離婚の理由はさまざま。そして、その後の人生も、選択と決断の毎日です。先行きに不安を覚えたり、失敗して落ち込んだりすることもあるかもしれません。少し息詰まってしまったら、こちらへ相談しにいらっしゃいませんか?自ら5人の子どもを育て上げた日本シングルマザー支援協会代表の江成道子さんが、本音で、真剣に、あなたの悩みに答えます。

今回のご相談は、派遣社員として働く30代のシングルマザーのお悩みです。疲れがたまって子どもに当たることが多くなり、自己嫌悪とひとりになりたい気持ちの中で立ち往生している相談者さん。解決の一歩を踏み出すために、今月も江成さんがエールを送ります。

今月の相談:子どもにイライラ……ひとりになりたい私はダメな母親?

シングルマザーになり1年がたちました。派遣の仕事をしていますが給料は高くなく、養育費も入ったり入らなかったりで生活が苦しいです。4歳になる娘も寂しいのか、私に甘えてくる時間やイタズラも増え、仕事で疲れている時などはイライラして声をあげてしまうことがあります。周りに相談できる人はおらず、実家は疎遠で頼りにくい状況です。

これ以上一緒にいたら、もっとひどいことをしてしまうかもしれないと不安になり、子育てする自信がなくなってしまいました。ちょっと子どもと離れる時間が欲しいと思ってしまうのですが、そんな気持ちになる私はダメな母親でしょうか?

▽相談者の情報
・離婚/・現在の職業:派遣社員/・年齢:32
・子どもの数(性別・年齢): 1人(娘4歳)
・経緯: 前の夫とは、夫の浮気が原因で1年前に離婚。コールセンターで派遣社員として勤務している。給料は月14万円前後。養育費は月3万円だが、滞りがち

回答:ひとりの時間は大切です。まずは子どもとのコミュニケーションを見直し自信を取り戻して

多くのシングルマザーの方々にお会いする日々を通じて、“母親はこうあるべき”という「母親神話」がいまだに根強くはびこっていることを感じます。相談者さんの苦しみも、一部分はそこから来ているのではないでしょうか。

しかし、人は自分が満たされていないと他の人を満たすことはできないものです。そのために、子どもと離れてひとりの時間を取ることは大切です。

まずは失いかけた自信を取り戻すため、娘さんとのコミュニケーションを見直してみましょう。

相談者へのアドバイス1:相手のことを理解しようと努めれば、イライラは解消するもの。関係が改善すれば自信にも繋がります

娘さんとのコミュニケーションに問題を感じているようですが、子どもと接する時のコミュニケーションスキルがあるということを知っていただきたいです。そのスキルを身につければ、子どもとの関係は必ず良くなります。

まず、甘える、乱暴な言葉を使う、片付けないなど、親が気になる子どもの行動は数多くありますが、それらをダメな行動と決めつけないことです。ダメだと思ってしまうと、相談者さん自身が“しつけのできないダメな母親”と責任を感じてしまうことになります。

ダメだと感じた行動を修正しようとするのではなく、「どうしてこの子はこんな行動を取るのだろう」「何を伝えようとしているのだろう」という視点で、子どもを理解しようとしてみてください。

そのためには、子どもをじっくりと観察することです。小学校低学年くらいまでの子どもは、言葉より行動で意思表示をすることが多いので、ここで相談者さんに必要なのは行動の意味を読み取る姿勢です。

よくあるイライラ誘発のパターンとして、忙しい時に限って子どもが足元にまとわりついてくるというシーンがありますが、そういう時こそ「どうしたの?何かして欲しいことがあるの?」と質問してみてください。子どもは頑張って伝えようとしますから、相談者さんも子どもの話を受け止める習慣をつけましょう。相手のことを知りたいと思うだけで、イライラは確実に軽減されます。

娘さんは4歳とのことなので、相談者さんがコミュニケーションの方法を変えれば、すぐに変化を感じ取り応えてくれると思います。自分の呼びかけで子どもが変化していく様子は、相談者さんの失いかけた自信回復にも繋がります。難しくはないので、ぜひ実行して体感してみてください。

