シングルマザーで経済的にあまり余裕のない人は、資格を取得することで、収入アップにつながったり、より良い条件の職場への転職に役立てることができたりする可能性があります。ここでは、シングルマザーにおすすめの10種類の資格と、資格取得に役立つ公的支援制度をご紹介しますので、スキルアップのためにぜひお役立てください。

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シングルマザーが資格を取得するメリット

資格を取得するためには、時間をかけて勉強したり教材などを買う費用が必要だったりと負担が大きいイメージがあるうえ、シングルマザーはひとりで子育てをして家事や仕事をこなさなくてはならないため、資格取得のハードルは高いと思われがちです。しかし、実はシングルマザーには資格を取得するメリットがいくつかあります。

採用される可能性が高まる

求人情報の中には、採用条件が特になく「未経験者でも可」といった仕事がありますが、そういった誰でも応募できる求人は応募者が多いため、採用される可能性は低くなる傾向があります。仮に採用されても、十分なお給料がもらえない可能性もあるでしょう。

しかし、資格を取得することで、たとえ未経験の仕事であっても採用してもらえる可能性を高めることができます。というのも、職業によっては資格を保有していなければできない仕事(これを業務独占資格といいます)があり、誰でも採用されるわけではないからです。

給料が上がる可能性がある

資格を取得すると、資格がない人と比べてお給料が高くなることが期待できます。企業によっては毎月のお給料に「資格手当」がプラスされることもあり、取得した資格によって1,000円~3万円といった金額が決められています。たとえば日商簿記検定で3,000円前後、ファイナンシャルプランナー2級で1万円前後の手当が受け取れるといった具合です。

また、正規雇用ではなくパートで勤める場合であっても、資格がない人に比べて時給が高額になったり、時給は同じでも短時間勤務で採用してもらえたりするなど、勤務条件で優遇されるメリットがあります。

転職先が決まりやすい可能性

現在すでに働いていて転職を考えている場合、転職先は過去の職歴などから考えることが多いですが、資格を取得していれば転職先の幅を広げることができます。現在の仕事に活かせる資格を取得してスキルアップを目指すのも良いですし、まったく別の分野の資格を取得して新しい業種で働くこともできます。仕事に必要な資格を持っていると、転職先を決める場合にも有利になるでしょう。

シングルマザーが利用できる国の支援制度

資格を取得すると就職や転職に有利になることがわかりましたが、通常、資格を取得するためには時間もお金もかかるものです。日々忙しくしているシングルマザーには負担が大きいと感じたり、教材などにお金をかけるのが難しかったりするかもしれません。

そういう場合には、資格取得のための費用を支援してくれる公的制度を活用することをおすすめします。シングルマザーが利用しやすい公的制度を紹介していきますので、支援の内容や申請条件などを確認していきましょう。

自立支援教育訓練給付金

自立支援教育訓練給付金とは、シングルマザーなど、ひとり親家庭の親が資格を取得する際にかかる講座受講料などの費用を、国や自治体が支援してくれる制度です。対象となる講座を受講し修了した場合に、かかった費用の60%の補助を受けることができます。ただし、給付金はすぐに支払われるわけではなく、受講費用はあらかじめご自身で支払う必要がありますのでご注意ください。

給付金を申請する条件

自立支援教育訓練給付金を受給できるのは、次の条件を満たしている人です。

・20歳未満の子どもを扶養している
・児童扶養手当を受給しているか、または同程度の所得水準にある
・これまでの就業経験や技能、資格取得状況、労働市場の状況などから判断して、教育訓練講座の受講が適職に就くために必要であると認められる

支給額

自立支援教育訓練給付金の支給額は、対象となる教育訓練を受講し修了した場合に、かかった経費の60%を受給することができます。下限は1万2,001円、上限は修学年数×20万円となり、最大80万円までです。なお、雇用保険法による教育訓練給付金の受給者に該当する人は、その支給額との差額が受給金額となります。

