離婚の理由はさまざま。そして、その後の人生も、選択と決断の毎日です。先行きに不安を覚えたり、失敗して落ち込んだりすることもあるかもしれません。少し煮詰まってしまったら、ここに相談しにいらっしゃいませんか?自ら5人の子どもを育て上げた日本シングルマザー支援協会代表の江成道子さんが、本音で、真剣に、あなたの悩みに答えます。

今回のご相談は、息子さんの気持ちを考えて再婚に踏み切れないママからの相談です。「再婚で経済的な安定を手に入れることは、息子のためでもある」と考える相談者さんに、江成さんは本質的な課題は相談者さんの意識にあると説いていきます。

今月の相談:再婚するべきか…。再婚相手と子どもの距離が縮まらない

2年ほど前からお付き合いしている人との再婚を考えています。私には高校2年生の娘と中学3年生の息子がおり、4人で何度か食事をしたり、出かけたりしたこともあります。

娘は再婚を後押ししてくれていますが、中学3年生の息子はなかなか彼との距離が縮まらず、反対しているようにも感じます。反抗期ということと、10年前に離婚した父親のことがまだ思い出にあるようです。

私は新型コロナウイルス感染拡大の影響でパート先での勤務時間が減ってしまい、これから先の子どもの進学などを考えると、再婚して経済的に安定し、子どもたちを好きな道に進ませてあげたいと考えています。けれど息子のことを思うと、このまま再婚の話を進めて良いものかどうか悩んでしまいます。

▽相談者の情報
・離婚/・現在の職業:パート/・年齢:45
・子どもの数(性別・年齢): 2人(娘16歳、息子14歳)
・経緯:前の夫とは10年前に離婚。平日は金融系企業でパート勤務をしている。月の手取りは15万円ほどあったが、コロナ禍で12~3万円ほどに。養育費は月8万円。

 

回答:再婚を待てるなら3年後を目標に。その間にできることをお伝えします

協会にも再婚のご相談が多く寄せられますが、再婚に何を求めているか問い直すことがよくあります。「自分の人生の幸せのため」なのか「経済的な安定のため」なのか。後者なら、人生の幸せには繋がりにくい再婚となる可能性が高いです。

相談者さんにも何のために再婚したいのか今一度考えていただきながら、なぜ3年後の再婚がベストなのか、その間に何ができるかを解説していきたいと思います。

相談者のお悩み1:自立を前提に仕事と生活を見直して。3年間で約300万円貯金できます

ご相談内容から、再婚すれば経済的不安から解放されると考えているように見受けられますが、「不安」や「寂しさ」を埋めるための再婚は、残念ながらほとんどうまくいきません。なぜかというと、再婚相手本人を見ていないからです。

パートナーを条件で判断しないためにも、やはり女性が経済的に自立していることは大切です。相談者さんはコロナ禍で手取り収入が減ってしまったということですが、より安定した収入を得られるよう、転職を前向きに考えてみてはいかがでしょう。

また、元パートナーから養育費を月8万円受け取っているとのことですが、それを生活費に組み込んではいませんか?養育費は全額子どもの教育費として、全て貯めておくことをおすすめします。生活費になっているなら、今の生活にどれくらいお金がかかるか把握し、多過ぎるところは見直し、足りない分は収入を増やせるよう働く。そうして養育費を全額貯金できるようにします。

息子さんが中学3年生とのことなので、大学進学を目指すなら入学まであと3年ありますね。養育費を3年間貯金すれば、少なくとも288万円が教育費として用意できることになりますが、それだけ貯金があったらどうでしょうか。子どもの教育費のために再婚を急ぐ必要があるか、考えてみてください。

仮に再婚して教育費の不安がなくなったとしても、パートナーが学費を出すことに対して息子さんが負担を感じるかもしれません。再婚しても経済力を維持しておくことが、結果的に子どもの可能性を広げることに繋がります。

相談者のお悩み2:息子さんとパートナー、2人だけの「男同士の時間」を作ってみる

次に息子さんと再婚相手の距離が縮まらないというお悩みですが、確かに子どもが反抗期の中での再婚は難しい部分があると思います。息子さんと話し合い、本当に反対しているようなら再婚は慎重に進めた方が良いでしょう。

