「離婚したいと思っているけれど、なかなか決断できない」と悩む人は多いです。本稿では、離婚を決断できない理由や、離婚経験者が離婚を決めた要因を探ります。さらに離婚を決断しやすいタイミングや、離婚で後悔しないための注意点についてもお伝えします。離婚を決断する前には、自分の中にある不安としっかりと向き合うことが大切です。この記事を参考に、ぜひ自身が納得できる選択をしてみてくださいね。

監修:弁護士 白谷 英恵

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離婚を決断しきれない…よくある理由とは?

「離婚をしたいけれど、いまいち踏み切れない」という声は多く聞かれます。では、そのような人たちはどうして離婚を決断できないのでしょうか。まずは、離婚を決断できない理由をまとめてお伝えします。

子どもがいるから

子どもをもつ人は、「子どもがいるから」という理由で離婚を簡単に決断することができない傾向があります。離婚をすると、夫婦のどちらかが子どもを引き取ることになります。子どもをひとり親にさせてしまうことへの罪悪感や、ひとり親で育てることによる子どもへの影響を心配し、離婚に踏みきることが難しくなるのです。

また、子どもの親権をとることができるのかという不安も、離婚を決断できないひとつの理由です。中でも、専業主婦で稼ぎがない人は子どもの親権について特に不安になる傾向が強く、「親権をとれなかったら、子どもと会えなくなってしまうかもしれない」と気掛かりに思う人が少なくありません。

たとえ子どもの親権をとれたとしても、子どもを引き取りひとり親として育てることへの不安は大きいものです。子どもを育てながら仕事をしなければならず、精神的・経済的な負担ははかりしれません。

このように、子どものことを考えると離婚に踏み切れないという人は多く存在します。子どもが小さい場合はなおさら、仕事ができるのか、育てていけるのかといった不安が強いようです。

▶妊娠中だけれども離婚を考えているという場合、考えておきたいことがいくつかあります。こちらの記事で詳しく説明していますので、ぜひご覧ください。
妊娠中の離婚|後悔しないために母親が知っておきたいこと

まだローンが残っているから

「ローンが残っているから」という理由で離婚を決断できないケースもあります。離婚をするとローンの扱いや手続きが大変そう、手続きに関してどうしたらよいかわからないといった理由で離婚に踏み切れない人もいます。

特に多額の住宅ローンが残っている状態だと、手続きなどが複雑です。調べてもわかりにくく、自分たちだけで解決できないこともあるでしょう。ローンをはじめ、財産関係の清算は離婚時に必須のことですが、これらの手続きが難しいため離婚を先延ばしにしているケースもあります。

経済的に厳しくなりそうだから

離婚を決断できない理由として、「経済的に厳しくなりそうだから」という声も聞かれます。特に今まで相手の収入にたよって生活していた人ほど、その不安は大きくなる傾向が高いです。自分の収入だけで生活していけるのか、今から就職できるのかといった不安から、離婚に踏み切れないケースは少なくありません。

その他

離婚を決断できない理由には以下のようなことも考えられます。

・本当に離婚すべきなのか自問自答状態にあるから
・まだ相手に情があるから
・親に反対されそうだから
・世間体が悪いから

このように、離婚を決断できない理由は人それぞれです。一度は人生をともに歩もうと考えた相手と別れる決断をするには、さまざまな迷いや不安があるのも当然でしょう。

▶いきなり離婚という決断をせず、別居期間を設けるケースは多いです。別居する意味や別居中の生活費について、離婚前に別居期間が必要になるケースについてなど、こちらの記事で解説しています。
離婚に向けた別居は必要?生活費や手順、子どもはどうする?