給付金を受給できるかについては、受講する前に自治体から講座の指定を受ける必要があるため、必ず事前にお住まいの自治体の窓口に相談してください。

対象となる講座

自立支援教育訓練給付金事業の対象となる講座は、雇用保険制度における教育訓練給付の指定教育訓練講座と、地域の実情に応じて対象とされる講座があります。対象講座はさまざまな分野のものが多数取り揃えられているので、ここですべてを紹介することはできませんが、参考までに一部を紹介します。

講座の分野 資格名
事務関係 実用英語技能検定、TOEIC、簿記検定試験など
輸送・機械運転関係 普通自動車第二種免許、中型自動車第一種・第二種免許など
医療・社会福祉・保健衛生関係 介護職員初任者研修、看護師、美容師、歯科衛生士など
情報関係 Microsoft Office Specialist、CAD利用技術者試験など
専門的サービス関係 ファイナンシャルプランニング技能検定、社会保険労務士など
営業・販売関係 調理師、宅地建物取引士資格試験など
製造関係 製菓衛生師
技術・農業関係 土木施工管理技士、測量士補など
大学・専門学校等の講座 ほか 修士・博士、科目等履修、職業実践専門課程など

このほかにもさまざまな資格が対象となっていますので、さらに詳しく知りたい人は厚生労働省の「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について」で確認してみてください。

高等職業訓練促進給付金等事業

前章で紹介した「自立支援教育訓練給付金」は、所定の講座を受講し修了した場合に受け取れる給付金ですが、資格の中には看護師や介護福祉士などのように時間も費用もかかるものがあり、その間の生活費などが足りなくなる可能性があります。そこで、資格取得までの生活費や養成機関に入学する際の負担を軽減するものとして、「高等職業訓練促進給付金等事業」を活用することができます。

高等職業訓練促進給付金等事業には、「高等職業訓練促進給付金」と「高等職業訓練修了支援給付金」のふたつがあり、それぞれ次のような給付内容となっています。

給付金名 給付内容
高等職業訓練促進給付金 資格取得のため1年以上養成機関で修業する場合において、修業期間中の生活に対する負担軽減のために支給される
高等職業訓練修了支援給付金 入学時の負担軽減のために支給される

では、申請条件や支給額、支給期間、対象講座などを確認していきましょう。

給付金を申請する条件

高等職業訓練促進給付金等事業から給付金を受け取ることができるのは、次の条件を満たしている人です。

・ひとり親家庭の親で、現在20未満の子どもを扶養している
・児童扶養手当を受給しているか、または同等の所得水準にある
・養成機関で1年以上のカリキュラムを修業し、対象資格の取得が見込まれる
・仕事や育児と修業の両立が困難である

支給額、支給期間

高等職業訓練促進給付金等事業の支給額と支給期間について、➀高等職業訓練促進給付金と、②高等職業訓練修了支援給付金にわけてまとめました。

➀高等職業訓練促進給付金

世帯の別 支給金額(月額) 支給期間
市町村民税非課税世帯 10万円(最後の12カ月は14万円) 修業期間の全期間
(上限4年)
市町村民税課税世帯 7万円(最後の12カ月は11万500円)

参考:厚生労働省 – 母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について

市町村民税の非課税世帯の場合は毎月10万円を、課税世帯の場合は毎月7万円を修業期間中に受給することができます(最長4年)。

②高等職業訓練修了支援給付金

世帯の別 支給金額(月額) 支給期間
市町村民税非課税世帯 5万円 修業終了後
市町村民税課税世帯 2万5,000円

参考:厚生労働省 – 母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業の実施について

修了終了後に、市町村民税非課税世帯では5万円を、課税世帯では2万5,000円を受給することができます。

対象となる講座(資格)

