面会交流とは?

面会交流とは、離婚後または別居中に、子どもを監護・養育していない親が子どもと面会または交流することをいいます。面会交流は、子どもの健全な成長のために必要であると考えられており、子どものための権利であると考えることができます。

面会交流に関して決定すべき事項

面会交流について定めるべき事項は、主に次のとおりです。

①面会交流の方法

面会交流の方法には、親と子どもが直接会う方法の他に、手紙やビデオ、写真を送付するという間接的な方法があります。これらの方法の中から、お互いに合意できる方法を選択します。最初は間接的な方法による交流を実施し、いずれ直接的な方法に移行するという決め方も可能です。

②頻度

例えば、月1回、月2回などの頻度を定めます。なお、令和3年度全国ひとり親世帯等調査結果報告の「親子交流(面会交流)の実施状況」によると、母子世帯では月1回以上2回未満が24.2%ともっとも多く、父子世帯でも月1回以上2回未満が27.2%ともっとも多いです。

③日時

例えば、「毎週日曜日の〇時から〇時まで」「第3日曜日の〇時から〇時まで」といったことを取り決めます。また、父母が、その都度、面会交流の日時を決めるという定め方も可能です。

④面会場所

直接会う方法を選択した場合、どこで面会交流を行うのかを取り決めます。面会場所についても、父母が、その都度、話し合って決めるという定め方ができます。

⑤引き渡し方法

直接会う方法を選択した場合、子どもの引き渡し方法を決めます。駅の改札で待ち合わせを行いそこで子どもを引き渡す、面会交流をする親が家まで迎えに来るなどの方法があります。

⑥父母同士の連絡方法

面会交流の日時や場所を話し合ったり、緊急の用事でキャンセルしたりする場合など、細かい調整を円滑に行えるようにするため、連絡方法を決めましょう。携帯電話やメールなど、連絡を取るための手段を明確にするとよいでしょう。

これらの事項に加えて、必要に応じ、面会交流の際の費用負担、長期休暇(夏休みなど)の宿泊の有無、学校行事への参加の可否、祖父母の同伴といった事項を取り決めると、より継続的に円滑な面会交流の実施が可能となります。

面会交流について決める流れ

これらの事項について取り決めるには、まず父母双方で話し合いを行います。話し合いの結果、お互いが納得する条件で合意できた場合には、後々の争いを防止するために、書面に残しておくことをお勧めします。もっとも面会交流について話し合うのは、離婚協議中か離婚した後であるため、条件がまとまらないことも十分ありえます。

このように条件がまとまらない場合には、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てることになります。面会交流調停は、離婚調停中であっても申立てることができますし、離婚後でも申立てることができます。調停は、お互いの合意をベースとした手続きであるという点では先ほどの話し合いと同じですが、調停委員が双方の間に立ち、調停委員を中心として話し合いが進む点で違いがあります。

調停では、調停委員が、両親双方から1人ずつ話を聞き取り、一方の考えを他方に伝えるという流れで話し合いが進んでいきます。

調停では、子どもの年齢や性別、生活状況、本人の意向等を聞き取り、これらの情報を踏まえて調停案が検討されることとなります。

面会交流調停に際しては、家庭裁判所調査官が子どもから話を聞き、その心情・意向等を調査する場合や、調停成立前の段階で、裁判所内等で別居している親子の交流を試みる試行的面会交流というものを行う場合があります。
調停の結果、父母が合意すれば調停は成立となります。合意に至らなかった場合は調停不成立となり、審判手続きに進みます。これまでの調停での双方の主張や調査官の報告書等を基に、裁判官により面会交流の取り決めが決定されることになります。

家庭裁判所調査官とは?試行的面会交流とは?

面会交流や離婚の調停や審判は、家庭裁判所で行われます。家庭裁判所には、家庭裁判所調査官が所属しています。調査官は、心理学や教育、法律などに関する専門知識をもっており、子どもが面会交流についてどのように思っているのか、面会交流が親に与える影響などを調べます。この調査で得られた結果は、裁判官や調停委員の重要な判断材料として活用されます。

また、試行的面会交流とは、面会交流について取り決めがなされる前に、家庭裁判所内の一室などで、別居している親が子どもと会うことをいいます。すでに別居をしていて、別居中に面会交流が円滑に実施されていない場合などに、試しに親と子どもの面会の機会を作り、どのような様子でコミュニケーションをとっているか等を調査官が観察します。調査官の視点から、試行的面会交流の際に見られた課題・問題点等が指摘される場合もあります。

面会交流は拒否できる?

