2024年、「共同親権」の導入を柱とする改正民法が可決・成立しました。それにともない、2026年までに「法定養育費制度」が導入されることも決まっています。この記事では、法定養育費の概要や導入の背景、法定養育費について知っておくべきことをわかりやすくお伝えします。ぜひ最後までご覧ください。
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目次
2024年に「共同親権」についての法案が可決・成立
「子の利益」を確保するための仕組みづくりが議論されてきた結果、「共同親権」の導入を柱とする改正民法が可決・成立し、2026年までに共同親権が導入されることになりました。共同親権とは、離婚後も父と母の双方が子どもの親権をもつことをいいます。
今までは、離婚後、父か母のどちらか一方が親権をもつ「単独親権」が採用されていました。今回の改正によって、離婚時の話し合いにより、共同親権か単独親権かを選べるようになることが決まりました。
なお、話し合いで合意できない場合は、家庭裁判所が介入し判断します。この際、DVや虐待のおそれがあるなど、父と母が共同で養育することが難しいと判断される場合は、単独親権となります。
離婚後の親権が「単独」ではなく「共同」になると、親にとってどのような点が変わるのでしょうか。
たとえば、子どもに関する選択について父と母双方の同意が必要なケースが生じます。具体的には、学校の選択、進学か就職かの選択、転居先の決定、生命に関わる医療行為などです。
なお、緊急の手術や期限の迫った入学手続きといった急迫した事情や、習い事の選択やワクチン接種といった日常の行為に関しては、今まで通り一緒に暮らしている親が単独で判断できます。
離婚後も共同親権を導入することで、父母が子どもに等しく責任をもちながら関わっていけるため、「子の利益」につながると考えられています。
共同親権が導入される背景には「養育費未払い問題」など
共同親権が導入される背景には、離婚後に養育費の支払いが滞っていたり、面会交流がおこなわれていなかったりという現状があります。
国が実施した2021年度の調査(※)では、母子家庭のうち、養育費を受け取っているのは28.1%のみ。そもそも養育費に関する取り決めをしていない世帯は、半数以上にのぼります。また、母子家庭のうち面会交流をおこなっているのは30.2%で、そもそも面会交流に関する取り決めをしていない世帯は、7割近くにのぼるという結果が得られました。
養育費の未払いは、母子家庭の貧困に深く関わっていると考えられます。また面会交流がおこなわれないと、子どもが離れて暮らす親から大切にされている実感を得にくく、子どもの健全な成長が妨げられるという指摘もあります。
父母が離婚しても親子関係に変わりはありません。また「子の利益」のためには父母が協力して子どもを育てる責任があります。
共同親権の導入には、養育費の未払いや面会交流の不実施という「子の利益」が十分に守られていない現状を変える期待が込められています。
参考:厚生労働省 – 令和3年度 全国ひとり親世帯等調査の結果を公表します
「法定養育費」についての制度も導入される
今回の改正により、養育費の未払いへの対策として「法定養育費」が導入されることになりました。
法定養育費とは、子どもと一緒に暮らす親が、離婚後の一定期間、法律で定められた金額の養育費を、一緒に暮らしていない親に請求できる仕組みのこと。離婚時に養育費について取り決めていなくても請求することが可能です。
通常の養育費との違いには、以下のようなことがあげられます。
・離婚日から請求できる ・養育費について取り決めていなくても請求できる ・金額は、子どもの最低限度の生活を維持できる程度(になると考えられる) |
通常の養育費は、離婚日ではなく、養育費の請求日から支払い義務が生じるのが一般的です。法定養育費の場合は、養育費の取り決めができずに離婚した場合でも離婚日から請求できるため、離婚直後の生活の助けとなるでしょう。
ただし法定養育費は、離婚後の一定期間に限定された制度です。セーフティネットという位置づけであることから、金額に関しては子どもの最低限度の生活を維持する程度になると考えられます。
法定養育費制度の課題について
ここまでお伝えしてきた通り、今回の改正によって養育費の取り決めをせずに離婚した場合でも、離婚日にさかのぼって法定養育費を請求できることになります。しかし、「法定養育費があるから養育費の取り決めをせずに離婚しても大丈夫」ということではありません。
法定養育費は一時的なものです。期間については明確に決まっていませんが、「夫婦間で養育費についての取り決めができるまで」もしくは「法律で定められた終期まで」のようになると考えられます。金額についても明確ではありませんが、「子どもの最低限度の生活を維持する程度の金額」になるのではないかとされています。
法定養育費制度をあてにするのではなく、夫婦間でも養育費について話し合うことが必要です。
とはいえ、夫婦間での話し合いが難しいケースもあるでしょう。離婚時は感情がもつれているケースが多く、冷静に話し合えないこともめずらしくありません。法定養育費を受け取れる期間中に話し合いが進まないと、法定養育費を受け取れなくなってしまうことも考えられます。
夫婦間での話し合いで合意できない場合は、調停を利用する方法があります。調停の申し立ては難しいものではありません。法定養育費を受け取れる間に、養育費についての取り決めに向けて動くことが大切です。
また、今回の改正により「子の監護の費用」に「先取特権」が付与されることになりました。それぞれの言葉の意味は以下のとおりです。
子の監護の費用:子どもの生活や教育に必要な費用(養育費・法定養育費) 先取特権:ほかの債権より優先させる権利 |
「子の監護の費用に先取特権が付与される」とは、「養育費や法定養育費は、優先的に支払わなければならないものとみなされる」ということです。つまり、養育費や法定養育費の支払いが滞った場合は、ほかの債権よりも優先的に給与や財産を差し押さえられるようになります。
これにより、給与や財産の差し押さえなどに必要な法的手続きは今までよりも簡単になります。とはいえ、仕事や育児をしながらの手続きが容易ではないことは、頭に入れておきましょう。
養育費対策として「養育費保証」を検討しよう
法定養育費に関しては、まだ制度が導入されることが決まった段階で、その金額や期間についての詳細は決まっていません。現時点で公表されている情報や専門家の見解などからみて、法定養育費にそこまで多くの金額を望むことは難しいと考えられます。
今後もこれまでと同様、離婚時には養育費について取り決め、確実に養育費を受け取れるよう対策しておくことが必要です。確実に養育費を受け取る対策として、養育費保証サービスを検討しておくとよいでしょう。
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今後も法定養育費についての情報を得よう
法定養育費についての具体的な内容はまだ決まっていません。2026年までの実施に向け、今後くわしい内容が決まることでしょう。離婚を考えている人は、今後も法定養育費に関する新しい情報を得られるよう、ニュースなどを確認してみてください。情報を参考に、どうしていくか考えてみることが大切です。