高等職業訓練促進給付金等事業の対象となる講座(資格)は、次のような特徴があるものです。

・就職の際に有利となるもの
・養成機関において1年以上のカリキュラムが予定されているもの

対象となる資格の例としては、看護師、介護福祉士、保育士、歯科衛生士、理学療法士、保健師、助産師、シスコシステムズ認定資格、LPI認定資格などがあります。

なお、高等職業訓練促進給付金等事業は、自治体により制度内容が異なったり、制度自体を導入していなかったりするところもあるため、利用する際には自治体の窓口や公式サイトなどで確認することをおすすめします。

ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業

ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業は、先ほど紹介した高等職業訓練促進給付金や高等職業訓練修了支援給付金を受給する人を対象とした貸付制度です。養成機関を修了して、資格取得日から1年以内に就職し、取得した資格が必要な業務に5年間就業すると返済が免除されます(申請手続きが必要です)。

なお、条件が満たせず返済が必要な場合でも、連帯保証人を立てられる場合は無利息での借り入れができ、連帯保証人がいなくても年1.0%という低金利で借り入れすることができます。貸付金には「入学準備金」と「就職準備金」とがあり、それぞれ次のような内容となっています。

資金の種類 貸付対象者 使い道 貸付金額
入学準備金 訓練促進給付金の支給を受ける方 養成機関の入学金、教材費、交通費など 50万円
就職準備金 訓練促進給付金の支給を受け、養成機関を修了し資格を取得した方 就職に必要な転居費用、被服費用など 20万円

参考:東京都社会福祉協議会 – ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業

高等学校卒業程度認定試験合格支援事業

高等学校卒業程度認定試験合格支援事業は、より良い条件で就職や転職ができる可能性を広げ正規雇用を目指すことを目的とした、ひとり親家庭の学び直しを支援するための支援制度です。高等学校卒業程度認定試験合格のための講座を受け、修了・合格したときに受講にかかった費用の一部を受給できます。

利用できるのは次の条件を満たす人です。

・ひとり親家庭の親または児童
・児童扶養手当の支給を受けているか、同等の所得水準にある
・高等学校卒業程度認定試験に合格することが適職に就くために必要と認められる

給付金は受講修了時と合格時に分けて支給され、合計で受講費用の60%が受給できます(ただし上限15万円まで)。

給付金名 支給金額
受講修了時給付金 受講費用の40%(上限10万円)
合格時給付金 受講費用の20%(受講修了時給付金と合計で上限15万円)

参考:厚生労働省 – 高等学校卒業程度認定試験合格支援事業について

マザーズハローワーク事業

マザーズハローワーク事業は、仕事と家庭を両立したいシングルマザーなどをサポートするための制度で、「マザーズハローワーク」やハローワークに設置されている「マザーズコーナー」で利用することができます。

「子どもの保育園の送迎に間に合うような勤務時間にしたい」「子どもの体調が悪くなったときや学校行事などに休暇が取りやすい職場にしたい」などの希望に沿った就職先を紹介してくれるため、子育てと両立しやすい仕事を探せる可能性があります。

また、パソコン講習や面接対策など、就職に役立つセミナーも開催されており、託児サービス付きのセミナーもあるため、小さな子どもがいる人でも安心して活用できます。

ただし、マザーズハローワークはすべての都道府県に設置されているわけではありません。また、マザーズコーナーもすべてのハローワークに設置されているわけではないため、お住まいの自治体に設置されているかどうかは、厚生労働省の「マザーズハローワーク事業・支援メニュー」で確認してみましょう。

シングルマザーが支援制度を使って取得できるおすすめ資格10選

ここからは、シングルマザーにおすすめの資格を厳選して10種類紹介していきます。いずれの資格も公的支援制度を利用できるものなので、費用負担を軽減することができます。

介護福祉士

介護福祉士は、介護を必要とする人の食事・排せつ・着替え・入浴など、日常的な身の回りのことをサポートする仕事です。介護業界は常に人手不足であるうえ、高齢化に伴い今後も需要のある職種といえます。

