【厳選】ママスマ編集部 おすすめ書籍を紹介

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弱い立場の人ほど離婚が起きやすいか

誰もが自由に稼げ、結婚する自由をもち、あわないときには離婚する自由があればよかっただろう。

しかし、近年、社会経済的に弱い立場の人ほど離婚が起きやすいという結果が実証研究によって定説となりつつある。人口学者のSara McLanahan は2004年研究報告において、経済的な資源が豊かな女性には、子どもにとって良い影響を与える傾向(晩婚化・晩産化・母親の就業)があり、経済的な資源が乏しい女性には、子どもにとって悪い影響を与える傾向(離婚・未婚の出産)があると提唱した。さて、この結果が我が国に当てはまるか、が議論のポイントだろう。

低学歴・低所得・人種という条件が重なると離婚が起きやすいというアメリカの事例があるが(Amato, “Research on divorce”, 2010)、これまでの日本では人種という区別は注目されてこなかったので分析としては参考にはしにくいのだろう。

しかし、日本においても低所得・低学歴層に離婚が集中しているという答えが出ている(加藤「離婚の要因」2005年、福田節也「離婚の要因分析」2005年、林・余田「離婚行動と社会階層との関係に関する実証的研究」2014年、Tanaka, “Career, Family and Economic Risks”, 2008)。しかもその傾向は近年強まっている。したがって、離婚は社会のなかでランダムに発生しているのではなく、階層的要因と相関を持っていると見られるようになっているのだ。だからこそ、ひとり親の問題は重要なのである。

男性は一様な生き方しかしない

ここまで結婚という二人の間の話を扱うのに、片側の女性についてしか焦点を当てていない。「だって、結婚したがってるのは女性じゃないか」と思う男性読者は多いだろう。

しかし、男性諸君はよく考えてみてほしい。女性は人生のさまざまなタイミングで選択を迫られるからこそ生き方の多様性も高まるが、男性は誰も彼も一様な生き方ではないか?

結婚は女性よりも男性にとって大きな心理的メリットをもたらすものであることが示されている。これは「結婚は男性にとって自分を支えてくれる希少なサポート資源」ゆえであろう。心理的なメリットだけではなく、肉体的にもメリットをもたらしてくれると意外なことがわかりはじめた。

女性のほうが生き方の多様性があると言ったが、男性は、残念ながら、まだまだ一様な生き方しかないのが現状である。結婚と同時に転職・離職するのも多くは女性だし、子どもが生まれても男性は育児休暇を取る比率さえいまだ低い。都道府県ごとの失業率の変化と離婚率の変化を見た橘木・木村匡子『家族の経済学』(2008年)では、やはり失業率が大きく上昇した地域ほど離婚率も高まっているし、所得が少なければ結婚もままならないことを明らかにした。

男性が非正規雇用のために雇用が不安定で収入が低いと結婚が難しくなる。「三〇〇万円の壁」と呼ばれるように、年収が300万円に届かない男性は自分の生活が苦しいのもさることながら、家庭をもって安らぐことさえできないのである。

男性にはまだまだ生き方の多様性が認められていないのが現実である。女性の生き方を追究する女性学に刺激され、男性の生き辛さに焦点を当てた男性学が近年台頭しているが、男性学を研究している田中俊之は日本では『男』であることと『働く』ということとの結びつきがあまりにも強すぎると述べており、男性の生き方に多様性がないことがよくわかる。

夫と妻の気持ちのバランス

女性の経済的な自立は離婚と正の相関が見られる、という「女性の自立仮説」はある程度説得力を持っているようだ、ということはわかった。

離婚がある程度一般的になった現在、離婚は何が何でも避けなければならないものでもなく、また自分で稼ぐことができると、総合的に離婚しやすくなる状況となった。すると、気になるのは、「どの程度稼ぐと離婚しやすくなってしまうのか?」という、夫と妻の収入の多寡に踏み込んだ話が必要となってくる。それに、共稼ぎが一般的になると世帯の社会経済状況が二人の総収入によって決まるために、夫も妻の経済力に関心を持つようになるという研究結果も得られている。

