離婚する時、養育費について取り決めができなかったというシングルマザーも多いのではないでしょうか?実は、取り決めをしていなくても、養育費を請求することは可能です。

今回は、過去に取り決めをしていなかった養育費をいまから請求するための、具体的な請求方法を解説します。養育費の増額や未払いになった場合の対処法や、さかのぼって請求できるのかといった疑問にもお答えするので、ぜひ参考にしてみてください。

たった4年で80%が養育費を受け取れなくなります。

しっかり決めても受取れていない現状があります。

養育費を確実に受取る方法に養育費保証があります。

 

養育費はいまからでも請求できる!

(画像=guy2men/stock.adobe.com)

離婚する際に、養育費について取り決めができなかったというシングルマザーはたくさんいます。相手とまともに話ができなかった、子育てでそれどころじゃなかった、などなど、理由はさまざまです。

「あの時、ちゃんと請求しておけばよかった」と後悔しているなら、いまからでも遅くはないので、しっかり養育費を請求しましょう。

養育費を支払うことは親としての当然の義務で、民法でもその旨定められています。別居していようと、子どもと会っていなかろうと、養育費を支払わない理由にはなりません。

なお、養育費の金額については、裁判所が公表している養育費算定表を参考にすることが一般的です。養育費算定表では、子どもの年齢や人数、養育費を支払う側の年収、養育費を受け取る側の年収ごとに、養育費の目安が記載されています。

養育費の相場を知りたいと思うなら、まずは裁判所のホームページにある養育費算定表をチェックしてみましょう。

▽裁判所 養育費・婚姻費用算定表(PDF)

養育費を請求するための3ステップ

続いて、養育費をあらためて請求するための3つのステップを具体的に解説していきます。

ステップ1:連絡、話し合い

まず相手と連絡をとり、養育費が必要な理由を伝え、交渉します。交渉内容は「養育費の金額」「養育費を支払う期間」「養育費を支払うタイミング」です。

・養育費の金額
養育費の金額については、根拠資料を用意しておくと、相手も納得しやすくなります。養育費を支払うことは義務ではありますが、法的手段をとることになると、手続費用が発生しますし、弁護士に依頼するとなれば弁護士費用もかかってしまいます。話し合いで終わるのに越したことはないので、相手の言い分も聞きながら、冷静に交渉することが大切です。

・養育費の支払う期間
養育費を支払う期間は、子どもが自立する18歳から22歳を目安に決めましょう。進学が未定の場合は、進学した場合と進学しなかった場合のそれぞれのケースを想定して決めておくこともできます。ただし、一般的には20歳としておくことが多いです。

・養育費を支払うタイミング
養育費を支払うタイミングは、相手の負担も考慮して、月払いが一般的です。ただし、場合によっては年払いや一括払いを選択しても問題ありません。

話し合った結果、お互い納得できれば、内容を公正証書にまとめます。公正証書とは、公証役場で公証人に立ち会ってもらって作成する公文書です。

手数料がかかる、手間が増えるといった点を差し引いても、いざという時に財産差し押さえを強制執行できるメリットは大きいので、取り決めた内容は必ず公正証書にしておきましょう。なお、公正証書であれば全て強制執行することができるわけではなく、「履行を怠った場合は強制執行に服する」という執行認諾文言の付いた公正証書に限られますのでご注意ください。よくわからなければ、公証人や弁護士に相談しましょう。

ステップ2:調停

話し合いがまとまらなければ、調停へと移ります。調停では、調停委員が両者の間に立ち、養育費を決めるサポートをしてくれます。具体的には、養育費が必要な根拠や両者の収入状況、その他の事情などをヒアリングし、納得感のある合意が得られるよう調整してくれます。

ステップ3:審判

調停でも話がまとまらなければ、審判に移ります。審判では、裁判官が事情を考慮して結論を示します。具体的には、養育費の金額まで裁判官が決定してくれます。

それでもなお相手が養育費の支払いに応じない場合、強制執行することもできます。強制執行とは、相手の給与や預貯金を差し押さえ、強制的に養育費を回収する方法です。

 

養育費にまつわるよくある疑問

続いて、「増額の可能性」「未払いへの対処法」「さかのぼっての請求」といった養育費にまつわる、よくある疑問に回答します。

Q1:養育費を増額できる?

A:転職や退職で収入状況が変わった、子どもが病気になり医療費が必要になった、といった増額が必要な根拠があれば、養育費の増額請求は可能です。今後、状況が変わることがわかった場合にも、速やかに養育費の増額について交渉しましょう。

Q2:未払いとなったら、どうすればいい?

A:公正証書を作成していたり、調停が成立していたり、あるいは審判を受けていたりした場合は、強制執行によって養育費を回収できます。これが口約束だけでは、強制執行はできません。確実に養育費を受け取るためにも、取り決めた内容はきちんとした形で残しておきましょう。

また、養育費を請求する時効は、公正証書の場合は5年間、調停や審判で決まった場合は10年間です。支払期限から5年、もしくは10年を経過すると、時効で消えた分の養育費は請求できません。未払いが発生したらすぐに対処しましょう。

Q3:養育費をさかのぼって請求できる?

A:過去の養育費をさかのぼって請求することは、原則として認められていません。相手方が過去の養育費を払うことについて納得すれば別ですが、調停や審判で養育費を受け取れることが決まったとしても、調停を申し立てた日以降の分からしか養育費を受け取れないことが多いです。

そのため、養育費を請求したいと思うなら、できるだけ速やかに行動に移すことが大切です。行動が遅れるほど、受け取れる金額は少なくなるからです。

Q4:自分が再婚した場合、養育費はどうなる?

A:自分の再婚相手に子どもを育てるだけの経済力があり、子どもと養子縁組をした場合は、養育費が減額される可能性があります。再婚しただけで、養子縁組をしていない場合は、基本的に養育費は減額されません。

また、養子縁組をした場合も、ただちに養育費の減額が認められるわけではなく、話し合いをして新たな金額を定めることになります。そのため、まずは再婚・養子縁組をしたあとは、元夫に連絡し、養育費について、あらためて話し合いの場を設けましょう。

再婚や養子縁組の事実を隠していた場合、トラブルに発展するケースもあるため、注意が必要です。

養育費は正当な権利なので堂々と主張しよう

養育費を支払うことは相手の義務であり、養育費を受け取るのは正当な権利です。「あの時、言えなかったから……」と遠慮する必要はありません。権利は堂々と主張するとともに、淡々と根拠を提示して、冷静に話し合いましょう。

養育費を受け取ることで、生活に余裕が生まれれば、子どもとの時間も多く持てるようになるかもしれません。


平沼 夏樹

【監修】平沼 夏樹
弁護士。第二東京弁護士会所属。京都大学総合人間学部卒業、立教大学大学院法務研究科修了。離婚、労働、企業法務分野MGを歴任。横浜オフィス支店長、支店統括としての実績が評価され、現在は、リーガルサポート部GMとして、30名を超えるパラリーガルの業務統括及び、離婚分野MGを兼務する(2020年8月現在)。一般民事(主に離婚事件)に関する解決実績を数多く有する。また、企業法務についても幅広く経験。担当したMBOに関する案件(「会社法判例百選第3版」掲載)をはじめ、企業法務についても幅広い業務実績を持つ。知識、経験に基づく、専門家としての対応のみならず、一人間として、依頼者それぞれの立場・心情を理解し、コミュニケーションを重視した対応を心掛けている。

【取扱分野】離婚・男女問題/企業法務・顧問弁護士/遺産相続/労働問題/インターネット問題/債権回収/詐欺被害・消費者被害

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