「離婚の相談をしたいけれど、弁護士に相談するとなると費用が心配……」と弁護士への相談に躊躇していませんか?費用の心配をせずに、離婚に関して弁護士に相談できる機関として「法テラス」があります。今回は、法テラスの概要にくわえ、法テラスを利用するメリットやデメリット、申込方法などを解説します。離婚の相談先で迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

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法テラスとは?

法テラスとは、法的トラブルに直面している人たちを支援するために国によって設立された組織のことで、正式名称は「日本司法支援センター」といいます。どこに住んでいても法律の助けを受けられる社会を実現するため、2006年に設立されました。

生活している中で急に法的トラブルに巻き込まれてしまった場合、どこに相談したらよいのか、誰に相談できるのかわからず、頭を抱えてしまうことがあります。そのようなときに役立つのが法テラスです。

法テラスは日本全国に事務所があり、トラブル解決に役立つ情報を提供しています。また経済的に余裕のない人を対象に、無料の法律相談なども行っています。設立以来、法律相談の件数は増加傾向にあり、離婚に関する相談も一定数を占めています。

法テラスの3つの利用条件

法テラスは誰でも利用できます。ただし、無料相談や弁護士費用立替え制度などを利用するには、以下のような条件を満たす必要があります。

収入や預貯金が少ないこと
民事法律扶助の趣旨に適すること
勝訴の見込みがないとはいえないこと

無料相談は「収入や預貯金が少ないこと」「民事法律扶助の趣旨に適すること」の2つ、弁護士費用立替え制度は上記の3つすべてを満たすことが必要です。

それではひとつずつ見ていきましょう。

収入や預貯金が少ないこと

収入や預貯金がある程度ある人は、法テラスの無料相談や弁護士費用立替え制度を利用できません。このようなサービスを利用するには経済的な条件が設けられており、この基準を満たす必要があります。経済的な条件には、以下の2つがあります。

➀収入に関する基準
②資産に関する基準

まず収入については、手取りの月収が基準額以下であることが必要です。この基準額は、同居家族の人数や住んでいる地域、住宅ローンを負担しているかどうかなどによって異なります。また、基準額は同居家族の手取り額を合わせた金額で考えますが、離婚の場合は配偶者の収入は含まない金額で考えます。なお、児童手当については収入に含みません。

たとえば、離婚の相談をしたいA子さんについて見てみましょう。

東京都墨田区に在住
夫婦と子ども1人で住んでいる
家賃は夫が支払っている

この場合、A子さんの月収が20万200円以下なら、法テラスの無料相談や弁護士費用立替え制度を利用できます。

次に資産についてです。資産には、預貯金のほか、不動産や株式などが該当します。自宅以外に不動産や株式などの資産を持っている場合は、その時価と預貯金などの合計が基準額以下であることが必要です。資産に関する基準も同居家族の人数によって異なります。

ただし、離婚の場合は配偶者の資産は含みません。上記のA子さんの場合、あくまでもA子さん本人の資産が基準を満たしていれば、無料相談や弁護士費用立替え制度の利用条件に該当するということです。

同居家族1人の場合の基準額は180万円なので、A子さんの資産が180万円以下なら法テラスの無料相談や弁護士費用立替え制度を利用できます。

詳しくは、以下の法テラスのページを確認してみてください。
無料法律相談の利用の流れ・収入や資産の基準について
弁護士・司法書士費用等の立替制度の利用の流れ・収入や資産の基準について

民事法律扶助の趣旨に適すること

法テラスの無料相談や弁護士費用立替え制度を利用するには、民事法律扶助の趣旨に適する必要があります。簡単にいうと、弁護士に依頼する目的が「自身の正当な権利を守る(主張する)ことであれば問題ない」ということです。

利用条件に反するのは、相手に対する嫌がらせや報復の感情を満たすためだけに弁護士へ依頼するといったケースです。とはいえ、相手への恨みや復讐のような感情を持っていてはいけないということではありません。このような感情があるとしても、それが主目的でなければ法テラスの無料相談や弁護士費用立替え制度を利用することは可能です。

重要なのは、利用者が法的な手段を通じて、自分の合法的な権利や利益を適切に守ろうとしているかどうかです。

勝訴の見込みがないとはいえないこと

法テラスの弁護士費用立替え制度を利用する条件のひとつに、「勝訴の見込みがないとはいえないこと」が挙げられます。これは、訴訟や調停、和解、示談などの過程で、争いを解決する可能性がゼロではないという意味です。「勝訴の見込みがある」というよりも、「勝訴の見込みが絶対にないとはいえない」ということを意味します。

