とても仲の良い夫婦でも、産後に夫婦仲が急に悪化してしまうことがあります。「産後クライシス」ともいわれるこの状況は、何が原因で起こるのでしょうか。また、産後に離婚するとどのような問題があるのかも知りたいところです。今回は、産後うつや産後クライシスの原因、対処法などについて詳しく解説していきます。

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「産後2年以内」が離婚するかどうかの分かれ道!?

夫婦間の愛情は、妊娠期・出産期・育児期と、ときが経過するにつれて夫婦とも徐々に減少していく傾向があることが分かる調査があります。ベネッセ教育総合研究所の「妊娠出産子育て基本調査」をもとに、具体的にどのように愛情が減少していくのか見ていきましょう。※本調査は2006年の調査の後、2007年にフォローアップ調査がなされ、フォローアップ調査のうち妊娠期から子どもが2歳後半となる家庭288組を対象にアンケート分析されたものです。

配偶者といるときに相手を本当に愛していると実感するかという質問に対し、「あてはまる」と回答した人の割合について、妻と夫の結果は以下のようになっています。

時期
妊娠期 74.3% 74.3%
0歳児期 45.5% 63.9%
1歳児期 36.8% 54.2%
2歳児期 34.0% 51.7%

妊娠期は夫婦ともに75%近くの人がパートナーを本当に愛していると実感していますが、出産を境に妻と夫では大きな差が出てきています。出産すると、妻の半数以上は夫を本当に愛しているとはいえなくなっており、子どもが1歳児期になるとさらに減少し、2歳児期の頃には35%弱にまで減少しているのは驚くべき結果といえます。

いっぽうで、子どもが生まれても妻への愛情がなくなる夫の割合はあまり高くないことも分かります。ときが経過するにつれ徐々に減少していくのは妻側と同じですが、2歳児期でも半数以上の夫が妻のことを本当に愛していると回答しています。

この調査結果から、同じ夫婦でありながら、夫よりも妻のほうがより急速にパートナーへの愛情が減少していることがわかります。では、どうしてこのようなことが起こるのでしょうか。

そのヒントとなるのが、同調査の中にある、パートナーが自分の仕事や子育てについてねぎらってくれているか、という質問です。それに対し、夫婦ともに肯定的な回答を行った人は妊娠期がピークとなっており、徐々に減っていることが分かります。

時期
妊娠期 61.1% 63.9%
0歳児期 50.7% 56.9%
1歳児期 41.7% 48.6%
2歳児期 36.5% 44.4%

特に妻のほうの割合が高く、夫よりも妻のほうが不満に感じやすい傾向にあることがわかります。

このように、夫婦間の愛情や思いやりが妊娠期以降、徐々に減少していくと、産後離婚をする割合は残念ながら増えることが予想されます。別の調査となる厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査結果」でも、末子が2歳になるまでにシングルマザーになった人の割合は38.4%となっており、子どもの2歳前後(産後2年)という時期は多くの夫婦にとって離婚を決意するひとつのタイミングなのかもしれません。

参考:ベネッセ教育総合研究所 – 第1回 妊娠出産子育て基本調査・フォローアップ調査、厚生労働省 – 平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果

産後の離婚危機、どうして起こるの?

出産後に夫婦の愛情は減少していく傾向があることがわかりましたが、なぜパートナーへの気持ちが覚めていってしまうのでしょうか。もちろん、各家庭でさまざまな事情があるため一概にはいえませんが、これから解説する主な3つの原因が関係していると考えられます。

夫が家事、育児に協力しない

夫が家事や育児に協力的ではない場合、妻の不満が募ってしまう原因になります。子どもが生まれても、夫がこれまでと何も変わらず家事や育児を分担してくれないと、「父親としての自覚が足りない」と思ってしまうでしょう。

生まれたばかりの子どものお世話は朝も夜も関係なく続くため、心身を休める時間がほとんどありません。妻がそういった状況にあるにもかかわらず、夫が「(仕事で)疲れた」「ご飯はまだ?」「部屋が散らかっている」といったことを口にすると、妻のストレスが溜まってしまうことは言うまでもないでしょう。

夫が生活の変化、妻の変化に戸惑う

女性は出産すると「母」である時間が長くなるため、これまで夫だけに向けていた時間がほとんどなくなり、子どもを中心とした生活にシフトしていきます。そのため、かつて自分にばかり向けられていた妻の意識が子どもばかりに夢中になり、夫は自分が後回しにされているように感じてしまうことがあります。

また、日々育児に追われている妻を見て、これまでのようにひとりの女性としてではなく母としか見られなくなってしまうといった心境の変化が起こる夫もいます。こういった変化が原因となり、夫婦の溝が徐々に深くなってしまうことがあるのです。

妻の気持ちが不安定(産後うつ症状など)

女性は、妊娠や出産の過程で女性ホルモンが激しく変化するため、精神的に不安定になりがちです。ホルモンバランスが崩れると自律神経の乱れにもつながり、さまざまな不調を引き起こします。その結果、「産後うつ」といわれる状態になり、次のような症状が出やすくなります。

・攻撃的になる
・イライラ怒りやすくなる
・感情がなくなる
・集中力がなくなる
・落ち込みや自信喪失
・食欲不振 など

産後うつは、出産して2~3週間後あたりから症状が出始め、人によっては数カ月間続くケースもあります。夫は家事や育児を分担しているつもりでも、妻がこういった状態に陥ってしまうと、良好な関係を築けずに夫婦関係が険悪になってしまうことがあります。

産後の離婚原因のひとつ「産後クライシス」とは?

