2020年、養育費の不払いに悩む人を守るために法律が改正されたことをご存知でしょうか。どんな内容に変わったのか、きちんと養育費を受け取れるようにするにはどんな行動を取ればよいのか解説していきます。

「養育費を支払ってもらえない!」不払いトラブルは多発している

養育費は、離婚後に子どもと離れて暮らすことになった親から、子どもを引き取って育てていく側の親に対して、子どもの成長のために必要なお金として渡すものです。養育費の支払いは義務とされています。でも「決めた約束を相手が守ってくれない」「お金の振込が止まってしまった」など、きちんと受け取れない人も少なくありません。

国が行った調査によれば、母子家庭で養育費を継続して受け取り続けられているのは4人に1人、半数以上は離婚後1回も受け取れていないことになります。
【参考】厚生労働省「平成28年度全国ひとり親世帯等調査」

養育費を受け取れない理由は主に3つ

なぜ、養育費を受け取れていない人が多いのでしょうか。それには、次のような理由が考えられます。

不払いが多い理由1:離婚前に養育費についての取り決めをしていない

養育費をいくらに設定するか、いつどうやって支払うか、いつまで支払い続けるかなど、離婚後のお金について2人で話して、お互いに納得できるルールを決めておく必要があります。

とはいえ、「もう相手の顔も見たくない」「どうせ相手は支払わなさそう」といった考えから、そもそも話し合いをしていないケースも多く、本音は養育費を請求したくてもできないまま離婚してしまう方もいます。先述の国の統計では、事前に取り決めができていたのは母子家庭の約4割にとどまりました。

不払いが多い理由2:相手が約束を守らない

しっかりとルールを決めていたはずなのに、相手がそれを守ってくれないケースもあります。毎月決まった日に決まった金額を振り込む約束だったのに、あるとき突然それが途絶えてそのまま音信不通になる、などです。養育費を前提に生活をやりくりしている場合は、急になくなったら困ってしまいます。

不払いが多い理由3:口座情報などがわからず差し押さえができない

相手が約束を守らない場合、裁判所を通じて強制執行、つまり財産の“差し押さえ”を申し立てることができます。強制執行とは、相手の給料や財産から強制的に養育費の分を回収する強力な手段です。

ただ、これには相手の銀行口座や勤務先がわかっていないと利用できないという欠点がありました。詳しくは後述しますが、この決まりは2020年の法改正で変わっています。法律が改正される前は、相手の勤務先や銀行口座の情報を得ることが難しく、相手が完全に行方をくらませてしまうと、およそ泣き寝入りするしかない状況だったのです。

養育費の不払い対策をおさらい

養育費をきちんと受け取るためには、先述の「受け取れない理由」に対して、1つひとつ対策をしておく必要があります。どんな対策が有効なのか、順番に見ていきましょう。

不払い対策1:まずは話し合いによる「ルール決め」が基本!

養育費についてのルール決めをしておきましょう。できれば離婚する前に済ませておくのが理想です。養育費の金額は法律で決まっているわけではなく、2人の合意次第です。金額設定に困ったら、裁判所が公開している「算定表」を目安にするとよいでしょう。

不払い対策2:話し合いがまとまったら「公正証書」として残しておく

話し合いがうまくいった場合は、口約束で終えるのではなく書面に残しておきましょう。合意内容を漏れなく記録しておくことで、あとで「忘れた」「そんなこと言っていない」といわれてトラブルになる事態を避けられます。

自分で紙に記録してもいいのですが、できれば「公正証書」(こうせいしょうしょ)を作成するのが理想です。公正証書は、公証役場に行って公証人と呼ばれる法律のプロに書いてもらいます。

手間はかかりますが、原本は公証役場で保管されるため紛失等の心配がありませんし、裁判所の確定判決と同等の法的効力をもった書類が作れます。加えて、強制執行の文言付きの公正証書を作成しておけば、相手が養育費を払ってくれなかったときに差し押さえることができます。

不払い対策3:話し合いがまとまらなかったら「調停」を申し立てる

互いに納得いく答えがでない、そもそも会話できる状態にないなどの場合は「調停(ちょうてい)」という手段が取れます。調停は裁判所で行いますが、裁判とは違います。

話し合いがうまくいくように、裁判官や民事調停館など法律の専門家が第三者としてあいだに入り、双方の意見を聞いたうえで結論が出せるよう導いてくれる仕組みです。離婚相手と会わずに済ませることもできます。調停が成立すると、調停調書という書面に合意した内容がまとめられます。

不払い対策4:ルールを決めて書面に残せたら「養育費保証」で盤石に

「公正証書/調停調書を作成したけど不安」という方は、その書面を使って養育費保証サービスに申し込んでおくのもひとつの方法です。

養育費保証とは、保証会社と契約して保証料を支払っておくことで、離婚相手が養育費を支払ってくれなくなったとき、代わりに保証会社が立て替えて支払ってくれるというサービスです。

