子どもを連れて離婚する場合、なるべく有利に、なおかつ争わずに離婚するにはどのような準備が必要なのでしょうか。本記事では、パートナーへ離婚を切り出す前に準備しておくこと、考えておくことを詳しく解説していきますので、揉めずにスムーズな離婚をするためにお役立てください。
目次
離婚は「準備」がとても大切
「離婚したい」と思ったらすぐにでも行動に移したくなる気持ちはわかりますが、事前準備をすることなく突然、離婚を切り出すのはおすすめできません。離婚に向けてしっかりと準備をしたうえでパートナーへ相談しないと、ご自身が不利な条件で離婚することになったり、お金がまったく足りない状態で新しい生活をスタートしなければならなかったりする可能性があります。
では「準備」とは一体なにをするのかというと、「証拠集め」です。浮気などの不貞行為があった場合、DVや虐待などがあった場合に、それらの証拠が後に重要になります。まずは焦る気持ちを抑えて離婚に向けての準備を着実に進めつつ、離婚後の新しい生活を具体的にイメージすることが大切です。ご自身が思い描いている生活は離婚をしなくては実現しないものでしょうか。それとも、夫婦の話し合いや協力で今後良い方向に変えていけるものでしょうか。
「離婚してから」という考えからはひとまず離れて、ご自身が今後幸せに暮らしていけるためにはどうすれば良いのかを考えてみてください。その結果、「やはり離婚しか方法がない」という結論が出た場合は、決意を新たに離婚への道をすすんでいきましょう。
離婚前に準備しておくべきことリスト
パートナーと離婚についての協議をすすめていく前に、あらかじめご自身で準備をしておくべきことのリストと、それぞれの解説を紹介します。いずれも離婚後の生活に関わることであり、自分の気持ちをはっきりさせたり離婚を有利に進めたりするためには必要なものです。
まず、離婚前に準備しておきたいことをリストアップすると、以下の項目があります。
・離婚後の生活費のめどを立てる
・離婚したいと思った理由をまとめる
・暴力/浮気などの証拠を集めておく
・離婚条件を詳しく決めておく
・相手が離婚に合意しない可能性を覚悟しておく
それぞれ詳しく確認していきましょう。
1つ目:離婚後の生活費のめどを立てる
離婚後にシングルマザーが抱えることが多い問題に、「経済的な不安」があります。特に現在、専業主婦の人は、仕事を見つけることから始める必要があります。また、扶養の範囲内で現在はパートなどで働いている人も、フルタイムで働くなど離婚後の生活を見据えて勤務の仕方を変える必要があるでしょう。
「仕事を始めるのは離婚してからでも良いのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、離婚に向けて必要なお金は、実は離婚前に発生する可能性があるのです。たとえば、離婚したいことをパートナーに伝えたときから別居を始めるケースもあり、新しい住居のための敷金や礼金、引っ越し費用などを準備しておく必要があります。できれば、当面の生活費や調停などの費用も準備しておくと安心です。
離婚に際してパートナーから財産分与や養育費、慰謝料などを受け取ることもありますが、離婚前からまとまった収入を得られるようにしておき、早めに備えていくことが大切です。
正社員orパート・アルバイト
仕事を決める際には、正社員にするか、それともパートやアルバイトにするかで悩む人がいますが、子どもの年齢や人数、また、親などの親族のサポートの有無などを考慮する必要があります。ここで、参考までにシングルマザーが正社員、またはパートやアルバイトで働く場合のそれぞれのメリット・デメリットを紹介します。
【正社員で働くメリット・デメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・安定した収入を得られる ・社会保険に加入できる |
・残業がある ・子どもの行事に参加しづらい |
