皆さん、こんにちは。弁護士の高橋麻理(たかはし・まり)です。このたび、ここ、ママスマで「ママ弁護士流 法律の幸せレシピ」というコーナーを作って頂き、発信をしていくことになりました。今回は、初回なので、私が弁護士としてどんな仕事をしているか、そしてその仕事の中で大切にしている考え方などについてお話しすることで、自己紹介をさせて頂きたいと思います。

「自己紹介よりも、早く本題に!」

もしかしたら、「いやいや、あなたの話はいいから、離婚するために役立つ知識について説明してよ」と思われるかたもいるかもしれません。もちろん、今後、そういったお話をしていきたいと思っています。

でも、私は、離婚にまつわる具体的な知識以上に大事なことがあると思っていて、まず、今回は、そんな話をしてみたいなと思います。

離婚問題のサポートはわたしのライフワーク

私は、元検察官です。検察官ってイメージ湧きますか?昔、大人気俳優さんが検察官役をして大ヒットしたドラマがありましたが、検察官というのは、刑事事件が発生したときに、その捜査をしたり、起訴した場合の裁判を担当したりする仕事です。私は、その検察官を6年間ほど務めた後、キャリアチェンジをして、2011年に弁護士になりました。

今は、都内にあるAuthense(オーセンス)法律事務所で弁護士として働いています。弁護士の仕事は幅広く、私も、いろいろな仕事をしています。いろいろな仕事がある中で、私がライフワークとして取り組んでいきたいと考えている仕事のひとつが離婚に関わる仕事です。

ライフワークということは、私自身が、弁護士として仕事をしている限り、ずっと何らかの形で離婚問題と関わっていきたいと考えているということです。

離婚問題との関わりかたにもいろいろあります。私のもとにいらしてくださったお客様の離婚の話し合いについて、お客様の窓口(代理人といいます)として関わり、相手と話し合いをして、離婚条件を決めたり、話し合いの場を調停に移し、調停での話し合いにお客様の代理人として同席したり、それでも解決しない場合は、裁判を起こし、お客様が獲得したい離婚条件を求めて主張や立証を尽くしたり、そのような形で関わることは、関わり方のひとつ。

この関わり方は、お一人お一人のお客様にコミットしてサポートしていくものです。

それ以外にも、離婚セミナーを主催し、そこでお集り頂いたかたに、離婚について考える上で大事だと思うこと、離婚したいと思ったときに知っておくべき必要な知識などについてお話したり、離婚にまつわるエッセイを書いたりすることで、目の前でお会いしてはいないたくさんのかたにとって必要な言葉を届けるという関わり方もしています。

なんで元検察官が離婚問題サポートをライフワークに?

ここまで読んでくださった方の中には、「元検察官がなんで離婚問題サポートをライフワークにしているの?」と思われる方もいるかもしれません。実際、私は、最初から、離婚問題をライフワークにしていきたいと思って弁護士になったわけではありません。

では、どうしてか?

私自身も、10年前に離婚を経験したことがきっかけです。私は、一人の子どもを持つシングルマザーです。

相手も子どももあることなので、ここで、自身の詳しい離婚に至る経緯などをお話しすることは控えます。それに、自身の離婚の経験が、そのまますべてのお客様にとってお役に立てられるかというと、言うまでもなく、一言で離婚と言っても、そこに関わる人も、育ってきた環境も、仕事も、考え方も、離婚を考えるに至った背景も何もかも違うために、「私は離婚経験者として、皆さんのお気持ちがすごくわかります!」などと言うことはとても軽率だと思っています。

ただ、一つだけ言えるとしたら、離婚という、できれば人生で経験せずにすんだらそのほうがよかったと思える出来事に直面し、うまく表情を作ることさえできなくなるような苦しい思いしながら、一つ一つ必死で乗り越えてきた経験を経て、今、離婚と向き合っているかたの抱えるお気持ちのほんの一部だけでも実体験として共有したり、自分とは異なる状況であっても、その状況を想像することのできる土台というものができているように感じています。

たとえば、結婚後、少しずつ感じていた違和感。その違和感を直視してしまったら、今のこの生活がガタガタと崩れ落ちてしまうような気がして、目をつぶりながら、耳をふさぎながら生活してきたけれど、震災、コロナ禍、近くの国で起きている戦争などに直面したとき、当たり前だと思っていた日常が実は全然当たり前ではなくて、とてつもなくかけがえのないものであることに気づいたそのとき、「私、このままこの結婚生活を続けていくのだろうか・・・」という自分の気持ちと向き合わざるを得なくなったときの、なんとも不安で、おそろしい気持ち。

