『20歳からはじめる 女性の「幸せキャリア」のつくり方』より一部抜粋

【厳選】ママスマ編集部 おすすめ書籍を紹介

新たな生活に踏み出したシングルマザーの私たち。しかし、足元を見ればお金、教育、仕事、養育費などなど、不安と悩みは尽きません。それらの悩みに対し各方面の専門家、そして先輩たちが、書籍を通してたくさんの知恵を提供してくれています。ママスマ編集部では、そんな知恵とアドバイスの詰まった書籍を厳選、内容を抜粋して紹介してまいります。

絶対に仕事を辞めてはいけない理由 その1/経済

長い目で人生設計を考える

いまは正社員で働いているけれど、忙し過ぎて自由がないから転職したい。また、子どもができたら育児に専念し、時間に余裕があるパートや派遣に切り替える、と考えている人もいるでしょうか。

でも、生涯に受け取れる賃金は、働き方によって大きく変わります。「2020年には年収400万円未満の世帯が6割を超える」(三菱食品マーケティング本部調査 )と予測される中、収入はライフスタイルや感情にも影響してきます。長い目で人生設計を考えてみる必要がありそうです。

生涯賃金の差は1億円!!

働き方によって生涯賃金がこれほど違うという、驚きの結果です。

①出産後も正社員として働き続けた場合  2億461万円
②出産後に非正社員になって働き続けた場合  1億377万円
 ※ファイナンシャルプランナー氏家祥美さんの試算
 ※いずれも、32歳で一度出産し、定年まで働き続けた場合
 ※①は、20代後半で400万円程度の年収がある想定
 ※②は、非正規社員になってからの年収を300万円程度の想定

非正規の金額が低いのは、定期昇給、賞与、退職金など、正社員ならもらえる可能性が高いものがもらえないことが多いためです。

出産の時期も正社員として働き続けていれば、健康保険や雇用保険を財源として出産手当金、出産育児一時金、育児休業給付などが支給されます。

非正規の場合は、定年まで仕事が続けてあるかどうか、も不安な点です。

どれも現時点でわかっていること。「こんなはずではなかった」と言わないように、目を開けて。

大変な時期は長くはない

育児休業をとって復帰したばかりの女性正社員の毎日は忙しいし、お金もどんどん出ていきます。

身体は出産前と同じくらい大変なのに、時短勤務で復帰した場合は収入がグッと下がったように感じ、疲れてイライラすると「ベビーシッター代のために働いているの?」「子どもに寂しい思いをさせてまで働く意味があるの?」という声もよく聞きます。

「今」だけを考えると、割に合わないと思ってしまうのでしょう。でも、子育てに手間がかかるのも、保育にお金がかかるのも、3歳がピークだといわれています。私の経験からも、3歳を過ぎた子どもの笑顔は何よりの応援団ですし、お手伝いだってできるのです。

長い「仕事人生」のほんの数年。「正社員」は、簡単に手放してしまったら後ではなかなか手に入らないのが現実です。「この大変な時期をどう乗り切っていくか」という方向に舵を切った方が、将来的にベストな選択になる可能性が高いと思います。

絶対に仕事を辞めてはいけない理由その2/心理

精神的な満足

2つ目は、精神的な満足です。育児などで仕事を中断して、または働き方を調整したとして、あなたは自身の「欲求」を満たすことができるでしょうか。

サザエさんのお母さんが笑っているのは…

アニメ「サザエさん」のお母さんは、48歳だそうです!!

「母の日のプレゼントは何がいい?」と聞かれて「カツオとワカメが幸せであれば十分」と静かに笑っています。

新聞での連載開始は1946年。戦後すぐ、今から70年以上前に生まれたキャラクターです。

マズローの「欲求5段階説」によれば、人間は「生理的」「安全」「所属」「承認」「自己実現」と欲求のレベルを上げていき、下位の満足は忘れてしまう(ありがたみを忘れる)のだそうです。

戦後すぐですから、「安全」のありがたさをかみしめ、家族に「所属」できることでサザエさんのお母さんは十分に満足していたのかもしれません。

でも、現代の私たちは残念ながらそうはいきません。「所属」の場は家庭から社会に広がりました。「どの会社にいるか」「正社員か非正規社員か」というランクづけも重要であり、そこでのポジションや仕事ぶりを評価されるかどうかも、心の満足、そして心の安定に大きく影響しています。