正社員で働く場合、毎月安定した収入が得られるうえ、社会保険の加入対象となるため、健康保険や厚生年金に加入できるというメリットがあります。一方で、残業がある可能性、急に休みをとるのが難しい可能性や、基本的にフルタイムでの勤務となるため子どもの保育園や学校の行事に参加しにくい・調整しにくいなどはデメリットといえます。
【パート・アルバイトで働くメリット・デメリット】
メリット | デメリット |
---|---|
・子どもの行事に合わせてシフトを組みやすい ・子どもが体調不良のときに迎えに行ったり休んだりしやすい |
・雇用期間が決められているので不安定 ・社会保険に加入できないケースがある ・賞与や退職金などがもらえない |
パートやアルバイトで働くことのメリットは、やはり子どもの行事に合わせて勤務日を調整しやすいことや、子どもが体調不良になった場合に保育園などへ迎えに行ったり休みを取ったりしやすいことです。
一方で、正社員のように安定した雇用ではないことや、勤務時間によっては社会保険へ加入できない可能性があるというデメリットがあります。また、賞与や退職金なども支給されない(されても少額なことが多い)ことにも留意しておかなくてはなりません。
なお、シングルマザーが仕事先を選ぶ基準として大切なポイントについては、以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
▶シングルマザーの仕事の選び方!おすすめ職種と奨学金も紹介
2つ目:離婚したいと思った理由をまとめる
ご自身の気持ちの整理を付けるためやパートナーへ離婚を切り出すときのために、「どうして離婚したいのか」という理由を整理してみましょう。
・パートナーのことが嫌いになった
・共働きなのに家事や子育てをまったくしてくれない
・パートナーに不貞行為があった
・子どもに悪い影響がある など
このように、離婚を考えている人それぞれに離婚したい理由がありますが、いずれも現在の生活にストレスを抱えていたり不満があったりするからこそ離婚を考えている、といえます。しかし、夫婦間の話し合いで離婚が成立せず裁判による離婚へと発展する場合は、離婚理由が「法廷離婚事由」に該当していなければ、原則として離婚が認められません。
離婚が認められる「法廷離婚事由」とは
日本における離婚の形式は、厚生労働省の「平成21年度『離婚に関する統計』の概況」によると、全体のおよそ9割は協議離婚となっています。つまり、9割の夫婦が話し合いで離婚したことになりますが、中には調停離婚や裁判離婚になってしまうケースもあります。
そして、離婚が認められるためには、法律で定められた次のような5つの離婚事由に該当している必要があります。
・パートナーに不貞行為があった
・パートナーから悪意の遺棄があった(生活費を渡さない、暴力を受け追い出されたなど)
・パートナーの生死が3年間以上不明
・重い精神病にかかり回復が見込まれない
・その他婚姻関係を継続しがたい重大な理由がある
3つ目:暴力・浮気などの証拠を集めておく
パートナーからの暴力、または、パートナーの浮気が離婚原因となっている場合は、暴力や浮気などの証拠をできるだけ集めておきましょう。特に、暴力や悪意の遺棄、浮気などの不貞行為は、こちらがどれほど真実を訴えてもパートナーが嘘の事実を押し通す可能性があるため、動かぬ証拠が何よりも大切になります。
また、証拠集めは「離婚を切り出す前」にある程度完成しておくことがポイントです。離婚を切り出した後、パートナーは自分に不利な状況を作らないために、浮気相手と会わなくなったり証拠隠滅を図ったりする可能性があります。そうなると、決め手となる証拠をつかむことができず、ご自身が不利な立場に追いやられてしまいます。
4つ目:離婚条件を詳しく決めておく
離婚をするにあたって、パートナーと慰謝料や財産分与、養育費などを決めることになりますが、ご自身の希望する条件(または妥協できる最低ライン)を詳しく決めておきましょう。
具体的には、以下のようなことを事前に決めておきます。
・パートナーから慰謝料を取れる場合はどのくらい請求するか
・子どもがいる場合は養育費として毎月いくら必要か
・子どもとの面会交流はどのくらいの頻度で行うか
・財産分与でもらいたい資産 など