相談者さんができることとしては、会う機会や外出する時に「男同士の時間」が持てるように計らってみてはどうでしょうか。ゲームを一緒にやってみたり、どこかに出かけても良いですし、息子さんの困りごとに「わたしでは分からないから、彼に聞いてごらん」と相談を促してみたり。男同士の付き合いが出てきてパートナーが息子さんにとって「同性の頼れる先輩」になれると、良い関係が生まれると思います。

ここで注意したいのは、パートナーが息子さんの父親になる必要はないということです。息子さんにとって、実のお父さんはずっと大好きなお父さんです。息子さんと元旦那さまとの関係が良好だったなら、なおさら他の誰かが息子さんのお父さんになることはできません。パートナーの方にも、「あの子には父親がいて今でも大好きだから、親子とは別の関係を作って欲しい」と伝えておくと良いと思います。3年後は息子さんも17歳ですから、状況も変わってくるのではないでしょうか。

相談者のお悩み3:再婚は根気と胆力が必要。家族と対話し続ける覚悟を持って

再婚後の生活で起こりやすいトラブルが、再婚相手が良い父親になろうと頑張りすぎて子どもと衝突するケースです。例えば箸の上げ下ろし、電気の消灯、足音などを厳しく指摘するなど、外からやって来た人がそれまで当たり前だった生活を急に変えようとしても、それはしつけにならず子どもは反発してしまいます。

特に男性が初婚の場合、肩に力が入ってしまいその傾向が強く出ると感じますが、悪気はなく良かれと思ってやっていることなので母親も口を出しづらかったりします。そのような事態を避けるため、パートナーが再婚後の生活にどんな理想を持っているか聞いておいたほうが良いでしょう。

例えば子どもが門限に10分遅れたとして、母子の間では許容範囲だったところを、パートナーが「遅い!」と指摘したとします。そういったズレを感じたら、母親とパートナーの間で話し合いを持って、今後のルールを決めていきましょう。放っておくとパートナーが子どもに「だらしない」という評価を下したり、問題があらぬ方向に進んでしまったりします。

理想とのズレが生まれるのは結婚生活が始まってからで、一つひとつはどれも本当に些細なことだったりします。その些細なズレが大きな問題に発展しないよう、小さな問題のうちに大人2人がしっかり話し合い、解消していくことがとても重要です。

もし息子さんに反対されても、自分の人生の幸せのためにパートナーとすぐ一緒になりたいと感じるなら、再婚を選んでも良いとは思います。その場合は、息子さんに「わたしは幸せになりたい。そのためには彼が必要」ということを、言葉でしっかり伝え続けることです。思春期の男の子は考えている本心なんて口にしませんから、相談者さんも息子さんの態度や言葉にいちいち振り回されない胆力を持ちましょう。

 

まとめ:キャリアを見直し、自分らしい人生を歩んでいきましょう!

これまで多くのシングルマザーの相談を受けて来ましたが、自分以外の誰かに問題解決を求める生き方は、人生の幸せには繋がりにくいんですね。現に、“2度目の離婚相談”に来られる方はみな「お金がないので離婚できません、どうしたらいいですか」と聞いて来られます。

女性一人ひとりに自立する力が備わっていても、自分が育った家庭環境やこれまでの社会通念で、やはり「結婚して男性に養ってもらうのが幸せ」という意識の人がまだまだ多いのが事実。それでは女性の人生の幸せは遠のいてしまうばかりです。

相談者さんには、3年の間にぜひ養育費を必要としない働き方を目指して欲しいと思います。その方法が分からなければ、日本シングルマザー支援協会のような支援団体や、自治体などにも相談してみてください。ぜひパートナーとの良い関係は保ちつつ、同時にご自分のキャリアも見直して自分らしい人生を歩んでくださいね。

江成道子

江成道子
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会 代表理事。シングルマザーサポート株式会社代表取締役社長、一般社団法人グラミン日本顧問、武蔵野学院大学講師。自らシングルマザーとして5人の姉妹を育てながら、シングルマザーの自立支援活動を続ける。講演多数。
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会