利用者の主張が法的に根拠のないものであったり、明らかに不合理であったりする場合を除き、通常はこの条件から外れることはないでしょう。

法テラスを利用するメリット

法テラスを利用するメリットには以下のようなことが挙げられます。

法律相談が無料
弁護士費用が安く、後払いや分割返済ができる
返済の猶予や免除制度がある(生活保護受給者、ひとり親世帯)

いずれも「弁護士に助けてほしいけれど、すぐにお金を準備できない」という方には、大きなメリットといえます。それぞれ見ていきましょう。

法律相談が無料

前述の利用条件のうち、「収入や預貯金が少ないこと」「民事法律扶助の趣旨に適すること」の2つを満たす場合、法律相談が無料で受けられます。

一般的な弁護士事務所で相談する場合の相場は、30分で5,000円程度です。しかし、法テラスでは1回30分程度の相談が1つの問題に対して最大3回まで無料です。

法律相談では、離婚全般に関する相談をはじめ、慰謝料の請求や養育費の問題、離婚協議書の作成といったさまざまなことを相談できます。「費用が気になって弁護士に相談できない」という方も、無料なら気軽に相談できるでしょう。

弁護士費用が安く、後払いや分割返済が可能

法テラスを利用すると、一般的な弁護士事務所に依頼する場合と比較して、弁護士費用が安くなるメリットもあります。離婚トラブルに関しては、弁護士費用が約半額になることも中にはあります。

先の説明のとおり、「収入や預貯金が少ないこと」「民事法律扶助の趣旨に適すること」「勝訴の見込みがないとはいえないこと」のすべてを満たす場合には、弁護士費用立替え制度を利用することができます。この制度を利用できると、弁護士費用をあとで分割して支払うことができるようになるため、依頼時には費用が一切不要となります。

法テラスに立替えてもらった弁護士費用の返済は、原則3年以内に行います。月々の返済額は5,000円から1万円程度に設定されているため、離婚後の生活に影響することも少ないでしょう。

返済の猶予・免除制度がある

法テラスの利用におけるもうひとつのメリットは、返済の猶予や免除制度があることです。生活保護受給者だと返済の猶予や免除の制度、ひとり親世帯だと立替金の返済の免除要件を一部緩和した新しい免除制度があり、要件を満たせば猶予や免除を申請できます。

生活保護受給者の場合は、トラブルの解決後に相手方から経済的な利益を得たら、得られた金額から弁護士費用の立替え分を差し引くことで精算します。もし相手方から利益を得られなかった場合や、トラブルの解決後も生活保護を受給し続けている場合は、申請することで立替え費用の返済が免除されます。

また、ひとり親世帯の償還(返済)免除制度については、ひとり親世帯を支援する目的で令和6年4月1日より開始されました。以前免除申請をしたものの認められなかった、というシングルマザー(ファザー)でも再度免除申請をすることができますので、詳しくは以下の資料でご確認ください。
法テラス – ひとり親世帯の償還免除制度について(PDF)

法テラスを利用するデメリット・注意点

条件を満たせば経済的に大きなメリットがある法テラスですが、デメリットや注意点もあります。具体的には以下の3点を頭に入れておきましょう。

利用条件があり誰でも利用することはできない
審査に時間がかかる
弁護士を選ぶことはできない

ひとつずつ説明します。

利用条件があり誰でも利用することはできない

法テラスには利用条件が設けられており、これを満たさないと無料相談や弁護士費用立替え制度を利用できません。利用条件については前述した通りですが、とくに「収入や預貯金が少ないこと」という条件がある点には注意が必要です。

一定以上の収入や資産がある場合は、法テラスから経済的な援助を受けることはできません。無料相談や弁護士費用立替え制度の利用を希望される方は、自身が利用できるかどうか、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。

審査に時間がかかる

法テラスを利用する際のデメリットとして、審査に時間がかかることが挙げられます。この場合の審査とは、弁護士費用立替え制度を利用しようとする場合に必要となる審査のことです。

弁護士費用の立替えを申請すると、その審査に2週間から1カ月程度の時間が必要になることがあります。離婚調停の期日が迫っている場合や、訴状が送られてきて対応が急がれる場合など、法テラスの利用が難しいケースがあることを知っておきましょう。

