養育費について取り決めをする場合、当事者で話し合いをして決めたことを「離婚協議書」にまとめる方法がありますが、これだと支払い義務者が養育費をきちんと支払ってくれない可能性があります。おすすめなのは「公正証書」で残す方法で、仮に養育費が支払われなくなった場合、相手の財産に強制執行をして養育費を回収できるなどのメリットがあります。そこで、養育費の取り決めを公正証書に残すことについて詳しく解説していきます。

監修:弁護士 白谷 英恵

養育費が継続的に支払われている人はたったの24%。書面を交わしても支払われていない現状があります。

●養育費を確実に受け取りたい
●パートナーと連絡を取りたくない
●未払いが続いた時の手続きが心配

こうした養育費の未払い問題を解決する方法に「養育費保証サービス」があります。
養育費保証PLUSでは、業界最安(*)の料金で最大36か月の保証を提供しています。その他、連帯保証人がいなくても住まいや仕事探しのサポートも充実していますので、ぜひご検討ください。

*2023年4月時点

離婚で「公正証書」を作成するのはお互いにとって重要なこと

離婚時に養育費などの取り決めを公正証書にしておくことは、養育費の受取者(子どもの監護者)だけでなく、支払い義務者(子どもの非監護者)にとっても大切な意味があります。

受取者の場合、養育費がきちんと支払われなくなったら裁判などの法的な手続きをしなければなりませんが、費用や時間などが負担になってしまいます。公正証書があれば裁判をせずに強制執行(相手の給与や預貯金などの財産を差し押さえて養育費などを回収する法的な手続き)ができるので、裁判の負担なしで養育費を回収できるのがメリットです。公正証書には他にも複数のメリットがあるので、後の箇所で改めて述べます。

他方、支払い義務者にとっても、公正証書として残しておくことで、その内容になっている以外のものは請求されなくなるため、安心につながるでしょう。たとえば、養育費の金額が毎月5万円であると公正証書に記載されていれば支払い義務者はそれ以上の養育費を請求されない、などです。

養育費の取り決めを公正証書で残すメリット

実は、養育費の取り決めは必ずしも書面で残さなければならないわけではなく、単に話し合いなどで取り決めをすることもできます。もっとも、単に話し合いで取り決めたような場合は、取り決めとおりの支払いがなされないときに相手が取り決めたことを守っていないと主張することが難しくなります。

また、取り決めについて書面(公正証書)を残さない場合は、次に挙げるようなメリットが得られません。そこで、以下では養育費の取り決めを公正証書で残すメリットを詳しく見ていきましょう。

裁判手続きをすることなく強制執行ができる

上でも説明しましたが、養育費について公正証書で残しておくと、裁判などの手続きをしなくても直ちに強制執行ができるというメリットがあります。強制執行とは、相手が養育費などの金銭債務をきちんと支払わなくなった場合に、相手の給与や預貯金口座等の財産を差し押さえて、そこから金銭を強制的に回収する手続きです。

もし養育費の取り決めを公正証書で残していないとすると、こういった強制執行をするには複雑な手続きを経なければなりません。強制執行をするためには債務名義を得る必要がありますが、債務名義を得るためには調停や審判等の裁判所での手続きを経る必要があります。このように、公正証書がない場合に強制執行するためには、かなりの手間と時間がかかります。

養育費について公正証書にしておけば、相手が養育費を支払わなくなったときには、すぐに強制執行の手続きに入ることができます。

ただし、公正証書があるとしても、どんな場合でも必ず強制執行ができるというわけではありません。公正証書に基づいて強制執行をするには「強制執行認諾文言付き公正証書」である必要があります。

「強制執行認諾文言」とは、公正証書で定めた養育費の支払いが滞った場合に、財産を差し押さえることについて相手が応じることを示すものです。この強制執行認諾文言がなければ公正証書に基づいて強制執行をすることはできないので、養育費について公正証書にする場合は必ず強制執行認諾文言を付けておきましょう。

「双方が合意をした」という証拠にできる

養育費に関することを公正証書にすると、「養育費に関する取り決めについて双方が合意をした」という証拠になります。

公正証書は公証役場という国の機関で作成され、かつ手続きの専門家である公証人によって作成される書類なので、証拠としての価値が高いのが特徴です。公正証書の原本は公証役場で保管されるので、書類を紛失してしまったり、書類の内容を書き換えられたりなどの心配がないのもメリットです。

