『ママ起業家 これだけ知っておけば十分 税金+社会保険&経営の便利ブック』より一部抜粋
【厳選】ママスマ編集部 おすすめ書籍を紹介
新たな生活に踏み出したシングルマザーの私たち。しかし、足元を見ればお金、教育、仕事、養育費などなど、不安と悩みは尽きません。それらの悩みに対し各方面の専門家、そして先輩たちが、書籍を通してたくさんの知恵を提供してくれています。ママスマ編集部では、そんな知恵とアドバイスの詰まった書籍を厳選、内容を抜粋して紹介してまいります。
できること、すべきこと、やりたいこと
ご自身の棚卸をしたことがありますか?
特に起業するときに、しっかりと立ち止まって、自分を見つめ直すことは有効な手法ですが、そのときに「すべきこと・やりたいこと・できること」を書き出すという方法があります。この考え方は、キャリア教育の分野でも使われています。
次のページの図表34にご自分の棚卸を書き込んでいただけたら嬉しいです。「できること」には、これまでに身につけてきた「スキル」「技術・技能」「知識」「経験」「資格」などを書きます。自分が直接できなくても、つながりを通じてできることもあるかもしれないので、「人脈(キーパーソン)」を入れてもいいかもしれませんね。
私の場合は、「執筆、PR戦略、金融の知識、英語、会計・財務の知識や技術、中小企業診断士、創業支援、女性経営者支援」などがあります。バラバラですが…(汗)。
続いて、「やりたいこと」ですが、これは自分の「志」「夢」「価値観」「使命感」「信念」の部分です。事業や企業の「理念」「社是」「行動指針」のようなものになっていきます。
また、事業をしているといろんな紆余曲折があり、ピンチや困難に直面することもあります。そんなときにも、「折れない心」「諦めない心」というのは、この「やりたいこと」への思いの強さからきていると思います。自分(や自分の会社)が存在する理由(存在意義)ともいえますので、とても大事になってきます。私の場合は、「それぞれが夢を叶えられる社会をつくる」という夢があることです。
最後に、「すべきこと」ですが、実は、ここが一番大事だと私は思っています。「やりたいこと」は、「自分の思い」ですよね。「こんなお店をしたい」とか、「こんな製品をつくりたい」とか…。それを実現するために「できること」を駆使します。
でも、そもそもそれが、「すべきこと」なのでしょうか?つまり、お客さまから求められているものなのかどうかです。ここを軽視してしまっては、ビジネスとして継続していくことができません。「やりたいこと」が、お客さまの困り事を解決していなかったら、いくらがんばって、いいサービスや製品を提供しても、お役には立てません。そうなると、お金も払ってもらえません。
私の場合は、「創業者さん、女性経営者さん、中小企業の社長さんの困ったことを解決し、安心して事業拡大してもらうこと」です。もっと対象者を絞れば、「数字が苦手で不安に思う創業者さん、女性経営者さん」です。
前ページの「すべきこと」「できること」「やりたいこと」の3つの輪を描いた図表34の3つの輪が重なる部分が大きければ大きいほど、周りの人に自分の得意なことを提供して感謝され、人生が充実している状態になります。そして、この3つを重ならせようとするときに、どのような方法を取るかも非常に大事です。
グレーの点線矢印を見てください。これで表そうとしているのは、よくありがちな方法です。自分の「やりたいこと」を実現するために、スキルを身につけたり、「すべきこと」の現実を見極めないで、自分の「やりたいこと」の方向へ拡大解釈してみたり…。
ビジネスの場合、本当は黒い実線矢印のように、「やりたいこと」「できること」が、「すべきこと」に向かって重なっていくのが「あるべき姿」で、それを実現するための仕組みをつくっていくのが、起業家だと思います。
私の大学を卒業したあとの最初のキャリアは、「記者・編集者」でした。しかし、渡英期間が長くなり、日に日に自分の日本語能力が退化していくのを実感する中で、金融の道への転向を模索し始めました。結局は、苦難の末「銀行員」になりましたが、当時、私が金融市場を目指そうと考えるようになったきっかけをつくった社会的な出来事と、その仕掛人がいました。
それは、1992年9月16日のブラック・ウェンズデー(別名:ポンド危機)です。
英国の通貨であるポンドの為替レートが急落し、翌日に英国がERM(欧州為替相場メカニズム)を離脱した一連の出来事です。それを仕掛けたのは、ジョージ・ソロス氏が率いるヘッジファンドでした。中央銀行が、国が、国民が、大損をする一部始終を目の当たりにし、「金融を知らずして、いい社会は目指せない」と、ジャーナリストをやめ、金融の世界を目指したのでした。
実は、このジョージ・ソロスという人には、慈善活動家という側面もあります。私は、彼のそちらの活動にも非常に感銘を受けました。
例えば、アパルトヘイトという人種差別問題を抱えていた南アフリカで、大学生に通学援助の基金提供をしたり、社会主義だった東ヨーロッパの科学者や大学に資金提供したりすることで自由化を促したりという具合で、その寄付総額はこれまでに120億ドル(1兆2千億円)を超えているといわれています。ガッツリ儲けて、ガッツリ慈善事業をして、自分の信じる「よい社会」を実現しようとしている、その実行力が凄いと思ったのでした。
さて、そのジョージ・ソロス氏の3つの輪の関係は、どんな位置になっているのでしょうね?