パートナーが先述したような法廷離婚事由に該当する行為をした場合、慰謝料を受け取ることができます。また、子どもがいる場合は年齢や人数に応じた養育費を請求することも可能です。さらに、面会交流の頻度はどうするか、財産分与でもらいたい資産は何かなど、あらかじめ書き出しておくと良いでしょう。
5つ目:相手が離婚に合意しない可能性を覚悟しておく
ご自身が強く離婚したいという気持ちを持っていても、パートナーにその気持ちがなければ話し合いで離婚をすることは難しい可能性があります。話し合いによる離婚が成立しない場合は家庭裁判所へ調停を申立てて調停離婚の成立を目指しますが、それでも合意できない場合は離婚裁判にまで発展する可能性もあります。
裁判になると長期間かかることが予想され、さらに弁護士費用も支払わなければならず、精神的にも経済的にも苦しくなる可能性があります。このように、パートナーが離婚に合意しない場合のことも考えて、離婚成立まで長期間かかることを覚悟しておく必要があります。
夫婦で決めるべき離婚時の条件について
ここからは、離婚について夫婦で決めるべき条件について解説していきます。話し合う内容は、大きく「財産のこと」と「子どものこと」のふたつに分かれます。
財産分与
財産分与とは、これまでの結婚生活でパートナーとともに築き上げてきた財産を夫婦間で分けることをいいます。なお、結婚後に築いた財産が夫名義だと分割する際に不利になるのではないかと感じるかもしれないですが、財産は現在の名義に関わらず分けることができるため、ご自身の名義ではなくても財産分与は可能です。
仮に今まで専業主婦だったとしても、「妻が家事をしていたからこそパートナーが仕事に専念できていた」と判断されるため、ふたりの共有財産となるのです。
相手が隠し財産などを持っていないか確認することもふまえ、分割できる財産を1つひとつリストアップしてみましょう。
なお、持ち家については、離婚後どちらかが住むことになるのか、あるいは売却するのか、住宅ローンの支払いはどうするのかなどを決める必要があります。また、預貯金や生命保険、自動車などの財産の分配も、どちらが何を持っていくのかを決めます。預貯金は金額がはっきりしているため分けやすいですが、自動車はマイカーローンの残高や名義、保険のこともあるため分ける際には注意しましょう。
ただし、夫婦それぞれが独身時代に貯めた預貯金や、遺産分割で相続したお金や不動産などは財産分与の対象外となりますので注意が必要です。
慰謝料
パートナーが法廷離婚事由に該当する行為をしたことにより離婚をする場合は、慰謝料を請求できる可能性があります。わかりやすい例でいうと、パートナーから暴力を受けていた、パートナーが浮気をしていた、生活費を入れてくれなかったといったケースです。
しかし、現実的には、パートナーが法廷離婚事由に該当し慰謝料を支払う義務があっても、慰謝料なしで離婚をするケースが少なくありません。そのかわりに「新生活費用」としてお金を受け取ったり、財産分与や養育費の金額でご自身の意見を聞き入れてもらったりという場合もあります。
とはいえ、パートナーが慰謝料を支払う姿勢を持っているならば、受け取っておいて良いといえます。受け取ると決めた場合は、慰謝料の金額、支払時期、支払方法、分割か一括かといったことを決めておきます。
年金分割
将来受け取る年金も夫婦が婚姻期間中に築いた共有財産のひとつとして捉えられているため、婚姻期間中の厚生年金を分割してそれぞれ自分の年金にすることができます(これを「年金分割制度」といいます)。
年金分割制度とは、具体的にいうと、離婚したときに厚生年金の保険料納付記録を多いほうから少ないほうへと分割できる仕組みです。なお、分割対象となるのは「厚生年金」のみなので、夫婦のどちらか、または両方が厚生年金加入者(公的年金制度でいう第2号被保険者)の場合に利用できる制度であり、両方が自営業など国民年金のみの場合は分割対象外になります。
ちなみに、年金分割には「合意分割制度」と「3号分割制度」のふたつがあります。
合意分割とは、分割割合を夫婦で話し合って合意のもとに決める方法となり、合意がまとまらなかった場合は家庭裁判所へ調停や審判の申し立てをして割合を決めます。一方、3号分割とは、専業主婦(夫)だった人や扶養の範囲内で働いていた主婦(夫)などが利用できる制度です。パートナーの合意を得ることなく、ご自身が手続きするだけで被扶養期間のパートナーの厚生年金記録を分割することができます。
年金は老後の大切な生活資金となるものなので、年金分割についてもきちんと話し合うことが大切です。
養育費
養育費とは、離婚によって子どもを引き取ったほうの親に、引き取らなかったほうの親が子どもに必要な費用を支払うものです。中には、「親権が取れなかったから養育費は支払いたくない」などと考える人もいますが、そういった考えは認められず、支払うことが義務付けられています。
ちなみに、養育費は子どもの生活や教育のための費用なので、受け取る権利は別れたパートナーではなく子どもにあります。
養育費を決めるにあたっては、以下のことをしっかりと話し合っておきましょう。
・1カ月あたりの金額
・支払期間(子どもが何歳になるまでか)
・支払方法
養育費は毎月いくらにするかを決める必要がありますが、支払者と受取者では希望が異なるため、なかなか合意できないケースが多いです。そこで参考にしたいのが、裁判所が公表している「養育費算定表」で、子どもの年齢・人数・ご自身やパートナーの収入などによってひと目で養育費の目安がわかるようになっています。
また、養育費を子どもが何歳になるまで支払うのか、支払方法(毎月の支払日、振込先名義など)も決めておくとスムーズに受け取ることができます。
養育費の決め方や養育費算定表については、こちらの記事で詳しく説明しています。
▶養育費の決め方|種類や金額の目安、話し合いのポイントとは
面会交流
面会交流とは、子どもを引き取らなかったほうの親が、子どもと交流を持つ機会のことをいいます。子どもを引き取るのがご自身の場合、パートナーと子どもが会う時間を作ることになります。
離婚の原因によっては「できれば面会はしたくない」と思う人がいるかもしれませんが、面会はあくまでも「子どものため」であることを忘れてはなりません。別々に暮らしていても子どもにとっては父親であることに変わりないだけでなく、「父親からも愛されている」という気持ちを持たせてあげることが理想であるからです。
また、子どもと面会できないとなると、パートナーが養育費を支払う気持ちが減少してしまうことが考えられるため、養育費をスムーズに受け取るためにも面会交流について話し合っておくことは大切です。
面会交流については以下のことを中心に決めます。
・面会交流の頻度
・交流する際の決まりごと
面会交流の頻度は、たとえば「月に1回」などと回数を決めたり、「毎月第三日曜日」などと具体的に決めたりするのも良いでしょう。また、交流する際にはトラブルを避けるために必要最小限の決まりごとを設けることがあります。たとえば「泊りでの面会はNG」「祖父母の家に行くのはOK」などです。
親権者、監護者
夫婦間に子どもがいる場合は、離婚の話し合いにおいて必ず親権者をどちらにするのかを決める必要があります。離婚届にも記入する欄があるため、親権者が決まらなければ離婚が成立しません。
「親権」とは、未成年の子どもを監護・養育すること、子どもの財産を管理すること、子どもの代理人として法律行為をすることなどの権利・義務のことで、簡単にいうと「子どもを引き取る」ということを意味します。そして、親権者とはこのような親権を持っている親のことを指します。
さらに、親権の中には子どもを監護する権利も含まれており、一般的には親権と監護権は同じ親が持つことになります。しかし、親権者をどちらにするのか折り合いが付かないなど、やむを得ない事情がある場合は、親権から監護権だけを切り離し、親権と監護権をそれぞれの別の親が持つというケースもあります。
ここまで解説してきた内容が、離婚する際にパートナーをとしっかり話し合いをして決めておきたいことです。ほかにも、家庭状況に応じて決めておくべきことがある場合は忘れずにリストアップしておき、離婚前に決めておくことをおすすめします。
離婚を切り出すタイミングはいつ?
離婚については切り出しにくい話題であるうえ、話す内容も精神的な負担が大きいものなので、より良いタイミングで切り出したいものです。1つのタイミングとしては、これまでも解説してきたように「証拠集め」がある程度完了していることが望ましいです。そのほか、一般的には次のようなケースが挙げられます。
・両方の気持ちが落ち着ているとき
・離婚の話がスムーズに受け入れそうだと感じたとき
・子どもが独立したとき
・パートナーが定年退職したとき など
お互いにじっくり話し合いができるよう、落ち着いている状態のときを選びましょう。日ごろの雰囲気から離婚の話が受け入れられそうだと感じたときもおすすめです。また、子どもが独立したときやパートナーが定年退職をしたときなども、区切りが良いという点で離婚に適したタイミングといえます。
DVや虐待などの被害がある場合
DVや虐待といった肉体的・精神的苦痛がすでに起きている場合は、身の安全のためにも、速やかに逃げるといった選択肢が最善といえるケースもあります。
ご自身がパートナーからDVを受けている、または子どもが虐待を受けているといった場合に一番大切なのは、ご自身と子どもの身の安全を守ることです。しかし、現実はそううまくはいかず、引き続き同じ家に住み続けるケースもあり、DVや虐待が続くことが考えられます。
DVや虐待で離婚する場合、協議離婚できる可能性はあまり期待できず、調停離婚か裁判離婚になる可能性が高くなります。その際に、パートナーから受けたDVや虐待の証拠を提出できることが望ましいです。
たとえば、ケガの写真やDVや虐待が行われている動画の録画・録音、医師の診断書、110番通報の通報記録などが役立ちます。DVや虐待の十分な証拠が得られたら、できるだけ早い段階で別居することをおすすめします。
なお、DVや虐待の被害を受けている証拠が思うように集められない場合は、早めに弁護士に相談することをおすすめします。時間だけがただ経過してしまうとDVや虐待の被害が大きくなり、ご自身や子どもの精神的・肉体的な苦痛が大きくなってしまいます。
弁護士はDVや虐待から保護をしてくれたり、警察への対応を要請してくれたりするほか、保護命令の申立てや離婚手続までのさまざまなサポートをしてくれます。
タイミングを見誤った場合のリスク
証拠集めが不完全なうちに離婚を切り出してしまうと、どのようなリスクを負うことになるのでしょうか。離婚を切り出されたパートナーは、即座に自分に不利な証拠を隠ぺいする可能性が高くなります。隠ぺいされてしまうと、ご自身にとって有利な証拠が得られなくなってしまい、真実を証明することができなくなります。
そのため、仮にパートナーから暴力を受けている場合は、暴力を受けた日や状況、ケガの写真や医者の診断書などを用意しておきましょう。また、パートナーが不貞行為をしたのであれば、その証拠となるものを保管したり写真に撮ったりしておきます。だれが見ても明らかな証拠があれば、パートナーは認めざるを得ないでしょう。
財産分与については、あらかじめ所有している財産や預金残高などを一覧で書き出しておくことが大切です。というのも、離婚を切り出されると、預金を引き出してほかに移してしまうケースもあるからです。「そんなお金は知らない」と言われないためにも、財産についてもしっかりと把握しておくことが大切です。
このような証拠は、話し合いや裁判へと発展した場合に役立ちますが、なによりもご自身にとって心強い味方となってくれます。
離婚にあたり準備しておくべき書類
離婚の手続きに必要な書類などを紹介していきます。
離婚届の提出時
市区町村役所で離婚届を提出する際に用意しておくべきものは以下のとおりです。
・離婚届
・印鑑(離婚届で押印したもの)
・戸籍謄本(本籍地以外に提出した場合)
