離婚の理由はさまざま。そして、その後の人生も、選択と決断の毎日です。先行きに不安を覚えたり、失敗して落ち込んだりすることもあるかもしれません。少し詰まってしまったら、この企画に相談にいらっしゃいませんか?自ら5人の子どもを育て上げた日本シングルマザー支援協会代表の江成道子さんが、本音で、真剣に、あなたの悩みに答えます。

第2回目のご相談は「子どもを幼稚園から保育園に転園させるべきか」です。離婚を視野に入れて社会復帰を目指した時、子どもの預け先は幼稚園、保育園のどちらがベストなのでしょうか。

今月のご相談:パートでも、子どもを幼稚園に通わせたい……

「夫との生活に嫌気がさし、離婚を決意しました。医療事務の資格を持っているので、離婚後は社会復帰のリハビリとして、週3で1日3~4時間ほどのパート勤務をはじめようと思っています。

ただ、子どもが幼稚園に通っています。働くには保育園がベストだとわかっているのですが、せっかく幼稚園に入園したのだし、子どもを転園させるのもかわいそう。卒園まであと2年半、離婚を待った方がよいでしょうか?」

▽相談者の情報
・既婚/・現在の職業:主婦/・年齢:35
・子ども(性別・年齢): 1人(息子・4歳)
・経緯:医療事務の資格あり、結婚前まで病院で勤務。条件のよいところへ転職を繰り返しながらキャリアは10年以上

 

回答:幼稚園に通わせたいなら、離婚は卒園まで待って。その間に自立への道筋を立てましょう

相談者さんが離婚を待てるなら、お子さんは幼稚園のままでもよいと思います。すぐにでも離婚したいなら、保育園への転園をおすすめします。具体的に解説していきましょう。

相談者へのアドバイス1:この2年半で、パートから正社員になれるような働き方をしましょう

離婚を考えたとき、ほとんどの方が不安になるのが離婚後の生活の安定です。多くの人が間違いやすいのですが、主婦でいるときと自分が世帯主になる場合の職業の選び方は、まったく違います。シングルマザーとして自らが世帯主になる場合は、キャリアにつながる仕事を選択することが肝心です。

その観点からいうと、「医療事務」という職業と「パート」という勤務形態の組み合わせは、将来を見据えるとキャリアにはなりにくく、貧困に陥ってしまう可能性が高いです。ただし、離婚を見据えた社会復帰の足がかりとしての仕事であれば、間違っていない選択だと思います。

この部分を踏まえて、卒園までの2年半までにあなたがやっておくべきことについてお話ししましょう。それは、キャリアにつながる職に就く準備をしておく、ということです。

まず、なぜパートや派遣がキャリアになりにくいのかというと、正社員に比べて責任ある仕事を担いづらいからなんです。加えて、相談者さんのおっしゃっている「医療事務」は、資格が必須でなく、就職の難易度は別として実際は誰でも就くことのできる仕事。「パート」という責任のある仕事を担いづらい点も踏まえると、専門職として経験が求められ、社会から評価されるキャリアにはなりにくい選択だといえるでしょう。

ただし、パート先で正社員を目指すのならキャリアにできます。社員登用の可能性はあるか、あれば将来的にどれくらいの収入を得られそうか、確認しておきましょう。そして幼稚園の最後の1年は、延長保育などがあれば多少お金をかけてでも利用しつつ、正社員になれるような働き方を目指しましょう。

パート先で社員になれる可能性がゼロの場合は、就職したい会社を見つけ出し、そこへの就職を想定して履歴書の内容を埋められるように働いていきましょう。一般的に30代後半の主婦が正社員で社会復帰するのは難しいと思われがちですが、まだ大丈夫。少なくとも40代前半までは、正社員採用の可能性は大いにあります。

相談者へのアドバイス2:子どもの順応性を信じて自立を促し、働きやすい環境をつくる

離婚後、相談者さんの自立と同様に、お子さん自身の自立も大切になります。お母さんと一緒にいる時間だからこそできること、たとえば一緒にお皿を洗う、洗濯物をたたむ、短時間のお留守番を頼んでみるなど、積極的にお手伝いをさせてみてください。

子どもは手がかかるものと思いがちですが、それは親の思い込みです。子どもの“順応性”って本当にすごくて、すぐに何でもできるようになるんです。それこそ離婚してから、「さあ、これから2人で一緒に頑張るぞ、頼んだよ!」という状況になると、子どもは瞬間的に、早ければたったの1日で、自立に向けて意識が変わります。

子どもはとても純粋に、お母さんのために役に立てる喜びを感じます。私たち大人も、誰かの役に立てることが喜びだったりしますよね。それと同じで、もしかしたらそれ以上に、お母さんの役に立つことに対する子どもの喜びは大きいのです。いろいろとお世話されるより、お母さんに「ありがとう、あなたのおかげで助かったよ」といわれる方が何倍もうれしいものなのです。

むしろ、「ウチの子には無理だ……」というお母さんの思い込みを、「この子はできる!」という意識に変える方が難しかったりします。日本シングルマザー支援協会のセミナーでも「子どもを信じること」を会員さんたちに教えていますが、「うちの子、本当に変わりました!」という声をよくいただきます。だいたい9歳未満のお子さんであれば、これで100%の効果があります。

お子さんが4歳ということなので、ある程度のお手伝いはできますし、あと2年半あれば十分に自立に向けた意識づくりができます。子どもの力を信じて、お母さんが働きやすい環境をつくりましょう。

相談者へのアドバイス3:資格を過信しすぎない。組織の中で主体性を持って働くことが大事

もし相談者さんができるだけ早く離婚したいと思うなら、保育園への転園を考えましょう。そして実家が頼れるようなら一時は戻って、夫の元でやっていく予定だった自立を目指します。なるべく早く正社員の職を得て、最終的に300〜400万まで年収を上げていきましょう。

女性は就職、転職となると、まず資格取得を考えがちです。しかし、資格がないと仕事に就けない医療・介護従事者以外の資格は、就職にさほど大きなプラスにはならないと考えています。

私はいろいろな企業の方のお話を聞いていますが、採用するなら有資格者でなければ、ということはほとんどありません。それよりも「会社の中で主体性を持って働いてもらえることが大事」とおっしゃいます。パソコンは使えた方がよいですが、資格取得は正社員になったあと、必要と感じた時で十分間に合います。

 

まとめ:35歳はまだ若い!親も子どもも、たくさんの可能性に満ちています

幸いなことに、相談者さんとお子さんの年齢の組み合わせはとてもよいです。お子さんが22歳で大学を卒業したとき、相談者さんは53歳。65歳まで働くとすれば、12年分の収入が自分のために使え、老後の資金もしっかり貯められます。

私は養育費を全額貯蓄することをおすすめしていますが、旦那さんから養育費を月5万でも受け取ることができたら、10年間貯蓄すると600万円です。医学系の学部でなければ、私大にも通わせられる額です。そう考えるとどうでしょう、少し安心しませんか?

35歳って、自分では「もう歳だな……」と思ってしまいがちな年齢ですが、まだまだ十分若い。相談を受けていると、“まだ起こってもいない事態”にあれこれ不安になる人がとても多いのですが、見えない不安にとらわれるより、安心できる材料をひとつでも多く見つけましょう。そして、自立への一歩を踏み出してください。

江成道子

江成道子
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会 代表理事。シングルマザーサポート株式会社代表取締役社長、一般社団法人グラミン日本顧問、武蔵野学院大学講師。自らシングルマザーとして5人の姉妹を育てながら、シングルマザーの自立支援活動を続ける。講演多数。
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会