たとえば、離婚を決意して、相手と話し合いを始めたものの、なかなかその話し合いは思うように行かない・・・そんなときに、週末、子どもを連れて公園に行ったら、たくさんの家族連れでいっぱい。お父さんとダイナミックな遊びをしているほかの子どもの姿をうらやましそうに見ているそんな子どもの姿に目にしたそのとき、「私は、もしかしたら、自分の勝手で、大事な子どもの幸せを奪ってしまおうとしているのではないか・・・」という思いが容赦なく胸に刺さってくる気持ち。

たとえば、離婚後、子どもの将来を考え、自分が仕事をしてお金を稼いでいかなくてはならない!という思いで必死になって働いているのに、子どもが次から次に感染症をもらってきて、保育園に預けることもできず、ほかに預け先もなく、自分が仕事を休むしかない・・・でも、こんな中途半端な仕事のしかたをしていては、いつになってもキャリアアップなんてできそうもなく、体調を崩す子どもにイライラをぶつけてしまう。仕事は何より子どものためだったはずなのに、その仕事が思うようにいかず、結局子どもにイライラをぶつけてしまうなんて、なんで自分ばかりがこんな思いをしなければならないの?こんなはずじゃなかった・・・という、もどかしさ、憤り、無念。

どれもこれも、私自身が味わってきた思いです。

私は、離婚問題を抱えて苦しんでいるかたが、先にある光を見失わないようにしながら、その問題を乗り越えるお手伝いをしたい。そう思って、離婚問題のサポートを私の弁護士としてのライフワークのひとつにしたいと思っています。

私はこんな思いで仕事をしています

結婚はゴールではないってよく言われますけど、もちろん、離婚だって、ゴールではない。単なる通過点ですよね。

弁護士の仕事は、パートナーと離婚したいと考えているかたの代理人として、離婚成立までのサポートをすることが大きな仕事です(もちろん、それ以外に、離婚を望まないのに、パートナーから離婚したいと言われている方の代理人として相手と修復に向けた話し合いをしたり、離婚成立後に養育費の問題などに関してご相談をお受けしたりすることもあります)。だから、どうしても、獲得目標が、離婚成立と有利な離婚条件、と捉えられがちです。

もちろん、それがお客様の獲得したい目標なので、それを全力で獲りに行くことは大事なサポートです。

ただ、私は、離婚は、ただの通過点であって、何よりも大事なことは、離婚後の生活が、離婚前の生活よりはるかに幸せだと胸を張って言える将来にすることだと思っています。離婚後の自分が今を振り返ったとき、「ああ、私は、あのときすごく大変な思いをして離婚したけど、あの経験があったから、今こんなにも幸せを感じられているんだな」と思えるためにはどんな離婚をすべきか、そんな視点を持ちながら話し合いをしていく必要があると思っているんです。

そういう視点で考えると、ときには、今のお客様は、「離婚後、子どもと父親を絶対に会わせたくない」とおっしゃっていても、私は、離婚後の生活を考えたとき、お子さんをお父さんときちんと会う時間を作っていくことがいかに大事であるかということをお話しすることもあります。

お客様と徹底的にお話をして、視線を少し先の将来に据え、今、何を選択すべきか、ということを一緒に考える過程を大事にしています。

お客様から、「離婚の問題はとてもしんどかったけれど、この機会に自分の人生というものを長い目で見直すことができて、この経験はなくてはならないものだったと思う」「あのときは本当に大変だったけど、間違いなく、今の毎日はあのころより格段に幸せです」そんなお言葉を頂くことを目標にして仕事をしています。

今後は・・・

ここまでお読みいただきありがとうございました!今後は、お客様からよくご質問頂くことを中心に、毎回トピックを決めてお話ししていきます。このような文章だけでなく、動画での掲載も考えておりますので、どうぞお楽しみに!

また、「こんな悩みに答えてほしい」というご要望がありましたら、ぜひご質問をお寄せください。もちろんお名前を出さずに、こちらで回答させて頂きますね。こちらで私の言葉を受け止めてくださる皆さまに、何かひとつでも必要なことがお届けできるよう、毎回心を込めて発信してまいります。どうぞよろしくお願い致します!


【著者】高橋麻理
元検察官の経歴。先を見通した戦略プロセスの設計や、依頼者に寄り添い解決に導くことに定評がある。
第二東京弁護士会所属。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。
2002年に検察官に任官し、数多くの刑事事件の捜査・公判を担当したのち、検察官退官。
2011年弁護士登録。
刑事事件のみならず、離婚案件の解決実績も豊富。離婚成立のみをゴールと捉えず、依頼者の離婚後の生活を見据えた解決策の提案・交渉に定評がある。
法律のプロフェッショナルとして、依頼者の期待を上回るリーガルサービスを提供することを信条とする。
法律問題を身近なものとして分かりやすく伝えることを目指し、メディア取材に積極的に対応。子どもへの法教育にも意欲を持っている。