離婚の理由はさまざま。そして、その後の人生も、選択と決断の毎日です。先行きに不安を覚えたり、失敗して落ち込んだりすることもあるかもしれません。少し息詰まってしまったら、ここに相談しにいらっしゃいませんか?自ら5人の子どもを育て上げた日本シングルマザー支援協会代表の江成道子さんが、本音で、真剣に、あなたの悩みに答えます。

仕事が忙しい時や大事な打ち合わせがある時に限ってかかってくる、保育園や学校からのお迎え要請。ワーキングマザーなら誰もが体験したことがあるでしょう。今回のお悩みは、子どもの早退や休みが重なり上司から苦言を呈されてしまったという方からのご相談です。「職場の理解を得るには」という相談に、江成さんは相談者さん自身の働き方を変えていこうと声をかけます。

今月の相談:子どもの急病で休むことに、職場の理解が得られない……

現在、正社員(事務職)として時短勤務で働いています。人数が少ない職場のため、私以外に子どもを育てながら正社員として働いている女性社員はいません。最近子どもが頻繁に体調を崩し、早退やお休みが何度か続いてしまったのですが、上司からは「大変なのは分かるが、こう頻繁に休まれては困る」と言われてしまいました。

実家も遠く、子どもが体調を崩した時は私が休む以外に対応できる方法がありません。事情を理解してフォローしてくれる同僚も一部いますが、職場全体ではなかなか理解してもらえていないのが実情です。今後も長くこの職場で働きたいと思っていますが、どのように同僚や上司に私の事情を理解してもらえばいいのでしょうか。

▽相談者の情報
・離婚/・現在の職業:会社員 事務職/・年齢:36
・子どもの数(性別・年齢): 1人(息子4歳)
・経緯:現在10:00~17:00の時短勤務で、自身の年収は260万円。毎月4万円の養育費を受け取っている。

回答:今の会社か、転職か。将来をシミュレーションする良い機会です

相談者さんの選択肢は2つ。子どもが病気をしにくくなる年齢まで今の状況は我慢し、フルタイムとして働けるようになるまで待つこと、もう1つは育児と仕事をストレスなく両立できる会社に転職することです。

時短で勤めていることから子育てに重きを置いている方と推察されますが、これから必要になる教育費について、どれくらい現実的に考えていらっしゃるか少し心配です。教育費は15歳前後から大きくかかってきますので、これを機に10年、15年先をシミュレーションしてみて、今の会社に居続けても大丈夫か、より高い収入を得られる会社に移るかを見極める機会にしてもいいと思います。

相談者へのアドバイス1:理解してもらおうと考えるより、自分の働き方を変えましょう

まず、会社に自分の状況を「理解してもらう」という考え方は改めた方がいいでしょう。会社が社員に求めることは、給与以上の成果を出してもらうことです。今の会社で働き続けるにしても転職するにしても、「休んでもいいからあなたにいてほしい」と思われる働き方をしなければなりません。

そのためには、休みを取る時に自分の仕事を止めないようにするには何ができるかを考え、それを会社にしっかりと伝えることです。例えば営業職なら訪問するはずだった営業先にスケジュールの再調整をお願いし、次はいつ行けるかを会社に報告しておく。事務職なら、子どもの熱が下がったら週末に親や友人に預けて、平日休んだ分の穴埋めをするなど、カバーの仕方はいろいろあると思います。このような提案を自分から積極的にすることで、なるべく周囲に負担をかけず休みを取ることができるのではないかと思います。

日頃から人のフォローをすることも心がけておきましょう。「自分は自分、人は人」という考え方で仕事をしているとフォローしあえる関係も作れませんから、できれば自分が余裕のある時に人の仕事を手伝う、状況が許せば残業を代わるなど、先にフォローしておくといいですね。そうすれば、自分が休んだ時にもフォローしてもらえます。

