シングルマザーにとって、母子家庭向けの手当ては重要な収入のひとつとなります。子育てをしながら生計を立てていくとき、児童扶養手当をはじめとする各種手当は、生活設計の基本にかかわるものだからです。この各種手当、じつは母子家庭であるにも関わらず打ち切りになってしまう可能性があることは知っていましたか?今回は、母子家庭の手当てについて、そして主要な手当の1つである「児童扶養手当」がどのような場合に打ち切りになってしまうのかにスポットを当て、シングルマザーが損をしないように知っておきたいポイントをお伝えしていきます。

著者 川西まあさ

目次

  1. 母子家庭がもらえる主な手当とその特徴とは
    1. 児童手当
    2. 児童扶養手当
    3. 児童育成手当
  2. 「児童扶養手当」の受給対象を再確認する
    1. 9つある条件のいずれかに該当する場合
  3. 「児童扶養手当」がもらえなくなるかもしれないケース
    1. ケース1:母親に彼氏がいてその人と事実婚しているとみなされた場合
    2. ケース2:子どもが里親に委託されていたり児童福祉施設へ入所している
    3. ケース3:受給対象となる子どもが海外で生活している
    4. ケース4:母の実家で母の親(子の祖父母)と同居する場合
    5. ケース5:母親が高い給料や高い養育費を受け取っている場合
  4. 児童扶養手当の所得制限とは
    1. 児童扶養手当の所得制限には2つの制限がある
  5. 「児童扶養手当」をもらい続けるための対策
    1. 実家とは別に家を借りる
    2. 家を購入する
    3. 実家に住んでいる大人の所得を制限限度額以内にする
    4. 完全二世帯住宅にする
  6. 各手当の受給要件を見直してみる

母子家庭がもらえる主な手当とその特徴とは

離婚後に実家に戻るともらえない?「児童扶養手当」にまつわる注意点と対策

(画像=yamasan/stock.adobe.com)

まずは、母子家庭がもらえる手当についてのおさらいをしていきましょう。すでに受け取っているものがほとんどかと思いますが、いま一度それぞれの特徴を確認していきましょう。

児童手当

児童手当は、内閣府が実施している子育て支援施策です。中学校卒業(15歳の誕生日後、最初に迎える3月31日まで)までの児童を養育している人へ向けて、支給される手当です。

離婚協議中で別居中の場合は、子どもと一緒に住んでいる人へ優先的に支給。支給額は、3歳未満が一律1万5,000円、3歳以上小学校終了前までが1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学生が一律1万円となります。市区町村によっては申し出を行えば、児童手当から保育料や学校給食費を徴収してもらうこともできる、子どもにかかる費用に困っているときの大きな支えとなる手当です。

多くの場合は該当となりませんが、児童手当を受けとるためには所得制限限度額内である必要があります。(以下の表を参照)

▽児童手当の所得制限

扶養親族等の数 所得制限限度額(万円) 収入額の目安(万円)
0人 622万円 833万3,000円
1人 660万円 875万6,000円
2人 698万円 917万8,000円
3人 736万円 960万円
4人 774万円 1,002万1,000円
5人 812万円 1,042万1,000円

【参考】内閣府「児童手当制度のご案内」

表の右端にある「収入額の目安」は、給与収入のみで計算されているので注意が必要です。上の表に書かれている額以上の所得がある場合には、「特例給付」という形で児童1人につき月額一律5,000円が支給されます。(2020年11月現在)

児童手当を受け取るためには、毎年1回現況届の提出が必要。この現況届を提出していなければ、所得制限限度額内であっても、手当を受けることができなくなってしまいます。収入や生活面などで変わりがなかったとしても、現況届の提出は忘れずに行いましょう。

児童扶養手当

児童扶養手当は、両親の離婚によりひとり親世帯になった家庭で暮らす子どもや、父または母が死亡した子どもなどの養育者に支給される手当です。18歳の誕生日の後、最初に迎える3月31日まで支給対象となります(障害児の場合は20歳未満)。手当の月額は、以下のとおりです。

【子どもが1人の場合】

  • 全部支給:4万3,160円
  • 一部支給:1万180円~4万3,150円

【子どもが2人以上いる場合の加算額】

  • 2人めの全部支給:1万190円
  • 2人めの一部支給:5,100円~1万180円
  • 3人め以降1人につき全部支給:6,110円
  • 3人め以降1人につき一部支給:3,060円~6,100円

ただし、児童扶養手当には養育者(実家に住む場合、生計を同じくする父母や兄弟姉妹も対象)の所得制限限度額があります。子どもが1人の場合、年収160万円未満で全部支給、年収160万円~365万円未満の場合は、一部支給の対象となります。

