離婚の理由はさまざま。そして、その後の人生も、選択と決断の毎日です。先行きに不安を覚えたり、失敗して落ち込んだりすることもあるかもしれません。少し詰まってしまったら、この企画に相談にいらっしゃいませんか?自ら5人の子どもを育て上げた日本シングルマザー支援協会代表の江成道子さんが、本音で、真剣に、あなたの悩みに答えます。

第6回目の相談者さんは、美容院を経営しながら3人の子どもを育てるシングルマザーです。子どもにお金がかかってくる時期に養育費の一部が支払われなくなったという相談に、今回も江成さんがピンチをチャンスに変えるアドバイスを送ります。

今月の相談:離婚して3年、取り決めどおりに養育費が払われなくなった

離婚3年目のシンママです。離婚から2年間は滞りなく養育費の支払いがあったのですが、3年目にして取り決めどおりに支払われなくなってしまいました。具体的には、「ボーナス月には増額」という取り決めをしていたのに、この前のボーナス月には例月どおりの額しか入金されていませんでした。連絡すると「今年はボーナスが大幅にカットされたのでボーナス分は払えない、今後も期待しないで欲しい」と言ってきました。明細を見せて欲しいと求めても、いろいろ言い訳をして取り合おうとしません。

ただでさえ、月々の養育費も十分でなくボーナス分で補填している状況です。これから子どもたちの受験でお金がかかる時期なので、取り決めどおりの額はしっかり受け取りたいです。きちんと受け取るために、まずは何から始めたらよいのでしょうか。

▽相談者の情報
・既婚or離婚:離婚/・現在の職業:自営業/・年齢:42
・子どもの数(性別・年齢):3人(娘14歳、12歳、息子10歳)
・その他の情報(職歴、貯金額など) : 美容院を経営。会社員の元夫からは月々5万円の養育費を受け取り、ボーナス時(年2回)は10万円加算という取り決めをしていた

 

回答:養育費は支払われるべきもの。しかし「確実」なものとも言えない現実も。

相談者さんは、養育費をどのような位置付けで捉えているのでしょうか。「離婚時に約束したのだから支払われるのが当然」と思ってはいませんか。約束は約束。そして養育費は確実に支払われるべきものです。一方で、約束し、取り決めを交わした相手は、離婚した相手です。ある部分では信頼関係が築けなくなった相手であることを忘れてはなりません。

養育費に対して、私たちの取るべきスタンスはどうあるべきか、まずはそこから考えてみましょう。

相談者へのアドイバイス1:養育費に頼る生活はリスクあり。養育費保証サービス加入も検討して

養育費の未払いは、離婚して10年以内に4割の確率で起こると言われるほど、じつはよくある問題です。原因は男性側に支払いの意思がなくなったということだけに限りません。状況が変わって、本当に払えなくなったということもありえます。実際、今回の新型コロナウイルスの流行で飲食業界が打撃を受け、飲食店で働く元夫から養育費が受け取れなくなったという相談もありました。

突然、お金を工面できなくなる。そうした事態は、離婚した男女に限らず、結婚している夫婦にも起こりえることです。ご主人の給料が常に一定である、もしくは上がり続けるという保証はどこにもありませんし、状況次第で、それまで専業主婦だった奥さんが働きに出ることもあるわけですよね。

養育費は支払われるべきお金ですが、家計に占める養育費の割合が高いほど、自分自身の自立に目が向かない人が多いのも事実です。養育費に頼りすぎると、未払いとなったときのリスクが高くなると心得ましょう。

まずは意識を変え、その上で未払いを未然に防ぐ策として有効なのが、「養育費保証サービス」です。養育費の未払いが起きたときにサービス提供会社が養育費を一定期間保証してくれ、契約者の代わりに支払者(この場合は元夫)に催促をしてくれます。

ただし、養育費保証サービスは、未払いが起きてからだと加入するのが難しいという特徴があります。ですので、私は離婚の取り決めと同時に養育費保証サービスに加入することを当たり前にしていきたいと思っているのですが、残念ながら、未払いが起きてから相談に来られる方も多くいらっしゃいます。

手遅れになってしまう理由は、「養育費は支払われて当然である」と信じ込んでいるからです。特に、相手と長い時間をともに過ごした結果、「性格の不一致」が理由で離婚した方は要注意です。お互いが信頼できなくなったから離婚に至ったはずなのですが、過ごした時間の長さのせいか、養育費については支払われるはず、と信じているケースが多いように思います。別れた相手はもう他人です。しっかり書面を交わし、養育費保証を付けるなど、その約束を確実なものにしたいものです。

