児童扶養手当(母子手当)は養育費をもらっていると減額される可能性があります。このように聞くと「養育費をもらっていることを申告しなければよい?」と考える人もいるかもしれません。

この記事では、児童扶養手当(母子手当)の申請を検討している方に向けて、「養育費を申告しなくても大丈夫?もらっていることがバレてしまう?」という疑問にお答えします。令和6年11月から変更になった点を解説し、児童扶養手当(母子手当)と養育費に関するよくある質問にも回答していきます。申請の際の参考になりますと幸いです。

児童扶養手当(母子手当)は養育費をもらっているとバレる?

児童扶養手当(母子手当)を申請する際、養育費を受け取っているかどうかは自己申告です。申告しなければ、養育費をもらっていることがバレない可能性もあるかもしれません。

しかし、ルールに違反していることがわかると、手当が支給されなくなったり支払いの差し止めが行われたりする場合があります。「バレなければよい」と安易に考えず、ルールに従って正しく申告することが大切です。

とはいえ「養育費をもらいつつ、児童扶養手当(母子手当)を減額されたくない」と考えるのも無理はありません。

まずは、児童扶養手当(母子手当)という制度についてしっかりと理解することが必要です。次章からは、児童扶養手当(母子手当)について詳しくお伝えします。

【新制度あり】児童扶養手当(母子手当)とは?

児童扶養手当(母子手当)は令和6年11月から内容が一部変更されました。概要や手当額の決まり方とあわせて解説します。

児童扶養手当(母子手当)の概要

児童扶養手当(母子手当)とは、離婚や死別などにより父または母と生計を別にする児童がいるひとり親家庭に対し、子どもが18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間支給される手当です。

児童扶養手当(母子手当)の支給額は所得によって変わります。この「所得」は養育費の8割を含めて計算されることになっているため、養育費の金額次第では、児童扶養手当(母子手当)の受給額が減額されたり、支給されなくなったりする場合があります。

ちなみに、児童扶養手当(母子手当)が養育費に影響することはありません。元配偶者から「児童扶養手当(母子手当)を受給しているから」といった理由で養育費の減額について申し出を受けた場合は、児童扶養手当(母子手当)が養育費に影響しない旨を説明しましょう。

参考:こども家庭庁 – 児童扶養手当について

手当額の決まり方

児童扶養手当(母子手当)には、手当額を満額受け取れる「全部支給」と、一部のみ受け取れる「一部支給」があり、前年の所得や子どもの数に応じて手当額が決まります。

令和6年11月より所得制限が引き上げられ、以下のようになりました。

扶養する子どもの人数 全額支給 一部支給
1人 107万円 246万円
2人 145万円 284万円
3人 183万円 322万円

※所得ベースによる
※以後扶養する子どもの人数が1人増すごとに38万円を加算

また、第3子以降に支給される額も引き上げられ、第2子と同様、以下の金額が支給されることになりました。

全部支給の場合:1万750円
一部支給の場合:1万740円~5,380円(所得によって変動)

より詳細な情報については、こども家庭庁や市町村のWebサイトをご確認ください。

参考:こども家庭庁 – 「児童扶養手当」に関する大切なお知らせ
出典:こども家庭庁 – 児童扶養手当について

児童扶養手当(母子手当)の所得制限に注意しよう

ここまで説明したとおり、児童扶養手当(母子手当)を受け取るには前年の所得が条件を満たしている必要があります。

なお、所得とは年収のことではありません。児童扶養手当(母子手当)における所得とは、「労働などによる収入」から「控除」を引き、「受け取った養育費の8割」を加えたものです。社会保険料やひとり親控除は控除として差し引ける点も知っておきましょう。

児童扶養手当(母子手当)を受け取れるかどうか、受け取れる場合いくら受け取れるのかを知るには、所得の把握が必須です。収入や控除、養育費を正しく理解できるようにしましょう。

加えて、親族と同居している人はその点も注意しなければなりません。同居家族がいる場合の児童扶養手当(母子手当)についてはこの後説明します。

いずれにせよ、児童扶養手当(母子手当)について不明点がある場合は、市区町村役場の窓口で相談してみるのがおすすめです。

【FAQ】児童扶養手当(母子手当)と養育費に関する質問

ここからは、児童扶養手当(母子手当)と養育費に関するよくある質問にまとめて回答していきます。ご自分のケースにあてはめながら確認してください。

養育費を申告しないとどうなる?

養育費を申告しない、養育費を少なく申告するなど、事実に反する申告をした場合、それがバレると受け取った手当の返還が求められます。さらに、児童扶養手当法第35条に基づき、3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられることもあります。

養育費を手渡しでもらっている場合は?

養育費を手渡してもらっている場合も、受け取った額を正しく申告する必要があります。元配偶者から直接もらうのではなく、代理人を介して手渡しされた場合も同様です。

銀行振り込みや郵送、手渡しなど、養育費の受け取り方はさまざまですが、どのような方法であっても正しく申告することが必要です。

父母と同居すると児童扶養手当(母子手当)はもらえない?

離婚後に父母と同居する場合、児童扶養手当(母子手当)がもらえない、もしくは減額される可能性があります。

児童扶養手当(母子手当)には「扶養義務者」という考え方があります。扶養義務者とは、児童扶養手当(母子手当)を申請する母親などと同居する父母(子どもの祖父母)やきょうだい(子どものおじ・おば)などのことです。

児童扶養手当制度では、扶養義務者にも所得制限が設けられています。

扶養する子どもの人数 扶養義務者の所得制限
1人 274万円
2人 312万円
3人 350万円

※以後扶養する子どもの人数が1人増すごとに、限度額に38万円を加算

父母と同居する場合、住民票では別世帯であっても父母は子どもの扶養義務者となります。

預金通帳などの調査をされることはある?

児童扶養手当(母子手当)の受給資格を確認するため、自治体の担当者から質問されたり書類の提出を求められたりすることがあります。ときには預金通帳や給料明細といった書類を調査されることもあるようです。プライバシーに立ち入られることに不快感を持つ方もいるでしょうが、適切な制度運営のためと心得ておきましょう。

児童扶養手当(母子手当)の申請、「養育費がバレるか」の心配ではなく正しい申告が必要!

養育費を受け取っていると児童扶養手当(母子手当)を減額されてしまうため、申告しないでおこうと思う方もいるかもしれません。しかし、不正受給がバレてしまうと、返金を求められたり罰金を支払わなければならなくなったりするなどリスクは大きいです。

「養育費をもらっているが児童扶養手当(母子手当)を減額されたくない」とお考えなら、市区町村役場で相談してみるのがおすすめです。制度を正しく活用して、お子さまとの生活を安定させましょう。