リアルな「承認欲求」

仕事をして手に入るのは、お金だけではありません。

知識や技能を身につける、経験を積む、視野が広がるなどの成長のほか、上司からの評価やお客様からの感謝の言葉など、「認めてもらうことのうれしさ」も大きいものです。就職して一度はその高揚感を体験した人が仕事を辞めて、または働き方を調整して子育てや介護の時間をつくったとしても、精神的に満たされることができるでしょうか。「これでいい」と思えるでしょうか。

「今の私は社会に必要とされていない」など深刻に悩む人も少なくないのです。

また、夫に扶養されることで家庭内に生まれる微妙な上下関係と居心地の悪さに、多くの人は辞めて初めて気づきます。

結婚して専業主婦になった私がそうでした。大好きな人と結婚したはずなのに「この小さな世界で私はずっと生きていくのか」「学生時代は何でも言えたのに・・・」と、1人悶々としていました。

「ワンオペ育児」がつらいのは、時間や体力だけではありません。子育てしていなければあるはずだった自分の姿。仕事で活躍し、賞賛される自分の輝かしい姿が、鏡のようにテレビや雑誌、ネットの中にリアルに見えることにあるのかもしれません。

絶対に仕事を辞めてはいけない理由その3/家庭内バランス

夫が家事をしなくなる

3つ目の理由は、実は夫が家事をしなくなること。

やってくれる人がいれば、夫はわざわざ家事をしない

最近では、妻が働いていれば男性が家事や育児をすることも珍しくはなくなりました。それでも、統計上はまだまだです。

「共働きの生活時間」から家事・育児にかかる時間を統計で見ると、妻が4時間54分に対して、夫はたったの46分!! (※総務省「平成28 年度社会生活基本調査」より)

結婚当初。妻が正社員で働いていれば、夫も家事をやることが多いものです。それなのに、出産を機に妻が仕事を辞めたり時間に余裕のある仕事に換わってしまったりしたら、あっという間に「家事をまったくしない夫」に逆戻り。妻の家事負担が増え続けます。

妻が正社員で産休、育休中でさえ「君、毎日家にいるよね、と夫が家事を全くしなくなったので、1人でてんてこ舞い。復帰がとても不安…」という女性も多いのです。

もちろん、夫に家事をさせることだけが目的ではありません。

でも、育児や介護で簡単に仕事をペースダウンしてしまった場合、「手が離れたら再就職」と妻が考えていても「いつの間にか家事をしなくなった夫」がパートナーでは、それほど簡単にはいかない、と悔しがっている先輩がいることも知っておいてくださいね。

自分の望む生き方を手に入れるために

警視庁の女性幹部の友人が、こんなエピソードを教えてくれました。

出産後、子育てをサポートしてくれるはずの母親が体調不良で入院。保育園は、すでに申し込み終了。育休の終わりは2か月後!!さあ、どうする?

そこで彼女が始めたのは「ご近所ピンポン作戦」。赤ちゃんを抱いて「この子の面倒を見てもらえませんか?」とご近所回り。なんと、43件目で「少しの間ならいいですよ」と言ってくれる人に遭遇し、母親の退院までの期間を乗り切ったそうです。

「絶対に辞めないと思っていたから、こんな非常識なことができたのかしら」と、子どもが中学生になったいまでは笑い話になっています。

もちろん、夫の転勤などの条件や家庭の事情によって「正社員にはこだわらない」という場合もあります。独立起業も考えやすい環境になっています。どんな働き方をするにしても、長期的なリスクを知ったうえで決断できるといいですね。

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<著者> 響城 れい(ひびき・れい)
株式会社ダブルビーイング代表取締役社長。一般社団法人日本シェアハウス協会理事。ワーク&ライフイノベーター。コミュニケーションコンサルタント。セクハラ対策センター顧問。神戸大学卒業。兵庫県芦屋市出身。ハウスクリーニング運営20年、3,000件以上を施術。「人生を変える掃除講師」として全国の160以上のシルバー人材センターの会員研修を担当。研修実績は警視庁、県警本部、東京ガス、三菱地所、越前信用金庫など。地域密着型家事代行サービス「ワークス」を東京、千歳、仙台、唐津で監修。中国の介護会社「慈愛嘉養老服務」で「日本のおもてなし」研修講師。定年退職前の男性社員を対象に、家庭に居場所を作るための「家庭掃除・収納士資格認定講座」をスタートさせた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)