養育費の未払いがあると、子どもの生活費や教育費などに直接影響が出るため、早期に解消する必要があります。法的な手続きとして差し押さえ(強制執行)がありますが、どのような制度なのでしょうか。本記事では、養育費の未払いにおける差し押さえ(強制執行)の内容や対象になる財産、手続きの流れなどについて解説していきます。

養育費が継続的に支払われている人はたったの24%。書面を交わしても支払われていない現状があります。

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養育費の未払いは「強制執行」で回収できる

養育費が支払われていない場合、法律に基づいて、相手の財産を差し押さえ(強制執行)によって回収できます。

養育費は、子どもの生活や教育のために必要なお金で、一般的に子どもと離れて暮らす親が子どもと一緒に暮らす親に支払うものです。しかし、事情により、または故意に養育費が支払われなくなるケースもあり、子どもに十分なお金をかけられなくなることがあります。

こういった養育費の不払いがあった場合、元配偶者へ催促をすることになりますが、簡単に支払いに応じてもらえるケースばかりではありません。そこで家庭裁判所に申し立て、未払い養育費の差し押さえ(強制執行)を検討する、という流れになります。

ではその「差し押さえ」とはどういうものなのか、次章以降で見ていきましょう。

養育費の回収で差し押さえできる財産

養育費の未払いで差し押さえできる財産には、主に以下のようなものがあります。

給与

元配偶者が勤務先から支給されている給与やボーナスなどの差し押さえが可能です。これまでの未払い分だけでなく、今後未払いが発生した場合についても継続して差し押さえられます(※)。

ただし、差し押さえできるのは手取り額の2分の1に相当する金額までです。

参考:調停・審判などで決まった養育費の支払を受けられない方のために

預貯金

銀行などの預貯金も差し押さえ可能で、差し押さえた時点で存在している金額のすべてが対象です。そのため、預金額があれば未払いを全額回収することもできます。

ただし、将来発生するかもしれない未払いについての差し押さえはできないほか、差し押さえ以降に入金された分は対象外になります。

その他

元配偶者が所有している土地や建物などの不動産や、生命保険の解約返戻金、自動車なども差し押さえの対象です。

未払い養育費を差し押さえるための条件

未払いの養育費を差し押さえるためには、次の3つの条件を満たす必要があります。

・相手の住所が分かっていること
・差し押さえ対象の財産を特定していること
・債務名義を取得していること

相手の住所が分かっていること

元配偶者の住所が不明な場合、差押命令を送付できず手続きがすすめられないため、現在の住所が分かっていることが条件です。

元配偶者の現住所がわからない場合は、ご自身で調べなければなりません。具体的には、「戸籍の附票(ふひょう)」や「住民票」を交付して調べることになります。

戸籍の附票とは、新しく戸籍を作ったときからの住民票の履歴を記録したもので、本籍地で管理されています。ただし、発行できるのは本人・配偶者・直系の血族のみであることや、閲覧交付制限をかけることも可能なため、入手できない可能性があります。

事情を説明しても発行できない場合は、弁護士などの専門家に相談するとよいでしょう。

差し押さえ対象の財産を特定していること

元配偶者の財産を差し押さえるためには、差し押さえ可能な財産を特定していることが条件です。財産とは、上で紹介したとおり給与・預貯金・不動産などです。

元配偶者の勤務先が離婚前と同じであれば特定できますが、転職している場合は現在の勤務先を探さなければなりません。また、銀行の口座番号も以前と同じであれば問題ありませんが、口座を解約した場合は新口座を見つける必要があります。

これらに該当する場合、裁判所の「財産開示手続」や「第三者からの情報取得手続」をとって調べることが可能です。

財産開示手続とは、裁判所が元配偶者を呼び出し、財産や給料などについて述べさせる手続のことです。また第三者からの情報取得手続とは、裁判所が、債権者(この場合は妻)が選んだ市区町村や日本年金機構などに対して、元配偶者の勤務先情報の提供を命じる制度のことをいいます。

債務名義を取得していること

養育費の差し押さえを行う際には、債務名義があることが条件です。債務名義とは、差し押さえ(強制執行)を行う根拠となる債権債務等を記載した公の文書のことで、主に次のような書類が該当します。

