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目次
離婚訴訟(裁判)を起こす
家庭裁判所に訴訟を起こす
家庭裁判所での調停が不成立に終わった場合は、離婚を求める訴訟を起こします。訴訟を起こした者は「原告」、起こされた者は「被告」となります。訴訟を起こす裁判所は、原則として夫または妻の住所地の裁判所です。ただし、調停を行った裁判所で裁判を行う場合もあります。
離婚訴訟では、離婚ができるかどうかだけでなく、親権者の指定、養育費、慰謝料、財産分与、年金分割についても同時に請求できます。
訴状の提出と弁護士への依頼
原告はまず、離婚を求める訴状を提出します。訴状は法律で決められた書式に従って作成しなければなりません。書式や記載内容の見本は家庭裁判所に用意されていますし、裁判所のホームページからダウンロードできます。それを参考にして自分で作成することもできますが、弁護士に依頼するほうがよいでしょう。
裁判では離婚の原因を証明する必要があります。法律の専門知識や勝訴判決を得るための法廷戦術も必要となるので、訴状作成の段階から弁護士に代理人を依頼するのが一般的です。裁判の代理人は弁護士にしか依頼できません。
訴状の内容と必要な書類
訴状には離婚のほか、裁判で請求する項目(親権者、慰謝料、財産分与、養育費、年金分割)や離婚の原因について記入します。
離婚の原因は民法で定められた5つの原因のうちいずれであるかを明示し、具体的な内容を示します。養育費や慰謝料、財産分与については希望する金額を書きます。
手続きには訴状正副2通のほか、調停が不成立に終わったことを証明する「調停不成立証明書」、「年金分割のための情報通知書」、夫婦の戸籍謄本、源泉徴収票や預金通帳など、証拠とする書類のコピーに、訴訟手続きの費用を添えて提出します。
訴訟の費用
訴状を提出する際の費用(印紙代)は、離婚請求のみの場合は1万3000円です。財産分与も請求すると1200円加算、養育費も請求すると子ども1人につき1200円加算されます。慰謝料の請求は請求金額によって異なります。裁判所からの連絡用に使われる郵便切手代も必要です。
離婚裁判の進行
裁判では双方が主張を述べる
家庭裁判所に訴状を提出すると、被告に訴状と1回目の口頭弁論(裁判)の期日が記された呼び出し状が届きます。被告は口頭弁論の前に訴状の内容を認めるか認めないか、認めない場合はその理由を記した答弁書を裁判所と原告に提出します。
1回目の口頭弁論は提訴から1カ月程度をめどに行われます。口頭弁論では、訴状と答弁書、原告と被告側双方が事前に提出した書類(準備書面)により双方が主張を述べます。弁護士に代理人を依頼した場合は、当事者は出廷しなくてもかまいません。
争点・書証の整理、証拠調べ
1カ月に1回程度、審理は重ねられ、「争点・書証の整理」「証拠調べ」とつづき、判決が出るまでには早くても半年、多くは1~2年かかります。
双方の言い分の異なる部分を確認し、双方から提出された証拠書類を整理します。裁判で離婚が認められるには、原告側が離婚原因があることを立証しなければなりません。
たとえば妻が、夫の不貞により離婚を求めているのであれば、写真や手紙など不貞となる証拠を提出したり、不貞を目撃した人に証人として出廷してもらうなどします。離婚原因によっては家庭裁判所の調査官が、法定外で事実関係を調査することもあります。双方の対立点が明らかになった段階で、原告、被告それぞれへの尋問が行われます。
被告が原告の言い分をすべて認めて、離婚を承諾する場合は「請求の認諾」として訴訟は終了します。「認諾調書」が作成され離婚が成立します。
被告側からの反訴
口頭弁論中、被告側からも「離婚を求め慰謝料の◯◯円の支払いを求める」といった、反対の請求ができます。これを反訴といい、被告からの請求と原告の請求(本訴)とが同時に審理されます。
離婚裁判の判決と和解離婚
結審と判決
通常、本人尋問を最後の審理として離婚裁判の手続きは終了します(結審)。結審後1カ月ほどで裁判官が判決を下し、原告、被告双方に判決とその理由を記した「判決書」が届きます。「原告と被告とを離婚する」という判決が言い渡されれば原告の勝訴で、離婚が認められます。「原告の訴えを棄却する」という判決であれば、離婚は認められません。
判決に不服がある場合は、送達後2週間以内であれば高等裁判所に控訴することができます。期間内に控訴されなければ判決は確定し、離婚が成立します。
離婚届の提出
離婚を認める判決が確定したら、原告は判決確定の日を含む10日以内に「判決書の謄本」「判決確定証明書」とともに「離婚届」を提出しなければなりません。離婚届の署名押印は原告のみでよく、協議離婚のような証人も必要ありません。
和解勧告と和解離婚
審理を繰り返す途中で裁判官から和解をすすめられることもあります。和解は判決ではなく、当事者同士の話し合いにより双方が納得のいく形で裁判を終わらせる方法です。納得がいかなければ和解勧告に応じる必要はありません。
ただ、このまま争いつづけても先が見えない、仮に裁判に買ったとしても相手の控訴で裁判がつづくおそれがあるなど、和解に応じたほうがよいと思われる場合もあります。和解により離婚に同意した場合は、訴訟は終了し和解調書が作成され離婚が成立します。和解調書には判決と同様の法的効力があり、養育費や慰謝料の支払い、財産分与など、和解調書に記載された金銭的な取り決めは支払いが滞ったときには強制執行ができます。
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【著者】 比留田 薫(ひるた・かおる)
弁護士。1981年慶應義塾大学法学部法律学科卒業。89年弁護士登録。同年より大原法律事務所に所属。相続、離婚、遺言書作成、破産、任意整理など、民事全般を扱う。東京弁護士会所属。監修書に『最新版 相続ハンドブック』『必ずよくわかる! 離婚の手続き・すすめ方・お金』(以上主婦の友社)など。