離婚経験者が離婚を決断した「決定的要素」

実際に離婚を経験した人が離婚を決断した「決定的な要素」とはどのようなことでしょうか。本章では離婚経験者の声も一部紹介していきます。

性格が合わない

離婚理由として多いのが、性格が合わないことです。裁判所の資料「第19表 婚姻関係事件数―申立ての動機別(令和2年度)」において、夫側・妻側ともにもっとも多い離婚原因が「性格が合わないこと」でした。

結婚する前は一緒によい家庭を築けそうだと思った相手でも、結婚してみたら「こんなはずじゃなかった」「こんな人だと思わなかった」と感じることがあるのは仕方ないといえます。しかし、あまりにも金銭感覚が違い過ぎる、何かと意見が合わずケンカが絶えないなどの場合、夫婦としての未来をイメージできず、離婚決断のきっかけになることがあります。

生まれ育った環境が異なるため、ある程度の性格の不一致は仕方のないことです。しかし、夫婦のうちどちらか一方、もしくはどちらも歩み寄る姿勢がない、冷静に話し合うのが難しいといった場合、お互いに不満がたまってしまいます。その結果、耐えきれず離婚に至ってしまうのです。

不貞行為の発覚

離婚を決断した理由として、不貞行為の発覚をあげる人もいます。これには、夫が不貞行為をしたというケースだけでなく、妻のほうに好きな人ができたケースや妻が不貞行為をしてしまったというケースも含まれます。

夫の不貞行為が原因で離婚したというケースでは、夫の不貞行為がわかった段階で「気持ちが冷めてしまった」「絶対に許せない」と感じて離婚を決断したという例があります。中には「それまで性格の不一致を感じていたが、子どもが小さかったので我慢していた。そんなときに夫の不貞行為が発覚し、一気に離婚に気持ちが傾いた」という体験談もあります。

いっぽう、妻の不貞行為で離婚に至ることもあります。不倫相手に本気になってしまい自ら離婚を申し出た例や、夫が妻の不貞行為を許せず離婚されてしまった例など、さまざまなケースがあります。

継続的なDV、モラハラ

婚姻期間中にDVやモラハラが継続的におこるようになったことで、離婚を決断したという人もいます。

DVは身体的な暴力のことで、モラハラは人格を攻撃するような言葉や暴言を吐いたり、常識では考えられない束縛をしたりして、精神的に追い詰めることをいいます。結婚前にはそのような素振りが一切なくても、結婚後急に変わってしまうことは少なくありません。

以下にDVやモラハラが原因で離婚した人の体験談を紹介します。

・毎日DVにびくびくしながら生活していた
・夫の機嫌が悪くならないように取り繕うのがしんどかった
・子育てにも家のことにも協力的にみられる夫だけど、家庭内ではまったく違う。毎日続くモラハラがツラかった
・毎日続くモラハラで精神的に限界だった

このように、DVやモラハラが原因で離婚した人からは、精神的に大きな負担を感じながら生活をしていたという声が多く聞かれます。中には「夫からの報復が怖いと我慢していたが、暴力が子どもにも向いたことで離婚を決断した」という人もいます。

子どもの変化

離婚を決断した理由として、子どもの変化をあげる人もいます。子どもは夫婦仲の悪化を間近で感じています。そのため、精神的に負担がかかり、子どもにさまざまな変化がみられることがあります。

以下にその一例を紹介します。

・暴力的になった
・気分の起伏が激しくなった
・お友だちへの接し方が変化した
・幼児返りが見られるようになった
・腹痛など体調不良を訴えるようになった

このような子どもの変化をきっかけに「このままではよくない」と考え、離婚に踏み切った人もいます。

離婚を決断しやすいタイミング例

離婚を決断するには、さまざまな不安や葛藤があります。複雑な感情が入り交じり、なかなか離婚を決断できないというケースもめずらしくありません。

そこで本章では、離婚を決断しやすいタイミングとして以下の4つを紹介します。

・子どもが成長したタイミング
・職や住居の見通しがたったタイミング
・財産の整理が終わったタイミング
・証拠集めが終わったタイミング

タイミングを逃すと離婚しにくくなってしまうこともあります。決断しやすいタイミングについて知っておきましょう。

子どもが成長したタイミングで

先ほど、離婚を決断しきれない理由として「子どもがいるから」というケースを紹介しました。たしかに子どもがいると、子どもにかかる負担や生活への不安などから離婚に踏み切るハードルは高いです。

