相手が養育費を支払ってくれない場合、「いつか払ってくれるはず」と思って、そのままにしていませんか?養育費の請求には「時効」という制度があるため、養育費が支払われないまま原則として5年が経ってしまうと、もらえるはずの養育費を回収できなくなってしまう可能性があります。
そこで今回は、養育費を回収できなくなるリスクを防ぐために、養育費の時効制度について解説します。養育費を確保するための対策法も解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
監修:弁護士 白谷 英恵
養育費が継続的に支払われている人はたったの24%。書面を交わしても支払われていない現状があります。
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目次
養育費の「時効」とは?
養育費について取り決めをした場合、一定の期間が経過すると、養育費を請求する権利が「時効」によって消滅してしまう可能性があります。
養育費の時効期間は原則5年
一定の期間が経過すると権利が消滅してしまう制度を「消滅時効」といいます。養育費の時効とは、厳密には消滅時効のことをさします。
養育費の消滅時効の期間は法律で「原則として5年」と定められています。
▼消滅時効が5年のケース
・夫婦の話し合いで養育費の取り決めをして、「協議離婚合意書」という書面にした場合
・養育費などの取り決めを「離婚公正証書」という公正証書にした場合
民法の時効制度は2020年4月1日に改正されましたが、養育費はもともと改正する前も原則として5年であったために改正による影響はなく、従来どおり5年のままとなっています。
裁判所の手続きによる場合は10年
養育費の消滅時効の期間は原則として5年ですが、例外として、裁判所による手続きをした場合は10年に延長されます。具体的には以下のような場合です。
・離婚訴訟(離婚をするかどうかを裁判で決めること)などの裁判において、養育費の取り決めをした場合
・調停(裁判所による第三者を交えた話し合い)や審判(裁判官が養育費などについて決めること)において、養育費の取り決めをした場合
養育費の取り決めをしていない場合には時効はない
離婚する夫婦の中には、養育費について取り決めをしていないという場合があります。たとえば、協議離婚(話し合いによって離婚する場合)をする際に、養育費については取り決めをしなかった、というケースなどです。
養育費について取り決めをせずに離婚した場合、実務的には、養育費を請求するまでは時効にかからないとされています。たとえば、離婚するときに養育費について決めていなければ、離婚後に5年や10年が経過していても養育費を請求できますが、養育費について取り決めをしている場合は、消滅時効の期間が経過してしまっているようなことがありえます。
つまり、養育費についてそもそも取り決めをしていなければ消滅時効にかかることがないので、離婚してから10年後であっても15年後であっても養育費を請求することができます。
ただし、このように離婚後に養育費を請求した場合、請求した時点よりも以前の養育費については、裁判所の実務上、原則として、支払請求が認められないので注意しましょう。やはり、必要な養育費をきちんと支払ってもらうためには、養育費について取り決めておく必要があります。
養育費の「時効」は消滅時効の援用をすることで成立する
消滅時効の期間が過ぎたとしても、相手に養育費を完全に請求できなくなるとは限りません。なぜかというと、時効の効果を発生させるには、時効の効果を主張する相手が「時効の援用」という行為をする必要があるからです。
時効の援用とは、時効の効果を利用することを相手に伝える意思表示のことです。養育費の場合は、「消滅時効を主張して、養育費を支払う義務を消滅させます」ということを支払い義務者が受取者に意思表示することが、時効の援用をすることに該当します。
時効の援用の意思表示をする方法に厳密な制限はありませんが、証拠として残しておくために内容証明郵便で行うのが一般的です。
消滅時効の期間が満了していても、支払い義務者が上記のように時効の援用をせず養育費を支払ってくれるのであれば、問題なく養育費を受け取ることができます。相手が消滅時効に気づいていなかったり、消滅時効を援用しなかったりする可能性があるので、諦めずにまずは請求してみることをおすすめします。
養育費の時効を更新または完成を猶予させるには?
