妊娠中でも離婚することはできます。しかし、生まれてくる子どものことを考えると、簡単な気持ちで離婚に踏み切るのは考えものです。そこで今回は、妊娠中の離婚で後悔しないために母親が知っておきたいことをまとめました。戸籍や親権、養育費などについて離婚前にしっかりと調べ、安心して新しい生活をスタートさせましょう。
養育費が継続的に支払われている人はたったの24%。書面を交わしても支払われていない現状があります。
●養育費を確実に受け取りたい
●パートナーと連絡を取りたくない
●未払いが続いた時の手続きが心配
こうした養育費の未払い問題を解決する方法に「養育費保証サービス」があります。
養育費保証PLUSでは、業界最安(*)の料金で最大36か月の保証を提供しています。その他、連帯保証人がいなくても住まいや仕事探しのサポートも充実していますので、ぜひご検討ください。*2023年4月時点
目次
妊娠中に夫婦が離婚を選択する原因
妊娠中に夫婦が離婚を選択する原因として、妊娠に対する感覚の違いがあげられます。体調や体型の変化で妊娠を実感し、精神的にも母親になりつつある妻に対し、夫は父親になる実感を具体的にもちにくいことが多いため、2人の間に感覚の差が生じるのは不思議なことではありません。
特に妻側が妊娠中に離婚を考える理由としては、妊娠による不安定な精神状態やつわりに夫が無関心なことがあげられます。夫の理解のなさから発せられる何気ないひと言が原因で夫婦関係が崩れてしまうことはめずらしくありません。
また、妊娠中だとスキンシップを嫌がる女性は多いですが、今までのように応じてくれない妻に不満をもち、浮気をしてしまう男性は少なからず存在します。妊娠中に夫がほかの女性と関係をもったということは、妻にとって許しがたいことでしょう。このような夫の浮気をきっかけに離婚を考える妻は少なくありません。
いっぽう、夫が離婚を考える理由には、父親になることへの重圧や妻の変化に対する不満などがあげられます。父親になることへの重圧としては、「子どもが生まれたら今まで以上に家族を支えなくてはならない」というプレッシャーから、逃げ出したくなるというケースです。
また、妊娠中は疲れやすかったり、こまめな休息が必要になったりしますので、妊娠前の体とは違うものとして過ごす必要があります。しかし、妊娠中の妻に対して、今までと同じように家事などを要求する夫は少なくありません。妻が対応できないと夫の負担が増えることになるため、不満がたまるといったケースが該当します。
妊娠中の離婚|親権や戸籍はどうなる?
妊娠中に離婚する場合、生まれてくる子どもの親権や戸籍はどのようになるのでしょうか?離婚によって必要となる手続きの方法もあわせてお伝えします。
親権者は原則として「母親」になる
妊娠中に離婚が成立した場合、生まれてくる子どもの親権者は原則、母親となります。もし離婚の成立までに時間がかかり、子どもが生まれたあとに離婚成立となった場合は、父親と母親の両方が親権者となり、離婚成立後に親権者を指定することになります。
なお、母親が専業主婦で収入がない場合でも、以下のような理由から母親が親権を獲得することが多くみられます。
・生まれて間もない乳児には、母親の必要性が高いと考えられていること
・元夫からの養育費や自治体からの手当など、収入源が見込めること
戸籍は「離婚成立後300日以内に出産」かどうかによる
