シングルマザー世帯にとって児童扶養手当の支給は大変助かるものの、自身の年収額や元パートナーからの養育費額によっては全額を受け取れないことがあります。そのようなときは、iDeCoを利用すると収入等を減らさずに児童扶養手当を全額受給できる可能性があります。この記事では、iDeCoを利用してより多くの児童扶養手当を受給できる方法を解説します。

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iDeCo(イデコ)とは?

iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、公的年金とは別に老後に受給できる私的年金のひとつです。公的年金の加入は20歳以上だと義務ですが、iDeCoへの加入は任意で毎月の積立金額や運用方法を自分で決められます。

毎月の積立額は、職業や勤務先で導入している年金制度などによって上限が決められています。ただし、国民年金保険料の未納者や免除者は加入できないため注意しましょう。

iDeCoで積み立てたお金と運用で得た利益の合計額は、60歳以降に年金形式や一時金形式で受け取れます。では、iDeCoにはどのようなメリットやデメリットがあるのか確認していきましょう。

iDeCoを利用するメリット

iDeCoを利用すると、一般的に次のようなメリットがあります。

・積立金が「所得控除」の対象になり、所得税と住民税が安くなる
・運用で得られた利益が非課税になる
・年金受け取り時に「公的年金等控除」や「退職所得控除」の対象になる

iDeCoは、積み立て時・運用時・受け取り時のそれぞれで節税効果のある資産形成方法です。積立金は年末調整や確定申告時に所得控除を受けられるので、所得税や住民税を少なくできる可能性があります。

また、通常、運用で得られた利益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoで得られた利益には税金がかかりません。さらに老後の受け取り時、年金形式で受け取る場合は「公的年金等控除」が、一時金として受け取る場合は「退職所得控除」が対象となるため、税負担が軽くなるというメリットもあります。

シングルマザーがiDeCoを利用すると、支払った積立金額を所得から差し引くことができるため、収入はそのままでも所得金額を抑えられ、児童扶養手当の受給金額を多くできる可能性があります。そのうえ、所得を減らすことで3歳未満の子どもを保育園に入れる場合にかかる保育料も安くできる可能性があります。

iDeCoを利用するデメリット

iDeCoには次のようなデメリットもあるため、しっかり理解したうえで利用することが大切です。

・原則として60歳まで引き出せない
・支払った積立金が元本割れする可能性がある

iDeCoは老後資金を準備するための資産運用方法なので、原則として60歳にならないと積立金を引き出すことができず、中途解約は基本的にできません。そのため、シングルマザーがiDeCoを利用する際は、積立金の支払いが生活費を圧迫しないように、無理のない金額に設定することが大切です。

また、iDeCoは運用次第で積立金から利益が得られることもある反面、損失が出てしまい支払った積立金よりも資産が減ってしまうリスクもあります。

iDeCoを利用すると児童扶養手当の支給額をアップできる

本章では、まず児童扶養手当とはどのようなものなのか解説し、次にiDeCoを利用して児童扶養手当の支給額をアップさせる方法について詳しく説明します。

児童扶養手当の概要

児童扶養手当とは、父母の離婚や死亡などにより、父または母と生計を同じくしていない子どもに対して支給される手当金で、ひとり親家庭の生活の安定や自立を促進することを目的としています。

受給できるのは、18歳に達する日以降の最初の3月31日まで(障害を持っている場合は20歳未満)の子どもを養育しているひとり親です。一般的には、高校3年生を卒業するまでの子どもが当てはまります。

ただし、一定金額以上の所得がある場合は全額支給ではなく、一部支給や全額支給停止となることがあります。児童扶養手当の金額は、子どもの人数や全部支給/一部支給のいずれかにより以下のように決められています(令和4年4月~)。

子どもの人数 全部支給(月額) 一部支給(月額)
1人 43,070円 10,160円~43,060円
2人 10,170円 5,090円~10,160円
3人以上の加算額(1人につき) 6,100円 3,050円~6,090円