「できること」「「すべきこと」は投資ですが、「やりたいこと」は「投資」と「慈善活動」ですので、一見、輪が離れているような気もします。しかし、寄付をすることでその国の自由化を促し、その結果、その国に自由に投資できる環境をつくっているのだと考えれば、戦略としては随分と長期的ですが、3つの輪はビシッと一致しています。
あなたらしさで、周りの人を喜ばせよう
「すべきこと」を優先させたら、自分の「やりたいこと」を我慢しなくちゃいけないんじゃないか?…と心配になりましたか?実は、あなたの心配は、当たっているという面もあるかもしれません。でも、基本的には「発想の転換で解決できる」ということを、これからお話させていただきます。
私が運営している創業スクールでは、「マーケティングの基礎」という講座が必ずあります。実は、創業スクールでの大きな両輪は「マーケティング」と「財務」です。その講義の中で、講師が最初に必ず言う言葉があります。「まずは顧客を決めてください」です。
「え~?」と思うかもしれませんね。でも、ここでは「やりたいこと」、つまり、「喜ばせたい相手」を決めるという作業をしているのですね。それが「あなたらしさ」であり「やりたいこと」なのです。
でも、その「喜ばせたい相手」に何を提供して喜ばせてあげるかは、実はその人に聞いてみないとわからないものなのです。「え~、それって、自分らしさじゃないよね」と思うかもしれません。
でも、あなたというフィルターを通って、お客さまに喜びが提供されるわけですから、心配しなくても、自然に、意識しなくても「自分らしさ」は入るという仕組みになっているのです。大事なポイントは、「まずは相手(お客さま)の喜びに集中する」ということなのです。
今でこそ有名な小売店さん「COSCOJI(コスコジ)」の例をご紹介しますね。
店主の小杉光司さんは、独立して、自分のお店「雑貨屋さん」をスタートさせました。家族の「笑顔創造店」というコンセプトで、家族のカナメである「お母さん」に喜んでもらえるようなお店づくりに集中しました。おかげさまで、ファンはたくさん増えました。でも、業績はあまり上がらなかったのだそうです。
そして、あるとき、お客さまの「買うものがない」という言葉にヒントを得て、「雑貨屋」から「婦人服」のお店へと取扱商品を変えていったのです。そして、今は、数店舗を運営するほど、事業規模も拡大させています。「お母さんたちを喜ばせる」という「やりたいこと」を徹底して貫きました。そして、「すべきこと」である「お客さまのニーズに応え」て、お店の取扱商品まで変えてしまったという事例です。すごいですよね。
マーケティングは、「売る(自分目線)」ではなく、「売れる(お客さま目線)」仕組みづくりだということを実証するお話ですね。
ビジネスプランをつくりましょう
創業するときには、「ビジネスプラン(事業計画)」を作成することを強くおすすめします。
計画をつくるなんて、よくわからないし、面倒だと思うかもしれません。また、中には、計画を立てること自体が大嫌いという人もいます。子どもの頃、親に「寄り道をしちゃいけません」「きょうは何時までに宿題を終えるの?」とか、計画どおりにしないことを批判され続けたトラウマもあるかもしれませんね。そういう私にも、同じようなトラウマがあったような…。(笑)
ただ、銀行に勤めるようになった頃からでしょうか。計画がなければ、目標に到達することができないということがわかるようになりました。もちろん、たまたま目標を達成できた、ラッキーということはあります。
でも、コンスタントに目標に近い数字を出していくためには、計画をもとに進捗を管理したり、計画どおりにいかなかった原因を突き止めたり、遅れからどうやって元の計画に追いつくかを考えたり、という作業が必要になります。
これは、お料理の手順にも似ているかもしれませんね。レシピどおりに準備をして、作業を進めていると、今はどの段階にあるのかがわかりますし、レシピに書いてあるとおりにいかない場合は、それをどう代替品でカバーするかなどを考えないといけません。また、レシピがあるからこそ「ここの手順は他の方法に変えたほうがいい」などの改善のアイデアも出やすくなります。
このように、ビジネスプランは、経営者自身、または、従業員さんと「目標を共有する」ための羅針盤としての活用方法ですが、他にもビジネスプランを見たいという人がいます。
まず、銀行は、融資を実行するために必要になります。ベンチャー・キャピタルやビジネス・パートナー(株主として出資してくれる人)は、出資をするかどうかを判断するために、行政機関は助成金申請への審査をしたり、あなたのビジネスがビジネスプランコンテストなどへエントリーに適切かどうかを判断したりするために必要になります。次に、取引先や提携先、販売会社などは、契約するかどうかの判断をするときに必要です。
このように、ビジネスプランは、あなたのビジネスに関係する人たちと共有することで、協力、支援、理解が得られますし、ビジネスを伸ばしていくためにはなくてはならないものです。
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『ママ起業家 これだけ知っておけば十分 税金+社会保険&経営の便利ブック』
【連載#1】あなたの思いをビジネスにする
【連載#2】あなたらしさで、周りの人を喜ばせよう
【連載#3】「計画する」ことにトラウマを持っている人へ
【連載#4】愛顧される前に、お客さまを愛顧しよう
著者:岡京子
1965年6月23日、和歌山市生まれ。日本大学法学部政治経済学科卒。在学中は、日本大学新聞において、史上初の女性編集部長として創刊1000号の発行を手がける。卒業後、女性向けの週刊新聞を発行する(株)新代新聞社(東京都港区)編集部に勤務し、「子どもの話題」、「女性関係のニュース」、「国際関係」の分野に関する記事やコラムの企画・執筆に携わる。その後、書籍等の配達サービスを海外在住邦人向けに提供するOCS,London,Ltd.に採用され渡英。その後、NNA(ロンドン)等での経済・金融関連の情報の執筆業務を経て、和歌山に帰省。株式会社岡会計センターの事業を承継、代表取締役となる。唯一の国家資格の経営コンサルタントである中小企業診断士を取得し、2014年3月登録(経済産業省)。
※本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです。