【厳選】ママスマ編集部 おすすめ書籍を紹介

新たな生活に踏み出したシングルマザーの私たち。しかし、足元を見ればお金、教育、仕事、養育費などなど、不安と悩みは尽きません。それらの悩みに対し各方面の専門家、そして先輩たちが、書籍を通してたくさんの知恵を提供してくれています。ママスマ編集部では、そんな知恵とアドバイスの詰まった書籍を厳選、内容を抜粋して紹介してまいります。

ケース:父子家庭×母子家庭の木村さん一家の場合

木村百合子さん
[家族歴] 3年
[家族構成] 夫 (44歳)、夫実子(15歳♀、12歳♀)妻 (42歳)、妻実子 (15歳♀)
[現在の家族の問題点]
・「家族」とか「家族愛」とかにとらわれなくはなりましたが、いっしょに生活しているにもかかわらず、まったく口をきくこともないのは、問題点なのか、それともこれでいいのか、わからない。でも毎日すっきりとはしてないのは事実です。

悪条件を「ひと目ぼれ」で乗り越え、交際スタート

いつも愛情たっぷりで彩りのきれいなお弁当写真が、彼女のブログやSNSには掲載されています。私と木村百合子さんとの出会いは、最初はブログつながりでしたが、現在はNPO法人M-STEPの仲間として、いっしょに活動しています。

百合子さんの最初の結婚は国際結婚でした。価値観や経済観念の違いがあり、出産から半年でスピード離婚、それから12年間の長いシングルマザー生活を経て、3年前からステップファミリー生活がスタートしました。

シングルマザーのときは実家で暮らしていて、正社員としてバリバリと働くキャリアウーマンだったので、経済的な苦労もなく、週末にひとり娘を連れて旅行にいくなど、日常を楽しんでいたといいます。恋愛や再婚を考えることもなかったそうです。

あるとき、職場の仲間が再婚して、自宅に遊びにいったときに、幸せそうな再婚家庭を見て、うらやましいなと思い、再婚をめざす人たちのための出会い系サイトに登録したのが、いまの夫との出会いのきっかけになりました。

サイトで出会ってメール交換がはじまり、1か月後には彼とお食事をすることになりました。「最初は彼の条件に、はっきりと言って拒否反応がありました。わが子と同年齢の女の子ふたりもいることが無理だと思いました。私は、再婚するなら相手には子どもがいない人がいいと思っていたので……」と百合子さん。

それでも彼から、子どものお母さんを探しているわけではなくパートナーを探しているので、会ってから考えてほしいと言われて、食事をすることになりました。

最初のデートでは、おたがいの身の上話、仕事の話、家族の話、過去の離婚の話などで盛り上がりました。出会ってから1か月で、まだおたがいをよく知らないこともあって、彼から聞く話は新鮮で楽しかったし、百合子さんもじっさいに会うまでは敬遠して話せなかった自分の話をすることができ、話は尽きなかったそうです。

そんなはじめてのデートの彼の第一印象を尋ねると、「ひと目ぼれだったんですかね。条件なんて関係ないな……と思えました」とのこと。そして、自信をもって恋愛をスタートさせたそうです。

子どもたちに会うのも早く、3回目のデートでは、おたがいの子どもたちを連れてディズニーランドに行きました。子どもたちは9歳のわが子と同年齢の彼の長女、ふたつ年下の7歳の次女です。3人はすぐに打ち解けて、仲よくなりました。

浮気発覚で絶縁した彼の、子連れ押しかけ作戦

しかし、初対面から百合子さんは彼の長女に対して違和感を覚えました。「どうしてって聞かれると難しいのですが、初対面なのに愛想のない態度で、この子とは合わないなっていう直感のようなものでした」と継子との出会いを振り返ります。

それから3年交際が続きましたが、上の継子はデートのたびに彼がお金を払おうとすると、「パパのお金がなくなっちゃう」と言ったり、支払いのレシートを見て「たかーい」と言ったりするので、百合子さんは遠慮してデート代を割り勘にしてもらったそうです。そんなことが重なり、蓄積する継子への嫌悪感。このままではいっしょに暮らすことなんか無理だなと思いはじめたころに、百合子さんは彼の浮気を知ります。

あるとき、彼が席をはずしたさいに置き去りにされていた携帯電話をのぞき見てしまいました。するとそこに、彼と出会った出会い系サイトの名前のフォルダがあり、いまでも彼がサイトを利用していて、何人かの女性とやりとりして会っていたことを知りました。「3年もおつきあいしてきたのに裏切られていたんだと思ったらショックでした。私は浮気は許せないタイプなので、これで別れようと思って連絡を絶ちました」と百合子さんは言います。