しかし、子どもが成長したタイミングで離婚をすれば、多少は負担を軽くできると考えられます。子どもの進学に合わせて離婚をすると、名字が変わることや、転校・引っ越しによる負担を少しは抑えられるかもしれません。

ほかに、子どもが成人になるときも離婚を決断しやすいタイミングといえます。なぜなら子どもが成人していれば、離婚時に親権や養育費について取り決める必要がないからです。また、子どもが自分の意思で親とのかかわり方を選ぶこともできます。中には親の気持ちを理解してくれる子どももいます。子どもが理解してくれると、離婚へのうしろめたさや罪悪感といったネガティブな感情が少しは軽くなるかもしれません。

職や住居の見通しがたったタイミングで

離婚後の生活への不安から離婚を決断できないケースもあります。そのようなケースでは、職や住居の見通しがたち、経済的な不安が軽減したときが離婚を決断しやすいタイミングです。実際、離婚をするために職と住居を探しはじめたという人や、今の仕事が軌道にのったら離婚に踏み切ろうなどと考えている人は存在します。

相手の収入に依存して生活をしていた場合、経済的な不安から離婚を決断できない人はたくさんいます。そのような不安を払拭するために、離婚に向けて計画的に動くことも大切でしょう。

また、住居に関しても確保しておくと離婚に踏み切りやすいです。実家に帰る、新しい住居を借りるなど複数の選択肢をもっていると安心につながり、離婚を決断しやすいでしょう。

財産の整理が終わったタイミングで

財産の整理をしたタイミングも離婚を決断しやすいです。別居を開始すると、夫婦の財産を正しく把握できなくなることがあります。そうなると財産分与を正しく行えず、大きな紛争になりかねません。

別居を開始する前には、財産の全容をできる限り明らかにすることをおすすめします。このタイミングで離婚を決断すれば、少なくとも財産分与の対象が不明であるというトラブルになることも少ないでしょう。

証拠集めが終わったタイミングで

DVやモラハラ、不貞行為をきっかけに離婚したい場合は、証拠があると有利に離婚手続きを進められます。離婚の原因が相手にあるなら、そのことを明らかにできるような証拠を集めましょう。

DVやモラハラの証拠となるものには、以下のようなものがあります。

・警察などへの相談記録
・医療機関の受診記録
・ケガの写真
・音声や映像
・第三者の証言
・記録したメモや日記

また、不貞行為の証拠としては、以下のようなものがあります。

・メール
・写真や動画
・不貞行為を認めた録音
・ホテルのレシートやクレジットカードの明細

自分で集めるのが難しいものもあるうえ、これらの証拠があったとしても、必ずしも裁判所がDVやモラハラがあったことや不貞行為の事実を認定してくれるとは限りません。しかし、確実な証拠を集めることで有利に離婚できる可能性が高くなります。証拠集めが終わったタイミングで離婚を切り出せば、離婚を進めやすいでしょう。

【本当に後悔しない?】離婚決断前に考えたいこと

離婚を決断するということは、今後の人生に大きく影響を及ぼします。子どもがいれば子どもの人生にもかかわることです。離婚で後悔しないために、以下の5つの点についてしっかりと考えて決断しましょう。

1.経済的にやっていけるのか
2.離婚後の具体的な生活をイメージできるか
3.子どもにとって良い選択か
4.寂しくならないか
5.本当に関係修復はできないのか

それぞれについて説明します。

1.経済的にやっていけるのか

離婚に際し、経済的な不安を感じる人は多いです。特に相手の収入にたよって生活してきた人は、今から仕事が見つかるだろうか、自分の収入だけで生活できるだろうかと大きな不安を感じていることでしょう。