産後の夫婦関係を表した言葉に「産後クライシス」があります。もともとはNHKの番組が提唱した表現でしたが、その後、多くの人が一度は耳にしたことがあるほどに社会的に広まりました。

産後クライシスとは、妻のホルモンバランスの変化や夫婦間のコミュニケーション不足などが原因で、妻側に不満やイライラが溜まり、夫婦仲が悪化することをさしています。

産後クライシスの症状は?

産後クライシスになると、具体的に次のような症状が多く見られ、長い場合は数年から十数年続くこともあるとされています。

・小さなことでパートナーにイライラする
・パートナーとの触れ合いに苦痛を感じる
・パートナーに愛情を感じなくなる
・夫が家事や育児に非協力的なので不満が募る
・妻が子どものことばかりで夫が疎外感を感じる など

これらの症状は産後うつの症状とよく似ていますが、実は産後クライシスと産後うつはまったく別のものです。

産後うつと産後クライシスの違い

産後うつや産後クライシスは、いずれも妊娠や出産、子育てへの不安やストレスが原因となっていることが多いです。産後うつは主に産後2~3週間から起こることが多く、「産後うつ病」というこころの病気であることから、医師の診察や場合によっては投薬などが必要になります。

いっぽう、産後クライシスは産後約2~3年の間に起こることが多く、出産や子育てによるストレス・疲れから夫婦関係が悪化している状態をさします。それなので、こころの病気というよりは、夫婦関係の危機的状況を表しています。

産後の離婚原因に?実際に起こった事例

本章では、産後の夫婦間の変化について、妻たちが実際に悩み、戸惑っているケースを見ていきましょう。

【事例1:夫が育児に参加してくれない】
夫が仕事から帰ってきた後、食事の用意をする間などに子どもを見ていてもらえないかお願いすると、「泣くからイヤ」といわれイラっとします。泣かれて嫌なのはわからなくもないですが、だからといって抱っこしないでいるといつまでも子どもが懐かないのでは?と思います。仕事が忙しいから仕方ないとは思いながらも、育児に参加してもらえない不満も消えず毎日葛藤を繰り返しています。

【事例2:夫やその家族にされたことが許せない】
出産して1年半たった今も、妊娠中や産後に夫や夫の家族からされたことが許せずに苦しんでいます。話し合いをしてつらい気持ちを打ち明けても、「みんないろいろあるし大変なのはだれも同じ」といわれ、離婚したい気持ちが消えません。もう夫を愛することはできないと思います。でも子どもは本当にかわいいので、自分が苦しいからといって離婚しても良いのか悩んでいます。

【事例3:理由もなく夫が嫌いになりました】
子どもを産んだ直後から、夫のことが好きではなくなりました。夫は家事や育児に協力的なほうで、そこについての不満はありません。ただ、夫と一緒にいると息が詰まりそうで、最近はあからさまに避けてしまいます。自分でもなぜこんなに夫が嫌になってしまったのかわかりませんが、いつまでこの状態が続くのか不安になります。この状態を続けていても良いのか、話し合いをするべきなのかわかりません。

このように、産後、急激に夫への愛情がなくなったり、嫌悪感を抱いてしまったりすることで悩んでいる女性は少なくないことがわかります。

産後に離婚するとどんな問題が起こる?

産後うつや産後クライシスなどが原因で離婚をすると、その後どのような問題が起こり得るのでしょうか。今離婚を考えている人は、特に離婚後の問題やリスクについてしっかりと理解しておく必要があるでしょう。

経済的に厳しくなる可能性が高い

離婚した後は、妻が1人で働いて子どもを育てていかなくてはなりません。しかし、子どもがまだ小さいうちは復職できる可能性が低いうえに、パートで働けるとしても収入が低く生活が苦しくなる可能性があります。結婚生活中に比べてあまりにも生活レベルが変わってしまうと、離婚したことを後悔してしまうかもしれません。

1人ですべてを行わなくてはならない

離婚する前も家事と育児の両方をこなしていたとはいえ、いざというときはパートナーを頼ることができたという人はいるでしょう。しかし、離婚してしまうと本当に困ったときでもすべて1人でこなしていかなくてはなりません。

また、仕事に復帰した後も、子どもの体調が悪くなって迎えにいかなくてはならないなど、1人では対応しきれないことがあります。「こんなときに夫がいれば……」と感じてしまうかもしれません。

