ワンオペ育児は肉体的にも精神的にも辛いものです。ワンオペ育児を理由に離婚を考えたことがある人もいるのではないでしょうか。本稿では、ワンオペ育児を理由に離婚できるのか、離婚するときにはどのようなことに注意すべきなのかなどについてお伝えします。ぜひ参考にしてみてください。

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「ワンオペ育児」とはどういう状態?

ワンオペ育児とは、日常的に、夫婦のどちらか一方に家事や育児の負担がかかっていることをいいます。現状では、妻によるワンオペ育児をさすことが多いです。

以下に、ワンオペ育児となりやすい具体的な場面を紹介します。

・子どもが起きている時間帯に夫が家にいない
・仕事が休みの日でも夫が家事や育児を行わない
・夫が単身赴任中であり、近くに頼れる人がいない

ワンオペ育児に至る経緯はさまざまですが、家事や育児の負担が夫婦のどちらか一方にかかっている点では共通しています。

ワンオペ育児の状態が続くと、肉体的にも精神的にも負担が大きくなり、「辛い……」と感じる人も多いことでしょう。ワンオペ育児が辛いと感じる理由には以下のようなことがあげられます。

・子どもの世話にかかりっきりで、トイレに行ったり食事をしたりする時間でさえ十分にとれない
・子どもの夜泣きに対応しなければならないため、慢性的に睡眠不足である
・育児について相談できる人がいなくて不安を抱えている
・子どもの世話をひとりでしなければならないという責任に押しつぶされそう

このような状況に加え、夫から「家事や育児をやって当然」という扱いをされたり、できていない家事を指摘されたりすることもあります。味方になってほしい夫から理解してもらえないと、妻は精神的に追い詰められてしまう可能性があります。

ワンオペ育児を理由に離婚することはできる

ワンオペ育児が続くと心身ともに疲弊してしまいます。夫婦で話し合ったにもかかわらず夫の姿勢が変わらないような場合では、離婚を考えても無理はありません。では、ワンオペ育児を理由に離婚できるのでしょうか。

結論から言うと、ワンオペ育児を理由に離婚することは可能です。ただしワンオペ育児を理由に離婚できるのは、夫婦の間で合意している場合に限られます。

夫婦の話し合いで離婚に至る「協議離婚」の場合、理由がどのようなものであれ、両者が合意していれば離婚が認められます。そのため、ワンオペ育児だけが理由であったとしても離婚することは可能です。

もし夫婦間での話し合いで合意できず、協議離婚が成立しない場合は、「離婚調停」の手続きに進みます。離婚調停とは、調停委員とよばれる第三者が夫婦の間に入って話し合いを進める手続きのことです。この場合も、最終的に夫婦が合意に至れば、ワンオペ育児だけの理由でも離婚は成立します。

裁判になると「ワンオペ育児だけ」では認められない

離婚調停でも合意に至らない場合は「離婚裁判」の手続きに進みます。裁判になると、ワンオペ育児だけでは離婚が認められません。というのも裁判で離婚を成立させるには、法的に認められる離婚理由が必要になるからです。裁判で離婚が認められる離婚理由とは以下の5つです。

不貞行為
悪意の遺棄
3年以上の生死不明
回復の見込みがないような強度の精神病
その他婚姻を継続し難い重大な事由

ワンオペ育児に加えて、夫の不貞行為がある場合は、裁判で離婚を認められやすいです。また、「誰のおかげで生活できているんだ」「育児しかしていないなんて楽でいいな」といった言葉や態度で相手を傷つけるモラハラも、離婚を認められやすいでしょう。モラハラは上記の離婚理由のうち「その他婚姻を継続し難い重大な事由」と判断される可能性があります。

その他に、別居している場合も離婚が認められやすいと考えられます。特に、3~5年の別居期間があると離婚が成立する可能性が高まります。3~5年という長期にわたる別居は、夫婦関係が破綻しているという証拠になるため、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」に該当すると考えられるからです。

このように離婚裁判に進むと、ワンオペ育児だけでは離婚理由として認められにくいものの、不貞行為やモラハラがある場合や別居している場合は離婚を成立させることも可能です。

悪意の遺棄については、こちらの記事のご覧ください。
弁護士が解説|悪意の遺棄とは?