離婚届は市区町村役所でもらえるほか、インターネットからもダウンロードできます。また、離婚の種類によって次のいずれかの書類が必要になります。
・協議離婚の場合:離婚協議書
・調停離婚の場合:調停調書謄本または抄本
・裁判離婚の場合:審判書謄本または抄本、確定証明書
離婚届には20歳以上の証人2名の署名捺印が必要なため、事前に依頼しておくとスムーズに進みます。
婚姻中の氏(苗字)を名乗る場合
子どもの進学の都合など、離婚後も引き続き婚姻中の氏(苗字)を名乗る場合がありますが、その際には以下の書類が必要です。
・離婚の際に称していた氏を称する届(戸籍法第77条22の届)
・戸籍謄本(本籍地以外に届ける場合)
・印鑑
この手続きは離婚の日から3か月以内に行う必要があります。
自分の戸籍に子どもを入れるとき
離婚後、ご自身の新しい戸籍に子どもを入れるときに必要な書類は以下のとおりです。
・入籍届
・家庭裁判所の許可書
・印鑑
・ご自身の戸籍謄本(本籍地以外に届ける場合)
この手続きは離婚届の提出と同時にはできず、家庭裁判所への申し立てをする必要があります。
社会保険関係の変更手続き
現在、会社勤めをしていて社会保険に加入している場合は特に問題ありませんが、専業主婦だったりパートナーの扶養の範囲内で働いていたりした場合は、国民健康保険や国民年金への加入手続きを取る必要があります。
特に、国民健康保険へ加入する際には「健康保険資格喪失証明書」が必要となるため、パートナーの勤務先へ事前に発行を依頼しておきましょう。
離婚についての話し合いがまとまらない場合
冒頭でも触れましたように、日本における離婚の約9割は協議離婚とされていますが、ご自身の離婚が必ずしもスムーズに合意まで至るとは限りません。
協議離婚が難しい場合、家庭裁判所へ調停の申し立てをして調停員に間に入ってもらい、話し合いを続けることになります。それでも合意に至らない場合は、離婚裁判へと進まざるを得なくなります。
一般的に、離婚の原因が「性格の不一致」などである場合は協議離婚できる可能性がありますが、DVや虐待などの場合は協議離婚が難しくなる傾向があります。調停や裁判へ進むとなると、弁護士費用がかかるといった経済的な負担がかかるのはもちろんのこと、長期スパンになる覚悟も必要になります。
離婚調停
離婚調停は、夫婦は顔を合わせることなく別々に行います。最初は申立人(離婚調停を申立てた人)が、調停委員から説明を受けたり、調停委員へ離婚に至るまでの経緯などを話したりします。話が終わると待機室へ戻り、相手側も同様に呼び出しを受けて説明を受けたり話をしたりします。
調停は一般的に、数回行われることが多く、離婚の同意を得られたり、慰謝料や養育費・財産分与などの条件に合意が得られたりすれば離婚が成立します。成立後は調停調書の作成を依頼し、離婚届とともに提出します。
離婚裁判
調停で合意が得られない場合は裁判で争うことになりますが、一般的に裁判離婚が成立するまで1~2年程はかかるとされています。しかし、第一審で勝訴しても相手方が控訴・上告した場合には、さらに争う期間が長引くことになります。
なお、裁判離婚は手続が複雑で専門的な知識も必要なため、弁護士への依頼が欠かせません。裁判が長期にわたると、そのぶん弁護士へ支払う報酬も高額になることが考えられ、費用負担が大きくなることが懸念されます。
離婚準備は「事前準備」が肝心!有利かつ揉めない離婚を目指そう
離婚をしたいと思ったら、まずは事前準備をすることから始めましょう。現在所有している資産を把握したり、法廷離婚事由に当てはまる行為があった場合は証拠集めをしたりするなど、パートナーへ切り出す前に着々と準備を進めることが重要です。ただし、身の危険がある場合や裁判になる場合などは、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。