体調が回復してきたときに後悔する可能性

離婚の原因が産後うつの場合、症状が落ち着てきたときに離婚したことを後悔してしまう可能性があります。産後うつはホルモンバランスの崩れが主な原因であるため、状態が安定してくると冷静に考えることができる傾向にあります。その結果として、「どうしてあのとき離婚してしまったのだろう」と後悔してしまう可能性があるのです。

産後うつ・産後クライシスを乗り越える方法

産後うつや産後クライシスの状態にあると、毎日の生活が辛く感じてしまいます。しかし、まだ離婚を決意している状況でなければ、次に紹介する方法で夫婦関係の改善を試みてみましょう。それで夫婦関係が改善できればベストですし、たとえ離婚することになったとしても、改善する努力をした後の決断であれば、あとで後悔する可能性を減らせるでしょう。

きちんと話し合う時間をつくる

お互いに心の中で相手への不満を溜め込まずに、夫婦で話し合う時間を作ることから始めてみましょう。「このようなことで困っている」「こういう風にしてほしい」といったことをきちんと話し合うことで、相手の気持ちに気づき、お互いに歩み寄ることができるようになるかもしれません。

「夫婦なのだから言わなくても察して欲しい」と相手に求める気持ちもわかりますが、実際はなかなか難しいものです。ぎくしゃくしてしまった仲ならなおさらです。自分の気持ちを正直に話すことで、すれ違いや溝を少しずつ埋めてみましょう。

相手に感謝する気持ちをもつ

相手に何かをしてもらったときは、それを当たり前と思わずに感謝する気持ちをお互いに持てるようにしましょう。たとえば、仕事から帰ってきて疲れているのに、子どもをあやしてくれたり食後に食器を洗ってくれたりしたときは、「疲れているのにありがとう」と言葉に出して伝えてみるのです。

感謝する気持ちを言葉に出して伝えることで、そのうちパートナーも言葉かけや気遣いの大切さに気づくようになる可能性があり、お互いに相手へ感謝する気持ちを持てるようになることが期待できるでしょう。

お互いに完璧を求めない

子どものお世話や家事を完璧にこなそうとすればするほど、思うようにいかない自分にストレスが溜まってしまうことになりかねません。ほどよく力を抜き、相手に頼ることも選択肢に入れてみましょう。また、「夫ならこうするべき」「妻ならこうするべき」と相手へ完璧さを求めるのも控えたいものです。相手は、常に満点から減点されているようでストレスが溜まってしまう可能性があります。

友人や専門家などに話を聞いてもらう

子どもの育児に明け暮れていると、「今日だれとも話をしていない」という日があるものです。少しでも時間があるときは、友人や家族などに話を聞いてもらうのもおすすめです。意外と同じようなことで悩んだり、困ったりしていて、似た境遇を経験していることがあるからです。

それでも気持ちの落ち込みがとれないときは、専門家に話を聞いてもらうのも1つの方法です。心療内科のカウンセリングや夫婦カウンセラーなどに相談すると、自分の気持ちに向き合えたり有意義なアドバイスをもらえたりするでしょう。

家事代行やベビーシッターなどに頼る

育児と家事だけの毎日に煮詰まってしまったら、家事代行やベビーシッターなどを利用して自分だけの時間を持つこともおすすめです。家事代行を利用すれば、その間は子どものお世話だけをしていれば良いので、ゆったりとした気持ちで子どもに接することができます。

また、ベビーシッターを利用して、その間に自分の好きなことをするのも良い気分転換になります。美容院に行ったり気ままに買い物に行ったりすると、家事や育児を離れてリフレッシュできます。

それでも産後離婚を避けられないケースとは

ここまで紹介してきたような夫婦関係を修復するための方法を試しても、やはり関係が元に戻らない、またはより悪化してしまうことがあります。たとえば、以下のようなケースでは、無理に夫婦関係を続けるよりも離婚という選択をするほうが良い可能性があります。

・夫からDVやモラハラなどを受けている
・子どもへの虐待がある
・夫がほかの女性と付き合っている
・生活費を入れてくれない など

夫からDVやモラハラなどを受けていたり、子どもが虐待を受けていたりする場合は、話し合いよりもまず別居することが優先されます。身の安全を確保することを第一に考えて行動することが大切です。また、夫がほかの女性と付き合っていたり、夫婦関係が悪化したことで生活費を入れてくれなかったりする場合も、離婚したほうが良いケースがあります。あくまでもケースバイケースであることを頭に入れ、状況に応じて冷静に判断するようにしてみてください。

産後離婚の前にパートナーと話し合う時間を持ちましょう

出産後に夫婦関係が急に悪化すると、ふと離婚が頭をよぎることがあるかもしれません。しかし、もしも産後うつや産後クライシスが原因で離婚することになる場合、将来、離婚を後悔する可能性があります。離婚を決断する前にお互いの気持ちを伝え合い、まずは歩み寄りや関係修復を考えてみましょう。