離婚についての話し合いを進めているなかで、養育費の金額や支払い方法などについて、なかなか相手と折り合わない場合は「調停」という手段を取ることができます。養育費の調停とはどんなものなのか、また何をすることができるのか、その進め方やその後のトラブルへの対処法とあわせて解説します。

離婚するなら養育費の取り決めを確実に

子どもがいる夫婦が離婚する場合、養育費についての取り決めは確実に行っておきたいところです。「相手ともう関わりたくない」「相手に支払う意思がないと思った」という理由で話し合いをしないままにしてしまう方もいますが、子どもには養育費を受け取る権利があります。

厚生労働省の調査によると、きちんと話し合い、合意した約束を守ってもらえたことができた家庭では、平均して月4万円程度のお金を養育費として受け取っています(厚生労働省「全国ひとり親世帯等調査」より)。

ひとり親として子どもを育てていくのは大変なこともありますが、そんな中で毎月数万円でも確実に入ってくるお金があれば、親子ともども安心して次の新しい暮らしに臨みやすくなります。

この養育費の請求は、すでに離婚が成立している方、早く離婚したくて「養育費はいらない」と言ってしまった方、子どもの状況が変わり、今受け取っている養育費の金額を増やしてほしい方なども可能です。

養育費を取り決める方法は、おもに次の4つです。

  • 方法1.話し合い
  • 方法2.調停
  • 方法3.審判
  • 方法4.裁判

養育費は基本的に夫婦2人で話し合って決めることになっています。金額、支払い方法、いつまで支払うのかなどルールを決めて、口約束だけではなく公正証書など書面に残しておくのが理想です。

話し合いがうまくいけばそれで済むのですが、なかには「相手が話し合いに応じてくれない」「話し合ったけれども折り合いがつかず結論が出ない」という場合もあるでしょう。そんなときはあきらめてしまうのではなく、裁判所や弁護士を介することで解決できる可能性があります。

 

話し合いがうまくいかないときは「調停」

話し合いがうまくいかないときは「調停(ちょうてい)」という手段を取ることができます。

調停とは、裁判所において第三者を交えて合意形成を図ること

調停とは、裁判所で当事者間の合意形成を図ることです。裁判所に申立てをして行いますが、裁判と違って裁判官が白黒つけるのではなく、法律に詳しく中立の立場である第三者が間に入って2人の意見がまとまるように調整してくれるようなイメージです。裁判より手続きも簡単で手数料も安く、弁護士などの専門家に頼まず自分で行うこともできます。

実際の調停においては、裁判官1人、調停委員2名が入った状態で、夫婦それぞれの意見や主張を述べあいます。裁判官や調停委員は、養育費はいくらに設定すべきか、夫婦それぞれの収入がどのくらいあるか、子どもの状況など事情や双方の主張をじっくりと聞いたうえで、合意のために必要な助言や解決案の提示などをしてくれます。

夫婦同時に同室で話す必要はありません。1人ずつ調停室に入って意見を述べることもできますし、自分の代わりに弁護士に行ってもらうこともできます。「顔も見たくない」「相手に会うのが怖い」といった場合でも、相手と直接会話することなく進められます。

また、裁判のように公開されることはありませんので、事情を知られるのは当事者と裁判官1人と調停委員2人だけであり、プライバシーに配慮した状態で進められます。

「養育費請求調停」だけでなく、「離婚調停」や「養育費増額(減額)調停」も同様の内容で進められます。

5ステップで進む調停の流れ

調停は次のような流れで進みます。

(1)裁判所で調停を行いたいという旨を伝えて申し込む(申立て)
(2)裁判所から当事者双方に呼び出し状が届く
(3)調停当日、意見を述べる(複数回行われることも)
(4)話し合いの結果、合意に至れば調停成立となる
(5)調停が成立すると裁判の判決と同等の効力がある「調停調書」が作られる

調停の場での話し合いは2回か3回行われ、3ヵ月〜4ヵ月程度で決着がつくのが一般的です。裁判所が遠方などで行くのが難しい場合、今は電話会議システムなどを使った参加もできるようになっています。裁判所に遠隔で参加したい旨を伝えて、どうすればよいか聞いてみましょう。

調停を申立てるために、まずは書類を確認しよう

では、調停を始めたいと思ったらどうすればよいでしょうか。調停を申立てるためには、必要な書類をそろえて裁判所に提出することが必要です。

申立てに必要な書類

  • 申立書とそのコピー1通

申立書は裁判所のホームページからダウンロードできます。記入例も掲載されているので確認しましょう。

▽養育費請求申立書の記入例

(画像=出典:裁判所「養育費請求調停の申立書」書式の記入例)

(画像=出典:裁判所「養育費請求調停の申立書」書式の記入例)

【参考】裁判所 養育費請求調停の申立書

このほか、以下の書類を用意しましょう。

  • 子の戸籍謄本(全部事項証明書)
  • 申立てをする本人の収入がわかる資料:源泉徴収票、給与明細、確定申告書などの写し
  • 収入印紙:子ども1人につき1,200円:申立てに必要な手数料は収入印紙による支払い
  • 裁判所からの連絡に使う郵便切手: 800円〜1,000円程度。何円分必要なのか各裁判所で要確認

どこに提出すればいい?