参考:厚生労働省 – 児童扶養手当について

シングルマザーが児童扶養手当を受給できるかどうかは、「所得がいくらなのか」によって決まります。所得金額は以下の計算方法で求めます。

所得【年間収入額-必要経費(給与所得控除など)】+養育費の8割相当額-8万円(社会保険料控除相当額)-その他控除

年間収入額から給与所得控除額などを引いた金額に、元パートナーから受け取っている養育費の8割の金額をプラスします。そこから、社会保険料相当額の8万円と「その他控除」を差し引いた金額が所得金額となります。

「その他控除」には「ひとり親控除」や「医療費控除」などさまざまな種類があり、それらの控除額が多いほど所得を減らすことができます。つまり、児童扶養手当を多く受け取れる可能性が高くなります。

iDeCoの掛け金は控除できる

iDeCoを利用すると、その積立金は「その他控除」の中の「小規模企業共済等掛金控除」に該当し、積立金の全額を控除することができます。収入は同じでも、その他控除を増やすことで所得金額を減らせば、児童扶養手当を多く受け取れるようになります。

毎月の積立金額は職業などにより異なり、たとえば自営業やフリーランスは6万8,000円まで、会社員の場合は勤務先の年金制度の導入状況にもよりますが、最大2万3,000円までとなっています。

年間で計算すると、自営業やフリーランスは最大81万6,000円、会社員は最大27万6,000円までの積み立てができ、小規模企業共済等掛金控除もそれぞれ同額を受けられます。

iDeCoを利用して児童扶養手当額が増える人、増えない人

iDeCoを利用すればだれでも児童扶養手当が増えるというわけではありません。

児童扶養手当を増やせるのは、➀現在一部支給の人と、②現在全額支給であるものの、もう少し所得が増えてしまうと一部支給になってしまう人です。これらに該当する人はiDeCoを利用することで一部支給から全額支給に変更できたり、全額支給の範囲に余裕をもてるようになったりします。

一方、児童扶養手当が増えないのは、すでに全額支給を受けている人です。

iDeCoを利用した場合の児童扶養手当額をシミュレーションしてみよう

ここで実際に、具体的なケースをもとにして児童扶養手当がいくらもらえるのかをシミュレーションしていきます。児童扶養手当が全部支給になるか一部支給になるかは、所得と子どもの人数によって以下のように決められています。

【所得制限限度額】

扶養人数 全部支給 一部支給
0人 490,000円 1,920,000円
1人 870,000円 2,300,000円
2人 1,250,000円 2,680,000円
3人 1,630,000円 3,060,000円
4人 2,010,000円 3,440,000円
5人 2,390,000円 3,820,000円

参考:千葉県 – 児童扶養手当について

たとえば子ども2人の場合は、年収が125万円までであれば全額支給を、125万円~268万円までであれば一部支給を受けられます。ではシミュレーションをしていきましょう。

ケース1:子ども1人、年間所得80万円、養育費3万円/月の場合

子どもが1人、養育費が毎月3万円、年間所得が80万円というシングルマザー世帯がiDeCoを利用すると、児童扶養手当の受給額にどのような影響があるのか紹介します。

子どもが1人の場合、児童扶養手当を全額受給するためには、所得を87万円以下に抑えることが条件となります(上表より)。87万円から230万円の間であれば一部支給です。

ケース1における所得金額を、先に紹介した以下の計算式に当てはめて計算します。
所得【年間収入額-必要経費(給与所得控除など)】+養育費の8割相当額-8万円(社会保険料控除相当額)-その他控除