子ども1人の場合に、年収365万円を超えている場合には、児童扶養手当の支給対象から外れるので注意が必要です。

児童育成手当

児童育成手当は、一部の市区町村で実施されている母子家庭向けの支援制度です。児童扶養手当と同じような性質を持つ手当ですが、児童扶養手当とは異なり「受給者のみへの所得制限」や「高い限度額」など、比較的受け取りやすい手当となっています。参考までに、東京都国分寺市の例をご紹介しましょう。

対象者は、18歳の誕生日のあと最初に迎える3月31日(年度末)までの子どもがいる母子家庭or父子家庭となります。子どもの保護者(受給者)の前年の所得が、制限未満であることが条件となります。所得制限は、以下の通りです。

▽児童育成手当の所得制限

扶養親族の人数 所得制限額
扶養親族0人の場合 360万4,000円未満
扶養親族1人の場合 398万4,000円未満
扶養親族2人の場合 436万4,000円未満
扶養親族3人以上の場合 436万4,000円+(3人目以降の子どもの数×38万円)未満

【参考】国分寺市「児童育成手当」

手当の額は、子ども1人につき月額1万3,500円。戸籍謄本や銀行口座がわかるものを、子育てサービス課へ持参して申請することとなっています。各自治体によって、所得制限額や手当の額が違う可能性もあるので、お住まいの自治体のホームページをチェックしてみてください。

「児童扶養手当」の受給対象を再確認する

ここまで、母子家庭が受け取れる主な手当を3つ紹介してきました。この児童手当、児童扶養手当、児童育成手当のうち、児童扶養手当は所得制限が厳しいため、すべての母子家庭が対象となるわけではない手当です。離婚後に、お母さんが実家に戻るケースも珍しくありませんが、それによって支給対象外となってしまうケースもあるのです。この児童扶養手当について、どんな人が受給対象になるのか、確認しておきましょう。

9つある条件のいずれかに該当する場合

児童扶養手当を受け取るには、以下の9つの条件のいずれかに該当しなければいけません。

  1. 両親が婚姻を解消した子ども
  2. 父または母が死亡した子ども
  3. 父または母が一定程度の障害状態にある子ども
  4. 父または母の生死がわからない子ども
  5. 父または母から1年以上遺棄されている子ども
  6. 父または母が、裁判所からDV保護命令をうけた子ども
  7. 父または母が1年以上拘禁されている子ども
  8. 婚姻によらないで生まれた子ども
  9. 父または母が不明な子ども

また、父・母のかわりにその子どもを養育している人(祖父母など)に向けて、児童扶養手当が支給されるケースもあります。

「児童扶養手当」がもらえなくなるかもしれないケース

生活の変化に伴い、児童扶養手当がもらえなくなるケースもあります。身の回りに変化が起こりそうな人は、以下の具体例をよく確認しておいてください。

ケース1:母親に彼氏がいてその人と事実婚しているとみなされた場合

母親に新しい彼氏ができ、定期的に生活費の補助を受けている場合、事実婚とみなされて支給対象から外れてしまう可能性があります。原則、同居すれば基本的に事実婚とみなされるため、児童扶養手当はもらえなくなるケースがほとんどのようです。

ケース2:子どもが里親に委託されていたり児童福祉施設へ入所している

子どもが里親へ委託されていたり、児童福祉施設などへ入所しているなど、受給者自身が子どもを養育していないとみなされる場合も、児童扶養手当の支給対象外となります。

ケース3:受給対象となる子どもが海外で生活している

児童扶養手当の支給対象は、日本に在住の子どものみです。

ケース4:母の実家で母の親(子の祖父母)と同居する場合

離婚後しばらくしてから実家に移り住む場合は、母だけでなく母の親や兄弟の収入も合算されてしまうため、児童扶養手当の所得制限限度額にひっかかってしまう可能性が高くなります。所得制限限度額を超えてしまう場合は、当然支給対象になりません。

ケース5:母親が高い給料や高い養育費を受け取っている場合

母親が高い給料を受け取っている場合や、高い養育費を受け取っている場合も、児童扶養手当の支給対象外となる可能性があります。児童扶養手当制度では、給料だけでなく養育費の8割相当額も所得として加算されるため、注意が必要です。

児童扶養手当の所得制限とは

児童扶養手当の支給対象となるには、所得制限をクリアする必要があります。児童扶養手当の所得制限にまつわる注意点を、確認しておきましょう。

児童扶養手当の所得制限には2つの制限がある

児童扶養手当は、「全部支給」と「一部支給」の2種類があります。全部支給と一部支給とで支給額に差があるため、それぞれに所得制限限度額が設けられているのです。詳細はお住まいの市区町村に確認する必要がありますが、以下の表が参考となります。