1人で抱え込むような仕事の仕方をしていると、いざという時に誰も助けられませんから、仕事の進捗状況がわかるような書類を作っておいたり、パソコンのデスクトップを整理しておくなど、日頃から情報共有の意識を持っておくことも大切です。全ての職種でできることではないかもしれませんが、長く働きたいと思える職場ならそういった努力を一つひとつしておきましょう。

相談者へのアドバイス2:周りから応援してもらえる人にはこんな共通点がある

どの職場にも、あまり目覚ましい仕事ぶりでもないのに、周囲から応援してもらえる人がいるのではないでしょうか。そういう人に共通する点は、「聞き上手」だったり「上司の考えを汲み取るのが上手い」人です。

協会の相談で「上司に成果を取られてしまいます」という話が出ると、私は「上司にはどんどん成果をあげてください」とアドバイスしています。納得がいかないと思われるかもしれませんが、それができれば巡り巡って自分にもいい結果が跳ね返ってきます。

今の日本の組織は、あらゆることが上から下に流れます。組織の上部から直属の上司が評価されると、部署全体の評価につながり、その上司に自分が評価されることで自分の働きやすい環境が整っていき、自分が人を評価する立場になると、今度は自分が会社から評価されるようになっていきます。自分の上司が評価されるような働き方をできるということが、周囲から応援してもらえる人になれるということです。

こうした働き方は組織内での出世欲が強くなく、協調性のある女性こそが得意とする働き方だと思います。目立とうとするより人のサポートをできることが、周りから応援してもらえる人の条件。上司をクライアントだと思って、日々の業務に当たってみてください。

相談者へのアドバイス3:転職先を見極めるにはエージェントの利用がおすすめ

次に、転職する場合のアドバイスをお伝えします。相談者さんは小さな会社の事務員とのことですが、会社の中にたった1人しかいないような役割は、休んだ時に誰にもフォローしてもらえませんから避けた方が賢明です。営業職はスケジュール調整ができれば休みを取ることが可能ですし、事務職でも事務に携わる人が複数いるような会社なら、普段からフォローし合うことができます。

しかし、面接の時に休みを取りやすい環境かどうかを確認するのは、「自分の都合に会社を合わせる」ことになるのでよくありません。ではどうするかというと、転職サイトなどに登録してエージェントから情報収集するのがおすすめです。「勤めた会社がブラックで……」と協会に相談しに来られる方のほとんどは、自分で見つけた求人やハローワークを通じて職を得ています。社内の人間関係や実際の勤務状況は、求人情報だけでは見えないものです。

その点エージェントは企業としっかり関係性を築いていますから、内部の雰囲気や事情はよく把握していると思います。育児中でも働きやすい環境か、休みは取りやすいか、気になることは徹底的にエージェントに確認し、面接では聞かない。これも1つのテクニックです。企業をしっかり見極めるという意味でも、エージェントを利用してみましょう。

まとめ:あなたのこれからの働き方が、未来のより良い社会につながります

今は男女の差を感じることなく働ける会社もあれば、昭和的価値観がはびこる会社も多く残る、いわゆる過渡期です。もう少し時代が進めば、女性が子育てしながら働くことへの理解も進むと思いますが、現状はまだまだ男性社会と言わざるを得ません。

しかし女性に社会参加、男性に育児参加が求められている今、時代をより良い方向に変えていけるのは実は相談者さんのような人なのです。子育て中の女性として社会に歓迎される働きをすることが、次の子育て世代が働きやすい社会をつくることにつながっていきますから、ぜひ自信を持って仕事に取り組んでほしいと思います。

それから、当協会のように無料相談窓口を設けているところや自治体のサービスなどを利用して、収入やライフプランのシミュレーションも行ってみてくださいね。より良い未来を選び取るための判断材料になると思います。

江成道子

江成道子
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会 代表理事。シングルマザーサポート株式会社代表取締役社長、一般社団法人グラミン日本顧問、武蔵野学院大学講師。自らシングルマザーとして5人の姉妹を育てながら、シングルマザーの自立支援活動を続ける。講演多数。
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会