小学校・中学校へ入学されたお子さんは、新たな出会いにとてもわくわくしていることでしょう。しかし、学校へ通わせているあいだは、制服やランドセル、給食など、さまざまな面で費用が発生します。そこで大きな助けとなるのが「就学援助制度」です。経済的な理由でお困りの方へ費用を援助し、お子さんの就学を奨励する「就学援助制度」の詳細を解説します。

母子家庭の子育てにのしかかる保育料・教育費

幼稚園・保育園、小学校、中学校、そして高校、大学……。母子家庭に限らず、お子さんが成長する過程で保育料や教育費は大きな負担になります。なかでも義務教育期間中、すなわち“小学校・中学校”に通っているあいだの出費は避けられないものとなっています。

そこで活用できるのが、冒頭で触れた「就学援助制度」です。この制度はお子さんが小学校・中学校に通っているあいだ、母子家庭などで条件を満たす場合にお金の援助を受けられる制度です。

一方で、避けられないといえば“幼稚園・保育園”も同様でしょう。母親自身が収入の柱である母子家庭では、子どもを預けて働きに出るために幼稚園・保育園の利用は必須とも言えます。

そこで、就学援助制度を解説する前に、はじめに幼稚園・保育園の利用料の援助制度を解説していきます。

幼児教育・保育は無償化が始まっている

保育料はいくらかかるのか、気になるシングルマザーも多いでしょう。しかし、心配しすぎる必要はありません。幼児教育の負担軽減や、人格形成のためには幼児教育が重要であるという観点から、2019年10月より幼児教育・保育の無償化がスタートしています。

対象となる施設は、幼稚園、保育所、認定こども園、地域型保育、企業主導型保育、幼稚園の預かり保育、認可外保育施設、一時預かり事業、病児保育事業、ファミリー・サポート・センター事業などです。ただし、利用施設によって支援上限が定められている場合があります。

対象者は、上記施設を利用する3~5歳のお子さんです。ただし、0~2歳のあいだも、住民税非課税世帯であれば利用料が無償に、保育所などを利用するお子さんのうち第2子であれば半額、第3子以降であれば無料となります。

通園送迎費、食材料費、行事費などは引き続き保護者の負担になりますが、それでも従来から大きく負担が軽減しています。さらに自治体によっては、ひとり親の場合は0~2歳児クラスの保育料が軽減される制度を設けている場合もあります。自治体の担当窓口や保育施設などへ問い合わせて確認し、制度を活用しましょう。

では、幼児教育・保育の無償化について押さえたところで、義務教育期間中に活用できる「就学援助制度」について詳しく見ていきましょう。

「就学援助制度」とは?

すべての国民は、子どもに小学校6年・中学校3年の9年間に基礎的な教育を受けさせる義務があり、義務教育は無償で受けられる、ということが憲法で定められています。

子どもにとって、人とのつながりを持ち、仲間と学びあう学校という環境はとても大切です。教育を十分に受けられないことが、進学や就職のチャンスを逃し、その結果として十分な収入を得ることが困難になる可能性があるからです。

就学支援制度は、お子さんが小・中・義務教育学校へ通う際に、経済的な理由でお困りのご家庭へ学用品費や通学用品費、修学旅行費、給食費などを援助して、お子さんが学校生活を健やかに送ることを応援する制度です。

就学援助制度の対象となる方

就学援助制度の対象となる方は、次の要件に該当する方です。

1. 現在生活保護を受けている方
2. 生活保護を受けている方に準ずる程度に生活状況が困窮していると認められる方

2については、たとえば次の措置を受けている方などが含まれます。

・前年度以降に生活保護を受けられなくなった方
・児童扶養手当を受けている方(母子家庭などの方)
・市県民税の非課税または減免されている方
・固定資産税が減免されている方
・国民年金の保険料を減免されている方
・国民健康保険料の減免または徴収猶予を受けている方
・生活福祉資金の貸付けを受けている方
・失業対策事業適格者手帳を持っている、日雇労働者の方または職業安定所に登録している日雇い労働者の方
・災害救助法の適用を受けている方で、被災等の申し立てをした方

自治体によって対象となる方が異なる場合がありますので、詳細は教育委員会の担当課や、お子さんが通っている学校にお問い合わせください。

補助対象となる品目

就学援助制度の対象者は、必要費用に対して補助金が支給される形で援助されます。補助の対象となっている品目は、次の品目です。

▽就学援助制度の補助対象となる品目
・学用品費、体育実技用具費、新入学児童生徒学用品費等、通学費、修学旅行費、郊外活動費、医療費、学校給食費、クラブ活動費、生徒会費、PTA会費、卒業アルバム代 など

認定の基準となる所得については、世帯の所得が限度額以下の方が対象になります。横浜市の場合をご紹介します。

▽横浜市の場合の所得限度額

世帯の人員 2人 3人 4人 5人 6人 7人 8人 9人 10人
総収入の目安 380万円 446万円 497万円 562万円 620万円 689万円 742万円 798万円 832万円
総所得 250万円 303万円 344万円 396万円 442万円 500万円 548万円 598万円 628万円

引用:横浜市教育委員会「就学援助制度のお知らせ(令和2年度)」

限度額の目安は、お住まいの自治体によって異なります。また、母子家庭、障がい者のいるご家庭、など世帯の状況も異なります。詳細は教育委員会の担当課や、お子さんの通っている学校にお問い合わせください。

受け取れる補助金はいくら?

