新年1回目の投稿としてはやや不似合いかなと思いつつ、最近、周りで非常に多く聞く話を取り上げたいと思います。いわゆる「パパ活」と離婚についてです。

夫がパパ活…離婚することはできるの?

「夫がパパ活をしていることがわかりました。離婚したいと思います。パパ活する夫なんて当然離婚できますよね?」

そんなお声を聞くことがあります。

これに対する答えは、「必ずしも離婚できる場合ばかりではありません」となるでしょう。まずは、この点をお話しますね。

まず、大前提として、離婚を切り出したとき、夫が離婚に応じ、条件面についても合意できるのであれば協議により離婚することができます。ですので、夫が、離婚に応じないという場合に、パパ活を理由とした離婚請求が裁判で認められるのかについて考えてみたいと思います。

そもそも、パパ活とは何か?

この定義付けをしないままにお話ししてきましたが、実は、パパ活の内容自体一義的ではありません。

女性と食事をする対価として、食事代、お小遣いなどを支払うという態様のものから、会ったときに一緒に買い物をし、女性にバッグ、化粧品等を買ってあげるという態様もの、さらには肉体関係を伴うもの、その対価としてお金を払うものなどさまざまです。

要は、男性が、通常自分より若い女性と時間を過ごし、その対価を支払うことをパパ活と呼ぶことが多いように思います。

このように、一言でパパ活と言ってもその内容はいろいろなので、パパ活を理由として離婚できるかどうかについても、その内容によって変わってくると言えるでしょう。

たとえば、夫が、女性と肉体関係を持っていたというのであれば、それは不貞行為に当たりますから、離婚事由になり得ます。

でも、女性と一度会ってランチをし、その際、お小遣いとして1万円を渡した、ということであれば、それ自体は不貞ではありませんから、それが婚姻を継続しがたい重大な事由になるかという評価をすることになると思います。もちろん事実関係によりますが、それだけを理由として離婚することは難しい場合が多いでしょう。

このように、「パパ活」の具体的内容や夫が離婚についてどう考えているかによって、パパ活を理由として離婚できるかどうかが変わってくるといえます。

パパ活夫に慰謝料請求できる?

夫がパパ活をしていたことが判明して離婚することになった場合、パパ活をしていたことに関し、慰謝料を請求したいお気持ちになりますよね。もし、夫が、女性に対してお小遣いと称してご家庭の大事なお金を支払っていたなんてことがわかればなおさらだと思います。

もちろん、夫が請求に対し「わかった。払う」と応じるのであれば慰謝料請求は認められますし、夫が応じるのであれば、金額だって自由に決められます。

でも、夫が支払いに応じなかったり、こちらの請求額に遠く及ばない金額の提示をしてくる場合もあり得ますね。その場合、裁判ではいくらくらいの金額が認められるのでしょうか?

この点も、パパ活の具体的内容によります。

不貞行為を伴う離婚事由にもなり得るパパ活が認められた場合には、細かい事実関係によって金額はかなり違ってくると思いますが、その前提で、200万円前後の慰謝料が認められる可能性があると思います。しかし、一度食事をしたという程度であった場合は慰謝料が認められないこともあり得ます。

パパ活をしていることがわかったら・・・

パパ活を理由に離婚することができるのか、その慰謝料は?という話をしてきましたが、そもそも、夫がパパ活をしていたことがわかったとき、そのことをどう考え、どう行動するかということについても考えてみたいと思います。

見知らぬ他人がパパ活をしていたとの報道を見るだけでも嫌悪感を抱く方は多いと思います。

正直申し上げると、何をしようとあれこれジャッジする立場になどないことは百も承知の上ですが、私も嫌悪感を感じてしまいます。それが、見知らぬ他人ではなく、自分の夫だったとしたら、それを知ったときに感じる嫌悪感は計り知れないと思います。

「仕事が忙しいって言って家事も子育てもろくにやっていないのに、そんなことやってたのか」
「自分の娘くらいの女性とデートしてうきうきしているなんてけがらわしい!」
「家の大事なお金を、自分の汚い欲のために使うなんて許せない!」

そんな感情が爆発することもあると思います。そんな夫とは離婚だと思うのも当然だと思うのです。

でも、一方で、パパ活を知ったときに感じる感情がきっとあまりにも強く激しいものだと思うので、なおさら、いったんその感情を感じきった後にどんな感情が残るのか、そっと見守ることもおすすめしたいと思うのです。

それは、夫のため、とか、子どものため、とかでなく、ご自身のため。

パパ活にも程度があるので、一概には言えませんが、ケースによっては、重度なレベルには至っていないこともあるかもしれませんし、よくよく背景事情を聴いてみたら(もちろん、それによっておとがめなしになどならないとは思いますが)もう一度チャンスをあげてもいいと思える事情があるかもしれません。

仮に、不貞を伴う内容だったとしても、少し冷静になったときに、夫の態度次第では、結婚生活を立て直したいという気持ちが湧いてくるかもしれません。

離婚は、人生の通過点だと思いますが、やはり、ご自身の人生にとって大きな出来事です。夫への激しい感情がいったん去ったときに、自分はどうしていきたいと思うのか、というところを見守り、その上で選択することもできます。

もし、お一人でそのすべてを抱えることが難しければ、信頼できるご友人、ご家族に打ち明けたり、お知り合いに打ち明けることがためらわれる場合は弁護士に相談した上で考えてみるのはいかがでしょうか。

最終的に離婚を選択しないということになり、また日常がスタートしたものの、その過程で夫の姿を見ては「スマホばかり見ているけど、またパパ活をしているのではないか」などと不安がつきまとう毎日はつらいものだと思います。

そのような不安を解消するためにも、なぜこのような事態になったのか、妻の立場で、そのことをどう受け止めているのかということをしっかり言葉にして話し合うことが必要かもしれませんね。


【著者】高橋麻理
元検察官の経歴。先を見通した戦略プロセスの設計や、依頼者に寄り添い解決に導くことに定評がある。
第二東京弁護士会所属。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。
2002年に検察官に任官し、数多くの刑事事件の捜査・公判を担当したのち、検察官退官。
2011年弁護士登録。
刑事事件のみならず、離婚案件の解決実績も豊富。離婚成立のみをゴールと捉えず、依頼者の離婚後の生活を見据えた解決策の提案・交渉に定評がある。
法律のプロフェッショナルとして、依頼者の期待を上回るリーガルサービスを提供することを信条とする。
法律問題を身近なものとして分かりやすく伝えることを目指し、メディア取材に積極的に対応。子どもへの法教育にも意欲を持っている。