バリバリ働く女性の課題だなと感じました。
こういった背景があって、高齢者の方とお母さん、両者の課題解決にもなるはず、と東京かあさんを立ち上げました。
―東京かあさんが、一般的なベビーシッターや家事代行と違う部分を教えてください
東京かあさんのサービスについて

東京かあさんと一般的な家事代行、ベビーシッターの違いは、サービスができた目的の違いにあると考えています。家事代行やベビーシッターは、利用者様のお困りごとを解決するためにできたサービスです。
しかし、東京かあさんはもともとシニアのための就業支援サービスです。
シニアの方が得意な仕事をいくつか考えた上で、今、子育て世代の共働きが増えていて家事代行・ベビーシッターの業界がすごく盛り上がって伸びているということに注目し、その業界でシニアの方が活躍できるサービスが作れないかなと考えました。
―東京かあさんの最大の強みはどんなことになりますか
「お母さん」はスペシャリストではなく、ジェネラリストな職業
家事代行だとベビーシッターが頼めず、ベビーシッターだと家事が頼めない、ペットシッターだとペットのお世話しか頼めない。こういったサービスは一つのサービスに特化しているものがほとんどで、専門的な技術やノウハウを持っている人がそのサービスを提供するというものでした。
でも「お母さん」ってスペシャリストというよりは、ジェネラリストな職業だと私は思うんです。
職業と言ったらおかしいかもしれませんが、本当に幅広く、色々な仕事ができるのが「お母さん」だと思うので、東京かあさんは「第二のお母さん」が世の中のお母さんを全面的にサポートする、そのサービスの幅広さが一番の特徴だと考えています。あとはやっぱり親子、家族のような身近な関係でサポートするというのもこれまでにないユニークな点だなと思います。
お母さんならではの「お節介」を焼くことも強み
―ちょっと気配りを多めにしてもらえるっていうのも強みですか?
そうですね。
結構子育て世帯で共働きだと毎日がてんてこまいというか、お仕事と家庭で本当に大変な状況だと思います。そんな中で細かく「今日はあれやってください」「次はこれやってください」と伝える事も利用者様にとっては大きな負担だと思うんです。
東京かあさんでは、サービス提供時に気づいたことを積極的に利用者様に提案しています。
本当にちょっとしたことですが、例えばシャンプーが無くなりそうとか、ペットのご飯がきれそうだなとか、それに気づいて「無くなりそうだから買っていきましょうか」と提案して訪問のついでに買って持って行ったりしています。
他の家事代行のサービスは気づいても言ってはいけないところが多いので、東京かあさんで働いているシニアの方も「今までお節介を焼きたいのに焼けなかったので東京かあさんはコンセプトがとてもいいなと思いました」と言っていただいています。
私の家にも東京かあさんが来てくれてるのですが、私が「そろそろ加湿器に水を入れないとな」と思って見てみると、すでに水が入っていたりして。そういった東京かあさんのお節介がありがたいですし、精神的にもすごい癒されるといいますか、ほっこりするようなお節介が東京かあさんの最大の特徴ですね。利用者様からも大変喜ばれていると思います。
子育て世代の利用が多く、ニーズも幅広い
―利用者の1番多い悩みは何になりますか
仕事と家庭の両立というのが大変とおっしゃる方が多いです。
東京かあさんだと9割が子育て世帯なのでお子様のいるご家庭が多く、共働きの子育て世帯が8割近くになるので、家庭と育児の両立っていうのが大変という困りごとが多いですね。
また、シングルマザーやシングルファザーからのご相談ももちろんあります。
その中でもベビーシッターのようなニーズがすごく高いのですが、ベビーシッターだけだとやっぱり家事や他の事が頼めなかったり、高いオプション料金がかかったりします。ベビーシッターもお掃除もお料理も、と幅広くいろんなことを低価格でお願いしたいという方が多いですね。
―1番多いお子様の年齢層はいくつぐらいですか?
5歳までの未就学児が多いです。その中でも特に0歳から2歳まで、特に複数のお子さんがいらっしゃるご家庭が多いですね。
―0歳児でも、お母さんがいれば一緒に見てくれることはできるのですか?