次の表は就学援助の種類と支給される金額の目安をまとめたものです。こちらも横浜市の場合でご紹介します。

▽横浜市の場合の支給額

援助の区分 援助を受けられる方 支給予定額(年額)
学用用品費など 全員 小学校1年生:1万6,680円
小学校2~6年生:1万8,950円
中学校1年生:3万200円
中学校2~3年生:3万2,470円
入学準備費 小学校1年生
小学校6年生
6万3,100円
7万9,500円
宿泊郊外活動費 全員 小学生:実費(3,690円限度)
中学生:実費(6,210円限度)
修学旅行費 対象学年 小学生:実費(1回のみ)
中学生:実費(1回のみ)
クラブ活動費 全員 小学生:実費(2,760円限度)
中学1年生:3万150円
中学2年生:2万100円
中学3年生:1万50円
卒業アルバム代 対象学年 小学6年生:1万1,000円
中学3年生:8,800円
学校給食費 小学生 5万600円(年額)
学校病医療費 全員 実費
日本スポーツ振興センター保護者負担金 全員 原則として当初申請期間に申請し、認定された方については掛金免除

引用:横浜市教育委員会「就学援助制度のお知らせ(令和2年度)」

お子さんが、個別支援学校、国立・県立の小・中学校・中等教育学校、私立の小・中学校・中等教育学校、外国人学校などへ通学している場合は援助の内容が異なりますので、教育委員会の担当課や、お子さんの通っている学校へお問い合わせください。

小学校入学前に補助金を受け取れる場合も

就学援助制度は義務教育期間のあいだ利用できるとお伝えしましたが、小学校に入学する前に入学準備のための補助金を受け取ることができる場合があります。入学前には、制服やランドセル、通学カバンなどをそろえておくための費用がかかるからです。

文部科学省の2019年度の調査では、アンケートに回答した市町村1,766のうち小学校の入学前支給を実施している自治体は1,301(73.7%)あり、前年度と比べるとそれぞれ26.5ポイント増加し、今後も増えるようです。

小学校に入学するお子さんや保護者の方への案内方法としては、多くの市町村が「自治体の広報誌やホームページに掲載」「就学時健康診断の際に案内を配布」「就学時健康診断の際に学校で案内を配布」と回答しています。学校からの配布物を受取ったら、確認してみましょう。

就学援助制度の申し込み方法

就学援助を希望する場合は、自治体のホームページからダウンロードまたは、学校から就学援助費受給申請書を受け取り、申請書に記入し必要書類を添えて、お子さんの通っている学校または教育委員会の担当課へ提出します。

自治体によって異なる場合がありますが、年度当初の4月から就学援助を希望する場合は、4月に申請できます。年度の途中から希望する場合は、その時期に申請できますので問い合わせてみましょう。認定日以降が就学援助の対象になります。

原則として申請手続きは申請書のみでできますが、お住いの自治体や申請理由などによって、必要な書類が異なります。具体例は以下に紹介しますが、注意点として税の申告をしていないと所得が確認できず審査ができませんので、申告を済ませてから申請手続きに進みましょう。

・必要な書類の例
マイナンバー確認書類、本人確認書類、児童扶養手当証明書のコピー、年末調整されている源泉徴収票、受理印のある確定申告書控1,2表、e-Taxの申告内容確認表、年金の証明書、市民税・県民税(非課税)証明書、市民税・県民税特別徴収税額通知書、市民税・県民税税額決定納税通知書 など

昨年、就学援助を受けていた方で今年も希望する場合や、入学前に入学準備費の認定がされている場合でも、改めてその年度に申請することになっています。また、年度の途中で他の市町村から転入された場合も改めて申請する必要があるので、気をつけておきましょう。

審査結果の通知と支給方法・時期

就学援助制度の審査の結果は、支給対象と認定された場合だけでなく、認定されなかった場合も通知があります。年度の当初に申請された方は7月下旬ごろのようです。自治体によって援助費が支給される時期は異なりますが、年間に数回に分けて学校を通じて指定口座へと支給されます。つまり、学校へ納める費用は先に支払い、数ヵ月分の納付済費用が後でまとめて支給されるという仕組みです。

支給額は、学校からの報告をもとに、保護者が負担した額を補助対象となっている限度内の金額です。限度額は、その学校の生徒会費なども考慮されているため、市外から転入したなどで1年に満たない場合は支給額が減額となります。

なお、一部の補助品目は支払い時期や受け取りに注意が必要です。

▽就学援助制度で注意したい主な費目
・修学旅行費:学校が実施しお子さんが参加された場合に支給されます
・学校病医療費:お子さんが学校病に該当する病気にかかったら、学校に相談し“治療券”を発行してもらう必要があります
・日本スポーツ振興センター保護者負担金:免除となるため補助金はありません
・学校給食費:直接学校へ支払われます。夏休みなど給食が実施されていない期間は支給の対象になりません

自分から問い合わせるなど行動を起こすことが大切

文部科学省の2018年の調査によると、就学援助制度の案内方法は多い順に「毎年度の進級時に学校で書類を配布する」81.1%、「入学時に学校で書類を配布する」77.9%、と続きます。

制度を案内していない学校もありますので、お子さんが通う学校で案内書類を受取れないかもしれません。離婚や失業など、経済的な理由でお子さんを学校に通わせることが難しい状況になったときは、解決するために自分で行動を起こしましょう。

就学援助制度の申込み・受付は、通年で行われています。年度の途中でも申請できます。まずはお住いの自治体や学校に問い合わせて、援助の対象となる要件を確認してみましょう。