相手が支払ってくれなくてもお金が途絶えないので安心ですし、不払いがあった時の養育費請求も自身で行わなくて済みます。そのため、養育費にかかわるストレスを極力減らしたいという方には、ぜひおすすめです。

 

不払い対策5:相手がルールを守らなかったら「強制執行」で対応

もし相手が約束を破って養育費を払ってくれなくなったら、まずは自分で連絡して支払ってくれるように伝えるか、契約している養育費保証サービスの保証会社から連絡してもらうことになるでしょう。

何度も伝えているのに支払ってくれない場合は、公正証書、調停調書、裁判の判決書など公的な書面があれば、最終手段として裁判所で強制執行(差し押さえ)の申し立てをすることができます。差し押さえでは、裁判所が相手の給与・貯金・財産などから強制的に養育費の分を取り立てることができます。

2020年4月から不払いを防ぐため法律が強化!

養育費を受け取れていない人が多い現状を改善するため、2020年4月、改正民事執行法が施行されました。相手が「逃げ得」にならないよう、受け取る側に有利な方向に変わっています。詳しく見てみましょう。

民事執行法の改正点

・強制執行(差し押さえ)が進めやすくなった
強制執行するときは、相手の勤務先(給料)や銀行口座(預金)など財産のありかがわかっている必要があります。今回の法改正があるまでは、相手が音信不通になってしまった場合、自力で突き止めない限りは泣き寝入りせざるを得ませんでした。

それが今回の法改正で、裁判所に申し立てれば、金融機関、市町村、日本年金機構、登記所などから相手の情報を取得できるようになりました。ただし強制執行である以上、養育費についての記載がある公正証書や調停調書が必要です。

また、相手を裁判所に呼んで財産の情報を話してもらうための手続きを「財産開示手続」といいますが、これも今回の法改正で、養育費に関する公正証書があれば利用できるように変わっています。

・財産開示をしなかった場合の罰則も強化
相手が財産開示手続を拒否した、裁判所に来なかった、ウソの情報を教えたといった場合の罰則が強化されました。今後は「6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」という刑事罰の対象になります。

養育費を受け取る側に有利に変わってきている

養育費の不払いをなくすためのしくみは少しずつ充実してきています。今後も不払いをなくすための法改正が検討されています(2021年1月現在)。「自分は受け取れない」と思い込まずに、受け取るためにできることがないか探してみましょう。

養育費で悩む人を減らすため国や自治体も動いている

養育費を確保できるようにするため、国や自治体ではさまざまなサポートを用意しています。「もっと早く知っておけば……」とならないように、情報収集をして、うまく利用しましょう。

活用したい仕組み1:養育費の取り決め漏れを防ぐ“合意書のひな形”

養育費について話し合うことが重要と聞いても、何を決めればよいのか困ってしまう方もいるでしょう。法務省のホームページでは、「子どもの養育に関する合意書作成の手引きとQ&A」というパンフレットと、決めた内容を記録しておく「合意書」のひな形が公開されています。

ひな形の空欄を埋めていくだけで、取り決めが必要な内容をカバーできるようになっていますので一度チェックしてみましょう。

活用したい仕組み2:公正証書や養育費保証の費用補助

公正証書の作成料や、養育費保証サービスの保証料は、離婚直後のひとり親にとって金銭的な負担になってしまうこともあります。一部の自治体では、これらの費用を補助する支援を行っています。申請すれば自己負担なしで養育費を確保するための対策ができる場合もあるので、お住いの自治体で確認してましょう。

 

活用したい仕組み3:養育費請求のための裁判費用を貸付

裁判に発展しそうだけど費用が足りないという場合、無利子または低利子でお金を借りられる制度があります。それが、国が行っているひとり親のための「母子父子寡婦福祉資金貸付」です。養育費確保のための裁判費用以外にも、スキルアップの費用、子どもの学費などさまざまな目的で借りられますのでお金に困ったら調べてみましょう。

活用したい仕組み4:自治体が設けている相談窓口

離婚して養育費を請求するとなると、「調停」「強制執行」など法律用語がたくさん出てきて難しく感じてしまうかもしれません。そんなときは、自治体の無料法律相談、母子家庭等就業・自立支援センターや養育費相談支援センターの相談窓口などを利用すれば、費用を気にせず専門家に相談することができます。

まとめ:泣き寝入りせずに養育費を確実に受け取ろう

養育費を受け取れるようにする方法はいくつもあります。難しいと感じたら、専門家に頼ることもできます。「うちは無理だ」とあきらめてしまうのではなく、子どもの今後のためにもきちんと相手に請求しましょう。