ひとり親家庭への公的な給付金のひとつに「児童扶養手当」があります。離婚し子どもを引き取って一緒に生活する母子家庭では、経済的に困窮する割合が高いのが実情で、特に離婚するまで専業主婦やパート勤務だった方にとっては不可欠な手当です。しかし、児童扶養手当の支給額は養育費の受け取り状況によって変わるため、申告しないシングルマザーもいるようです。
養育費は必ず申告する必要がありますが、申告しない場合にはばれるのでしょうか。この記事では、養育費を正しく申告しなかった場合のリスクについて解説します。
目次
児童扶養手当の受給要件に養育費がかかわる理由
児童手当の受給要件に養育費がかかわるのは、どういう理由からでしょうか。まずは児童扶養手当の支給額から、順番に解説していきます。
児童扶養手当の支給額
児童扶養手当の支給月額は、前年の所得と対象となる子どもの数によって変わります。支給額の全額を受け取れる「全部支給」と、一部を受け取れる「一部支給」があり、所得が増えると支給額が減額されていく仕組みになっています。
2020年4月からの支給額は以下のとおりになります。
▽児童扶養手当の支給額
対象となる児童の数 | 全部支給 | 一部支給 |
---|---|---|
1人の場合 | 43,160円 | 43,150円~10,180円 |
2人目の加算額 | 10,190円 | 10,180円~5,100円 |
3人目以降の加算額 | 1人につき6,110円 | 6,100円~3,060円 |
所得額制限
母子家庭の母などの受給資格者や、子どもの祖父母など受給資格者と生計をともにする法律上の扶養義務者などそれぞれについて、所得制限限度額が決まっています。所得制限限度額を超えると、支給額の全額または一部が支給停止されます。
▽所得制限
税法上の扶養親族等の数 | 母または父、養育者の所得制限限度額 | 配偶者・扶養義務者・孤児等の養育者 | |
---|---|---|---|
全部支給 | 一部支給 | ||
0人 | 49万円 | 192万円 | 236万円 |
1人 | 87万円 | 230万円 | 274万円 |
2人 | 125万円 | 268万円 | 312万円 |
3人 | 163万円 | 306万円 | 350万円 |
4人以上 | 38万円ずつ加算 |
児童扶養手当と養育費の関係
児童扶養手当の支給額は所得額によって変わりますが、この「所得」には養育費の“8割”を含めて計算されることになっています。養育費の金額次第では、児童扶養手当の受給額が減額、または支給停止となる場合があるのです。
児童扶養手当は、ひとり親家庭の生活が安定し、子どもが健全に育つことを目的としています。養育費を受け取ることができる方は、国の支援より養育費を優先して生活設計をしていただくことで、親と子の総合的、長期的な支援を行うことができると考えられています。
養育費を申告しなかったらどうなるの?
給与収入のあるシングルマザーで子どもが1人の場合、児童扶養手当を受給できる方は、おおよその年収の目安が350万円までの方です。養育費を申告することで児童扶養手当が減額されたり、もらえなくなったりするのではないかと思うと、「ばれなければ申告しなくても大丈夫かも」と考えてしまうことがあるかもしれません。
児童扶養手当は、児童扶養手当法に定められ税金によって支給されている手当です。適正な申請や受給が行われるように、受給資格があるかどうか、どのように生計を立てているか、収入の状況はどうか、などについて調査が行われることがあります。預金通帳や給料明細の開示を求められるケースもありますので、隠し通すことは難しいでしょう。「ばれなければよい」と安易に考えず、ルールに沿って申告を行うようにしましょう。
担当者による質問や調査、書類の提出などに応じなかったり、ルールが守られていないことがわかったときは、手当が支給されなくなったり、支払いの差し止めが行われる場合があります。養育費を申告しないなどの不正な方法で受給した場合には、受給額に相当する金額を徴収される場合もあります。3年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられることもあります。
ルールに従わないことでさらに生活が困窮する恐れがありますので、養育費を受け取っている方は正しく申告するようにしましょう。
複数の勤務先から給与を受け取っている場合にもすべて申告する
児童扶養手当を受けるための認定請求の手続きには、以下のような書類が必要です。ただし、必要書類は各自治体によって異なるため、事前に問い合わせて確認しておくとよいでしょう。
1. 請求者と対象児童の戸籍謄本
2. 請求者と対象児童、世帯全員の住民票の写し
3. 請求者、配偶者、扶養義務者の前年の所得証明書
4. 預金通帳
5. 請求者と対象児童、世帯全員のマイナンバーカード
6. 健康保険証
7. 年金手帳
8. その他必要な書類
受給資格者の認定を受けた方は、その後、毎年8月に現況届を提出し受給資格の確認を行います。複数の勤務先から給与を受け取っている方も、必ずすべて申告するようにしましょう。
各制度を活用しながら生活の自立を目指したい
児童扶養手当は、ひとり親世帯の生活の安定や自立を促すなどの目的があり、子どもが幼いなどの理由で十分働くことができないときは活用したい制度です。ルールを守って正しく活用しましょう。
国では、ひとり親世帯等の支援策は強化・実施され、各都道府県や社会福祉協議会には支援相談窓口が設けられています。生活相談、就労支援など支援の内容は幅広いので、ぜひ問い合わせをされて、児童扶養手当に限らずご自身とお子様のために、解決の方法を探していただきたいと願います。
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