仕事内容は、要介護者の身の回りの世話の他にも、要介護者の家族へ在宅介護のアドバイスをしたり介護用品の説明などを行ったりすることもあります。さらに、職場のリーダーとしてほかのメンバーを取りまとめる役職に就くこともできます。

資格を取るためには、まず介護職員初任者研修の資格を取得する必要があります。その後、実務を3年以上経験し「実務者研修」の資格を取得すると、介護福祉士の国家試験を受験する資格が得られます。介護福祉士の資格を得るためには、特別な養成機関に入学する必要はなく、介護施設等で働きながら実務を積むことができるので、仕事と家庭・育児を両立しなければならないシングルマザーに適した資格といえます。

介護福祉士の資格取得は簡単なものではありませんが、実務を着実にこなしていくことでより取得できる可能性を高めることができます。介護業界に勤め続けていくのであれば、ぜひ取得したい資格といえるでしょう。

保育士

保育士は、ご自身の子育て経験を活かせるためシングルマザーに人気のある資格のひとつです。保育士というと保育園の先生というイメージが強いですが、実は保育園以外にも幼稚園・企業内保育所・託児所・児童福祉施設・学童保育・児童館・放課後等デイサービスなど、さまざまな勤務先があります。プラスαのスキルがあれば、幼児教室や子ども服専門店、子ども専門写真館のスタッフとして勤務できることもあります。

保育士の資格を取得する方法には、大学や専門学校で学ぶ方法のほかに、国家試験の保育士試験に合格する方法があります。シングルマザーが保育士の資格を取得する場合、後者の保育士試験に合格する方法になることがほとんどですが、最近は通信教育でも講座がありますので、独学で取得することもできます。

ただし、保育士の合格率は比較的低いとされており、令和2年度の合格率は約24%(※)となっているため、通信教育などでしっかりと知識を身につけたうえで試験に臨むことが大切です。取得は容易ではありませんが、ご自身の経験を活かせる仕事なので、シングルマザーにはぜひチャレンジしていただきたい資格のひとつです。

※厚生労働省「保育士試験の実施状況(令和2年度)

宅地建物取引士

宅地建物取引士は、不動産取引におけるスペシャリストとして、不動産契約の際に顧客に対して内容を説明したり契約の締結などを行ったりします。不動産取引に関する大切な情報を提供するためや、不動産取引を適正なものにするためには必要不可欠な資格です。

宅地建物取引士の資格を取得するには、予備校に通学する・通信教育を受ける・独学で学ぶという選択肢がありますが、シングルマザーが効率的に勉強するには予備校の通信教育がおすすめです。仕事や家事・育児の合間にコツコツ勉強することができるためです。

そのうえ、宅地建物取引士は年齢や学歴などの条件がなく受験できるため、シングルマザーでも挑戦しやすいといえます。仮に不動産業界に就職しない場合でも、宅地建物取引士の資格を所有していると採用に有利になる可能性があるうえ、ご自身にとっても不動産の知識が得られるのはメリットのあることです。

しかし、国家資格である宅地建物取引士の難易度は高く、2021年の合格率は17.9%(※)という結果となっています。さらに、資格登録する際には実務経験が2年以上必要とされ、資格を完全に取得するまでの道のりは易しくはありません。それゆえ、取得できれば大きな強みとなる資格と考えられます。

住宅新報web

調理師

調理師は、飲食店などで調理などの業務をする仕事で、調理師として名乗るためには調理師免許を取得している必要があります。仕事内容は、料理をするだけでなく職場によっては仕入れや新メニューの開発、衛生管理など調理に関するさまざまな内容があります。具体的な職場としては、レストランなどの飲食店のほか、宿泊施設・企業の社員食堂・病院内の飲食スペースなどもあります。

料理が好きで新メニューにも興味があるシングルマザーの場合、おすすめの資格のひとつです。料理は家事のひとつなので経験を活かしやすく、学んで得た知識は子どもの食育などにも利用できるのでメリットのある資格といえます。

