離婚後の子育てのあり方のひとつに「共同養育」という制度があります。日本ではまだなじみがないものですが、海外では広く活用されています。この記事では、共同養育とは具体的にどういったものなのか、また、子どもや親に与えるメリット・デメリットなどについて解説していきます。

養育費が継続的に支払われている人はたったの24%。書面を交わしても支払われていない現状があります。

●養育費を確実に受け取りたい
●パートナーと連絡を取りたくない
●未払いが続いた時の手続きが心配

こうした養育費の未払い問題を解決する方法に「養育費保証サービス」があります。
養育費保証PLUSでは、業界最安(*)の料金で最大36か月の保証を提供しています。その他、連帯保証人がいなくても住まいや仕事探しのサポートも充実していますので、ぜひご検討ください。*2023年4月時点

共同養育とは「離婚後もふたりで子どもを育てていくこと」

「共同養育」とは、両親が離婚した後も引き続きふたりで共同して子どもを育てていくことをいいます。「共同養育はこのように行うものである」といった特別なルールがあるわけではなく、内容などは家庭によってさまざまです。

なお、離婚した夫婦にとって「共同」という言葉は受け入れ難いこともあります。子どものためとはいえ、元配偶者と一緒の時間を過ごしたり食事を共にしたりすることは苦痛と感じるかもしれません。しかし、実は共同養育は必ずしも父親と母親が同席する必要はありません。元配偶者とは、面会交流の日程や場所などの打ち合わせのために、最低限の連絡を取るだけで大丈夫です。

日本は離婚すると「単独親権」になる

日本では現在、離婚すると、両親のいずれか一方が子どもの親権者になる「単独親権制度」が民法によって定められています。そして、日本においては多くの場合、母親が子どもの親権を持ちひとりで子育てをしているというのが実状です。

第八百十九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。
2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の一方を親権者と定める。

引用:e-gov法令検索 – 民法 第八百十九条,2

親権を持つ親は、子どもの衣食住や教育・しつけなどをひとりで行わなければなりません。一方で、親権を持たない親は面会交流で子どもと会うことができますが、場合によってはその頻度や会う時間などは本人にとって満足できるものではないこともあります。にもかかわらず、毎月、養育費はきちんと支払うことが決められているため、親権を持たない親の中には面会交流のルールに対し不満に感じる人も少なからず存在しています。

このように、日本の単独親権制度は、夫婦によってはそれぞれが不満の残る形にならざるを得ない状況になっていることがありますが、実は海外における離婚後の養育事情は日本とは大きく異なります。

多くの先進国では「選択制共同親権制度」を採用しているため、離婚後は両親が共に親権を持つことになります。中には親権を持たない親が積極的に子育てに関わっているケースも多くあります。このことから、選択制共同親権制度では「両親の離婚」と「子どもの養育(面会交流)」は「別のもの」として考えられていることがわかります。

海外の共同養育の例

では、具体的に海外ではどのようにして共同養育を行っているのでしょうか。多くの場合、次のようなパターンで行われていることが多いです。

・1週間のうち1日だけ父親(または母親)の家で過ごす
・1カ月のうち1週間を父親(または母親)の家で過ごす
・毎週決まった曜日をそれぞれの親と過ごす
・父親と母親の家を隔週で行き来する など

このように、共同養育を取り入れれば、離婚後も子どもは父親と母親のそれぞれと関わりを持ち続けることができます。では、海外で広く採用されているこの共同養育にはどのようなメリットがあるのでしょうか。次章で詳しく確認していきましょう。

共同養育のメリット

共同養育には、子どもが両親からの愛情を感じやすくなり自己肯定感が育つことや、片方の親からだけでは得られない体験ができるといったメリットがあります。また、親権を持つ親にとっても、子育てのストレスが減らせることや養育費が支払われやすくなることなどはメリットになるでしょう。

離婚しても両親からの愛情を受けられる

「両親が離婚した」という事実は、子どもにとって精神的に大きなダメージとなる可能性があります。子どもの中には、「離婚は自分のせいかも」と感じたり、「父親(母親)に捨てられてしまったのではないか」などと思い込んでしまったりして、不安や絶望を抱え込んでしまう可能性もあるでしょう。

