離婚の理由はさまざま。そして、その後の人生も、選択と決断の毎日です。先行きに不安を覚えたり、失敗して落ち込んだりすることもあるかもしれません。少し息詰まってしまったら、この企画に相談にいらっしゃいませんか? 自ら5人の子どもを育て上げた日本シングルマザー支援協会代表の江成道子さんが、本音で、真剣に、あなたの悩みに答えます。

今回は、以前から仲良くしていたママ友家庭と子どもに接する時の考え方が合わなくなり、親しい交流を控えたいと考えている相談者さんの登場です。一見よくある話のようですが、江成さんが着目したのはママ友との関係より、相談者さん自身の気持ちの状態。相談者さんが今の窮屈さから抜け出すためにできることを、教えてくださいました。

今月の相談:ママ友との関係が窮屈に。距離を取るためにどう話をしたらいい?

子どもが保育園の頃から付き合いがあるママ友がいます。私の急な残業の時や子どもの急病時に迎えに行ってくれたり、少しの時間預かってくれたりと頼りになるママ友です。彼女の旦那さんも、休みが合えば私の息子と同級生の息子さんとキャッチボールをしてくれるなど、家族ぐるみで仲良くしてくれています。

しかし子どもが大きくなるにつれ、ゲームで遊ぶ時間やお菓子のことなど教育方針の違いを感じ始め、子どもを預け合うことが負担になってきました。子ども同士も仲が良いため引き続きお付き合いしていきたいとは思っていますが、どのようにママ友に伝えればいいでしょうか……。

▽相談者の情報
・離婚/・現在の職業:パート/・年齢:37
・子どもの数(性別・年齢): 2人(息子8歳・娘6歳)

回答:今の悩みの深層に別の悩みの可能性。ストレスの原因を探ってみましょう

ご相談内容を拝見して、相談者さんは少しお疲れなのかな、という印象を持ちました。お菓子の量やゲーム時間の違いを気にされていますが、子どもたちが1日のうちに一緒にいる時間は限られていますから、そこまで大きな問題ではないように思えます。

人は、深い悩みやストレスを抱えていると視野が狭くなります。と同時に、本当に些細なことが気になり始めたりもします。私が思うのは、「相談者さん自身が、他に大きなストレスや不安を抱えてはいないか?」ということです。

悩みの根本を突き止めるため相談窓口を活用する

あくまで私の推測ですが、ママ友家庭と付き合うなかで、自分の家庭に足りないものを感じたりしていませんか。例えば父親がいないことに罪悪感や寂しさを感じたり、子どもが欲しいものを買い与えられない経済状況に焦りを感じたり……。教育方針の違いという悩みの奥底に、相談者さん自身が抱える別の悩みや将来への不安があり、そのストレスで気持ちが疲弊しているのではないかと思います。

もし心当たりがあったら、自分の辛さを生み出している原因を探ってみましょう。そのためには、今回ここに相談を寄せていただいたように、いろんな人に相談してみることです。

相談相手は育児やひとり親、メンタルヘルスに関する知見を持っている人がおすすめです。今の相談者さんの気持ちを理解したうえで、なぜそのような気持ちに陥っているのかを一緒に考え、原因を洗い出せる可能性が高まります。

例えば自治体に設けられている相談窓口や、地域の子育て相談、日本シングルマザー支援協会のような団体の相談窓口でもいいでしょう。原因が分かれば行動に移すことができるので、根本的な不安の解決につなげることができると思います。

違いを受け入れることができれば、気持ちは楽になる

考え方の違いは、社会の中で生きていく限り何度も直面する問題です。「考え方が合わない人とは付き合わない」というスタンスでは、この先も同じようなことが起こるたびにつまずいてしまうでしょう。また、「こうあるべき」という理想が強すぎても、人や自分を追い込んでしまい、あまり良い結果を招きません。

気持ちを楽に保つために、違いを受け入れることができるようになると良いと思います。
その第一歩が、「この人はなぜこう考えるのか?」と想像を働かせ、相手の立場から物事を考えることです。

今回のご相談だと、例えばママ友が子どもたちに際限なくお菓子を与えているとします。「イヤだな、理解できない」という気持ちはいったん置いておいて、「どうしてあんなにお菓子を与えるんだろう?」と考えてみる。もしかしたら夕飯作りが億劫でお菓子を多めに与えているとか、忙しいから静かにさせたい、ママ友自身がお菓子好きだから制限したくない、という理由を思いつくかもしれません。

これは相談者さんの想像に過ぎないのですが、「そうか、私はそんな風にはしないけど、立場が違えばそういうこともあるのかもな」と思えたらどうでしょうか。ちょっと気持ちが楽になりませんか?相手の気持ちが想像できると拒絶の気持ちが和らいで、安心感を得ることができます。この安心感が大切なんです。

ママ友の気持ちを深く理解しようと努める必要はありません。相手を少し思いやって、「いろんな人がいるんだな」というところに着地できれば充分です。

子どもにも違いを教える良い機会。納得できるよう話をして

家庭の教育方針が定まってきているタイミングですから、今回の件は、子どもにも違いを教える良い機会です。

お子さんが違いに直面した時、「ふーん、変なの」という拒絶や「いいな、うちは違うけど……」と比較する気持ちを抱くより、「そうなんだ、ぼくのうちはこうだよ」と、相手を尊重しつつも自分の考えを伝え、守っていくことができるようになると良いですよね。

そのために、「〇〇くんちはたくさんお菓子を食べられるけど、うちのお約束はなんだっけ」と違いの例を挙げて、それぞれの家にそれぞれの方針やルールがあり、「正解や絶対」はないことを伝えます。お子さんが「どうして〇〇くんちとは違うの?」と聞いてきたら、「お菓子の量を決めているのは健康のため」とか、「ゲームの時間が1時間なのは寝る時間をきちんと取るため」など、ルールを決めた理由を、お子さんが納得できるように伝えましょう。

仮に、ママ友家庭と今後の付き合いは控えておいた方が良さそうという事情が出てきたなら、子どもを通じて、家ではなく外で遊ぶというルールに切り替えてみてはどうでしょうか。母親同士でもお付き合いがあるようですが、避けるのではなく、自分から連絡は取らないという「少し遠い付き合いの友人」にシフトしていけばいいかと思います。

自分の家族に自信を持ち、お互い様の気持ちで気楽にいきましょう!

あなたとお子さんでつくる家族という小さな集団は、唯一無二のもの。自分の軸がぶれて周りと比較し始めると、辛いことがたくさんあります。家族はお子さんの今後のモデルになるものですから、ぜひ自分の家族に自信を持ってください。

そして、関わってくださる周りの人たちとはお互い様の気持ちを持って、心を適度に開いたり閉じたりしながらやっていきましょう。

「今の状況を変えたい」と思っているあなたには、良い方向に進んでいける力があります。いろんな人と話をしたうえで新たな課題が見えてきたら、また相談しにきてくださいね。きっと力になれると思います。

江成道子

江成道子
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会 代表理事。シングルマザーサポート株式会社代表取締役社長、一般社団法人グラミン日本顧問、武蔵野学院大学講師。自らシングルマザーとして5人の姉妹を育てながら、シングルマザーの自立支援活動を続ける。講演多数。
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会