もし口約束だけで養育費について取り決めをしてしまうと、後で、言った・言わないなどのトラブルになる可能性が高いですが、公正証書で取り決めをすればその内容が証拠として残ることになるので、通常、そのようなトラブルが生じる心配はありません。

相手の財産を知ることができる「財産開示手続」が利用できる

養育費について公正証書にしておくと、財産開示手続(財産開示請求)を利用できるのもメリットです。財産開示請求とは、債務者(養育費などの債務を支払わなければならない人)が債務をきちんと弁済しない場合に、債務者がどのような財産を持っているかを開示させるための手続きです。

相手が養育費を支払わなくなった場合、公正証書があれば相手の財産に対して強制執行ができることはすでにお伝えしたとおりですが、そもそもどのような財産があるかがわからなければ強制執行をすることができません。

財産開示請求をすると相手が持っている預貯金口座や不動産などがわかるので、養育費がきちんと支払われなくなった場合に強制執行として相手の財産を差し押さえやすくなります。

財産開示請求は令和2年4月1日に改正されており、罰則が強化(6か月以下の懲役または50万円以下の罰金)されたので、相手に財産についての開示をさせやすくなっています。

公正証書は「離婚協議書」とは違うものである

繰り返しとなりますが、離婚をする場合、養育費などに関することを離婚協議書としてまとめることもできます。離婚協議書とは、離婚に関連する取り決め(養育費や財産分与など)を書類にしたものです。

ただし、養育費が支払われなくなる可能性などを考えると、離婚協議書ではなく公正証書として残しておく必要性が高いといえます。

公正証書は協議離婚書よりも高い信用力をもつ

公正証書は公証役場という公的機関で作成される公文書であることは先述のとおりで、離婚協議書よりも高い信用力を持っています。特に大きく違うのは、公正証書は養育費の支払いなどについて強制執行に関する条項を付けることができる点です。

他方、離婚協議書はあくまで当事者が作成した私文書なので、公正証書に比べて信用力が低くなるだけでなく、作成した離婚協議書類に基づいて強制執行をすることができません。

公正証書には法律において無効であることは記載できない

公正証書は、公証人のもとで作成するものであるので、一定の作成方法や書式(文章のルール)が決まっています。法律において無効であることは記載できないという特徴があります。離婚協議書として取り決めをした内容や表現等がそのまま公正証書の文章になるとは限らない点は覚えておきましょう。

養育費の内容を公正証書で残す場合の注意点

養育費の内容を公正証書として残すメリットはすでにお伝えしたとおりですが、他方で注意点も存在します。

作成するには夫婦揃って公証役場へ行く必要がある

養育費について公正証書を作成するには、原則として夫婦で公証役場へ行く必要があります。そのうえ、当日スムーズに手続きをするためには、事前に夫婦できちんと話し合いをしておくことも求められます(話し合いでどのようなことを決めておくべきかについて、詳しくは次章で解説します)。

中には、公正証書を作成すること自体は合意していたのに、公証役場へ出頭する当日になったら相手が来なかった(=作成することができなかった)、というパターンなどがあるので注意が必要です。

公正証書の作成には手数料が発生する

公正証書を作成するには所定の手数料がかかります。当事者だけで離婚協議書を作成する場合は基本的に費用がかからないので、手数料として費用が発生する点も公正証書の注意点といえるでしょう。

なお、この公正証書の手数料は養育費の金額によって変化します。養育費の合計が高額なほど手数料は高くなり、養育費以外に財産分与や慰謝料などの取り決めをする場合は、それらの金額の合計額で公正証書の手数料が判断されます。もし専門家に相談しながら内容を決めたいという場合には、弁護士や行政書士への相談費用は別途発生します。養育費の金額によって公正証書の手数料がどのように変化するかは、以下の表を参照してください。

養育費の金額 公正証書の手数料
100万円以下 5,000円
100万円超200万円以下 7,000円
200万円超500万円以下 1万1,000円
500万円超1,000万円以下 1万7,000円
1,000万円超3,000万円以下 2万3,000円
3,000万円超5,000万円以下 2万9,000円
5,000万円超1億円以下 4万3,000円

参考:日本公証人連合会

養育費の内容を公正証書にする手順と内容

養育費についての取り決めを公正証書で残す場合、まずは夫婦間で決めた内容を具体的にまとめておくとスムーズです。

1.まずは事前に夫婦間で離婚の条件を話し合い書面にまとめておく

公正証書を作成する前に、まずは夫婦間で話し合いをして離婚の条件を書面にまとめておく(=離婚協議書としてまとめておく)ことがおすすめです。

離婚協議書としてまとめておきたい内容

離婚の際に取り決めをしておかなければならない内容については、未成年のこどもがいる場合にはその親権者に誰がなるのかを定める必要がありますが、その他の点には明確なルールはありません。一般的には以下について取り決めをしておくことが多いです。

