【厳選】ママスマ編集部 おすすめ書籍を紹介

新たな生活に踏み出したシングルマザーの私たち。しかし、足元を見ればお金、教育、仕事、養育費などなど、不安と悩みは尽きません。それらの悩みに対し各方面の専門家、そして先輩たちが、書籍を通してたくさんの知恵を提供してくれています。ママスマ編集部では、そんな知恵とアドバイスの詰まった書籍を厳選、内容を抜粋して紹介してまいります。

ケース:初婚男性×母子家庭の山田さん一家の場合

山田有子さん
[家族歴] 3年
[家族構成] 夫 (43歳)、妻 (43歳)、妻実子 (22歳♀、17歳♂)、夫婦の実子(8歳♂)
[現在の家族の問題点]
・妻実子(長男)と夫とのかかわり方。
・夫両親とのつきあい方。

未婚男性との再婚はストレスが少ない、わけはない

「うちはステップファミリーでも恵まれているほうだと思います。夫は子ども(継子)のことを考えすぎるくらい考えてくれていますし……」と山田有子さん。有子さんとの出会いは、SNSを介して知り合い、M-STEPの交流会でお会いしたのがきっかけでした。

シングルマザーと未婚男性の再婚家庭は、相手に子どもがいないぶん、女性側のストレスが少ないのではないかといわれていますが、私自身がシングルマザー時代、未婚男性とのおつきあいで大きなストレスを経験したこともあり、再婚を決断した有子さんのお話を聞きたいと、取材をお願いしました。

このケースの実親側のストレスをひと言でいうと、「わが子と継父のあいだでの板挟み」です。子どものいない男性が子連れの女性との結婚を決め、親になろうとがんばるときに起きやすい子どもとの対立。そこにいる実親はどちらの気持ちもわかるがゆえに、どうしたらいいかわからなくなることが多いのです。

有子さんの最初の結婚の破綻は、夫による長女に対する虐待が原因でした。20歳という若い年齢どうしでできちゃった婚し、生まれた長女に対して親として接することができず、子育てのイライラを虐待として表現した夫。なかなか別れの踏ん切りがつかなった結婚生活でした。

「子どもが泣くのはあたりまえなのに、泣くと布団を巻きつけて黙らせようとしたり、お風呂に沈めたりと、ひどい父親でした」と、当時のつらい経験を語る有子さん。続いて生まれた長男を猫かわいがりし、長女に対してはあいかわらずの虐待を続ける夫の態度に、ふたりの子どもを守ろうと、結婚7年目にやっと離婚を決意しました。

「子持ちで離婚した女に息子をあげたくない」の衝撃

現在の夫とは、離婚が成立する少しまえに、子どもの習いごとを介して出会いました。子どもふたりを剣道の道場に入れていて、そこでコーチをしていたのが彼でした。「第一印象はすごく悪かったんです。態度も荒っぽく見えて口も悪かったし、好きになれないタイプでした」と有子さんは夫との出会いを語ります。

彼との再婚を決意するまでには7年間の交際期間がありました。第一印象は悪かった彼ですが、子どもに向きあう姿勢の誠実さ、練習中の厳しさとは違い、終わるととてもやさしい態度に、しだいに有子さんは惹かれていきました。

決め手になったのは、彼が教え子の子どもたちを連れてカラオケにいったときのことでした。実親からの虐待で男性恐怖症のなっていた長女は、コーチともなかなかうちとけられずにいました。彼は、ものおじして歌えない長女のかたわらに寄り添い、いっしょに歌いはじめました。歌えなかった長女が大きな声で歌う姿を見たときから、有子さんは彼を好きになっていったそうです。

7年間の交際期間中は、彼の仕事がなかなかうまくいかないことや、ふたりの子どもの父親になれるのだろうかという彼自身の迷いがあり、再婚話が出ても進めないままでした。しかし、有子さんの妊娠をきっかけに彼も入籍する決心ができました。残念ながら流産という結末になりましたが、すでに入籍を決めていたふたりは結婚することにしました。

最初の困難は、彼の母親からの猛反対でした。結婚の挨拶のために呼ばれた場で、子どもたちふたりがいるのに、「あんたみたいな子持ちで離婚しただらしない女に息子をあげたくない。血のつながりもない子どもたちを自分の孫だなんて思えないし、ひどすぎる」と泣かれたそうです。

「あまりにも衝撃的で、頭のなかが真っ白になりました。それまでシングルマザーとして必死でがんばってきたことすべてを否定された気がして……」と有子さん。そのときの言葉が忘れられずに、いまでも義母に対してはわだかまりがあるといいます。

