離婚の理由はさまざま。そして、その後の人生も、選択と決断の毎日です。先行きに不安を覚えたり、失敗して落ち込んだりすることもあるかもしれません。少し息詰まってしまったら、ここに相談しにいらっしゃいませんか?自ら5人の子どもを育て上げた日本シングルマザー支援協会代表の江成道子さんが、本音で、真剣に、あなたの悩みに答えます。

今回のご相談は、養育費の増額交渉に悩む50歳会社員のママからです。江成さん曰く、子の進学にあたって果たすべき親の役割は学費を出すことだけでなく、子どもと将来についてじっくり話し合うことの二つ。そして、養育費増額よりも確実なのは自分の収入を増やすことと説きます。また、同年代の相談者さんに向け50代が抱える「壁」についても語ってくださいました。

今月の相談:子どものために養育費を増額したい。話を円滑に進めるコツは?

5年前に調停離婚しました。上の子が私立大学に進学予定で、奨学金を借りるつもりなのですが、借入額を少なくしてあげたいので養育費の増額を請求したいと考えています。こうしたケースで増額することは可能なのでしょうか?

また、子どもと元夫は定期的に連絡を取っていますが、私自身はしばらく連絡を取っていません。このような状態ですが、養育費増額に向けて円滑に話を進めるコツを教えてください。

▽相談者の情報

・離婚/・現在の職業:会社員 事務職/・年齢:50
・子どもの数(性別・年齢): 2人(息子17歳・15歳)
・経緯:自身の年収は240万円、元夫の年収は600万円(会社員・勤続10年)、養育費は月6万円受け取っている。

回答:増額交渉は子どもか調停にゆだね、収入を増やすことも視野に入れましょう

養育費を増額できるかどうかは、元夫の経済状況次第です。取り決めに増額の内容を盛り込んでいれば可能性はありますが、離婚時にそこまで先のことを考えているケースは多くありません。

そして離婚後5年経過していれば、元夫は「完全なる他人」と思っておいた方が良いと思います。では教育費という課題を乗り越えるため、現実的に何ができるか考えていきましょう。

相談者へのアドバイス1:子どもと進学の意義について話し合い、増額交渉を任せる

息子さんは17歳とのことなので、そろそろ大人の話ができる年齢です。この機会に親子で将来について話し合ってみましょう。

奨学金を借りて大学に通うということは、将来への「投資」です。社会人になったら、働いて投資した分を「回収」しなければいけません。生活しながら奨学金を返済するためにはどれくらいの収入が必要で、そのためにどんな職に就けばいいのかも話し合ってみてください。

わたしの娘は看護学校に通いましたが、学生の3分の1は社会人だったそうです。休職してまで資格取得を目指す彼らと机を並べていると、とても居眠りしたり授業をさぼったりする気にはならなかったと言っていました。

一方、わたしが講義を持つ大学では居眠りしている学生の姿をよく見ます。彼らが自分で学費を負担し、時間やお金を「投資」するという感覚を少しでも持っていたら、学びの姿勢は違うのではと思います。その意味合いからも、ぜひ母子で「投資」と「回収」の話をしてみてください。

話し合いを踏まえた上で、養育費増額の相談は息子さんから直接父親にしてもらうのが良いでしょう。何を学ぶために大学に行き、そのためにどれくらいお金が必要なのかをしっかりプレゼンするよう伝えましょう。もし息子さんが「お父さんからは学費を出してもらわなくていい」と言うなら、彼の意志を尊重すれば良いと思います。

元夫婦同士で連絡を取り合うのは、感情のぶつけ合いになってしまう可能性が高くおすすめしません。息子さんの相談で思わしくない結果になったら、離婚の時と同じく裁判所の調停手続きを取るのが良いです。冷静な第三者の視点で、養育費増額が可能かどうかを見極めてもらいましょう。

相談者へのアドバイス2:50代から収入を増やすには、自己保身のプライドを捨てること

調停で増額できないという結果になった場合、奨学金の借入額を増やすほかに相談者さんの収入を増やすという選択肢も考えられます。後者を選ぶなら、事務職のままでは難しいと思いますので、転職を視野に入れた方が良いでしょう。

50代の転職は30代の転職に比べれば何倍も大変です。体力気力の衰えを感じる年齢でもありますし、何よりも大きな壁として立ちはだかるのが本人の「プライド」です。

50歳となると組織の中である程度の経験を持ち、何かしらの結果を出した人物と見なされますし、本人もそういった意識を持っていると思います。「できない人」という評価は若い時以上に辛く感じますから、環境の変化や挑戦を避けてしまうのです。その「プライド」を捨て去ることができれば、収入増につながる転職は必ずできます。

例えば転職面接で、「事務しかやって来なかったんですね」と言われたとします。プライドを抱えたままだと「何もない人と思われたくない」という感情が先に立ち、自分を取り繕うことがゴールにすり替わってしまうのです。こうなると、面接もうまくいきません。

ゴールはあくまでも「収入を増やす」ことですから、そこから目をそらさなければ、今までの経験を堂々と武器にして「はい、事務は一生懸命やって来ました」という言葉に変えることができます。

プライドの自覚やゴールの設定はひとりでは難しいところがありますが、日本シングルマザー支援協会には50代から経済的に自立された方もいらっしゃいますので、本気で収入増を目指したいと思ったらご連絡ください。相談者さんのゴールまでしっかりと伴走します。

相談者へのアドバイス3:介護職、営業職、カウンセラーは年齢を強みにできる職種

次におすすめの職種ですが、介護職、営業職、カウンセラーは50代という年齢が“人生経験豊富な年齢”という強みになり、採用されやすい職種です。

介護は「自分が施設に入る前日まで働ける」というほど長く勤務でき、50歳からでも20年は働けます。現場に出るには資格が必要ですが、初任者研修という講習を受講すれば良いので、仕事を続けながら無理なく資格取得が目指せます。期間は1〜3ヶ月ほど、費用は6〜7万円ほどで、無料で講習を開催している自治体もあるようです。働き始めてから介護福祉士の資格を取れば400万円くらいまで年収を上げられますし、ケアマネージャーになればさらに収入アップが目指せます。

営業職は未経験OKのところに入り、2、3年経験を積めば55歳でも転職できるので、今からでもキャリアが構築できますし、収入シミュレーションもしやすくおすすめです。特に対面で物を売る仕事は、若い人より圧倒的に話題も豊富でコミュニケーションが上手な「おばちゃん」が重宝されるものです。

相談者さんは57歳まで教育費がかかりますし、その後は養育費も無くなるので、ご自身の老後や貯蓄のためにも、今のうちに収入増を目指すことは大きなプラスになるでしょう。

まとめ:あなたのこれからの行動に大きな可能性があります。子どもと共に挑戦してみて

養育費の増額から50代の職探しまでお話ししてきましたが、仮に相談者さんが年収を300万円まで上げることができたとします。私立大学の学費が年間100万円だとして、増えた収入の60万円を学費に充てれば残りは40万円。息子さんが父親に増額交渉しやすくなるかもしれませんし、奨学金を借りるとしても借入額を大幅に下げられるのではないでしょうか。

あなたが一歩を踏み出せば、今の課題は解決できる可能性があります。子どもと一緒に、将来に向けて新しい挑戦を始めてみませんか。

江成道子

江成道子
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会 代表理事。シングルマザーサポート株式会社代表取締役社長、一般社団法人グラミン日本顧問、武蔵野学院大学講師。自らシングルマザーとして5人の姉妹を育てながら、シングルマザーの自立支援活動を続ける。講演多数。
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会