【厳選】ママスマ編集部 おすすめ書籍を紹介

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協議離婚の話し合いのポイント

問題点を解決してから届けを

協議離婚では夫婦が離婚について合意し、市区町村役所に離婚届を提出し受理されれば離婚は成立します。「とにかく早く別れたいから」と、お金の問題などの大事な問題を話し合わずに、一時の感情で離婚届に判を押してしまい、離婚成立後に公開することもあります。離婚届を提出する前に、冷静になることも大事です。

また、自分の要求を明確にすることは大事ですが、一方的に押し付けるのではなく、ときには譲歩も必要でしょう。

解決しておきたいポイント

トラブルを防ぐために、離婚前に決めておきたい事柄があります。

◇未成年(満20歳未満)の子どもの親権
満20歳未満の子どもがいる場合は、親権者を決める必要があります。親権者が決まっていないと離婚届は受理されません。父母のどちらが親権者になるか解決がつかなければ協議離婚はできません。

◇面会交流について
夫婦が離婚しても子どもにとって親子関係はつづきます。子どもと別れて暮らすようになった親には、子どもと会ったり連絡をとったりする権利「面会交流権」があります。面会交流についても決めておきましょう。

◇養育費・慰謝料・財産分与・年金分割
子どもの親権以外、養育費や慰謝料、財産分与、年金分割については、離婚前にきまっていなくても協議離婚はできます。しかし離婚後に話し合うのは困難な場合も少なくありません。

慰謝料請求は離婚成立後3年で時効が成立し、請求できなくなります。財産分与や年金分割の請求期間も離婚成立後2年以内と定められています。トラブルを防ぐためにも離婚前に話し合って決めておきましょう。内容はできるだけ具体的に詳しく決めておくことが大事です。

◇子どもの戸籍と姓
離婚後の子どもの戸籍と子どもが名のる姓(氏)についても、話し合って決めておきましょう。

専門家への相談、弁護士への依頼

離婚について合意はできたものの、さまざまな取り決めについて不安や疑問がある場合は、弁護士など専門家のアドバイスを受けるといいでしょう。費用はかかりますが、相手との交渉を弁護士に依頼する方法もあります。

「離婚協議書」の作成

取り決めは文書にする

親権、養育費や慰謝料の額、支払い方法、財産分与の内容、年金分割、子どもとの面会交流についてなど、話し合いで決めた内容は、離婚届の提出前に、「離婚協議書」「念書」「合意書」「覚書」などのような文書にしておくことが大事です。口約束では離婚成立後に言った言わないの水かけ論になったり、約束を反故にされるおそれがあります。

「離婚協議書」には決められた書式はありません。縦書きでも横書きでもかまわないので、2通作成し、双方が署名押印したものを1通ずつ保管します。

金銭的な内容は公正証書に

さらに、慰謝料、養育費、財産分与、年金分割など金銭的な内容に関しては、取り決めが確実に実行されるように「公正証書」にしておくべきでしょう。

「公正証書」は法律の専門家である公証人が公証役場において作成する文書です。金銭的なことに関しては「債務不履行の場合は強制執行をしてもかまわない」という内容の文言を入れた「執行認諾文言付公正証書」にしておけば、裁判の確定判決と同様の強制執行ができます。

債務不履行の場合の強制執行

離婚協議書を公正証書にしていないと、支払いが滞ったときには家庭裁判所に申し立てをして調停を成立させたり、裁判を起こして判決を得るなどの手続きを行わなければなりません。公正証書であれば、そうした手続きを経ずに強制執行ができます。強制執行では、たとえば養育費の支払いが滞った場合に相手名義の給料(養育費や婚姻費用については原則として2分の1まで)、預貯金、不動産などを差し押さえることができます。

金銭関係以外については公正証書に記載しても法的効力はありませんが、証拠となるのであわせて記載しましょう。

公正証書の作り方

離婚協議書を公正証書にする場合は、公証役場に出向き、作成を依頼します。公証役場は全国に約300カ所あり、どの公証役場でも手続きができます。

公正証書の作成には実印、印鑑登録証明書、運転免許証やパスポートなどの身分を証明するもの、協議で決まった内容を詳しく書いたもの(「離婚協議書」など)、記載内容に関する書類を持参し、夫婦2人で出向きます。代理人に依頼することもできますが、その場合は委任状が必要です。1人の人が夫婦2人の代理人にはなれないということです。

協議の内容は口頭で伝えてもかまいませんが、記載もれなどがないよう、メモでもよいので文書にして持参しましょう。公証人はその内容をもとに公正証書を作成します。

原本が完成したら、夫婦それぞれが内容を確認し署名押印(実印)します。公正証書は原本と原本の写しである正本、謄本が作成されます。正本はお金を受け取る側、謄本は支払う側が保管します。原本は公証役場に保管されます。

公正証書作成の費用

公正証書の作成費用は法律で決められていて、どこの公証役場でも同じです。その額は慰謝料や財産分与の額によって決まります。

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【著者】 比留田 薫(ひるた・かおる)
弁護士。1981年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。89年弁護士登録。同年より大原法律事務所に所属。相続、離婚、遺言書作成、破産、任意整理など、民事全般を扱う。東京弁護士会所属。監修書に『最新版 相続ハンドブック』『必ずよくわかる! 離婚の手続き・すすめ方・お金』(以上主婦の友社)など。