もし、あなたが小さな子どもと二人きりで、新しい生活を始めたばかりのシングルマザーだったとしたら、これから子どもを1人で育てていく責任感を覚える一方、将来への不安を感じるかもしれません。なかでも、これから必要となるお金のこと、特に子どもの教育費は気がかりなのではないでしょうか。公立か私立かで大きく違う教育費、現在どれだけかかっているのかを見ながら、漠然とした不安を取り除いていきましょう。

小学校から大学まで、教育費は公立と私立でどれだけ違う?

(画像=William W. Potter/stock.adobe.com)

小学校から高校までの1年間の学習費の平均金額は、次の通りです。学習費には、学校で必要な費用だけでなく、塾や習い事、本や机の購入費なども含まれます。

公立と私立における1年間の学習費比較

公 立 私 立
小学校 32.1万円 159.9万円
中学校 48.8万円 140.6万円
高校(全日制) 45.7万円 97万円

(文部科学省「2018年度(平成30年度)子供の学習費調査」より)

また、大学の入学費用及び在学費用の平均金額は、次の通りです。

国公立と私立における大学の入学、在学費用比較

国公立 私立文系 私立理系
入学費用 71.4万円 86.6万円 84.5万円
在学費用 107万円 157.6万円 184.3万円

(日本政策金融公庫「2019年度(令和元年度)教育費負担の実態調査結果」より)

 

進路別の教育費の合計額は?

子どもが進む進路によって、教育費の合計額はどれだけ違うでしょうか。前述の金額から、概算の合計額を計算してみます。多くのケースが考えられますが、大学教育まで受けさせることとして、小学校から大学までずっと公立の場合、大学から私立の場合、高校から私立の場合、中学校から私立の場合を見てみましょう。

・大学までずっと公立:約975万円

・高校まで公立、大学から私立文系:約1,193万円
大学から私立理系:約1,298万円

・高校から私立、大学は私立文系:約1,346万円
大学は私立理系:約1,451万円

・中学から私立、大学は私立文系:約1,622万円
大学は私立理系:約1,727万円

あくまで平均値ではありますが、大学までの教育費になると、ずっと公立であってもトータルで1,000万円近くのお金がかかるということになります。また、早くから私立に通った場合の教育費は、公立に比べ、数百万円多くかかります。必要になる時までに用意できればいいのですが、それにしても大きな金額であることがわかります。

これだけの金額をどうやって用意する?

この金額を見て、さらに心配が増してしまったかもしれません。ですが現在は、収入が少ない家庭の子どもでも等しく教育を受けられるように、公的な支援制度が増えています。そのいくつかをご紹介しましょう。どれも、後で返還する必要のないものです。

児童扶養手当

児童扶養手当は、シングルマザーの世帯の子どもが18歳になって最初の3月31日までの間、支給される手当金です。対象は年収が365万円までの世帯で、収入に応じた金額が支給されます。支給額は、月額1万120円から4万2,900円までです。年収160万円までの場合は、最大額の4万2,900円が支給されます。

高等学校等就学支援金

高等学校等就学支援金は以前よりありましたが、公立高校も私立高校も同じ金額だったため、私立高校は実質無償とはなっていませんでした。しかし2020年4月より制度が変わり、世帯年収が590万円までであれば、子どもが私立高校(全日制)の場合でも、授業料が年間39万6,000円まで支給されるようになります。その結果、私立高校に通う場合でも授業料が実質無償となります。

高校生等奨学給付金

高校生等奨学給付金は、低所得世帯の授業料以外の教育費支援として給付されます。給付対象は、生活保護受給世帯と住民税非課税世帯です。住民税非課税世帯の年収は、シングルマザーでおおよそ204万円までです。給付額は、生活保護受給世帯で公立の場合は年額3万2,300円、私立の場合は年額5万2,600円、住民税非課税世帯で公立の場合は年額8万2,700円、私立で9万8,500円です。

高等教育の修学支援新制度(授業料等減免)

高等教育の修学支援新制度は、2020年4月より始まる制度で、低所得世帯の学生に対し、大学などの入学金・授業料を免除や減額するものです。対象者は、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯の学生です。世帯の収入により、最大で国公立大学の場合は入学金約28万円、授業料は年額約54万円、私立大学の場合は、入学金約26万円、授業料は年額約70万円が免除されます。

高等教育の修学支援新制度(給付型奨学金)

高等教育の修学支援新制度は、授業料等減免と同様の条件で、奨学金を受け取れる制度です。最大で、国公立大学の場合は、自宅生で月額2万9,200円(生活保護世帯では3万3,300円)、自宅外に住む学生は月額6万6,700円が支給されます。私立大学の場合は、自宅生で月額3万8,300円(生活保護世帯は4万2,500円)、自宅外は月額7万5,800円です。

収入が少なくても高等教育を受けられる環境は整いつつある

このように、現在では収入が少なくても高等教育が受けられる制度が整備されてきています。加えて、15歳になって最初の3月31日までに支給される児童手当(3歳以上は月額1万円)も手を付けずに積み立てていけたら、収入が少ない人でも教育費の心配は少なくて済みます。

ただし、児童手当以外の制度は収入制限があります。人によっては利用できない場合もあるでしょう。またこの先、予想外の出費があるかもしれません。並行して少しずつ貯金していきたいですね。利用できる制度は積極的に利用して、大切な子どもの将来のためにしっかり備えていきましょう。