[所得80万円]+[養育費3万円×12カ月×80%]-[8万円]=100万8,000円

計算すると、所得が100万8,000円となるため、児童扶養手当は全額支給には該当せず一部支給となることが分かります。

しかし、iDeCoを利用している場合は全額支給の対象となります。たとえば、毎月2万円をiDeCoで積み立てると、年間で24万円となります。所得100万8,000円からその他控除の「小規模企業共済等掛金控除」として24万円を控除すると、所得が76万8,000円に減らせます。すると、87万円以内に所得を抑えることができますので、児童扶養手当の全額支給の対象となります。

ケース2:子ども2人、年間所得130万円、養育費5万円/月の場合

次に、子どもが2人、養育費が毎月5万円、年間所得が130万円というシングルマザー世帯について見ていきましょう。

ケース1と同様に所得を計算すると、
[所得130万円]+[養育費5万円×12ヵ月×80%]-[8万円]=170万円

計算すると所得が170万円になりますので、児童扶養手当が全額支給(所得が120万円まで)に該当せず、一部支給となってしまうことが分かります。

では、iDeCoを利用するとどうなるのでしょうか。会社員の場合、年間に最高で27万6,000円を積み立てできるため、満額を積み立てると所得は142万4,000円(170万円-27万6,000円)に抑えることができます。しかし、全額支給対象となる所得の120万円までは抑えることができません。

このケースだと、iDeCoを利用しても一部支給から全額支給にできないため、「児童扶養手当を満額受給するための手段としては無理にiDeCoを利用する必要はない」と考えられます(もちろん老後資金準備などのために加入するメリットはあります)。

iDeCoの始め方

本章では、iDeCoの始め方について紹介します。2022年6月にiDeCoの制度改正がありましたので、変更点についても簡単に解説します。

iDeCoを利用する流れ

iDeCoの利用は、主に次のような流れで行います。

1.加入資格に当てはまるかどうかをチェックする
2.積立金額(掛け金)を決める
3.運用についての知識を得る
4.運用商品を選ぶ
5.金融機関を選んで申し込みをする

iDeCoを始める際は、まず加入資格の有無や積立金(掛け金)の上限金額を確かめます。iDeCoの公式サイトには「カンタン加入診断」があり、加入資格の有無や積立金の上限金額などをチェックできます。

iDeCoの積立金は、月額5,000円以上1,000円単位となり、自分の加入資格における限度額内で設定できます。積立金額は、1年に1回だけ変更できますが、無理のない金額に設定するようにしましょう。

また、iDeCoは積立金を自分で運用しなくてはならないため、資産運用についての基本的な知識が必要です。運用資産ごとの特徴はもちろんですが、特に資産運用におけるリスクの種類や内容についてはしっかりと理解しておきましょう。

実際に運用商品を選ぶ際に自分で決められない場合は、金融機関に相談するのもひとつの方法です。多くの金融機関でiDeCoの取り扱いがありますので、利用しやすい金融機関を選び相談に出向いてみてください。

2022年の制度改正の変更ポイント

2022年6月に確定拠出年金法の改正が行われ、次のような内容が変更になりました。

➀2022年4月1日から、iDeCoの受給開始の上限が、これまでの70歳から75歳に延長されました。これにより、iDeCoの老齢給付金の受給開始を、60歳から75歳までの間の好きなタイミングで開始できるようになっています。

②2022年5月1日から、これまでiDeCoに加入できなかった以下のような人も制度に加入できるようになりました。
・会社員や公務員などで60歳以上65歳未満の人
・国民年金任意加入者で60歳以上65歳未満の人
・国民年金任意加入者で海外に居住している人

今後も制度内容が改正される可能性があるため、iDeCoの利用を検討している人は最新の情報ももれなくチェックしましょう。

iDeCoを利用して児童扶養手当を全額受給しましょう

自身の年収額や元パートナーからの養育費額によって児童扶養手当を全額受給できない場合は、iDeCoを利用すると全額受給できる可能性があります。ただし、iDeCoにはメリットだけでなく、運用結果によっては損失が出るなどのリスクもあるため、始める際には資産運用についての正しい知識が必要です。