保護者の方がお近くにいれば、一緒にお子様を見ることはできます。赤ちゃんがいるご家庭でも、すでに1人か2人お子様がいて、さらにお子様が生まれて、助けてくださいとおっしゃってくる方はいらっしゃいます。
―1番多く利用されているメニューはどんなものになりますか?
依頼内容のご希望を第1希望から第3希望までいただいているのですが、3大ニーズがお料理・お掃除・チャイルドケアの3つになります。お掃除とお料理の割合がやや多いです。
―習い事の送り迎えのニーズもありますか?
ありますね。保育園に通っているような年代のお子様がいるご家庭が多いので、保育園の送り迎えも結構ニーズが高いなと。利用時間も特に何時から何時までというのはないので、担当のお母さんが大丈夫だったら深夜でも早朝でも伺ってますね。
―登録しているお母さんの年齢はいくつくらいの方がいらっしゃいますか?
30代の方も登録されていて、80代の方もいらっしゃいます。最高だと84歳の方がいらっしゃいますね。半分の方が60代、3割が70代ですね。
人生100年時代、ずっと続けられるお仕事として選んでもらいたいので、今後は50代の方にももっと登録していただきたいなと思ってます。
第二のお母さんを持つサードファミリーという文化を広げていきたい
―東京かあさんで今後取り組みたいことをお願いします
今後取り組みたい事としては、とにかく東京かあさんのサービスを一組でも多くのご家庭に届けたいです。
マッチング親子が300~400ぐらいになってきて一組でも多くの東京かあさんの親子、笑顔のマッチングを作っていきたいというのがあります。今年は登録いただいているお母さんが1000名を突破したので、どんどん増やしていって、お子さん(利用者様)も増やしていきたいなと思っています。まずは関東近辺でしっかり、目指すは1万世帯です!
「第二のお母さん」という家族が増える体験が一番のうちの価値だと思うので、家事やベビーシッター、チャイルドケアのサポートもやりながら、家族が増える体験っていうのを広めていきたいなと思ってます。
血が繋がってないけれども家族みたいな存在とか、家族のように頼れる人って誰しもいると思うんですよね。
いまは実の両親が遠くに住んでいて、仕事をしつつも両親二人で子育てしなければならないというのもかなり厳しい現状だと考えていますし、そういった方々に対するサポート体制も国の政策としてまだ進んでいないので、そういった部分でサードファミリーみたいな概念とか文化を広げていきたい!というのが、今のやりたい取り組みです。
―東京都のベビーシッターの助成金の申請をすると伺いましたが、状況はいかがですか
2023年の4月からを目標に今進めています。どんどんお母さんたちにも研修を受けてもらっています。
ぴんぴんころり社会を将来的には作れる会社になりたい

―最後にこれからの展望とメッセージをお願いします
今後のぴんぴんころりの展望としては、社名を東京かあさんにせずにぴんぴんころりにしてるというのも一つのメッセージではあるんですけれども、シニアの方の為に作った会社でシニアの方の生きがいを創出し、生涯元気社会を作るということが使命なので、東京かあさん以外にもシニアの方がずっと元気でいられる、ぴんぴんころりでいられるような、サービスを多角化的に展開していけたらなと思ってます。
シニアの夢の楽園みたいなコミュニティを作りたいなというのがありまして、働くことをまず第一に支援して収入を得てもらって、漠然とした不安をまず無くしてもらう。
生きているといくらお金があってもどんどん貯金が減っていく、何歳まで生きられるか分からないと皆さん漠然と不安を覚えると思うので、まだまだ元気なうちはしっかりと稼ぐことが出来る!という自信を得てもらってから、新しいことを学ぶスクールや、あとは旅行などの趣味の部分だったり、働く以外でも生きがいを創出するお手伝いがしたいです。
お金と健康っていうのが大きな関心だと思うので、ライフプランの相談に乗るのもいいですね。アクティブシニアのコミュニティをしっかり作っていって、シニアの方がここに登録していたらずっと心身ともに元気でいられるというような、コミュニティをつくりたい。
ぴんぴんころり社会、生涯現役社会を将来的には作れる会社になりたい!というのが大きな展望ですね。