シングルマザーになると、1人分の収入でやり繰りせざると得なくなるため、職業を見直す人も少なくありません。そんなとき「看護師」という職業は、安定した収入を得るために思い浮かぶ職業のひとつではないでしょうか。シングルマザーになってから、看護師を目指しはじめたという人が多いのも納得です。
今回は、これから看護師を目指そうとしているシングルマザーへ向けて、資格取得方法や知っておくべき働き方などを紹介します。看護師になって安定した収入を得たい。でも子どもとの時間も大切にしたい……と考えている人は、参考にしてみてください。
目次
どうして看護師はシングルマザーから人気の職業なの?
なぜ、看護師という職業を目指すシングルマザーが多いのでしょうか。漠然と看護師を目指す前に、先輩シングルマザーたちが看護師を目指した経緯を知っておきましょう。
看護師が人気な理由1:他の職業よりも給与が高いイメージがある
看護師を目指すシングルマザーが多い理由としてまず挙げられるのが、「他の職業よりも給与が高いイメージがある」というもの。看護師=高給というイメージは、世間でも一般的なものなのではないでしょうか。
1人で子どもを養えるだけの収入を維持しないといけないというのは、かなりのプレッシャーになって当然です。看護師は国家資格ですので、他の職業に就くよりも高い水準で安定した収入が得られるというイメージを持っている人が多いようです。後述しますが、実際に収入は一定以上であり、男性と同じくらいの収入を得たいと考える人にとっても、看護師は魅力的な職業なのです。
看護師が人気な理由2:手に職がつく
シングルマザーになって、自分1人で自分を含め家族が生活できるだけの収入を得なければいけなくなったとき、「手に職がない」と焦る人も少なくありません。資格や経験がなくても就ける職業はたくさんありますが、やはり専門的な職業に比べると給与が少なくなるケースが多いです。
しっかりと収入を得られる職業に就きたいという考えから、手に職がつけられる「看護師」を目指す人も多いのです。
看護師の給与って本当に高いの?
看護師という職業に対して、給与面において魅力を感じているシングルマザーも少なくありません。実際のところ、看護師は本当に給与の高い職業なのでしょうか。
女性の給与平均と比べれば年収で100万円ほど高い
看護師は、働き方や職場によって大きく給与が変動する職業です。政府の統計である平成元年の「賃金構造基本統計調査」によれば、男女すべてを対象とした全職種の平均年収が500.7万円なのに対し、看護師の平均年収は482.9万円と、実は全職種の平均年収より少し下回っているのです。
ただ、女性だけの平均年収で見ると、全職種が388.0万円に対し、看護師は481.4万円と約100万円高い結果となっています。また、30代に差し掛かるくらいの年齢までは、男女すべて含めた全職種の平均年収の中で、看護師の年収が頭ひとつ飛び出ています。比較的若い年齢の人や女性にとって、看護師は稼げる職業であると見て間違いなさそうです。
「夜勤あり」なら、さらに給与はアップ
看護師は、ご存知のとおり夜勤もある職業です。先ほど看護師の平均年収をご紹介しましたが、実は夜勤をするかしないかによって、年収にも大きな違いが現れます。
2019年病院看護実態調査(日本看護協会)によると、看護師が受け取る毎月の給与のうち、約3.5~5万円ほどは夜勤手当となる結果に。年収にすると、40~60万円ほどが夜勤手当分となるので、かなり大きなウエイトを占めていることがわかります。
夜勤はシングルマザーにとって大きな負担となりますが、看護師はその夜勤をこなしてこそ高い収入が得られる職業のようです。
シングルマザーが看護師を目指す方法は
これから看護師を目指すシングルマザーに向けて、夢を実現する方法をご紹介します。お金の補助を受けられるような制度もあるので、賢く利用して看護師への道を歩んでいきましょう。
「高等職業訓練促進給付金等事業」制度を利用して看護学校へ通う
シングルマザーになってから看護師を目指すとき、まず悩みの種となるのが“看護学校の学費”ではないでしょうか。貯金がそれほどない状態で離婚に至り、「看護師にはなりたいけれど、看護学校の学費が用意できないから……」と看護師への道を諦めようとするケースもあります。
シングルマザーになってから看護師を目指す人に知っておいていただきたいのが、「高等職業訓練促進給付金等事業」の制度。母子家庭の母・父子家庭の父が、看護師・介護福祉士などの資格を取得するために、1年以上養成機関へ通う費用の負担軽減を目的とした制度です。
20歳未満の子どもを扶養中のシングルマザーは、この制度の対象。授業料の負担軽減を目的とした「高等職業訓練促進給付金」は、市町村民税非課税世帯へ月額100,000円、市町村民税課税世帯へ月額70,500円支給されます。支給期間は、終業期間の全期間(上限4年)です。
また、課程修了までの最後の12ヶ月については、支給額がアップします。市町村民税非課税世帯へは月額140,000円、市町村民税課税世帯へは月額110,500円の支給となります。
養成機関へ入学するときの負担軽減を目的とした、「高等職業訓練終了支援給付金」もあります。市町村民税非課税世帯へは50,000円、市町村民税課税世帯へは25,000円が修了後に支給されます。
看護学校へ通う年数は最低でも3年。ライフプランも考えたい
看護師になるためには、看護学校へ通って国家試験の受験資格を得る必要があります。看護学校は、看護師を目指すためのカリキュラムを設けている学校であればどこでもよいでしょう。専門学校だけでなく、4年生大学や短大でも看護師国家試験の受験資格を取得することができます。
