離婚の理由はさまざま。そして、その後の人生も、選択と決断の毎日です。先行きに不安を覚えたり、失敗して落ち込んだりすることもあるかもしれません。少し息詰まってしまったら、ここに相談しにいらっしゃいませんか?自ら5人の子どもを育て上げた日本シングルマザー支援協会代表の江成道子さんが、本音で、真剣に、あなたの悩みに答えます。

今回は正社員を目指すも、小さい子どもがいることを理由に面接で断られてしまうとお悩みの方からのご相談です。子ども都合で仕事を休む可能性は、ワーキングマザーにとって大きな不安のひとつですが、それは面接で良いアプローチに変えることができると江成さんは語ります。同じ悩みを抱えている方は、読み終えた時にきっと元気が出ているはずです。

今月の相談:子どもを育てながら正社員を目指したいけれど、面接で断られてしまう……

子どもが小さいので、諸手当をもらうために収入を抑えてパートの仕事をしています。35歳という年齢からも、そろそろ将来的に安定した仕事に就きたいと思い、いくつか採用面接を受けています。しかし、子どもが小さく急に休まれたら困ると言われ、なかなか決まりません。

小さい子どもを育てながら正社員になることは、やはり難しいのでしょうか?面接で受かりやすくなる方法や、面接に向けて事前に準備できることなどがあれば教えて下さい。

▽相談者の情報

・離婚/・現在の職業:パート 事務職/・年齢:35
・子どもの数(性別・年齢): 2人(息子5歳・3歳)
・経緯:カフェでパートタイマーとして勤務。月の手取りは8万円ほどで、毎月4万円の養育費を受け取っている。

回答:今は企業が女性人材を求める時代。正社員になるには追い風です

これまで面接を受けた企業は、仕事をせず休みばかり取るママ人材を採用した苦い経験があるのかもしれませんね。でなければ、もしかしたら相談者さん自身が面接で「タブー」を口にしているかもしれません。一緒に見直してみましょう。

相談者へのアドバイス1:「急な休み」というリスクを、管理可能という強みに変える

日本シングルマザー支援協会にも「子どもが小さいから仕事が決まらない」と相談に来る方がいらっしゃいますが、ほぼ全員に共通点があります。それは、面接の際に「子どもの病気などで急に休みを取る時があると思いますが、大丈夫ですか?」と、企業側が負うリスクを自分からアピールしていることです。

就職活動はマッチングなので、わざわざ不安材料を伝える必要はありません。採用する側になったつもりで考えると分かると思いますが、休むことを前提に話をする人を採用したいと思うでしょうか。履歴書に家族構成や年齢は書いてあるので、子育て中で急な休みを取る可能性があることは分かります。迷惑をかけたくないという気持ちがあると思いますが、それは自分の不安を払拭するための質問なのです。

面接は「自分という商品をどれだけ高く買ってもらうか」というアプローチの場所ですから、企業側にデメリットと取られてしまいそうなところを、メリットに変えれば良いのです。

具体的には、「子どもの具合が悪くなった時は?」と聞かれることを想定して、病児保育の登録を済ませている、親兄弟や友人など子どもを見てもらえる場所を確保しているなど、万一の事態にも備えができていることをアピールします。

もうひとつは、子どもの都合で今のパートを休んだ日がどれくらいあったかを数えておきましょう。実際に数えてみると、それほど多くなかったりするものです。低年齢の頃は確かに病気が多いですが、3歳と5歳のお子さんなら、体力もつき病気をしにくい年頃になっているのではないでしょうか。

相談者へのアドバイス2:企業が女性に期待するのは、生活者の視点と変化に対する耐性

企業が面接で見ているのは、「入社したら何をしてくれるのか」「社員とどのような相乗効果を生むか」です。プロジェクトをスムーズに進行し、給料を超えるパフォーマンスをしてくれる人材を求めているので、本来は年齢、性別、家族構成は関係ありません。年に数日休む可能性があるとしても、それ以上の仕事ができることを面接で伝えれば良いのです。