また、離婚によって引っ越しや転校を余儀なくされ、友達と離れ離れになってしまうだけでなく、環境の変化についていけずにストレスを溜めこんでしまうかもしれません。その結果、情緒不安定になる・食欲がなくなる・攻撃的になるなどの症状が出る可能性があります。

しかし、そういった不安定な状況であっても、これまでどおり両方の親とそれぞれ交流を持ち続けることができれば、精神的な安定につながり自己肯定感が育ちやすくなります。

違う体験をさせられる

離婚後、親権を持つ親とふたりだけで生活していくよりは、もう片方の親とも交流する時間を持てるほうが、子どもが得られる知識や経験の量をグッと増やすことができます。時には日常的に過ごす時間では得られない刺激を受けられることもあるでしょう。

さらに、一緒に暮らす親だけでは対応しきれないしつけや教育についても、違う角度から行うことで子どもがすんなりと受け入れられることもあります。

また、同じ親でも性別が違えば、同性の親とは違った遊び方があるものです。たとえば、体力勝負の遊びや親が苦手とする分野など、一緒に暮らす親だけでは不足しがちな部分をもう片方の親が補ってくれるというのもメリットです。普段は離れて暮らす親が得意なことを子どもと一緒に楽しむことができれば、日頃は離れて暮らしていても子ども自身は深い愛情を感じることできる可能性があります。

このように、子どもがそれぞれの親と充実した時間を過ごせるということは、精神の健全な発達に良い影響を及ぼすと考えられます。

子育てのストレスを減らせる

日頃ひとりで子どもを育てていると、仕事と育児で忙しく自分の時間を持てないことも多くあります。息抜きをしたいと思っても、時間が取れずについイライラしてしまい、子どもに当たってしまうことがあるかもしれません。

一緒に暮らしている親がイライラしていると、子どもはそれを敏感に察知するため、親に気を遣うようになりがちです。親と子どもの精神を安定させるためには、一緒に暮らしている親のストレスをできるだけ解消することがポイントといえます。

共同養育をすれば、もう片方の親が子どもと交流している間は自分の時間を持つことができ、好きなことをして過ごせるので、気分のリフレッシュにつながって毎日の生活にも余裕が出てくるでしょう。共同養育で作る時間は託児所のようにお金がかかるわけではありませんし、子どもも親も楽しい時間を過ごせるのであれば、みんなにとってメリットがあります。

養育費が支払われやすくなる

子どもの親権を持つ親は、もう片方の親と関わり合いを持ちたくないという気持ちから、面会交流には消極的になってしまうというのが本音ではないでしょうか。しかし、これは親権を持たない親からすると、「十分な面会交流がないのに、どうして養育費はきっちりと支払わなくてはならないのか」と不満を感じることになりかねません。

その結果として養育費の支払いが遅れがちになったり、いつの間にかストップしてしまったりするケースも中にはあるため、あくまでも自身の感情と面会交流は別のこととして考える必要があります。

その点、共同養育をすることで、親権を持たない親も子育てに参加することができ、子どもと同じ時間を共有することで成長を感じられるため、養育費を支払うモチベーションを維持することにつながります。このように子どもと交流の場を作ることに抵抗がある人はいるかもしれませんが、生活費を安定させるためにも面会交流は一定の効果があるといえます。

養育費についてはこちらの記事で詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
養育費を3分で解説!相場や決め方、未払防止方法のまとめ

自分の身にもしものことが起こっても引き継ぎしやすい

子どもと一緒に暮らす親の中には、自身が大きな病気をしたり死亡したりするといった、万が一のことを想定している人もいるかもしれません。もしもこのようなことになったら、もう片方の親に子どもの養育を任せるケースが少なくありません。

日ごろから面会交流をしていなければうまく引き継げずに子どもが不安定になってしまう可能性がありますが、共同養育の実施によって面会交流をしている状態であれば子どもの状況などを把握できているので、子育ての引き継ぎをしやすく、何より子ども自身も安心して生活できる可能性があります。

