母子世帯のうち、養育費を受けている世帯、受けたことのある世帯は、合わせて約4割となっています。母子世帯になってからの年数が経つにつれ、過去に受けたことがある世帯の割合が増えていきます。これは、離婚時に金額や支払い期間を決めてあり、今月もきちんと払ってくれていても、突然、「養育費を減額してほしい」「養育費を払わない」と言われる可能性があることを示唆しています。

そこで本記事では、養育費の減額が認められないケースと認められるケースをご紹介します。

養育費の決め方について

養育費は、一般的には子どもが経済的・社会的に自立するまでに必要な、衣食住、教育、医療などにあてる費用のことをいいます。養育費の取り決めは、原則として話し合いによって決めることになります。話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の調停や審判を申し立て、支払う親の年収と子どもを育てる親の年収、子どもの年齢、子どもの人数に応じた「養育費・婚姻費用算定表」をもとに裁判所で決定します。

養育費を支払う期間は、長い年月にわたりますから、決めていた金額が実情に合わなくなることもあるでしょう。もちろん簡単に変更できるものではありませんが、口約束だけでなく公正証書を作成した、裁判所の調停や審判で決めたという場合でも、その後の状況の変化によっては、相手に養育費の増額や減額を求め変更することができると認められています。

養育費の減額を請求されるケースの代表的な例

「養育費を減額してほしい」といわれるケースで代表的な例は次のようになります。

・仕事を辞めて収入が減ったので「養育費を払わない」と言ってきた
・「再婚したので減額してほしい」と言われた
・「子どもに会わせてもらえないので払わない」と言われた
・「そちらが再婚したので減額してほしい」と言われた

相手の収入減少の原因が、病気やケガによる休業、勤務先の業績悪化による解雇などやむを得ない事情によるものでなく、本人の意思で自主的に転職したなどの場合は、減額されない場合があります。

また、子どもとの面会と、養育費を支払うことは別のこととされていますので、面会に応じないからという理由で養育費を払わないということにはなりません。また、再婚したという事由だけでは、連れ子の扶養義務が移らないことなどから原則として減額は認められません。

ここで言いたいのは、養育費を減額してほしいと求められたとき、必ずしも応じる必要はないということです。まずは、離婚相手の事情やご自身の事情についてよく話し合うことが大切です。

養育費の減額を請求されたときの対処法

離婚相手から養育費の減額を請求されたときには、次のようなステップで対処にあたります。

ステップ1:法律の専門家に相談しながら、話し合いで決める

養育費の金額を決めなおすには当事者同士で解決するには難しい問題が含まれ、専門的な知識も必要になります。たとえ「減額されてもやむをえない」と思うときでもすぐに応じるのではなく、法律相談を受け妥当な金額を算出してもらいましょう。お近くの法テラスで、利用の要件を満たす場合は1つの問題につき3回まで無料で法律相談を受けることができます。

なお、話し合いの結果は書面に残し、公正証書の作成も検討しましょう。執行許諾文言付公正証書であれば、養育費を支払ってもらえない場合には、相手の財産を差し押さえるなどの手続きを利用することができます。

ステップ2:養育費減額調停

ステップ1の話し合いでまとまらないときは、家庭裁判所に養育費の減額調停を申し立てます。離婚相手が申し立てるかもしれません。調停は、1ヵ月に1度くらい開かれ、成立するまでに3ヵ月ほどかかります。裁判官または家事調停官と民間から選ばれた2人の調停委員による調停委員会が、適切な解決ができるように考えてすすめてくれます。申し立てには収入印紙や切手代などが発生します。

ステップ3:養育費減額審判

ステップ2の調停でもまとまらない場合は、自動的に審判に移ります。審判では、裁判官がそれまでの話し合いの内容に基づきながら養育費減額を判断します。ステップ2までは、最終意思の決定権が当事者にあったのに対し、ステップ3となる審判までくると、裁判所によって意思決定がなされる点を理解しておく必要があるでしょう。

養育費の減額を受け入れなければならない場合もある

ここまで見てきたように、養育費は不当に減額されないように注意する必要があります。しかし、以下のようなお互いの状況の変化によって養育費の減額が認められる場合もあります。

・元夫が再婚して子どもが生まれた、または再婚相手の連れ子と養子縁組をした
元夫には、新たに生まれた/養子縁組をした子に扶養義務が生じます。扶養人数が増えたぶん、養育費についても見直しが認められる可能性があります。

・元夫の収入がやむを得ない事情により激減した
元夫が自己都合の退職や転職ではなく、リストラや病気などによって失業し、それによって収入が大きく減ってしまった場合などは養育費の減額が認められる可能性があります。

ただし、有価証券などの金融資産、不動産資産の有無であったり、本人の稼働能力などが総合的に評価されるため、実際に減額が認められるかどうかは専門家でないと判断が難しいです。

・自身が再婚して、再婚相手と子どもが養子縁組をした
この場合は、自身の再婚相手が子どもに対して第一次的な扶養義務を負うことになり、それによって元夫の減額が認められる可能性があります。

・自身の収入が大幅に増えた
離婚時の取り決め内容にもよりますが、減額が認められるケースがあります。

養育費は取り決めた金額が受け取れなくなる場合もある

養育費は、離婚相手の状況が変化することで減額に応じなければならない場合もあるため、いろいろな情報を得て、ご自身の生活設計を考えていくことが大切になります。養育費についての取り決めを書面に残しておくと、養育費を払ってもらえないときに保証する「養育費サービス」を利用することもできます。利用料を補助している自治体もあるので、ホームページや窓口で確認してみましょう。

 

また、各自治体のひとり親家庭支援窓口では、さまざまな支援を行っています。困ったことがあるときは、一人で悩まず問い合わせて相談してみましょう。