用意した書類は、基本的には「相手方の住所地の家庭裁判所」に提出します。当事者が合意して決めた家庭裁判所でも構いません。相手の住所を知りたい場合は、市町村の窓口で「戸籍の附票」を取り寄せるという方法があります。

窓口まで持って行ってもいいですが、郵送も可能です。重要な書類なので、郵送の場合は普通郵便ではなく、簡易書留やレターパックなど配達の記録が残る方法で送るのがおすすめです。

弁護士に依頼することもできる

手続きがよくわからない、調停できちんと意見を述べられるか自信がない、専門家の助言が欲しいといった場合は、弁護士に依頼することもできます。費用はかかりますが確実です。

依頼費用は、弁護士事務所や依頼する内容にもよりますが50万円程度ということが多いようです。費用の捻出が難しい場合は、自治体や法テラス(日本司法支援センター)などが行っている無料法律相談を利用したり、後払いや分割払いができる弁護士に依頼したりすることもできますので、あきらめずに調べてみましょう。

【参考】日本司法支援センター 法テラス

調停でもうまくいかなかったら?

調停を行ったとしても、残念ながら100%合意に至るわけではありません。もしも調停で合意できなかった場合はどうすればよいのでしょうか。この場合は、より法的な効力のある手続きに進むことができます。

審判

離婚後に養育費請求調停を申立てている場合は、その調停が不成立となると、自動的に次の「審判」というステップに進みます。この段階になると裁判官の役割が「話し合いがうまくいくように助言する」から「結論を出す」に変わります。なお、離婚調停において、離婚条件のひとつとして養育費について話し合ったが合意できず、離婚調停自体が不成立になった場合は、審判には移行せず、離婚裁判で養育費を含めて争う必要があります。

合意できなくても相手が調停の場に現れなくても、主張や資料などをもとに裁判官が金額などを提示します。審判の結果にもとづいて作成される「審判書」は判決、調停調書、公正証書などと同じような効力を持ちます。審判の結果に納得できない場合は、2週間以内であれば不服申立てすることもできます。

裁判

離婚を求める裁判を起こして、養育費を含めた離婚に関連するお金のことについてもまとめて、裁判の判決を受けるということもできます。

調停で決めた内容を守ってもらえないときは?

調停を通して法的に有効な養育費の取り決めが可能です。しかし、もし養育費について、調停で決めたルールを相手が守ってくれない場合はどうしたらいいでしょうか。その対処法も知っておきましょう。

相手に連絡して督促する

「約束の期日を過ぎているので早く支払ってほしい」ということを相手に伝えます。単純な振込忘れなどならこれで対応できるかもしれません。うまくいかない場合は次のステップに進みましょう。

内容証明郵便を送る

内容郵便証明は、配達の記録だけでなくどのような内容の書面を送ったかまで記録できる郵便です。請求した証拠として残すことができますし、法的措置を辞さない構えを見せることで相手が支払いに応じてくれるようになる可能性もあります。

履行勧告・履行命令

それでも支払いに応じてくれない場合、今度は裁判所から「支払いなさい」という旨を相手に伝えてもらうことができます。特に費用はかかりません。相手が履行命令に応じなかった場合は、10万円以下の罰金を命じることができるようになっています。

強制執行

ここまでのすべてを試してもまだ支払ってくれない場合、最終手段として「強制執行」という方法があります。これは相手の給与や不動産など財産を強制的に差し押さえて養育費に回すようにする強力な方法です。

強制執行をするためには、相手がいまどのような財産を持っているかを明らかにする必要があります。従来この「財産開示手続き」のハードルが高かったのですが、2020年4月から法律が変わり、相手が申告しなかったり嘘の情報を言ったりした場合には「6ヵ月以下の懲役または50万円以下の罰金」が科せられるようになりました。

内容証明郵便の送付から強制執行まで、時間も手間もかかります。自分で行えないという場合は、調停と同じように弁護士に依頼して進めることもできます。

支払ってもらえると思っていた養育費が急に途絶えてしまうと、生活に支障をきたしかねません。強制執行などの方法も取れますが、手間や時間がかかってしまいます。事前に養育費保証サービスなどを利用して、相手からの支払いが途絶えても自分の収入は減らないように備えておくのも1つの方法です。

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まとめ:養育費は子どもの権利!行動を起こして、しっかり確保しよう

子どもと離れて暮らすことになった親には、子どものために養育費を支払う義務があり、子どもには養育費を受け取る権利があります。話し合いができない、お互いが納得いく結論が出ない、そんなときは泣き寝入りしてしまうのではなく「調停」という方法も検討してみましょう。