すでに述べたとおり、面会交流は子どもための権利ですので、面会交流を正当な理由もなく拒否することはできません。もっとも、面会交流を行うことが子どものためにならないといえる場合であれば、面会交流を制限したり、拒否したりできる場合があると考えられます。例えば、次のようなケースでは面会交流を制限・拒否することができる可能性があります。

①子どもへの暴力行為等があったケース

別居する親が子どもに対し虐待していたり暴力を振るっていたりした場合や、子どもが別居する親の暴力を目撃したことにより恐怖心を抱いている場合等には、面会交流を制限・拒否する事情になります。

②子どもの連れ去りの危険性があるケース

別居する親と子どもを会わせた際に、子どもを連れ去ってしまう危険性がある場合には、子どもの生活環境が大きく変わってしまうことによって、子どもの心身の安定を害する可能性があることから、面会交流を制限する事情になりえます。

③子どもが本心から面会交流を拒否しているケース

子どもが明確に別居親との面会を拒絶している場合には、面会交流を制限する事情になりえます。もっとも、子どもは同居親が別居親を拒否している感情を感じ取り、別居親と会いたいという本当の気持ちを伝えることができない場合もあります。そのため、子どもの本心に配慮し、子どもへの負担をなるべく抑えるよう、間接交流も視野に入れた面会交流の方法を検討することが大切です。

これらのケースのうち、①、②、のような、別居する親自身に大きな問題がある場合には、面会交流が認められにくい傾向があります。これらの場合は、同居する親や子どもの証言だけでなく、その証言を裏付ける客観的な証拠(暴力によってできたアザの写真や病院の記録など)が必要となるでしょう。

面会交流を拒否できないケース

他方、面会交流を拒否する正当な理由がないケースとしては、次のようなものがあります。

①別居する親の不倫が原因で離婚したケース

離婚前、別居する親が不倫していた場合、「子どもに会わせたくない」と考える方も多いでしょう。

しかし、不倫と親子関係はあくまでも別問題です。仮に、離婚原因になった不倫をした親であっても、子どもにとっては良い親であるというような場合もありえます。別居する親が不倫していたからといって必ず面会を拒絶できるわけではありません。

②別居する親が再婚したケース

別居する親が再婚したときに、新たに別の家庭を築くことになるのだから子どもと会ってほしくない、と考える方もいます。

しかし別居する親が再婚して新しい家庭を築いたとしても、親子関係がなくなるわけではありません。面会交流は子どものための権利ですので、健全な子どもの成長のために、面会交流は実施すべきであると考えられています。もっとも、再婚は子どもに少なからず動揺を与えてしまうことが多いため、面会交流を実施する際には子どもの気持ちを十分に配慮する必要があります。

③同居する親が再婚したケース

同居する親が再婚すると、子どもが新しい家庭になじめるようにするため、別居する親に会わせないことを強く希望するケースがあります。

しかし再婚したからといって、別居する親との面会交流が不要になるわけではありません。子どもから見れば、実の親であることには変わりありません。このことは、たとえ再婚相手と子どもが養子縁組をしても同じです。法律上も、養子縁組をしたとしても、実親との親子関係は失われません。そのため、同居する親が再婚したとしても、原則として面会交流を制限・拒否する事情にはなりません。

もっとも、別居する親の再婚の場合と同様、子どもの気持ちには十分に配慮して面会交流を実施する必要があります。

④養育費を払ってもらっていない

別居する親から養育費を支払ってもらえない場合、面会交流させたくないと考える方も多いでしょう。

しかし法的には、養育費の支払いと面会交流は別個の問題と考えられています。別居する親から養育費を受け取っていないこと自体は、面会交流を制限する事情にはなりません。もっとも、調停や公正証書で定めた養育費が支払われない場合、養育費の強制執行手続が出来ますので、離婚が決まった段階において、面会交流と併せて養育費の取り決めをしておくことをおすすめします。

まとめ

面会交流は、まずは親同士の話し合いから始め、その条件について話し合いがまとまらなかったときは、調停、審判へと進むことになります。また、繰り返し述べるとおり、面会交流は子どものための権利です。そのため、子どもと同居して監護・養育する親が面会交流を拒否したいと考えたとしても、正当な理由なく面会交流を拒否することはできません。判断に悩まれる場合には、弁護士に相談しましょう。