そんな不安を少しでも軽減するためには、離婚前に仕事の目処をたてておくことが大切です。また、離婚に際してもらえるお金についてもしっかりと調べ、経済的にやっていけるのかについて考えておきましょう。

とはいえ、経済的な不安はどのような人にもあります。仕事を熱心にこなしている人でも、経済的な不安がまったくないという人は少ないはずです。経済的な観点から考えることはもちろん大切ですが、経済的な不安がゼロになることはほぼないと考え、ある程度の見通しがたった時点で決断することも必要かもしれません。

2.離婚後の具体的な生活をイメージできるか

離婚を決断する前に、離婚後の生活をイメージしてみましょう。どこに住むのか、どのような収入がいくらあって、どのようなことにお金が必要なのかといった具体的なことを考えます。

子どもがいる場合、親権や面会交流について正しく理解しておくことも大切です。子どもの成長を考えると、子どもと夫とのかかわり方についてもしっかりとイメージできるとよいです。

離婚後の生活を具体的にイメージしてみると、わからないことや不安なことが出てくるかもしれません。その場合、納得できるまで調べたり検討し直したりして、ひとつずつ不安を減らしていくようにしてみてください。

3.子どもにとって良い選択か

子どもがいる場合、離婚が子どもにとって良い選択であるのかどうか考えることが大切です。離婚によって引っ越さなければならなくなり、学区が変わるために転校が発生する可能性もあります。環境が変わることで子どもにどのような影響があるのか、親としてどのような対策がとれるのかといったことをあらかじめ考えておきましょう。

普段から子どもとコミュニケーションを密にとっていると、子どもの異変に気付ける可能性が高いです。離婚前から子どもの様子に気を配り、意識してコミュニケーションをとるようにしてください。

また、離婚をして妻が子どもを引き取ることになると、子どもは父親と引き離されることになってしまいます。子どもが父親になついている場合、父親と離れることで寂しい思いをする可能性が高いです。子どもの気持ちに寄り添い、面会の頻度や方法などを検討することも必要です。

4.寂しくならないか

勢いで離婚をしてしまった場合、「これでよかったのかな…」と後悔したり寂しくなったりすることもあります。自分が納得できるまでしっかりと考えてみてください。焦ったり周りの意見に流されたりするのではなく、自分の意思で決断できれば、きっと後悔することはないでしょう。

5.本当に関係修復はできないのか

離婚に踏み切る前に、本当に関係を修復できないのかもう一度考えてみましょう。性格の不一致が原因の場合は、話し合うことで乗り越えられるかもしれません。お互いが別の考え方をもっていることを認め、歩み寄る努力をすることで関係を修復できることもあります。

また、夫が不貞行為をしたものの心から反省している場合には、関係を修復して結婚生活を続けることができる場合もあるかもしれません。完全に自分の思い通りにはならないかもしれませんが、関係を修復できる方法がないかじっくり検討してみることも大切です。

離婚を決断する前にしっかり考え、悔いのない選択をしよう

離婚の決断には不安がつきものです。自分が何に不安を感じているのかを明らかにし、少しでもその不安を減らせるよう、対策をたてたりタイミングをはかったりしてみましょう。自分なりに納得できるまでしっかりと考え、悔いのない選択をしてみてください。


白谷 英恵

【監修】白谷 英恵
弁護士。神奈川県弁護士会所属。同志社大学商学部卒業、創価大学法科大学院法学研究科修了。離婚・男女問題、相続問題などの家事事件を中心に、交通事故や刑事事件など、身近な法律問題を数多く取り扱う。家事案件をライフワークとして、役所での女性のための相談室の法律相談員や弁護士会での子ども人権相談の相談員、相続セミナーなどにも積極的に取り組む。

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