養育費の時効が完成する時期が近くなっている場合、時効の更新(改正前の民法では「時効の中断」という表現になっていました)又は時効の完成猶予(改正前の民法では「時効の停止」という表現になっていました)をして、養育費を請求する権利が時効消滅してしまわないようにする必要があります。
時効の更新とは、これまで蓄積されてきた時効期間のカウントをゼロに戻して、また最初からカウントしなければならないようにするという制度です。また、時効の完成猶予とは、時効期間の進行を一時的にストップさせる制度です。時効の更新または完成猶予をするための方法は複数あるので、それぞれ解説します。
裁判上の請求
裁判を起こすことは時効の中断にあたる効果をもっています。なぜかというと、裁判をして判決が出るまでにはかなりの時間がかかるため、裁判中に時効が完成してしまうと、裁判を起こして請求をする意味がなくなってしまうからです。
このように、裁判を起こして養育費を請求すると、養育費についての時効が中断します。裁判を起こすだけでなく、調停(裁判ではなく、調停員という第三者を交えて話し合いによって争いを解決する方法)の申し立てをする場合にも、同じく時効の中断の効果があります。
債務の承認
債務の承認とは、自分が債務を負担していることを認めることです。債務の承認が行われると、時効が更新します。養育費に関しての債務の承認とは、「自分は養育費を支払う義務がある」と認めることです。
債務の承認と認められる方法は、「私は養育費を支払う義務があることを認めます」などの文書だけでなく、一定の行為があった場合にも、債務の承認があったものと認められます。
債務の承認にあたる行為の典型例は、債権者への支払いをすることです。債務を請求された場合、全額を支払うことはもちろん、その一部でも支払った場合には、債務の承認があったものと認められます。
たとえば、「今月から養育費として毎月5万円を支払ってほしい」と請求された場合に、5万円全額を支払うことはもちろん、「今月は苦しいからとりあえず2万円だけ」として一部を支払うような場合でも、これは債務の承認にあたります。
差し押さえと仮差し押さえ
差し押さえ(差押)とは、債務者(債務を負っている人)が自分の財産を勝手に処分しないように、財産の処分を禁止する手続きです。たとえば、債務者の預金口座を差し押さえて勝手に引き出せないようにしたり、不動産を差し押さえて勝手に売却できないようにしたりするなどです。
差し押さえの手続きをしている間に時効が完成してしまっては、差し押さえの根拠となる権利自体が消滅してしまいます。そこで、差し押さえには時効の完成猶予の効果が認められています。なお、差し押さえが完了した場合には、その時から時効は更新されます。
また、仮差し押さえ(仮差押)とは、裁判を起こしている間に、仮の処分として差し押さえをする手続きです。裁判をしている間に、相手が勝手に財産を処分してしまうのを防ぐために行います。
あくまで仮の差し押さえであり、裁判で勝訴が確定するまでは相手の財産を完全に処分することはできません。仮差し押さえも差し押さえと同様に、時効の完成猶予の効力があります。
催告
催告とは、時効が完成するのを一時的に遅らせるための手続きで、時効がせまっているときに、取り急ぎの意思表示として行われるのが一般的です。
催告をすると、6ヶ月の間は時効の完成が猶予されます。ただしこれはあくまで一時的なものなので、6ヶ月が経過すると時効が完成してしまいます。
そのため、催告によって時効の完成を遅らせて、通常その間に訴訟の提起や調停の申し立てを行います。催告の方法は、相手に対して支払いを請求することです。養育費について催告をするには、「養育費を支払ってください」という旨を相手に伝えます。
催告の方法には厳密な制限がないので、相手に対して口頭で養育費を請求するだけでも、制度上は催告にあたります。ただし、時効が完成したかどうかについて裁判などで相手と争いになった場合に、「催告など受けていない」と否定されてしまうリスクがあります。
催告をきちんと行ったことを証拠として残しておくために、実務において、催告は「内容証明郵便(相手に郵便を送ったことを証明するための方法)」という方法で行われるのが一般的です。
未払いの養育費を請求するためには?
今までに支払われなかった養育費はどうすれば請求できるのか解説します。
離婚協議書を作成している場合
裁判所の手続きによって相手の財産を差し押さえて、そこから養育費を回収することを強制執行といいます。
養育費の取り決めが、夫婦間で作成した離婚協議書による場合、直ちに強制執行をすることはできません。まずは離婚協議書に基づいて、相手に養育費を支払うように請求してみましょう。
相手が養育費を支払わない場合は、強制執行を検討することが必要です。強制執行をするには、裁判を起こして勝訴判決を確定させるなど、債務名義(強制執行できる書類)を取得しなければなりません。離婚協議書は債務名義ではないため、それをもとにして強制執行ができるわけではありませんが、裁判の証拠として役に立ち得ます。
公正証書、調停証書がある場合
強制執行を認諾する旨の公正証書や調停証書がある場合は、裁判などを起こさなくても直ちに強制執行をすることができます。公正証書や調停証書が債務名義になっているからです。
なお、強制執行をする前に、まずは支払者に養育費を支払うように促す「履行勧告」をすることもできます。履行勧告とは、家庭裁判所が支払い義務者に対して、「調停で決まったとおりに養育費を支払ってください」と促すことです。
履行勧告には強制力はないので、支払い義務者が勧告後も養育費を支払ってくれない場合は、強制執行を検討する必要があります。
相手と連絡を取りたくない場合の対処法
養育費を支払ってもらいたいけれども、なるべく相手とは連絡を取りたくない場合、どのような対処法があるのでしょうか。
弁護士に相談する
養育費の支払いに関して相手と連絡をとりたくない場合、弁護士に相談する方法もあります。弁護士に交渉を依頼すると、受取者の代理人として弁護士が交渉や請求をしてくれるので、自分から相手に連絡を取る必要はありません。
また、弁護士は法律の専門家であるため、相手が請求に応じなければ、養育費を請求するために裁判を起こすなどの法的な手続きを依頼することができます。
養育費の時効期間を理解し、早めの対策を心がけましょう
養育費の時効期間は原則として5年です。早めに養育費を回収するための対策をとりましょう。養育費の時効期間が迫っている場合は、取り急ぎ内容証明郵便で相手に養育費を請求して、時効の完成を先送りするのがよいでしょう。時効の期限が過ぎていても、相手が援用せずに支払ってくれれば問題はないので、まずは請求してみましょう。
養育費が継続的に支払われている人はたったの24%。書面を交わしても支払われていない現状があります。
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