それから1か月半後、百合子さんの娘が私立の中学に入学が決まり、入学準備をしている矢先に彼から連絡があり、娘の通う中学のすぐ近くに家を借りて、子どもふたりと引っ越してくるから、いっしょに暮らしてもらえないかと言われました。

「悩みました。突然だったし、友だちに相談したら、勝手に引っ越してくるんだからほっとけとも言われましたが、彼は娘たちに中学校と小学校を転校させてまで引っ越してくるんだし、さすがに放っておけなかったですよ」と百合子さん。

彼の子どもたちにとっては強行的な引っ越しだったといいます。「押しかけ女房」ならぬ「押しかけ夫」みたいだなと感じました。彼にしてみたら、百合子さんを失わないための最善の手段だったのでしょう。百合子さんもその熱意に、彼を許してやりなおそうと思いました。

そうしてはじまった母子家庭と父子家庭の同居生活。百合子さんは、自信がなくて入籍を選ばずに、事実婚でこの生活をスタートしました。入籍がなくてもステップファミリーです。

早熟な継子たちに衝撃を受け

「子どもの引っ越し荷物の段ボールに書いてあった落書きを見て、前途多難なスタートを感じました」と百合子さん。上の継子が梱包した段ボールにはマジックで殴り書きで、「引っ越しなんかしたくない」「こんな引っ越しはデメリットだらけだ」と書いてあったそうです。

それでも最初はなんとかうまくやろうと、家事に子育てに奮闘する百合子さんは、それまで築いてきたキャリアも捨てて、専業主婦になりました。「親に子どもの面倒を任せて仕事をしてきたので、家事は苦手だったし、いっきに増えた家事の負担にとまどいました」と百合子さんは同居当初を振り返ります。

お料理をつくると、「おばあちゃんはこうしていた」「味つけが薄い」「やり方が違う」と文句ばかりつけてくる継子ふたりに、百合子さんは言いたいこともがまんして、くやしくて陰で泣いたり、わが子に愚痴ったりもしました。同居するまえは仲のよかった実子と継子も口をきかなくなりました。母親を苦しめている相手と仲よくなんかできるはずはないので、当然といえば当然です。

「同じ歳の女の子どうし、くらべてみると彼の子どもたちはへんに大人びていて、私や私の子をばかにしているのではないかと感じます。これはこうするんだよ!と生意気な指図をしたり、何か教えてあげようと思っても、どうせ、知ってるよ!と言われてしまいそうで、何も言えませんでした」と百合子さんは言います。

いつのまにか、寮のおばさんみたいな存在に

同居から3年が経つ現在、百合子さんは夫の子どもたちの部屋は掃除もしなくなり、ごはんもつくるけれど、子どもたちだけで食卓を囲み、会話も必要最低限以外はほとんどしない状況だそうです。夫は仕事が忙しく、帰宅も遅いので、そんな日常には無関心だとのことです。

夫婦のあいだに、自分の子どもは自分で面倒をみるという暗黙のルールが定着して、百合子さんは継子たちが遅く帰宅しても注意することもなく、継子のお小遣いは夫が勝手に与えることになっているので、何にどう使っていようとも気にしなくなったといいます。

「気らくにはなりました。でも、いまの状態は、まるで寮のおばさんみたいだなと思います。でも何も言えないし、言いたくもないんです」。これまで蓄積された継子に対するストレスは、どうせ言っても恨まれるだけだという気持ちを百合子さんのなかにつくってしまっています。

そんな感じなのに、外から見たら家族扱いされて、継子のことをわが子のことように聞かれたりするのがとてもストレスだといいます。再婚家庭だということもカミングアウトしているのに、3人まとめて百合子さんの娘扱いされる質問にイラッとくることが多いそうです。

「私の実子と下の継子が同じ高校に行っています。実子の友だちのお母さんに『娘さんは?』とか『下のお子さんは?』と聞かれると、いやな気分になります。妹じゃないし、私の子じゃないし、という思いで拒否感があるんでしょうね」と百合子さん。

実子と連れ子が同年齢や年子だろ仲よし姉妹ができあがっていいね、と考えるのは、ステップファミリーの苦悩を知らない人たちの安易な考え方だと思います。同年齢だからこその問題点がこのようにあることを、多くの人に知ってほしいと思いました。
 

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【著者】新川てるえ(しんかわ・てるえ)
作家、家庭問題カウンセラー、NPO法人M-STEP理事長。1964年生まれ。離婚・再婚経験を生かし97年にシングルマザーのための情報サイト「母子家庭共和国」を立ち上げる。家庭問題カウンセラーとして雑誌やテレビなどで活躍。著書に『シングルマザー生活便利帳』(太郎次郎社エディタス)、『子連れ離婚を考えたときに読む本』(日本実業出版)など。