調理師免許を取得する方法には、調理師専門学校など卒業する、または、実務経験が2年以上あり調理師試験に合格するという2つの方法があります。シングルマザーが取得する場合は後者の調理師試験に合格する方法が多いでしょう。

調理師免許試験の合格率は比較的高く、平均60%ほどで、令和2年度は70.2%(※)という高い合格率となっています。取得しやすい資格で身近に役立てられるものでもあるため、シングルマザーにおすすめの資格です。

※全国調理師養成施設協会「調理師養成施設関係統計『第6-2表 年度別(10年間)・都道府県別調理師試験合格率』

製菓衛生師

製菓衛生師は、洋菓子や和菓子といったジャンルを問わず、製菓技術や知識が身についていることの証明となる国家資格です。いわゆるパティシエとして働くには製菓衛生師の資格が必須なわけではありませんが、資格を取得している場合は採用において有利になります。

製菓衛生師の受験資格は、「養成施設に1年以上通う人」か「義務教育を卒業し2年以上の実務経験がある人」が対象となります。シングルマザーの場合は、働いてお給料をもらいながら実務経験が積める後者の方法がおすすめです。

製菓衛生師の勉強で得た知識は、就職や転職で活かせるほか、子どもと一緒にお菓子作りができるなど子育てに活かせるメリットもあります。子どものおやつを手作りで用意したい人などは趣味と実益が兼ねられておすすめです。

製菓衛生師も国家試験ですが、難易度は中程度で60%前後となっており、たとえば東京都では60.6%(※1)、関西広域では75.2%(※2)といった合格率となっています(いずれも令和3年度)。

※1:東京都福祉保健局「東京都製菓衛生師試験合格発表
※2:関西広域連合「東京都製菓衛生師試験合格発表

歯科衛生士

歯科衛生士は、歯科医師のサポート業務・フッ化物塗布や歯石除去などの歯科予防処置・歯科保健指導といった業務を行うことで、人々の歯・口腔の健康づくりをサポートする専門職です。医療系の資格であるものの、夜勤がなく子どもに負担をかけずに働けるため、シングルマザーにおすすめの職業です。資格取得のために得た知識は、子どもやご自身の歯・口腔の健康づくりにも役立てられるので一石二鳥です。

歯科衛生士の資格を取得するためには、まず歯科衛生士の養成機関(専門学校や大学など)で知識や技術を学びます。卒業すると国家試験の受験資格が得られ、試験に合格すれば資格取得となります。養成機関に通学しなければ受験資格が得られないので、シングルマザーにとってハードルが高くなってしまうかもしれませんが、養成機関の中には夜間専門学校もあるので、時間がとれる人はチャレンジしてみるのも良いでしょう。

歯科衛生士は受験資格を得るまでが大変ですが、合格率は毎年90%を超えるほど非常に高く、令和3年も93.3%と高い合格率となっています。医療系の専門職に興味があり、人と接することが好きな人におすすめの資格といえます。

栄養士

栄養士は、学校や保育園・幼稚園、企業などで、給食メニューの作成や調理、栄養管理などを行う仕事です。また、病院や食品製造業などで健康づくりに役立つ食生活のアドバイスをすることもあります。栄養士の勉強をすることで、資格を取得できるだけでなく家庭での食事にも知識を活かすことができるので、シングルマザーにおすすめの資格のひとつです。

ただし、栄養士の資格を取得するためには養成施設に通学する必要があり、現在指定認可されている養育施設はすべて昼間の学校となっているため、シングルマザーにはハードルが高いかもしれません。しかも、最短でも2年間は通学する必要があります。とはいえ、卒業さえできれば試験を受けなくても資格を取得できるので、試験を受けたくない人にはメリットといえます。

