【厳選】ママスマ編集部 おすすめ書籍を紹介

新たな生活に踏み出したシングルマザーの私たち。しかし、足元を見ればお金、教育、仕事、養育費などなど、不安と悩みは尽きません。それらの悩みに対し各方面の専門家、そして先輩たちが、書籍を通してたくさんの知恵を提供してくれています。ママスマ編集部では、そんな知恵とアドバイスの詰まった書籍を厳選、内容を抜粋して紹介してまいります。

Q. やるべきことがたくさんあって、何から手をつけていいのか……優先順位のつけ方は?

A.「今、何をやるべきか」は、目標から逆算する

余計な情報に惑わされない

「まつなみ」の船長として着任して間もないある日、東京港沖をパトロールしていたときの出来事です。オペレーション(海難事故などの情報を受け、船に指示を出す部署)から、こんな指令が入りました。

「羽田沖で小型のレジャーボートが乗り上げた。浅瀬で巡視艇が近寄れないので、『まつなみ』は基地に戻り、ゴムボートを搭載して現場に向かってほしい。現場には、既に他の小型巡視艇がいるので、その船にゴムボートを渡してほしい」

私は「了解」と返事をして、ゴムボートを取りに基地に向かうことにしました。そこで、進路を基地のほうに向け、航行するように指示、船は東京港内に入っていきました。

通常、港の中はたくさんの船が行き来していますから、港内スピードの制限があり、あまり高速で走ることはできません。

そのときの私の頭の中はこうでした。
・港内スピードは制限があるから、高速では走れない
・しかし、早く基地に帰ったほうがいい
・3日前、「最近、港内を高速で走る船があるが、大変危険。巡視船も十分気をつけるように」との文書がきていた
・乗り上げたボートにケガ人はいないし、油漏れなどの危険もない
・急変するような天気ではない

というわけで、私が部下に指令したのは「いつもより少しだけ速いスピードで。でもスピードは出しすぎない」という折せっ衷案的なものでした。

ところが港に入ってしばらくしたときです。いきなり部下の乗組員がエンジンを全開、港内の適切なスピードをはるかに超え、なんとフルスピードで走り始めたのです。

「えーっ、私、何も指令していないのに……。なんでこうなるの?」

動揺する私に、エンジンを全開にした乗組員がこう言いました。「船長、この場合は違うでしょう。大切なのは一刻も早く基地に戻り、ボートを積んで、現場に駆けつけることです」と。

そうでした。働く上で大切なのは、「組織(会社、チーム)の目標やゴールを達成すること」です。この場合、その目標やゴールは、人命救助のために一刻も早く現場にゴムボートを届けることでした。私は、その目標やゴールの設定を間違えていたのです。
そのときの私は、オペレーションからの情報と状況から、冷静に判断したつもりでした。

ただ、頭の中には3日前の文書のことがありました。

「また巡視船が高速で走った」と苦情がこないようにしよう、という気持ちがなかったかといえば、それはうそになります。

たとえ高速で走ったとしても、巡視船には「緊急業務従事中」を示す赤色灯(パトカーの屋根にある回転灯と同じ)があるので、それをつけていれば、周りの船には理解してもらえたはずなのに……。目標やゴールの設定を間違えたばっかりに、そんなことすら思い出せなかったのです。

「上司の反感を買いたくない」「部下から悪く思われたくない」などの他人の評価が気になったとき。
見て見ぬ振りをしたくなったとき。
さまざまな情報が飛び交って、頭が混乱してしまったとき……。

そんなときは、とにかくシンプルに、あなたが目指すべき目標やゴールを思い出してください。そこから逆算すれば、「今、やるべきこと」が明確になるはずです。

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著者:永田潤子(ながた・じゅんこ)
大阪市立大学大学院創造都市研究科准教授。1961年福岡県生まれ。女性に門戸を開放した海上保安大学校に、ただ一人の初女子学生として入学。卒業後は海上保安庁勤務。26歳のとき、最年少で巡視艇まつなみ船長を務める等、パイオニアとしての道を歩くことになる。
霞ヶ関での官庁勤務等、キャリアを積んだ後、埼玉大学大学院政策科学研究科(現:政策研究大学院大学)、大阪市立大学大学院経営学研究科博士後期課程にて、政策分析、意思決定、経営学を研究。その後、海上保安大学校にて人材育成および女子教育にも注力する。2003年より現職。2008年からは、大阪府橋下知事のブレイン(特別顧問)として改革に携わった。女性の活躍、リーダーシップ、個人と組織が本領発揮をする働き方等、その経験を活かした企業研修・講演も多数行なう。
自身が実地で学び、理論で裏付けた「仕事術」を、すべての働く女性に向けてまとめたのが、本書『女子の働き方』である。なお、まつなみ船長までの軌跡を描いた「海をかける風」はウェブサイトで無料公開中。
http://junko-nagata.com/