社会的な流れから、女性活躍の場の創出は企業の責任にもなっています。シングルマザーが就職しやすい業界があるかと問われれば、男性だけで円滑に回っている建設現場などパワー系の職業を除き、ありとあらゆる業界とお答えできます。

高度経済成長の波に乗り、男性で構成された組織が日本をここまで押し上げて来たことは確かだと思いますが、男性社会の最大の弱点は「視線が上を向いている」ことです。上司からの評価や組織でのポジションを強く意識し、常に上を目指すことを長年やってきた結果、思いやりの欠如やチームワークの歪みが出てきていることは明らかではないでしょうか。

今は高度経済成長期のようにモノを作れば売れるという時代ではなく、サービスを開発し売る時代です。そのためには暮らしの最前線で生活を回している、いち消費者の視点が必要ですから、視線が上を向いている人には良質なサービスが作れません。

生活を切り盛りしているのは圧倒的に女性が多いので、イノベーションを起こすには女性と、女性を活用するノウハウが必要だと多くの企業が気づき、行動を起こし始めています。事実、女性が多く活躍している業界、例えば保育現場や保険会社、コンサルティング会社などは、先進的な取り組みをしている団体や企業が多いのです。男性に比べ、変化への耐性が強いということもあるでしょう。

それ以外にも人口減少がさらに進行した時、採用を男性だけに頼っている企業は立ち行かなくなります。質と数を保つという意味でも、女性の採用は企業にとって不可欠なのです。子どもがいることでリスク管理能力をアピールでき、企業が積極採用したいと思っている女性であるあなたは、決して不利な立場ではないということです。

相談者へのアドバイス3:面接で好印象を与えるには、「企業視点」で臨むこと

面接で良い印象を与える方法は、「企業が自分に何を求めているか」を意識し質問することです。求人内容はもちろん、HPなどもチェックして企業が求めている人材を理解し、面接官に「私はあなたの会社が求めるものを持っている」ことを伝えましょう。

「質問はありますか?」と聞かれた時、始めに述べたように自分の不安を払拭するための質問をするなど、企業が自分の都合に合わせてくれるかを問うことはNGです。基本的には企業が求めているものに合わせるという姿勢を見せるだけで、ぐんと印象がよくなります。

だからといって、保育園の預かり時間を超えて働くなど、できないことはできないとしっかり伝えましょう。そこは条件が合わないだけなので、不採用に傷つく必要もないのです。

まとめ:専門家の意見も取り入れ、あなた流の最適なアプローチ方法を見つけましょう

35歳は正社員を目指すのに最適だと思います。35歳を過ぎたら、子どもの年齢ではなく自分の年齢を主軸に収入とキャリアのシミュレーションをして、仕事を決めましょう。65歳まで働くとしてあと30年ありますから、新卒と同程度のキャリアが積めますし、組織に貢献もできます。40代になるとそれなりの能力が求められ、ハードルも高くなると考えた方が良いでしょう。

また企業へのアプローチ方法を考える時、第三者視点を持った専門家に相談することをおすすめします。協会にご相談いただければキャリアコンサルタントが1から10までお教えしますし、ハローワークでも「この企業に入るには何をアプローチすれば良いでしょうか」などと具体的な質問をすれば答えてもらえると思います。

専門家の意見を取り入れることは視野を広げてくれますから、相談は甘えではなく面接を乗り越えるための手法として考えてくださいね。面接官から「ぜひあなたと一緒に働きたい!」と言われるような、良い就活ができるよう応援しています。

江成道子

江成道子
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会 代表理事。シングルマザーサポート株式会社代表取締役社長、一般社団法人グラミン日本顧問、武蔵野学院大学講師。自らシングルマザーとして5人の姉妹を育てながら、シングルマザーの自立支援活動を続ける。講演多数。
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会