なお、栄養士の上級資格として「管理栄養士」という資格があり、栄養士の資格を取得し実務経験を1~3年積んだうえで国家試験を受験し、合格すると資格を取得することができます。栄養士からスキルアップし、さらに就職の選択肢を広げたい人はチャレンジしてみるのも良いでしょう。

登録販売者

登録販売者は、2009年の改正薬事法によって新設された資格で、ドラッグストアなどで医薬品を販売する仕事です。以前は薬剤師の不足により店頭で薬品を販売したりアドバイスをしたりできる人が限られていましたが、登録販売者が新設されたことで薬剤師の負担が減り、利用者にとっても相談しやすい状況となっています。まだ新しい資格なので、何か資格を取得したいと考えているシングルマザーにとって選択肢のひとつになるでしょう。

具体的な仕事内容は、薬局やドラッグストア、ホームセンターなどで医薬品を販売することがメインです。また、利用者に薬についての適切なアドバイスをしたり、副作用や効能の説明をしたりすることも大切な業務です。医薬品の知識が幅広く必要とされますが、やりがいのある仕事です。

資格を取得するためには、登録販売者の試験に合格し都道府県知事の登録を受ける必要があります。試験は都道府県ごとに行われるため、合格率もそれぞれ異なりますが、令和2年の全国平均は41.5%(※)となっています。難易度としては中程度といえますので、十分取得できる可能性があります。独学で受験する人もいますが、通信教育などもありますので、ご自身に合った勉強方法を選ぶと良いでしょう。

※厚生労働省「令和2年度 登録販売者試験実施状況

医療事務

医療事務は、病院などの医療機関で主に事務や会計などの仕事を行うための資格です。医療事務の仕事は資格が無くてもできますが、資格を取得していることで採用に有利になる可能性があります。医療機関は全国どこにでもあるため就職先に困らないことや、勤務時間に融通をきかせやすいこと、ブランクがあってもあまり影響がないといった特徴があるため、シングルマザーに向いている資格のひとつです。

医療事務の具体的な仕事内容は、病院の受付や会計、レセプト(診療報酬明細書)の作成、クラーク業務(患者、医師、看護師間の橋渡し役)などがあります。明るくて、ていねいな対応ができる人に向いている職業です。

医療事務関連の資格にはさまざまな種類がありますが、中でももっとも受験者数が多いのが「医療事務検定試験」です。試験は毎月実施され、2020年の合格率は92.2%(※)となっており難易度は低いといえます。試験はほかにも「医事コンピュータ能力技能検定試験」「レセプト点検業務技能検定試験」「調剤薬局事務検定試験」などがあり、いずれも70~80%といった高い合格率となっていますので、これらの資格を取得することでよりスキルアップを目指すこともできます。

医療機関はシングルマザーが働きやすい環境のところが多いので、家事や育児とうまく両立したい方におすすめです。

日本医療事務協会 医療事務検定情報サイト

理・美容師

理容師や美容師は、ヘアカットやパーマなど、ヘアースタイル全般に関する仕事ですが、両者は同じような仕事に見えて若干異なるところがあります。理容師は、理容師法の決まりに従って頭髪の刈込のほかに顔そりなどができる一方、美容師は美容師法の決まりに従ってパーマやヘアセット、着付けなどができます。髪に関することは共通ですが、顔そりは理容師のみ、着付けは美容師のみの業務となっています。

理容師や美容師の資格を取得すれば、街中の理容室・美容室で就職できるうえ、いずれは独立することもできるでしょう。自分の理容室や美容室が持てれば定年もないので、仕事を一生続けられるというメリットもあります。

理容師や美容師になるには、養成機関に2年通学または3年通信教育を受けて知識や技術を習得し、実技・学科試験に合格する必要があります。シングルマザーの場合、通学は難しいケースが多いので、通信教育を選択することになるでしょう。