▽所得制限限度額

扶養人数 受給資格者本人 扶養義務者・配偶者・孤児などの養育者
全部支給 一部支給
0人 49万円 192万円 236万円
1人 87万円 230万円 274万円
2人 125万円 268万円 312万円
3人 163万円 306万円 350万円
4人 201万円 344万円 388万円
5人 239万円 382万円 426万円

※表は収入ではなく「所得」を記載(子ども1人の所得制限限度額:87万円は年収160万円に相当)

【参考】東京都福祉保健局「児童扶養手当」

表の見方については、以下を確認してください。

・所得制限限度額の「所得」

収入から給与所得控除などの必要経費を差し引いて、養育費の8割に当たる額を加算したものです。収入から必要経費だけを引いた額とは違います。

・表にある「受給資格者本人」

子どもを育てているママのことです。

・表の右上にある「扶養義務者・配偶者・孤児などの養育者」

「扶養義務者」とは、同居している受給者の父・母・兄・弟・姉・妹・祖父母・子などのことで、この中で一番所得の高い人が対象となります。「配偶者」とは、同居など事実婚状態を含む受給者のパートナーのことで、「孤児などの養育者」とは、父・母が死亡している、またはそれに準ずる扶養義務のない子どもを養育している人のことを指します。

・表左上にある「扶養員数」

税法上の扶養親族のことを指します。

「児童扶養手当」をもらい続けるための対策

児童扶養手当を受給し続けるためには、児童扶養手当の支給対象であり続ける必要があります。取りうる対策について、考えてみました。

実家とは別に家を借りる

1つめの対策案は「実家とは別に家を借りる」という方法です。この方法であれば、実家に住むケースとは違って、家を購入すれば親や兄弟の収入が合算されることがないため、児童扶養手当をもらい続けることが可能です。

家を購入する

2つめの対策は「家を購入する」という方法です。離婚後実家に戻らないとなると、1つめの対策案のように賃貸を選ぶ人が一般的でしょう。しかし、実家に戻らず賃貸暮らしをするのにも、毎月の家賃が発生します。毎月一定の出費が発生するという点では、賃貸暮らしも持ち家暮らしも実は同じなのです。

シングルマザーで家を購入するというのは無茶だと思う人もいるかもしれませんが、家を持っていることがメリットとなるケースも。持ち家があれば「資産がある」とみなされ、将来的に別のローンが組みやすくなります。子どもの進学のためにローンを組みたいというときも持ち家が有利に働くため、長い目で見ても有効な手段だと言えるのではないでしょうか。

一般的にローンを組むには年収200万円以上必要だと言われていますが、「親子リレー」という仕組みを使えば親の収入と合算して年収をカウントすることができます。そのため児童扶養手当の所得制限限度額内に相当する収入だけでも、ローンを組める可能性はあるのです。

家は資産としてカウントされるものですが、持ち家だからと言って児童扶養手当の対象から外されることはないので、安心してください。

実家に住んでいる大人の所得を制限限度額以内にする

児童扶養手当の支給対象となるには、所得制限のライン内にいなければいけません。もし、実家で実の親や兄弟姉妹と一緒に暮らすことを検討している場合は、所得制限のラインを超えないようにすれば、児童扶養手当をもらい続けることができます。

扶養親族などの数によって所得制限の額が変わってくるので、同居している親や兄弟姉妹の収入もすべて含めて計算してみてください。

完全二世帯住宅にする

実家に住む場合は、基本的に実家家族の収入も所得額として加算されるため、児童扶養手当の支給対象となりづらい状況になります。しかし、ある3つの条件を満たせば、実家家族の収入が加算されなくなることも。その3つの条件とは、以下の通りです。

  1. 実家が完全二世帯住宅の造りになっている(台所・トイレ・風呂が各世帯別になっている)
  2. 電気・水道・ガスなど、公共料金を世帯ごとに契約していて、料金も別で支払っている
  3. 税法上・健康保険証上ともに扶養関係にない

市区町村によっては、水道光熱費などが完全にわかれている状況であれば相談の余地があるケースもあるようなので、住んでいる自治体の担当窓口へ確認してみてください。

各手当の受給要件を見直してみる

毎月、自分で生計を立てつつ子育てを行うシングルマザーにとって、家計のやりくりに母子家庭向けの手当はなくてはならないものです。今後も確実に手当てを受け取っていくために、各手当の受給条件などをしっかり確認しておいてください。

著者 川西まあさ