離婚の理由はさまざま。そして、その後の人生も、選択と決断の毎日です。先行きに不安を覚えたり、失敗して落ち込んだりすることもあるかもしれません。少し息詰まってしまったら、この企画に相談しにいらっしゃいませんか?自ら5人の子どもを育て上げた日本シングルマザー支援協会代表の江成道子さんが、本音で、真剣に、あなたの悩みに答えます。

今回の相談者さんは、縁あって実の娘と同年代の女の子と暮らすことになったステップファミリー。一緒に暮らし始めて数ヶ月経ったころ、とある出来事をきっかけに義娘さんと冷戦状態になってしまいました。さらに実母の存在も気になり始めて心休まらない相談者さんに、江成さんは「相談者さんだからこそ義娘さんに対して担える役割がある」と説きます。

今月の相談:義娘との距離感がつかめない……やっぱりステップファミリーって難しいの?

私には現在13歳の娘がおります。昨年の春、15歳のお嬢さんがいる方と3年間の交際を経て再婚しました。娘同士はとても仲が良く本当の姉妹のようで、私も2人に分け隔てなく接しています。

義娘は今年高校受験なのですが、あまり勉強しておらずつい厳しく勉強について指摘してしまい、そこからほとんど口をきいてくれなくなってしまいました。父親とはよく話をしているようですが、私には「おはよう」「行ってきます」など最低限のあいさつのみです。

義娘は実母と直接会ってはいませんが、SNSなどで連絡を取っているようで「本当の母親であれば……」という思いが出てきてしまい、母親としての自信がなくなってきてしまいました。ここからどう義娘と接していけばよいか、教えてください。

▽相談者の情報
・再婚/・現在の職業:パート/・年齢:37
・子どもの数(性別・年齢): 2人(娘13歳・義娘15歳)

回答:いい関係は家族に似せなくても作れます。オリジナルの関係でいいのです

子どもが多感な年頃の再婚は、一番悩みが多く難しいケースだと思います。再婚した方のほとんどが、実子と継子で分け隔てなく叱るところは叱り、褒めるところは褒める方針で家族関係を築こうとしますが、「叱る」という行為は実はとても難しいことなんです。まずは叱り方を見直してみましょう。

そして、子どもが親に怒られて口をきかなくなるというのは実の親子でもよくあること。多感な時期ならなおさらです。ただ実の親子ならまだしも、一緒に暮らし始めたばかりの子どもに対していけないことをしてしまったのではないか、という不安もありますよね。

では、どのように義娘さんとの関係を修復していけばいいのか。今後の接し方について解説していきましょう。

相談者へのアドバイス1:コミュニケーションは「共感」が出発点と心得て

実の娘さんを叱るときにも注意が必要なポイントですが、「人と関係を構築するには相手に共感することが出発点」ということを覚えておきましょう。

今回のような場合は厳しく指摘するのではなく、「勉強の計画はどんな風に立てているの?」や、「勉強したくない理由があるの?」と相手の気持ちを理解しようとするところから会話を始められればよかったですね。

それはこれから気をつけることにして、関係修復にあたってはご主人に間に入ってもらうのがいいと思います。

ご主人と義娘さんの関係は良好なようですから、ご主人と話し合って相談者さんの気持ちを伝えてもらいましょう。この時に、ご主人が相談者さんをかばう気持ちから義娘さんを叱ってしまっては逆効果ですから、第三者の言葉で、相談者さんが義娘さんを気にかけていることが伝わればいいと思います。

相談者へのアドバイス2:「焦らずじっくり、関わり続ける」姿勢で関係を作っていく

ステップファミリーの関係構築は時間がかかります。義娘さんとは立場的には親子でも、つい最近出会ったばかりの大人と子どもなのですから、衝突するのは仕方ありません。お互いへの理解が十分でなく、まだ叱る、叱られるほどの関係に達していなかったと考えればいいと思います。

「雨降って地固まる」という言葉があるように、小さな衝突を繰り返して本音で話し合える関係ができていくのかもしれませんし、焦らずに「こうするとこんな反応が返ってくるんだな」といろんなケースを経験し、理解しながら関係を作っていきましょう。

