【厳選】ママスマ編集部 おすすめ書籍を紹介
新たな生活に踏み出したシングルマザーの私たち。しかし、足元を見ればお金、教育、仕事、養育費などなど、不安と悩みは尽きません。それらの悩みに対し各方面の専門家、そして先輩たちが、書籍を通してたくさんの知恵を提供してくれています。ママスマ編集部では、そんな知恵とアドバイスの詰まった書籍を厳選、内容を抜粋して紹介してまいります。
目次
Q.「やりたいこと」があっても、お金や時間がないのでできません。永田さんはどうやって、自分の「夢」を実現してきたのですか?
A. 「やればできる」のではなく「やらなければできない」と考える
「思い込み」にとらわれやすいのは脳のクセ
「やりたいことをやっていますか?」
そんな質問すると、「仕事だし、家庭もあるし、そんなにやりたいことばっかりやっていられませんよ」とか「やりたくても、お金も時間もないから無理です」「ただの夢ですから」などという答えが返ってきます。
でも、本当にそうでしょうか。それは「できない」「どうせ無理」という思い込みではありませんか? というのも、人は、案外思い込みにとらわれやすいものだからです。
こんな話があります。
「あるところに、鎖につながれた子象がいました。子象は鎖を引きちぎって逃げようと、何度もトライしました。けれど、鎖は幼い子象の力ごときではビクともしません。やがて成長した子象は、巨大な象になりました。しかし、なぜだかもう逃げようとはしませんでした。おかしいですね。子象のときにつけられた鎖は、今ならちょっと引っ張るだけですぐに切れて自由の身になれるのに……」
これは、「ハビチャル・ドメイン(習慣的な領域論)」と呼ばれるもので、簡単にいえば、『習慣の罠』。もう20年近く前、私が大学院で意思決定を研究していたときに出会った理論のひとつです。
要するに、人間は、日常で「『当たり前』と習慣化された考え方」にとらわれがちな思考のクセを持っているということ。
子象が大きくなっても「逃げられないのが当たり前」と思い込んで可能性にチャレンジできなかったのと同じように、私たちは、過去の経験・常識、日々の習慣の囚しゅう人じんとなって、せっかくの可能性に目を向けられなくなってしまうことがあるのです。
あるとき私も、思い込みやすい自分の一面に気づいたことがありました。
意思決定のテキストなどでよく目にするものに、「ナイン・ドット・パズル」があります。これは、3行×3列に等間隔で配置された9つの「●」すべてを、4本、あるいは3本の直線の一筆書きで結ぶというもの。よくある思考問題です。
当時、私はまだ20代で、加えて海保でさまざまな経験をしているので「自分は柔軟に物事を考えることができている」と自信まんまんに取り組みました。ところが、これが解けなかったのです。
この手の問題は、たいてい答えを知れば「なーんだ」と拍子抜けするような簡単なもの。
でも、たとえば、
「9つの点の外にはみ出してはいけないんじゃないか」
「4本の直線は交差してはいけないんじゃないか」
などの思い込みがじゃまをして、発想が小さく縮こまってしまうんですね。そこで気づいたのが、「ああ、私には、思い込みで自分を枠にはめてしまうクセがある」ということでした。
こんなときは行動が素早い私。「この枠を外さなきゃ!」と、さっそく、当時流行していた自己啓発セミナーに参加したのです。
自己啓発セミナーといえば、宗教がらみのイメージもありますが、その頃は、リーダー養成の研修につかわれるなど、そんなに胡散臭いものではありませんでした。
結果的に、私はひとつの面白いプログラムを体験しました。
「人生が残り24時間しかなかったら…… 」と考えてみる
「あなたの人生は残り24時間しかないとします。残りの24時間で何をしたいかを考えて、実際に行動してください。そして、明日の12時にまた戻ってきてください」
ある日のプログラムで出された課題は、このようなものでした。お昼の12時にスタートし、翌日の12時までに行動をやり終えてまた東京の会場に戻ってこなければなりません。考えるだけでなく、実際に行動に移さなければいけないのですから、大変です。
参加者の中には、東北から来ていた人がいました。彼女は、「24時間しかないなら、私は家族と一緒に過ごしたい」と言って、せっかく来たのに、再度、青森の実家まで帰ってまた東京に戻るという怒ど濤とうの24時間をやり遂げました。
このプログラムに対して、私が実行したのは、2つのことでした。
ひとつは、大学時代から今までお世話になった人に、感謝を伝えるということ。たくさんの方にお世話になっているので、実際一人ひとりに会いに行く時間はありませんから、順番に電話をかけて感謝の言葉を伝えました。久しぶりのご挨拶、何よりもやろうと思っていて、なかなかできなかったことなので、ちょうどいい機会になりました。
そしてもうひとつが、「思い切り女性っぽい洋服を買う」ことでした。海保時代の私は、女性らしさを表現することを、何かいけないことのように感じていました。男性社会で目いっぱいがんばっていて、少しでも女っぽくするとチャラチャラしていると思われるんじゃないかと、勝手に思い込んでいたのです。
本当は、一度くらい、女性っぽいおしゃれをしてみたかった。でも、そんな自分の思いに、自分でブロックをかけていたのですね。
その心のブロックが、「残りの人生あと24時間」というリミットが加わったことでカチッと外れたというわけです。その日、横浜の元町へ出かけていって私が買ったのは、体のラインがバッチリ出るピンクのボディコンシャスのワンピースでした!懐かしい! 当時はバブル時代でしたから。
できないのは、やらないだけ
セミナーに参加してわかったのは、私たちは、本当は、やりたいことはなんでもできるということでした。それなのに、女性っぽいワンピースを買うというほんのささいなことすらできなかったのは、単純に、「やらなかったから」です。なんでもできるのに、実際にやらないから「何もできない人」になっていただけなのです。
「やる」か「やらない」なら、「やる」だけ。
シンプルですが、大切なことです。あなたがやりたいことを書き出してみてください。
プライベートで趣味にチャレンジ。有休を全部とって旅行する。仕事なら、資格を取る、自分から売り込む、企画を出す、リーダーになる、転職する、独立して起業する……など、やりたいことはいろいろあるでしょう。実際にやってみると、「やれる」ことが増えて、人生がますます楽しくなります。
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著者:永田潤子(ながた・じゅんこ)
大阪市立大学大学院創造都市研究科准教授。1961年福岡県生まれ。女性に門戸を開放した海上保安大学校に、ただ一人の初女子学生として入学。卒業後は海上保安庁勤務。26歳のとき、最年少で巡視艇まつなみ船長を務める等、パイオニアとしての道を歩くことになる。
霞ヶ関での官庁勤務等、キャリアを積んだ後、埼玉大学大学院政策科学研究科(現:政策研究大学院大学)、大阪市立大学大学院経営学研究科博士後期課程にて、政策分析、意思決定、経営学を研究。その後、海上保安大学校にて人材育成および女子教育にも注力する。2003年より現職。2008年からは、大阪府橋下知事のブレイン(特別顧問)として改革に携わった。女性の活躍、リーダーシップ、個人と組織が本領発揮をする働き方等、その経験を活かした企業研修・講演も多数行なう。
自身が実地で学び、理論で裏付けた「仕事術」を、すべての働く女性に向けてまとめたのが、本書『女子の働き方』である。なお、まつなみ船長までの軌跡を描いた「海をかける風」はウェブサイトで無料公開中。
http://junko-nagata.com/