相談者へのアドバイス2:不安が募ると心も波立つ。心の安定が何かを考え、そこにたどり着くチャレンジを

次に、自分のイライラはどこから来ているのか、自分自身にも語りかけてみましょう。イライラの元になる感情は不安であることが多いのですが、シングルマザーの場合、収入が少なく常に生活に追われるひっ迫感から不安を感じる人が多いように思います。

派遣という働き方は、子どもの体調不良や祝日で勤務日数が減ると収入減に直結します。子どもが体調を崩すと看病してあげたいと思う一方で、お給料のことが頭をよぎったりもするでしょう。収入が少ない月に養育費の振込がなく、子どものイタズラや粗相が重なると、不安が募り苛立ちが爆発してしまうのも無理はありません。

不安が経済的なものから来ているとすれば、心の平穏のためには安定した収入が必要です。派遣を選んだのは子どもとの時間が取りやすいという理由があるのだと思いますが、子ども中心の職選びは収入には繋がりにくいのです。いまの生活にどれくらいお金が必要か把握し、養育費に頼らなくても済むよう、収入を中心に考えた転職にチャレンジしてみるといいと思います。

子ども中心から収入中心というと、相談者さんの前に「母親神話」が立ちはだかるかもしれません。女性を積極採用したいという企業の担当者でさえ、優しさから「シングルマザーを応援したいけど、派遣やパートがいいでしょうか」と言われます。しかし、それでは世帯主としての収入は稼げないと心得ましょう。

チャレンジには子どもの協力が不可欠になるからこそ、やはり子どもとの関係を良好にしておくことが大切です。良い関係ができてきたら、「こんなお仕事に挑戦してみようと思うんだけど、応援してくれる?」と聞いてみましょう。きっと一番の良き味方になってくれるはずです。

職探しの際は、営業職にも目を向けてみてください。営業は責任と結果を求められるので女性は敬遠しがちですが、比較的給与が高く採用されやすい業種です。複数の仕事を掛け持ちしなくとも収入を上げていくことができますし、いまの手取りを20万円にアップすることは、それほど難しいことではないと思います。

相談者へのアドバイス3:頼れる人がいなければ、預け先を探す努力は必要です。ひとりの時間はしっかり確保して

周りに相談できる人がいないということですが、自分と同じ境遇の人達が集まるコミュニティを探してみましょう。シングルマザーで、できれば収入が同程度の人に出会える環境が望ましいです。生活環境の違いによる会話のすれ違いで、余計な気の遣い合いをしなくて済みますし、自分を否定されず肌の合うところが見つかれば、良い息抜きの場になります。

そして、ひとりになりたいと思ったら子どもは預けて自分の時間を確保してください。相談者さんがひとりの時間を持って、気持ちにゆとりを得ることは娘さんのためでもあります。

預け先を探す努力は必要なので、ファミリーサポートに利用登録をしたり、疎遠になっている実家との関係を修復したり、できることをやってみましょう。娘さんが保育園に通っているのなら思い切って平日にお休みをとり、ひとり時間を作るのも手です。

ひとりの時間ができたら美容院や映画に行ってもいいし、出費を避けたいなら家で本を読むだけでもいい気分転換になります。日々の生活を続けていくための英気を養いましょう。

 

まとめ:子どもは誰よりもお母さんが大好き。あなたの一番の味方です

いまの状況を変えるには、まず子どもと接する時のコミュニケーションスキルを身につけること、そしてどんな状況が自分の心の安定になるのかを考えましょう。32歳と若いのですから、転職に挑戦せずにいるのはもったいない。「私にはムリ」なんて諦めるには早すぎます。

子どもは、誰よりもお母さんが大好きです。きっと相談者さんの一番の良き理解者、味方になってくれます。子どもの応援をパワーに変えて、親子二人三脚でより良い生活環境を手に入れてください。

江成道子

江成道子
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会 代表理事。シングルマザーサポート株式会社代表取締役社長、一般社団法人グラミン日本顧問、武蔵野学院大学講師。自らシングルマザーとして5人の姉妹を育てながら、シングルマザーの自立支援活動を続ける。講演多数。
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会