・子供の面会交流について
・離婚について慰謝料を支払うか否かと、慰謝料の金額
・財産分与(不動産や預貯金などの夫婦の財産をどのように分配するか)
・養育費(強制執行認諾文言付き公正証書として作成すると安心)

養育費のことで決めておくべき内容

養育費については、最低限でも以下の取り決めはしておくべきだといえるでしょう。

・養育費の金額(毎月いくら支払うかなど)
・養育費を支払う期間(子どもが20歳になるまでなど)
・支払い方法(どの銀行口座に振り込むかなど)
・支払い期限(毎月何日に支払うかなど)

▶離婚協議書を作成するタイミング、書き方のサンプルはこちらの記事で紹介しています。
離婚協議書とは?書き方と作成時の注意点

2.2人で公証役場へ行き公正証書にしてもらう

公正証書の内容にしておくべき事柄が決まったら、実際に公正証書を作成します。公正証書を作成するには、事前に予約をして、原則として2人で公正役場に行って、公証人に公正証書を作成してもらうことが必要です。

作成するときに持参する必要があるもの

公正証書を作成するには、いくつかの書類などを公正役場に持参しなければなりません。一般的なものは以下のとおりです。

・公正証書案文(離婚協議書などの、公正証書に記載したい文章をまとめた書類)
・本人の身分証明書(運転免許証やパスポートなど)
・認印または実印
・戸籍謄本など

実際に公正証書を作成する場合、どのような書類が必要になるかはケースによって異なる場合がありますので、事前に公証役場に確認してください。

公正証書のスムーズな作成には事前の話し合いが大切

これまでお伝えしてきたとおり、公正証書のスムーズな作成には、公証役場へ行って実際に公正証書を作成する前に、2人で事前に十分な話し合いをしておくことが重要だといえます。

公正役場はあくまで公正証書を作成するための機関であり、裁判所ではありません。どういうことかというと、たとえば両者の意見の対立があったとしても、仲裁をして話をまとめてくれるような役割はないということです。

公証役場で公正証書を作成する段階になって揉めてしまうと、そのままでは公正証書を作成できません。公正証書を作成するには両者の合意が必要だからです。そのため、公証役場へ行く前に2人で十分に話し合うことはもちろん、以下の2点も確認しましょう。

・公正証書を作成すること自体について合意できているか
・公正証書の内容としてどのような取り決めをするかをまとめてあるか

合意があいまいなままで公正証書を作成しようとすると、作成そのものができないだけでなく再度話し合いをする手間もかかりますので注意しましょう。

養育費の取り決めは離婚協議書ではなく公正証書で残そう

養育費などの離婚についての取り決めは、公正証書にして残しておくのがおすすめです。強制執行を認諾する公正証書を作成しておけば、相手が養育費を支払わなくなった場合に公正証書に基づいて強制執行をすることができるからです。公正証書ではない離婚協議書の場合、強制執行をするには裁判などの法的な手続きが必要になるので、時間や費用がより多くかかる点に注意しましょう。


白谷 英恵

【監修】白谷 英恵
弁護士。神奈川県弁護士会所属。同志社大学商学部卒業、創価大学法科大学院法学研究科修了。離婚・男女問題、相続問題などの家事事件を中心に、交通事故や刑事事件など、身近な法律問題を数多く取り扱う。家事案件をライフワークとして、役所での女性のための相談室の法律相談員や弁護士会での子ども人権相談の相談員、相続セミナーなどにも積極的に取り組む。

>>所属団体のサイトを見る

養育費が継続的に支払われている人はたったの24%。書面を交わしても支払われていない現状があります。
養育費保証PLUSで未払いの不安を解消!

 

養育費保証PLUSの特徴

● しっかりと養育費を受け取りたい
● 保証期間は長い方が嬉しい
●弁護士費用や法的手続き費用を負担して欲しい
●シングルマザーでも子どもの将来をしっかりと支えたい

このようなお悩みを解決するために、「養育費保証PLUS」では業界最安(*)の保証料金で養育費の未払いを防ぎます。無料相談も承っていますので、まずはぜひ資料をダウンロードください。

*2021年7月時点