さて、先ほど、「夫よりも収入の多い妻とのカップルにおいて、結婚生活への満足度が低かったり、離婚確率が高かったりする傾向が見られる」といったが、この点に焦点を当てて、本題である、女性の経済的自立と離婚確率について切り込んでみよう。

すると、家庭内での夫婦関係を考えるには二つの要素を考慮しなければならない。一つは、前述の通り、妻・夫それぞれの収入の多寡やバランスによって満足度が違うかもしれない、という点である。夫が稼いでいれば問題ないということではない。

具体例を考えてみよう。「妻が離婚を望んでいるなんて思ってなかった。青天の霹靂だ」という話を聞いたことがあるだろう。いわゆる「熟年離婚」である。夫の定年退職を待って離婚したいと夫に告げる「熟年離婚」のケースが一時期話題を呼んだ。「夫は仕事、妻は家庭」という夫婦において、夫の収入に頼って生活しているので妻の満足度は高いにちがいないと判断してしまっていたところ、「お茶のありかさえわからないあなたの面倒なんてこりごり」と妻が不満を持っていたことがわかるという場合である。そして、それはもう一つの要素と密接に絡み合っている。

もう一つは、妻が働くようになれば夫の家事・育児への参加も求められるので、夫婦の家事負担割合が要素として挙げられる。妻と夫のどちらがどの程度家事をするのかという関心の下、多くの研究が進められてきたが、家事分担が妻・夫で平等にならないにもかかわらず妻の不満足感が高まらないことから、家事分担の認知、すなわち、どのような家事分担が妻や夫の満足・不満足につながり、夫婦関係に影響を与えるのかという関心が高まってきた。

さらに言えば、同じ働き方、同じ家事分担でもそれぞれの性格によって、夫婦関係の満足度は異なるかもしれない。以下では、離婚を決定する要因の一つとして家庭内での夫と妻の気持ちのバランスについて、所得と家事分担という二つの点から探ってみたい。

夫と妻が同じくらい稼ぐと……

本題に入る前に、そもそもの問題として、夫と妻のどちらが結婚生活に幸せを感じているのだろうか。ここで、林雄亮・余田翔平による2014年の論文に示された結婚満足度の分布を表8-1で確認しよう。男女のあいだで結婚満足度に差が見られるのがわかるだろう。男性の半数は「満足している」と答えているが、女性はそうでもない。

また、「不満である」や「どちらかといえば不満である」という人たちの合計は女性が6.8%であるのに対し、男性は2.6%と、概して女性の方が不満に感じている人が多いことがわかる。ただし、不満を抱いているからといって即離婚するわけでもない。先ほどの例に挙げたように、専業主婦の妻であれば離婚すると金銭的な基盤を失うので、仕事を探すなり、夫の定年退職を待つなどして離婚を踏みとどまっている場合がある。

そうするとまずはやはり所得、とりわけ家計における妻と夫の所得のバランスから検討すべきであろう。先ほどの、「女性の自立仮説」と経済協力関係仮説の対立同様に、論争があった。夫と妻が同じくらい稼いでいるときに離婚確率がもっとも高くなる(Heckert, Nowak & Snyder,“The impact of husbands’and wives’relativeearnings on marital disruption”,1998, Nock,“Acomparison of mar riages and cohabitingrelationships”, 1995)とか、いやいやもっとも低くなるという結果もあってやはり収拾がついていなかった。

Rogers のDollars, Dependency, and Divorce では、家計に占める妻の収入の割合と離婚確率が、逆U字型の関係にあるという仮説(等依存仮説)と、U字型の関係にあるという仮説(協力的役割仮説)の二つを立てて検証した。この二つを含む四つの仮説を図示したものが図8-1である。