資格の難易度は中程度で、令和3年の合格率は理容師が64.1%(※)、美容師が60.1%(※)となっています。しっかり勉強すれば十分に取得できる資格といえます。人と接することが好きで、おしゃれに興味のあるシングルマザーにはおすすめの資格です。

理容師美容師試験研修センター

就職先が決まりやすくなるポイント

就職や転職を有利に進めていくためには、これまで紹介してきたような資格を取得するほかにも、できる限りの対策を取っておくことが大切です。ここでは3つのポイントに絞って説明していきます。

病児保育の登録を済ませておく

小さな子どもを育てているシングルマザーは、子どもの体調が悪くなったときの預け先をいくつか探しておくことをおすすめします。実家の親御さんなどを頼れると安心ですが、親御さんも仕事をしている場合は子どものために時間を作れないこともあるでしょう。

そういったときに役立つのが病児保育や病後児保育です。病児保育は病気の子どもを預かってくれる保育サービスで、病後児保育は病気から快復している最中の子どもを預かる保育サービスです。これらの保育サービスは自治体が主に行っているため、すべての自治体に整備されているわけではなく、未導入の自治体もあります。そのため、まずはお住まいの自治体で病児保育などのサービスがあるかどうかを確認することから始めましょう。

預けられる子どもの年齢や病状などは自治体により異なり、乳幼児や小学校在学中の子どもが対象のところもあれば、小学校3年生までが対象というところもあります。

また、保育サービスの利用料金は自治体により異なり、一般的には1日あたり2,000円~3,000円といった金額に設定されていることが多いです。住民税非課税世帯は無料または半額になるという自治体もあるので、料金についても担当課(福祉課、保育課など)に確認してみてください。

ベビーシッターや頼れるサポートを探しておく

病児保育は自治体によっては制度がないところもあるため、いざというときのために親や友人などに協力を求めておくと安心です。しかし、親や友人なども都合がつかなければ子どもを預かってもらうことができないため、念のためにベビーシッターに登録しておくのも良いでしょう。

ベビーシッターには、マッチング型と派遣型の2種類があり、それぞれ利用方法が異なります。マッチング型は、利用者がベビーシッター会社に登録されているベビーシッターを選んで依頼する形態で、個人間で契約を結ぶためトラブルが発生した場合は双方で解決しなければなりません。一方、派遣型は利用者のニーズに合わせてベビーシッターを選んで派遣してくれる形態で、利用者とベビーシッター会社が契約を結ぶため、トラブル発生時には会社が対応してくれます。

料金の相場は、マッチング型で1時間当たり1,500円~2,500円程度、派遣型で2,000円~3,000円程度となっており、派遣型のほうがやや高額の傾向があります。また、早朝や深夜に依頼する場合は割増料金がかかることもあります。ベビーシッター会社にはさまざまな種類があるので、料金や対応時間など事前に調べて、できれば登録まで済ませておくと良いでしょう。

自分のアピールポイントを整理しておく

就職や転職の際には、担当者と面接をすることになりますが、その際にご自身のアピールポイントについてしっかりと伝えられるようあらかじめまとめておくと良いでしょう。アピールポイントを明確にすることの重要性は、シングルマザーに限ったことではありませんが、企業の中にはシングルマザーというだけでマイナスなイメージを持つところもあるため、ご自身が就職することでどのようなメリットがあるのかを伝えられることが大切です。

たとえば、保有している資格、前職での実績、入社後にはどのような点で企業に貢献できるかなどを詳しく書き出してまとめてみましょう。できれば面接の本番に備えて口に出して練習しておくと安心です。

シングルマザーは資格を取得して就職や転職、スキルアップに活かそう

シングルマザーの給料アップや就職・転職に役立つ資格にはさまざまなものがあります。また、取得のためにかかった費用を補助してくれる公的制度もあるため、受給条件を確認し上手に利用したいものです。資格を取得すれば将来のプランを立てやすく生活もゆとりあるものになるため、ご自身にぴったりの資格を見つけてぜひチャレンジしてみてください。