確定判決:裁判が終結し、確定判決が下されたときに作成される文書
仮執行宣言付与判決:裁判が確定する前に強制執行が認められたときに作成される文書
仮執行宣言付支払督促:支払督促の手続を行ったときに作成される文書
和解調書:裁判で和解が成立したときに作成される文書
調停調書:調停成立のときに作成される文書

上記のほかに公正証書も利用できますが、「執行受諾文言」と「執行文」が付与されていなければなりません。執行受諾文言とは、元配偶者が強制執行されることに同意していることを意味するものです。執行文は、公証役場や家庭裁判所に付与の申し立てをする必要があります。

差し押さえにより未払い養育費を確保する流れ

未払いの養育費の差し押さえは、一般的に次のような流れで行われます。

1.必要書類を集める
2.裁判所へ強制執行(差し押さえ)を申し立てる
3.差し押さえ命令が出される

1.必要書類を集める

強制執行(差し押さえ)の申し立てに必要な書類を集めます。主な書類は以下を確認してください。

申立書 表紙・当事者目録・請求債権目録・差押債権目録の4つがセット
債務名義の正本 養育費ついて定めた調停調書・審判書・和解調書(※)・判決書(※)・公正証書(※)
(※)は「執行文」が付いたもの
送達証明書 債務名義の正本が元配偶者に送付されたことの証明書。公証役場や家庭裁判所で交付
申立手数料 収入印紙
第三債務者の資格証明書 元配偶者の勤務先や預貯金のある金融機関(第三債務者)の本店住所・会社名・代表者氏名などがわかる商業登記事項証明書や代表者事項証明書
住民票や戸籍謄本 現在の住所・氏名が,債務名義に記載されている住所・氏名と異なる場合に必要

上記以外の書類が必要になるケースもあるため、申立先の地方裁判所に確認してください。

2.裁判所へ強制執行(差し押さえ)を申し立てる

必要な書類をそろえたら、元配偶者の住所地を管轄している地方裁判所に強制執行の申し立てをします。家庭裁判所ではない点に注意しましょう。書類は直接窓口に提出するほか、郵送でも受け付けています。なお強制執行の申し立てには、収入印紙や郵便切手代などがかかります。金額については申立先の裁判所で確認してください。

3.差し押さえ命令が出される

提出した書類に不備やもれがなければ、元配偶者と第三債務者(勤務先や銀行など)に裁判所から差し押さえ命令が発令されます。第三債務者は、給与の差し押さえなら勤務先、預貯金の差し押さえなら銀行などが該当します。差し押さえ命令を受けた勤務先は、給与の全額を支給することが禁止されます。銀行は預金を凍結するため、元配偶者は現金の引き出しができなくなります。

実際に取立てができるのは、差し押さえ命令の送達から1週間経過後です。

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養育費の支払いが滞ることが不安な方は、「養育費保証サービス」の利用を検討してみましょう。養育費保証サービスとは、元配偶者から養育費の支払いがなかった場合に、保証会社が立て替えて支払うサービスです。

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・養育費の支払いがなかった場合に立て替え払いを行う
・元配偶者への連絡は保証会社が行うため、直接かかわらなくて済む
・未払い解決の法的な手続きや費用をサポートする
・自治体によっては補助を受けられる

費用

初回保証契約料(契約時のみ)月額養育費の1カ月分

月額保証料 月額養育費の3%(最低月額保証料 1,000円)

プラン

離婚協議書の有無や、元配偶者の養育費保証加入の契約合意の有無などにより、保証上限は12カ月・24カ月・36カ月のいずれかになります。

Casaでは養育費保証のほか、仕事や部屋を探す際のサポートも行っています。離婚後の困りごとについて相談できるため、特にシングルマザーの心強い味方となるでしょう。

養育費の未払いがあるなら差し押さえを検討しましょう

養育費の未払いがあり困っている場合は、差し押さえ(強制執行)の申し立てをして回収する方法があります。ご自身で手続きをすることも可能ですが、弁護士などの専門家に依頼するとスムーズにすすめられます。また、今は未払いがなくても今後の支払いについて不安な方は、養育費保証サービスの利用を検討するのもひとつの方法です。