家計に占める妻の収入と離婚確率のあいだには逆U字型の関係があることが示されている。また、妻による収入が家計の40~50%程度を占めたときにもっとも離婚確率が高くなると述べている。すなわち、夫と妻が同じだけ稼いでいるときにもっとも離婚確率が高くなるというわけである。しかも、結婚満足度が低ければなおさらだ。

女性がまだまだ稼ぎにくいという社会的な状況もあるだろうが、夫の収入を超えそうになると、妻が仕事を減らすなどして、収入を超えないようにしているためだと解釈ができるだろう。それは夫よりも収入の多い妻とのカップルにおいて、結婚生活への満足度が低かったり、離婚確率が高い傾向が見られたりするためであろう。

夫の収入を超えそうになったらなぜ妻は仕事を減らすなどして収入を超えないようにしているのか。

『夫婦格差社会』で確認できたように、男性の収入が低下しているなか、男性は、できれば未来の妻には稼いで支えてもらいたいと思っている。にもかかわらず、妻の収入が夫よりはるかに少ないときにくらべて、自分の収入以上に妻が稼いでくると夫の満足度がぐんと下がるので、妻の満足度も下がることもわかっている。せっかく稼いできたのに、夫婦どちらの満足度も下がってしまって離婚がチラつくようでは元も子もないので、何とか超えないようにしているのではないか。

アメリカなどで話題になった映画“Crazy Rich!(邦題:クレイジー・リッチ!)” では、経営者として成功しているアストリッドが元軍人の夫に対し、「あなたが『自分は男だ』と思えるために、私が努力するのはもううんざり」という台詞を吐くのだが、この例に当てはまるだろう。

夫の満足度を高めるには

じゃあどうしたらいいんだ、という声が聞こえてきそうである。仮に夫の収入が10万円減ったとしても同じレベルに夫婦関係満足度を保つためにはどうしたらいいか、という悩みに、山口一夫「夫婦関係満足度とワーク・ライフ・バランス」(2007年)から答えを差し出そう。

=平日の夫婦の会話時間が1日平均16分増加
=休日に、妻が夫とともに大切にすごしていると思える生活時間が1日平均54分増加
=夫の育児分担割合が3%増加
=平日に「食事」または「くつろぎ」を妻が夫と大切にする時間と感じる日が以前より6日に1日増加

月収が減ったとしてもこのような、妻とのコミュニケーションを豊かにする、妻の相談に乗る等の夫による「情緒的サポート」が妻の夫婦関係満足度に対する効果が大きいという。

もっとも、夫婦の家庭内分業と結婚満足度の関係は一様でなく、人それぞれである。同じように家事・育児分担をさせても、夫が男女平等主義者であるほど、夫の結婚満足度は高まる。我が国の研究においては、まだこのような結果は得られていないが、あながち受け入れがたい結果でないことだけは理解できるだろう。

妻が自分と同じくらい稼ぐようになったら夫の満足度が低くなるのは「男の面子」に関わるという気持ちの問題であり、仮に夫が男女平等主義であれば満足するという海外の結果が出ているのであれば、現在、男性がかつてのようには稼げない世の中になっていることとあわせて考えて、男女平等主義でいるほうがどうやら幸せに過ごせそうなことがわかるだろう。


 

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【著者】橘木 俊詔(たちばなき・としあき)
1943年、兵庫県生まれ。67年、小樽商科大学商学部卒業。69年、大阪大学大学院修士課程修了。73年、ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D)。79年、京都大学経済研究所助教授。86年、同大学同研究所教授。2003年、同大学経済学研究科教授。この間、INSEE、OECD、大阪大学、スタンフォード大学、エセックス大学、London School of Economicsなどで教職と研究職を歴任。07年より、同志社大学経済学部教授、元日本経済学会会長。

【著者】迫田さやか(さこだ・さやか)
1986年、広島県生まれ。2009年、同志社大学経済学部卒業。11年、同大学経済学研究科博士前期課程修了、同後期課程入学。同大学ライフリスク研究センター嘱託研究員も務める。