生まれてきた子どもの戸籍は、出産日が離婚成立日から何日経っているのかによります。出産日が離婚成立から300日以内なら、子どもは元夫の戸籍に入ります。これは民法772条で「婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する」とされているためです。
妊娠中の離婚となると、離婚成立後300日以内に出産日を迎えるケースが多いため、生まれた子どもが元夫の戸籍に入る事例がよくみられます。ただし、この場合でも母親が親権者となれますので安心してください。
いっぽう、離婚成立から300日以上経過してから出産した場合、生まれてきた子どもは「非嫡出子」となります。非嫡出子とは、「婚姻関係のない男女から生まれた子ども」という意味です。この場合、母親の戸籍に入り父親の欄は空欄になります。
子どもと戸籍や名字を同じにする場合
前述のとおり、妊娠中に離婚する場合、生まれた子どもは元夫の戸籍に入るケースがほとんどです。何も手続きをしなければ、離婚をすると母親は実家の戸籍にうつるため、子どもと戸籍がわかれてしまいます。子どもは母親の実家の戸籍には入れませんので、子どもと戸籍や名字を同じにしたい場合には、以下のような手続きが必要です。
➀母親が筆頭者となる新たな戸籍を作る
②子どもの名字を変える
③子どもを母親の戸籍に入れる
まず、母親が筆頭者となる新たな戸籍を作る方法から説明します。新たな戸籍を作るには以下の二通りが考えられます。
・旧姓に戻る場合
・結婚していたときの名字を引き続いて使用する場合
旧姓に戻る場合は、離婚届の「婚姻前の氏にもどる者の本籍」欄で「新しい戸籍をつくる」にチェックを入れます。新しい戸籍で名乗る姓と新しい本籍地を記入すれば手続き完了です。結婚していたときの名字を引き続いて使用する場合は、「離婚の際に称していた氏を称する届」を離婚届提出後3カ月以内に提出すれば、新しい戸籍を作ることができます。
母親を筆頭者とした新しい戸籍が作れたら、子どもの名字と戸籍を変更するステップです。
まず、子どもの住所地を管轄している家庭裁判所に対し「子の氏の変更許可審判申立」を行います。裁判所の許可が出たら、子どもは母親と同じ名字になることができます。その後、本籍のある市区町村の役所で子どもの入籍届を提出すれば、子どもの戸籍や名字を母親のものと同じにする手続きは完了です。
もしも子どもが元夫の実子ではない場合
子どもが元夫の実子ではない場合はどうなるのでしょうか?実はこの場合も、離婚成立後300日以内に出産日を迎えると、元夫が法律上の父親となってしまいます。
元夫と子どもの親子関係を解消するためには、以下のいずれかの手続きが必要です。
・元夫から「嫡出否認」の手続きをしてもらう
・母親が「親子関係不存在確認」の手続きをする
「嫡出否認」とは、元夫が、自分の子どもと推定される子どもを「自分の子どもではない」と主張することをさします。嫡出否認は調停や裁判でのみ認められるもので、たとえ元夫婦での話し合いで合意したとしても親子関係は消滅しませんので注意しましょう。
嫡出否認は元夫にしかできない手続きですが、それに対し、母親が主体となってできる手続きとして「親子関係不存在確認」があります。
嫡出否認の手続きと同様、親子関係不存在確認を行うためにも調停や裁判が必要です。別居などで性交渉がなく、夫の子どもを妊娠する可能性がないことや、DNA鑑定により元夫と子どもの親子関係がないことなど、客観的な事実を証明できれば、元夫と子どもの親子関係を消滅させることができます。
妊娠中の離婚|養育費はどうなる?
養育費とは子どもの養育にかかる費用です。離婚したとしても、元夫が父親であるなら当然、元夫には養育費を支払う義務があります。また、母親にとっては、今後子どもを育てるうえで養育費は大切な収入源になります。離婚後の生活を安定させるためにも、養育費についてしっかりと理解しておきましょう。
請求できるかどうかは状況による
養育費を請求できるかどうかも、出産日が離婚成立日から何日経っているのかによります。さきほども解説したように、離婚成立から300日以内に生まれた子どもは元夫の子どもであるとみなされるため、法律上は親子関係が成立します。そうなると、母親は元夫に対し子どもの養育費を請求することができます。
いっぽう、離婚成立から300日以上経ってから子どもが生まれた場合、元夫と子どもの親子関係は認められないため、このままの状態では元夫に養育費を請求できません。養育費を請求するには、元夫に子どもを「認知」してもらう必要があります。元夫が認知すれば法律的には親子関係が成立するため、元夫には養育費を支払う義務が生じます。
もし元夫が認知を拒否する場合は、調停や裁判を起こすことになります。DNA鑑定などで親子関係を客観的に証明できれば認知が成立しますので、養育費の請求が可能になります。
妊娠中に離婚した場合の養育費の決め方
離婚に際し養育費を決めるときには、親同士の話し合いで決めるのが基本です。これは、妊娠中に離婚したとしても同様です。
養育費の額を決めるときには、裁判所が公開している「養育費算定表」を参考にすることをおすすめします。養育費算定表とは、父親と母親それぞれの年収と、子どもの年齢や人数から算出した養育費の相場が記されているものです。インターネットで公開されていますので、誰でも見ることができます。
話し合いで決まらないときには、家庭裁判所に「養育費調停」を起こすことになります。調停でも合意できなければ審判で養育費の額が判断され、元夫に支払い命令が出されます。
養育費算定表については、こちらの記事で詳しく説明しています。
▶養育費を3分で解説!相場や決め方、未払防止方法のまとめ
話し合いで決まったことは書面で残そう
親同士の話し合いで養育費について合意したとしても、決まった内容は書面で残すようにしましょう。なぜなら、口約束だけだと後々不払いとなってしまうケースが多くみられるからです。実際、厚生労働省が発表した「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」でも、「養育費を過去に受けたことがある」と答えた割合は15.5%にとどまっています。このことから、離婚から時間が経つと養育費が支払われなくなる実態があることがわかります。
養育費の不払いを防ぎ、適正に養育費を払ってもらうためには、「強制執行認諾文言」を記載した「公正証書」を作成しておくのがおすすめです。強制執行認諾文言とは、「(元夫が)約束通りに養育費を支払わなければ強制執行手続きを行うことを認める」といった文章です。強制執行認諾文言つきの公正証書に残しておけば、不払い時に裁判をすることなく、元夫の財産を差し押さえて養育費を回収できます。
ただし、公正証書の作成には数万円程度の手数料が必要です。また、手間がかかることも知っておきましょう。
公正証書を作成する手順は以下のようになっています。
➀元夫と相談し、1カ月あたりの金額や支払い期間、養育費の受け渡し方法などを決める
②公証役場の予約を取る
③公正証書に残す内容について、公証人を踏まえて打ち合わせを行う
④後日指定された日に再び公証役場に出向き、公正証書の作成と署名押印を行う
妊娠中の離婚|慰謝料や面会交流について
妊娠中の離婚となると、慰謝料や面会交流についても不安を感じるのではないでしょうか?ここからは慰謝料と面会交流についてお伝えします。
慰謝料を請求することができるケース
慰謝料を請求できるのは、元夫が婚姻関係を破綻させる原因となる重大な行為を行った場合です。たしかに妊娠中の離婚となると、その精神的な苦痛は計り知れないものがありますが、残念ながら妊娠中の離婚であることだけを理由に慰謝料を請求することはできません。
離婚で慰謝料が請求できるのは以下のような場合です。
・夫がほかの女性と関係をもった
・夫から妻へのモラハラや暴力があった
・妻の収入が少ないことを知っていながら、夫が十分な生活費を渡さなかった
このようなケースでは、裁判でも慰謝料が認められることが多いです。
面会交流についての決め方
離婚後に子どもが生まれるとなると、子どもと元夫の面会交流についても決めておく必要があります。面会交流とは、子どもと同居していない親と子どもが面会したり、交流したりすることです。面会交流について明確なルールはありません。基本的には親同士が話し合って、子どもにとってよいものとなるような方法や頻度を決定します。もし親同士で決めることが難しければ、調停や審判の場で決めるという方法もあります。
将来的に面会交流についてトラブルになりたくない場合は「離婚協議書」を作成し、合意した内容を記載しておくとよいでしょう。離婚協議書とは、離婚に関する約束事を記載しておく契約書のことです。法律上定められた様式もないため、自由な形式で書面に残せます。離婚協議書は自分たちで作成できるものですが、契約書として法的な効力があり、トラブル防止に役立ちます。
なお、面会交流は必ず行わなければならないものではありません。しかし、子どもが健全に成長するためには必要なものだと考えられています。もし面会交流に対する意見がかみ合わず裁判に発展した場合でも、元夫と子どもの面会交流が子どもに悪影響を与えない限り、面会交流を行うべきだと判断される可能性が高いです。
中には「生まれたばかりの子どもと元夫の面会交流は早すぎるのでは?」と感じる人もいるかもしれません。しかし、早い段階から交流をもつことで子どもが親として認識しやすくなり、良好な関係構築につながる可能性があるため、乳児期を理由に面会交流を拒否することはむずかしいと考えておきましょう。
そのいっぽうで、元夫が子どもの世話に慣れていなかったり、子どもが人見知りをして泣いてしまったりといったことも考えられます。そのため、乳児期の面会交流は第三者を踏まえたり時間を制限したりして行われるケースもあります。
【後悔しないために】妊娠中の離婚で注意したいこと
妊娠中に離婚することは、母親にとって経済的に苦しくなるリスクを抱えています。出産後すぐに働こうと思っても、月齢が小さい子どもの預け先を見つけたり、乳児を抱えて仕事を探したりするのはとても大変なことだといえるでしょう。
経済的な面をサポートするしくみとして、国や自治体のひとり親家庭への支援制度を活用する方法があります。支援制度には、児童扶養手当やひとり親家庭等医療費助成制度、母子父子寡婦福祉資金貸付金などがあります。自治体によっては独自に制度を設けていることもありますので、役所などで相談してみてください。
また、シングルマザーの場合、住んでいる地域によっては住宅手当や保育料の減額、公共料金の割引などを受けられることもあります。新生活をはじめる前に、お住まいの自治体が実施している制度について調べておくとよいでしょう。
乳児の預け先としては、0歳から預かってくれる保育園やファミリーサポート、保育ママなどがあります。とくにファミリーサポートや保育ママは、さまざまなニーズに対応してくれることが多いので、シングルマザーにとっても安心できるでしょう。実家に頼れる場合はそれもひとつの方法ですが、乳児のお世話は負担が大きいため、実家に頼れる場合であっても預け先を見つけておくことをおすすめします。
また、乳児を抱えて仕事を探すのは、現実としてとても大変であるといえます。会社側としても乳児を抱えたシングルマザーを雇うのは多少のリスクがありますが、中には赤ちゃんがいても働ける環境を整えている会社やシングルマザーを積極的に採用している会社もあります。インターネットやハローワークなどを活用して就職活動を進めてみてください。
とはいえ、とくに低年齢の子どもは体調が不安定ですから、ひんぱんに仕事を休まなければならず悩んでしまうシングルマザーは多くいます。もし自治体からの補助や養育費などで生活していけそうなら、子どもの体調が安定するまで仕事をセーブするのも良いでしょう。生活に経済的なゆとりはないかもしれませんが、今しかない子どもとの時間を大切にするのも選択肢のひとつといえます。
3歳以上になると体調が安定してくる子どもは多いので、比較的預けやすくなります。本格的な仕事探しは子どもの成長を待ってから、というのもタイミングとしておすすめです。
しっかりと準備することで妊娠中の離婚に対する不安を減らそう
妊娠中の離婚は今後の生活への不安が大きくなりがちで、精神的につらくなってしまうことが考えられます。少しでも不安を減らすためには、前もってしっかりと調べ、決めるべきことをきちんと決めておくことが大切です。この記事を参考に、不安を少しずつ解消していきましょう。