看護師になるために必要な修業年数は原則3年。どの種類の学校へ通っても、最低3年間は看護学生でいなければいけません。4年生大学の看護学科に入学すれば、プラス1年の4年間学校へ通い続けることに。看護師を目指す場合は、“何歳までに看護師として働けるようになっておきたいのか”から逆算して、入学の手続きを行うようにしましょう。
オーバーワークになる可能性も。周囲のサポートについても確認を
看護師を目指すには、看護学校への通学が必要です。ただ、高校を卒業してそのまま学生を続けている若者とは違い、シングルマザーは子どもとの生活を維持しながら看護師への道を進んでいかなければいけません。
実際に、シングルマザーになってから看護師を目指した人の体験談を聞いても、みな口をそろえて「忙しかった」と言います。一人で仕事・子育て・家事をしないといけないだけでも大変ですが、その上で看護学生となれば、勉強のための時間も必須となります。
子どもが小さい場合は、子どもを保育園へ送ってそのまま自分も学校へ行きます。夕方までみっちり授業を受けたら、保育園へ寄って子どもを引き取り、それから夕食の準備をして食べさせ、子どもをお風呂へ入れて寝かせたら、家事の残りと実習のレポートやテストの復習などを行わなければいけません。
ただでさえ忙しいシングルマザーとしての生活に、一般の学生よりもハードな看護学生としての生活がプラスされるため、オーバーワークになってしまう可能性は高いと言えます。実際の生活のシミュレーションし、自分の体力や周囲のサポートの可能性についても確認をしておきたいところです。
シングルマザーが看護師として働く上でぶつかりやすい壁
晴れて看護師資格を取得し、看護師として働ける日がやってきたら、ここからあらためて、働き方と日々の生活スタイルをつくっていくことになります。このとき、シングルマザーの看護師がぶつかりやすい壁を知っておきましょう。看護師は資格職ですから、さまざまな選択肢があります。よく検討して、最適な仕事と生活のスタイルを見つけていきましょう。
夜勤をするのかしないのか
給与面のところでもお話ししたとおり、看護師は夜勤をするかしないかによって給与が大きく変動します。男性並みに近い給与を受け取ろうと思うなら、夜勤は避けられないのが事実。しかし、夜中に子どもの面倒を見てくれる人や場所がなければ、シングルマザーが夜勤をするのはかなり難しいことだと言えます。
夜勤をして収入をアップさせたいと考える人は少なくないですが、自分が仕事をしている間に子どものケアをどうするのか、答えが出てからでないと、夜勤は難しいでしょう。
子どもの行事に参加できないことも
どういった医療機関で働くかにもよりますが、忙しい病院や突然の呼び出し・残業などが多い病院などで働く場合、子どもの行事に参加できないケースも珍しくありません。シングルマザーであるため、「自分がしっかり子どもの行事にも参加してあげたい!」と考える人も多いですが、看護師として働く以上その思いが実現できない場合もあります。
看護師として働いているシングルマザーの中には、「子どもに寂しい思いをさせているのでは……」と悩む人も少なくありません。しっかりと愛情を持って子どもに接していれば気持ちは伝わるものですが、こういった悩みを持つ人が多いことも1つの情報として頭に入れておくといいでしょう。
シングルマザーの看護師が選ぶべき職場とは
シングルマザーが看護師として働く上で、もっとも慎重にならないといけないのが「職場選び」です。シングルマザーが働きやすい職場のポイントをまとめてみました。
職場選びのポイント1:終日対応可能な託児所や保育所を持っている病院
仕事も子どものことも大切にしたいという人には、院内保育の設備を持っている病院がおすすめです。入園可能な保育園が見つからない場合や近くに託児施設がないという場合はもちろん、夜勤をしたい人にも最適。この条件がそろっていれば、病棟で働くことも可能となります。
病児保育を設けている病院なら、子どもが体調を崩したときでも仕事に支障をきたすことがないので、まずチェックしておきたいポイントです。
職場選びのポイント2:実家暮らしなら「夜勤専従」という選択肢もあり
実家で生活をしている場合、両親が共働きであっても夜は子どもを見てもらえるケースがほとんど。こういった環境の中で生活できているのであれば、シングルマザーであったとしても夜勤で働ける可能性が格段にアップします。
実家の両親と相談して、夜間の子どもの問題がクリアできるのであれば、いっそのこと夜勤専従にシフトしてしまうのも1つの方法です。日勤よりも少ない勤務日数で、収入も多くなりますから、実家暮らしの人にしかできない効率のよい働き方になるでしょう。
職場選びのポイント3:デイサービスなど看護師を必要とする福祉施設
子どもとの時間にも重きを置きたいという人は、デイサービスなど看護師を必要とする福祉施設も選択肢に入れておきたい職場の1つでしょう。24時間対応の介護施設となると夜勤が発生するので難しいですが、昼間だけのデイサービスなら、子どもが保育園や学校へ行っている間のみ仕事をすることができます。
残業や夜勤がなく、土日祝を休みにしているところもあるので、学校行事や子どものイベントはほぼ参加できるでしょう。給与面とのバランスを見ながら、職場に選ぶかどうかの判断をしてみてください。
職場選びのポイント4:透析や検診センターなどの看護師
夜勤は厳しい、でも給与面も譲れない。そんな人には、透析や検診などの看護師業務がおすすめです。クリニックなどに比べ給与が高めである上に、残業や夜勤が少ないことから、シングルマザーから人気の職場だと言われています。
中には夜勤や土日の勤務を求められるケースもあるので、勤務条件についてはしっかりと確認をしておきましょう。
まとめ:シングルマザーでも看護師は目指せる
資格を取得するまでにもエネルギーが必要な看護師という職業ですが、安定した給与が得られる上に、相当なやりがいが感じられるのは言うまでもありません。転職の候補として看護師を目指し、人生を豊かなものに変えてみませんか?