共同養育のデメリット、注意点

共同養育にはさまざまなメリットがあることがわかりましたが、一方で気を付けたいデメリットや注意点もあります。子どもに負担をかけてしまうことや、父親と母親の間で再び揉めごとが起こる可能性などが考えられます。後のトラブルを避けるためにも、デメリットや注意点についてしっかり確認しておきましょう。

移動が負担になる可能性がある

子どもが父親と母親の両方の家を行き来する場合だと、移動距離によっては子どもに負担がかかってしまう可能性があります。子どもが気軽に行き来できる範囲でお互いに住めれば良いですが、そのために引っ越すというのは簡単ではありません。

また、生活の拠点がふたつあるということは、子どもが精神的に安定しづらいというデメリットも抱えています。子どものために取り入れた共同養育が、逆に子どもの負担になったり精神的に不安定になったりする原因にならないよう、慎重に検討する必要があります。

引っ越しをしにくくなる

共同養育を負担なく取り入れるには、母親と父親の家が行き来しやすい範囲内にあることがポイントになりますが、これは、たとえば仕事で転勤になったり、受験に有利なように学区変更をしたくなったりしても、簡単に引っ越しを決断しにくくなる可能性があることを示しています。

子どもの養育が第一優先だとしても、自身の仕事や子どもの進路も大事なことです。そのため、夏休みや冬休み、長期休暇などに、日頃会えない親と長時間過ごすなどの工夫をして、お互いが子どもの養育に関われるように臨機応変に対応することも大切です。

養育方針で揉める可能性

現在の日本のように、いっぽうの親が親権を持つことが決められていると、子どもの養育方針を決めるのは主に親権を持つほうの親であるため、父親と母親が養育方針について揉める可能性は低くなります。しかし、共同養育だと、日ごろは子どもと一緒に暮らしていない親も積極的に子育てに参加することになるため、養育方針について意見が異なったときに対立してしまう可能性があります。

そもそも価値観の相違が原因で離婚している場合は、養育方針についても揉める可能性が考えられますが、たとえ離婚していない夫婦間でも養育に関する揉めごとは起こるものです。意見が対立したときは、お互いの意見を尊重し合い最初から否定しない、妥協点を見つけるなど、争いを避ける方法を探ってみましょう。

DVなどが離婚理由だとうまくいかないことも

離婚の原因がDVなどの場合、共同養育を取り入れるのは難しい可能性が高いです。現在の単独親権制度下であれば、相手に連絡先などを教えずに逃げることができますが、共同養育となるとそうはいかないからです。

子どものための連絡とはいえ、離婚後も相手に連絡先や住所が知れてしまうと、実際問題としてDVなどから逃れることは難しいかもしれません。また、DV被害が子どもにも及んでいたり、子どもが親を恐れていたりする場合は、共同養育は子どもにとってマイナスの影響となってしまうでしょう。

それでもなお、元配偶者が面会交流を求める場合は、面会交流の第三者機関に間に入ってもらい、見守りなどのサポートを受けることができます。それでも子どもに危害が及ぶ場合は、面会交流の制限や中止を申し立てることを検討しましょう。

共同養育していても再婚することはできる

共同養育を取り入れている場合、それぞれの親は再婚できるのでしょうか。結論からいえば、共同養育中でも再婚することはできます。ただし、一緒に暮らしている親が再婚するケースと、もう片方の親が再婚するケースとでは、子どもが受ける精神的な影響に大きな違いがあるため注意が必要です。

一緒に暮らしている親(監護親)が再婚するケース

一緒に暮らしている親が再婚する場合、たとえばこのケースを一緒に暮らす親=母親だとすると、子どもにとって「本当の父親」と「新しい父親」のふたりが存在することになり、精神的な負担が大きくなる可能性があります。たとえば、本当の父親とは面会交流を持ちつつも、新しい父親と新生活を始めるとなると、子どもが混乱してしまうことになりかねません。

再婚したい気持ちが大きくても、まずは子どもとしっかり話し合うことが大切です。子どもの気持ちを十分考慮し、子どもが安心した毎日を送れることを優先に考えられると良いでしょう。