がんばる夫の厳しすぎるしつけ

最初からそんな困難に突き当たり、スタートしたステップファミリー生活ですが、つぎに有子さんを悩ませたのは、子どもたちに対する夫のしつけの厳しさでした。「私は性格的におおらかなほうなので、子どもに対して細かいことを言ってしつけてきませんでした。そういう部分が夫にとっては許せなくて、おれが父親としてしっかりしつけないと、と思わせたんでしょうね」

子どもたちのお箸の持ち方から、言葉づかい。生活態度などにいたるまで、夫流の厳しいしつけがはじまりました。

たとえば母子3人の生活のときには気にしていなかった、洗面所を使ったあとの掃除への配慮が一例です。長女が落ちた髪の毛を掃除しないでいると、厳しく注意する夫。当然といえば当然のしつけだと私も思いますが、それまでの生活では厳しく怒られる習慣のなかった子どもたちにとっては理不尽だったでしょう。

あまりの厳しさに、ときに有子さんが子どもたちをかばおうとして「そこまで言わなくてもいいんじゃない」と夫に注意をしたら、出ていくと言って家出しようとして、口論になりました。「そんな些細なことでいちいち出ていくとか逃げる姿勢を見せられても困る、と言いました。覚悟をもって家族をやってほしいと思っているので」と有子さん。

入籍したときに14歳だった長女は、継父に対して直接不満を言うこともなく、自分からしだいに距離をとるようになって離れていきました。この年齢の女の子が父親を毛嫌いするのはよくある行動パターンですが、毛嫌いするというよりは遠慮してかかわれないという感じだったといいます。

それに対して9歳の長男は、継父とは密接にかかわるけれど、怒られるとその反発も強かったそうです。有子さんは夫が息子を怒っているときは傍観していて、怒られたあとにフォローする役割を担っていました。「夫は自分のしつけ論で子どもたちを育てたくて怒るのですが、あとのフォローは私に任せるというスタンスでした」と言います。

父のやさしさを求めていた息子との夫とのすれ違い

あるとき夫が、お風呂掃除を頼まれた長男が真っ暗なお風呂場で携帯を見ているのを見つけ、目が悪くなるし、掃除も進んでいないと注意しました。すると、素直に聞けない息子は口ごたえ。激怒する夫と怒鳴りあいになりました。

有子さんはハラハラしながら見守りました。有子さんは、喧嘩のあとで長男に話しかけました。「悪いのはあなただよと伝えましたが、息子からは、父親でもないくせにいちいちおれのすることに口出しするのが許せない、家には居場所がないし、お母さんとお姉ちゃんと3人で暮らしていたころにもどりたい、と言われました」。

私もまったく同じことを自分の娘に言われたことがあったので、このお話を聞いたときは切ない気持ちになりました。継親がどんなにがんばっても、子どもにとっては赤の他人から厳しくされるのは、ストレスでしかないのでしょう。それは継親には伝わらず、板挟みになる実親はどうしていいのかわからずに立ち往生します。

「息子が求めているのは父の『やさしさ』です。とくに息子は実の父親も知らずに育っているので、厳しいだけではダメだと思うのです。でも夫にしてみたら、長男だからしっかりしてほしいという思いと、私があまいので自分がしっかりとしつけるという気負いがあって。息子が求めているものと、夫が与えているものが見合ってない感じがしています」と有子さんは言います。それを夫に伝えても、わかってもらえない8年間だっだそうです。

「娘は高校生になって全寮制の学校に入学し、家を出ました。厳しく教えられた生活習慣がいまは役に立っていると感じているみたいです。息子も高校生になったので、夫も以前のようにガミガミ言うことはなくなりました」と有子さん。

夫婦のあいだにセメントベビーも生まれて、夫は実の子と継子への愛情の違いは感じているはずですが、差別することもなく、継子にもしっかりと向きあっているとのこと。父親にもなろうとがんばりすぎたからこそのストレスだったと思います。

ステップファミリーは一般的に、しつけは実親が担当して、怒られたあとのフォローを継親がする、いいとこどりを継親にさせたほうが子どもとの関係もうまくいくものです。ただし、継親も親になろうと努力するがゆえにこういった問題は起きやすく、実親として子どもと継親のどちらの気持ちもわかるので悩みます。
 

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【著者】新川てるえ(しんかわ・てるえ)
作家、家庭問題カウンセラー、NPO法人M-STEP理事長。1964年生まれ。離婚・再婚経験を生かし97年にシングルマザーのための情報サイト「母子家庭共和国」を立ち上げる。家庭問題カウンセラーとして雑誌やテレビなどで活躍。著書に『シングルマザー生活便利帳』(太郎次郎社エディタス)、『子連れ離婚を考えたときに読む本』(日本実業出版)など。