弁護士を選ぶことはできない

法テラスに直接申し込み、弁護士を割り当ててもらう場合、利用者が自分で弁護士を選べない点にも注意が必要です。離婚トラブルにそれほど強くない弁護士や、自分と相性の悪い弁護士が割り当てられることも十分あり得ます。

離婚トラブルは、長期間にわたるサポートが必要となることも多く、弁護士との相性が重要です。中には、法テラスのサービスを利用しつつ、弁護士は自分で選びたいという方もいるでしょう。次章ではそのような方に役立つ情報を解説します。

法テラスに離婚相談を申し込む方法

ここからは、法テラスに離婚相談を申し込む方法について説明します。申し込む方法には2パターンあります。

法テラスに直接申し込む
弁護士事務所を通じて申し込む

自分で弁護士を選びたい、納得できる弁護士選びをしたいという方は、弁護士事務所を通じて申し込むのがおすすめです。それぞれメリット・デメリットがありますので確認しておきましょう。

法テラスに直接申し込む

法テラスに離婚相談を申し込む方法のひとつが、法テラスに直接連絡する方法です。平日9時~21時、土曜日9時~17時に対応できる方は、サポートダイヤル(0570-078374)もしくは近くの法テラスに電話してみてください。この時間に連絡するのが難しい場合は、365日24時間いつでも連絡可能なメールが便利です。

こちらの方法で申し込むと、法テラスから弁護士を割り当てられます。「とりあえず弁護士に相談したい!」という場合はこちらの方法でもよいでしょう。

弁護士費用立替え制度を利用したい場合は、面談時に審査に必要な書類も一緒に持参するのがおすすめです。具体的には、資力を証明する書類(給与明細・生活保護受給証明書・確定申告書の写しなど)や、世帯全員が書かれた住民票のほか、離婚の場合は戸籍謄本も必要です。必要書類は人によって異なりますので、あらかじめ確認しておきましょう。

弁護士事務所を通じて申し込む

法テラスに離婚相談を申し込むやり方として、弁護士事務所を通じて連絡する方法もあります。この方法には以下のようなメリットがあります。

離婚に強い弁護士を選べる
自分で好きな弁護士を選べる
弁護士がすべてのプロセスをサポートしてくれる

最初に弁護士を探す手間は必要ですが、その分メリットも大きいでしょう。

依頼したい弁護士がすでにいる場合は、その弁護士が法テラスと契約しているかを聞いてみましょう。依頼したい弁護士がいない場合は、法テラスのWebサイトから法テラスと契約している弁護士を探せます。こちらのページからお住まいの都道府県をタップすると契約弁護士名簿を見られるので、そこから弁護士を探して電話をしてみましょう。

連絡する際は、必ず「法テラスに掲載されている名簿を見て電話した」と伝えます。その際、法テラスの利用条件に関する確認がありますが、利用条件に合致していれば相談はもちろん無料ですし、弁護士費用立替え制度も利用できます。

依頼することになった場合も、弁護士がサポートしてくれるため、利用者が法テラスに出向いて手続きをするといった手間は必要ありません。

法テラスに離婚相談をする前に相談内容を整理しておこう

法テラスでの法律相談は1回30分です。1つの問題につき3回相談できるとはいえ、相談内容が整理できていなければ、時間がムダになってしまいます。限られた時間を最大限活用するためにも、相談内容を事前に整理しておくことが大切です。

整理しておきたいポイントは以下のようなことです。

現状について 配偶者との関係性・子どもとの同居/別居状況など
希望について 親権を獲得したい・適切に財産分与したい・慰謝料を請求したいなど
相談したい内容について 親権を獲得できる可能性・財産分与の方法・慰謝料の相場など
証拠資料について 財産分与の対象になり得る資産の情報・不貞行為の証拠など

このほか、弁護士にわかりやすく事実を伝えるためにも、できごとを時系列でまとめたり関係人物を整理したりしておくとよいでしょう。

とくに「希望について」「相談したい内容について」はより具体的に考えておくと、効果的なアドバイスを得られる可能性が高くなります。たくさん相談したいことがある場合は、優先順位を決めておくのもおすすめです。

法テラスで離婚の相談をしてみよう

離婚に関する相談先として、法テラスがあります。法テラスの無料相談や弁護士費用立替え制度を利用するには条件がありますが、条件を満たしていれば、費用の負担を抑えながら適切な法的サポートを受けられます。離婚に関して悩んでいる人は、まず法テラスの利用条件を満たしているか確認してみましょう。