今後注意したり叱ったりする必要が出てきた時は、会話の始め方に気をつけて、共感をベースに話を進めていく。そして本当に「分け隔てなく」と思うなら、叱った後に口をきかなくなることはそれほど気にしなくていいと思います。先ほども言いましたが、実の親子でもケンカして口をきかなくなることは山ほどあります。親子としては普通のことなんです。

相談者さんが、無言の期間があるなんて精神的に耐えられない、と思うならご主人に注意を促してもらうという方法もありますから、ストレスのない方法で関係を作っていけばいいと思います。

ただ、今回の相談者さんのように、関係修復の解決策を探るという姿勢は大事にしてください。多くの離婚のケースと同じく、仲たがいでできた溝を長い間放置しておくと、溝が埋まらないまま関係が破綻してしまうことがよくあるからです。

相談者へのアドバイス3:実の母親を思う気持ちを、自分だから支えられると考えてみて

親が離婚すると母親が子どもを引き取るケースが多いなかで、義娘さんはご主人に引き取られていますから、そこに何かしらの事情があったのではと思います。相談者さんはその背景をご存知だと思いますが、義娘さんとコミュニケーションを取るうえで、その背景を心に留めながら関わっていくことはとても重要です。

おそらく彼女の中には離れて暮らす実の母親を慕う気持ちがあると思うのですが、そこは大切にしてあげたいところです。私は、相談者さんこそ、その気持ちを支える役割ができるのはないかと思います。

父子家庭だった時には父親の手前もあり、母親に求めるものや寂しさをひとりで悶々と抱えているだけだったかもしれませんが、そこに継母である相談者さんが現れたことで、その気持ちを受け止めてあげられる存在ができたということだと思うんです。

相談者さんが、義娘さんの実の母親を求める気持ちを認め「その気持ちは大切にしていいんだよ」と支えてあげることができれば、実の母親への思いもいい意味で保たれるでしょうし、相談者さんも彼女の「頼れる先輩」だったり、「身近な話せる大人」という存在になれるのではないでしょうか。

いい人間関係は、家族という形に似せなくても作ることができます。他の家族と比較したり、相談者さんが必死に母親になろうとしたりする必要もありません。相談者さんが思う愛情の示し方で、彼女を愛していけばいいのです。

まとめ:実の親子でも誤解は山ほど!間違えたらいつからでもやり直せばいいのです

私が育てた5人の子どもも全員成人し、最近は子どもが幼かった頃の話をする機会が多くなりました。すると、「あの時のひと言をそんな風に受け止めてたの?」「えっ、私はずっとこう思ってたよ!」という思い違いがとても多いのです。実の親子でも、誤解ばかりの中で生きていたんだなあ、と思うと笑ってしまいます。

同じ言葉をかけても子どもによって受け取り方は千差万別ですし、自分の意図するようには伝わらないものです。着地点は必ずと言っていいほどずれますから(笑)、気にかけていることは伝えつつ、あまり深く考えすぎずに行きましょう。

自分の子育てがどうだったか、という子どもからの通知表は、子どもが30歳くらいになってやっと受け取れると思っておくといいと思います。20歳くらいまでは、まだまだ多感な時期。強がっていたり、気持ちとは裏腹な行動をとったりするものです。

子どもたちが成人して10年くらい経った後、彼女たちが貧乏であろうと未婚であろうと、幸せそうに過ごしていれば子育ては大成功です。苦しそうだったら、そこから一緒に昔を振り返ってみてもいいかしれません。人間関係も子育ても、いつからでもやり直すことができるのですから。

江成道子

江成道子
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会 代表理事。シングルマザーサポート株式会社代表取締役社長、一般社団法人グラミン日本顧問、武蔵野学院大学講師。自らシングルマザーとして5人の姉妹を育てながら、シングルマザーの自立支援活動を続ける。講演多数。
一般社団法人 日本シングルマザー支援協会