一緒に暮らしていない親(非監護親)が再婚するケース

一緒に暮らしていない親が再婚するケースの場合は、一緒に暮らしている親が再婚するケースよりも子どもが受ける影響は少ないといえます。しかし、再婚したために急に子どもとの関わりを無くしてしまうと、子どもが「捨てられた」「嫌われた」といった感情を持つかもしれないため、再婚後の関わり方には注意しなければなりません。再婚後の家庭を大切にするのはもちろんですが、子どもの気持ちも十分に配慮することが大切です。

子どもに負担をかけない再婚にするために

共同養育中の再婚は、どちらかといえば子どもに精神的な負担がかかってしまう可能性のほうが高いです。しかし、再婚によって親が幸せになれること・笑顔が増えることは、子どもにとってはうれしいものでしょう。では、親にとっても子どもにとっても良い再婚といえるのはどういう状況でしょうか。

・再婚しても共同養育を続けることで、子どもは両方の親に会える
・再婚相手が共同養育に理解があり、子どもと良い関係を作れる

このような状況での再婚であればひとまず安心できます。簡単なことではありませんが、再婚する相手が共同養育について理解を示しており、子どものこともしっかりと考えてくれる人であることはポイントになります。

よい共同養育にするために心がけたいこと

共同養育を自身や子どもにとって良いものにするためには、どのようなことに心がければ良いのでしょうか。父親にとっても母親にとっても、ストレスをできるだけ感じることなくスムーズに取り入れていくためのコツを紹介していきます。

子どもの前で元配偶者の悪口を言わない

共同養育に限ったことではありませんが、子どもの前では元配偶者を非難したり、悪口を言ったりすることは控えましょう。離婚せざるを得ないほどの人だったとはいえ、子どもにとっては親であることに変わりありません。非難の言葉や悪口を聞かせられると、子どもは戸惑って不安定になってしまいます。

また、子どもは日ごろ一緒に暮らしている親(監護親)から嫌われたくないために、言われたとおりに従ったり、自分はそう思わなくても同意せざるを得なかったりすることがあります。子どもにそういった傾向があることは常に留意し、繊細な気持ちを十分に汲み取ることが大切です。

子どもが元配偶者の話題を出しやすい環境を作る

子どもが元配偶者の話題を出すといい気持ちにはならない、という人は少なくないでしょう。特に、面会交流で楽しかった話をされれば、面白くない気持ちになってしまうのも無理はありません。

しかし、1つ上でも触れましたが、子どもは一緒に暮らしている親に嫌われたくない気持ちから、そういった親の態度を敏感に察知しやすいため、「父親(母親)の話は出さないようにしよう」と親に気を遣ってしまう可能性が高いです。

そればかりか、面会交流のたびに「本当にこれからも父親(母親)と会っていいのかな?」と一緒に暮らす親に対して後ろめたさを感じてしまうかもしれません。子どもが気を遣うことなく安心して面会交流できるように、元配偶者の話題を出しやすい環境を作ってあげるのも一緒に暮らす親に求められることだといえます。

共同養育に対して親族の理解がある状態にする

日本ではまだ共同養育について知らない人が多く、たとえ知っている人でもそれを正しく理解していない場合があります。そのため、共同養育のことを知った親族や知人などから理解されなかったり、時には非難されたりすることがあるかもしれません。

その場合は、自身が考えている共同養育のあり方や、子どもに与えるメリットなどを何度も説明し、できるだけ理解してもらえるようにしてみてください。説明して理解してもらえなくても自信を無くさずに、子どものため・自身のために最良の手段を選んだことに自信を持って取り組んでいくことが大切です。

共同養育は子どもだけでなく親にとってもメリットがある

共同養育は、離婚をした後でも、日ごろは一緒に暮らしていない親が子どもと一緒の時間を過ごすことができるため、子どもだけでなく親にとってもメリットのある子育て方法です。まだまだ日本では認知されておらず、実践している人も少ないため、実際に取り入れる場合はメリット・デメリットなどを踏まえて、お互いにストレスなく良い共同養育ができるよう配慮し合うことが重要です。