いま、まず何ができるかというご相談については、いまの状況で養育費保証サービスに加入できるかを問い合わせてみることをおすすめします。未払い分があると加入できないなら、少なくともボーナス加算分の未払い分は払ってもらい、その後加入を目指すなど、具体的なアドバイスがもらえると思います。

相談者へのアドイバイス2:家計を見直し経営基盤を強くして、養育費を必要としない生活設計を

お子さん3人に対して月5万という養育費から察するに、元ご主人の収入はさほど高くないことが予想されます。これは憶測ですが、結婚生活の中でもお互いに収入以上の生活を追い求めてはいませんでしたか。もしそうなら、生活のサイズを収入に見合ったものにしていきましょう。

自営業は収入にも波があると思いますので、今後の子どもの教育費、自分の消費・浪費の傾向などを含め、家計を見直すことをおすすめします。それから、養育費が払われなくなった場合の生活設計も考えましょう。

相談者さんは経営者なので、収入を上げていくという面では可能性広がっています。経営計画の見直しが難しければ、日本シングルマザー支援協会でも美容系の事業計画をサポートできる提携企業がありますし、自治体も女性の起業や創業を応援しているところが多いので、相談窓口を探してみるとよいですね。

また、養育費を生活費に組み込んでいて生活費が心もとないという場合は、条件によって生活資金を借りられる「生活福祉資金貸付制度」などもあります。自治体の窓口で、調べてみるとよいでしょう。

相談者へのアドイバイス3:子どもとお金の話ができる関係を築き、使えるお金を“見える化”しよう

もし収入増が難しければ、お子さんと将来についての話をしながら、一緒に教育費を見直しましょう。相談者さんのお子さんは、みな10歳を超えていますので、十分話ができる年齢です。子どもが、自分のなりたいものに対して自分の力で進んでいけるよう働きかけをしていけば、たとえ学費をまかなえなかったとしても十分に養育責任を果たすことになります。

いまの日本は、子どもに対するお金の教育が絶対的に足りていません。大学へ行くための奨学金制度があることを知っても、将来返済しなければならない借金だと知らない子どもも多い状況です。そのため、奨学金を返せないような職を選んでしまうんです。奨学金はあくまでも未来への投資で、投資をしたからには同時に回収の計画も立てるべきでしょう。

とある家庭でその話をしたところ、借金してまで大学に行かなくてもよい、と高校卒業後に自ら進んで就職を決めたり、専門学校を選んだお子さんもいました。親の選択ではなくて、子ども自身の選択としてです。そういう話をお子さんとするのも、ひとつの方法だと思います。

そしてもうひとつ、今回強くお伝えしたいことがあります。

日本シングルマザー支援協会では、養育費について、全額貯金することを推奨しています。これにより、子どものやりたいことを諦めず、将来に向けての足がかりを作ることができます。シングルマザーは給与、手当、養育費などお金が入ってくる窓口がいくつかあるので、特定の費目は手を付けずそのまま貯金に回せば、確実に貯金は増えていきます。

これはシングルマザーに限った話ではありません。全世帯の子どもに0歳から支給される児童手当を全額貯金すると、約200万円になります。これを活用すれば、本来すべての子どもたちが一定程度の教育を受けられるはずなのです。

ただ貯金しよう、たくさん稼ごうとするより、入ってくるお金を使用目的ごとにわけて貯めていくことができたら、お金の不安は案外解消できるものです。ぜひ、子どもに使えるお金を“見える化”してみてください。

 

まとめ:この機会に親子で将来について語り合い、家族の絆を深めましょう

養育費の位置付けを考え直して養育費保証サービスの加入を検討すること、家計と経営計画を見直すこと、将来と使えるお金について子どもと話すこと。この3つで、いまの不安が少しは解決できるのではでしょうか。

お子さんの将来について話し合うことは関係性の構築にもつながりますし、子どもが夢を語る姿は、相談者さんにとってよい刺激になると思います。ぜひ積極的にお金のことを含め、いろんなことを話し合って、親子の絆を深めてくださいね。

江成道子

江成道子
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会 代表理事。シングルマザーサポート株式会社代表取締役社長、一般社団法人グラミン日本顧問、武蔵野学院大学講師。自らシングルマザーとして5人の姉妹を育てながら、シングルマザーの自立支援活動を続ける。講演多数。
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会