子どもが小さいうちに離婚する場合に注意したい点

ワンオペ育児の辛さに耐えられず離婚する場合、子どもがまだ小さいケースが少なくありません。子どもが小さいうちに離婚する場合は、以下の点に注意しましょう。

・離婚時に子どもの親権を決める必要がある
・親権獲得に不利になる行動は控える
・養育費について必ず決めるようにする
・子どもとの面会交流の機会を拒否することはできない

ひとつずつ見ていきましょう。

離婚時に子どもの親権を決める必要がある

未成年の子どもがいる場合、つまり18歳になる前の子どもがいる場合は、離婚時に子どもの親権を決めなければなりません。親権とは、未成年の子どもを養育するための親の権利・義務のことです。

婚姻中は夫婦の両方が親権をもちますが、離婚をすると夫婦のいずれかが親権をもつことになります。離婚届に親権者を記載しなければ離婚できません。あらかじめ親権をどちらがもつか決めておきましょう。協議離婚や離婚調停の場合は、離婚の話し合いと同時に、子どもの親権者についても話し合って決めます。

離婚裁判の場合、親権者を決めるのは裁判所です。収入や生活環境のほか、今までの子どもへの接し方や育児の状況などが考慮され決定されます。

なお、子どもが小さい場合は母親が親権者として認められやすい原則があります。とくに0~5歳くらいの乳幼児においては、この原則が適用されることが多いです。

親権獲得に不利になる行動は控える

前述のとおり、小さい子どもの場合は母親のほうが親権を認められやすい傾向があります。しかし、母親の行動によっては親権を認められない場合もあります。親権を獲得したいなら、親権獲得に不利になる行動は控えましょう

親権獲得に不利になる行動には以下のようなものがあります。

・別居する際、子どもを置いていく
・別居する際、相手に無断で家を出ていく
・子どもに父親の悪口を言う
・子どもを置いて長時間家をあけるなど、生活態度が著しく悪い
・育児放棄や虐待がある

基本的に、別居する際には夫婦両方の合意が必要です。相手に無断で家を出ていくことは、夫婦の義務である「同居義務」に違反する行為に該当する可能性があります。さらに「悪意の遺棄」とみなされる場合もあり、その場合は慰謝料を請求されることもあります。別居する前には相手と話し合い、合意の上で家を出ましょう。

その際、親権を獲得したいなら子どもも一緒に連れて出る必要があります。子どもを置いて家を出ると、現在の監護者が父親ということになり、親権獲得に不利になってしまいます。

また、中には、親権を獲得するために子どもに父親の悪口を言って(母親の)味方につけようとするケースがあります。このような行為は子どもを混乱させるだけでなく、親権争いが調停や裁判になった場合に、調停委員や裁判所に与えるイメージも悪くなるため控えましょう。

養育費について必ず決めるようにする

未成年の子どもがいる場合、離婚時には養育費についても決めておきます。

親権と異なり、養育費については決めていなくても離婚することはできます。しかし、離婚後に元夫婦で話し合うことは難しくなるうえ、まったく養育費を支払ってもらえないといったことも起こり得ます。養育費は子どものために必要なお金ですので、離婚前にしっかりと決めておきましょう。

また、養育費の金額や支払い期間、支払い方法などを決めたら、文書に残すことが大切です。子どもが小さいうちに離婚するとなると、養育費の支払いは長期にわたります。年月が経つと、再婚や転職など支払う側の環境が変わることもあるでしょう。場合によっては支払いが滞ってしまうケースもあるため、支払ってもらえなくなるリスクを防ぐためにも、文書で残すようにしましょう。

「離婚協議書」として残す方法もありますが、できれば「強制執行認諾文言付の公正証書」を作成しておくことをおすすめします。強制執行認諾文言付の公正証書とは、「もし支払わなかったら強制執行されることを認める」という内容の公正証書です。作成に費用がかかるなど難しい点もありますが、効力が強いので作成しておくと安心です。

公正証書の作成方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
公正証書の作成方法|作成のメリットと流れを弁護士が解説!

子どもとの面会交流の機会を拒否することはできない

婚姻中には育児に参加しなかったにもかかわらず、離婚後には子どもと面会交流を希望する父親もいます。妻としては「今さら子どもに会おうとするなんて……」と思うかもしれません。

けれども面会交流は子どものためのものです。子どもと父親の交流機会を母親が一方的に拒否することはできません。面会交流を一方的に拒否すると、父親の権利を損害することになります。場合によっては損害賠償を請求されるリスクもありますので、注意しましょう。

ワンオペ育児で離婚する場合の慰謝料について

ワンオペ育児だけを理由に離婚する場合、慰謝料を請求することは難しいでしょう。

ただし、夫に不貞行為やモラハラ行為があった場合は、慰謝料を請求できます。夫の年収が低かったり借金があったりする場合でも、慰謝料の請求は可能です。また慰謝料と養育費は別ものですので、養育費とは別に慰謝料を請求できます。

なお、慰謝料を請求するには証拠が必要です。不貞行為であれば、不倫相手とのメールや写真、不倫相手と利用したホテルの明細などが証拠になり得ます。モラハラであれば、モラハラを記録したメモや録音、夫からのメールなどを証拠として提示できます。

ワンオペ育児による離婚を回避するためには

ワンオペ育児だけを理由に離婚を考えている場合は、離婚を回避できないかもう一度冷静に考えてみることをおすすめします。具体的な方法としてここでは3つの案を紹介します。

・夫婦で家事や育児のことを話し合う
・ベビーシッターや家事代行(家事外注)サービスを利用する
・周囲の人や親などに協力をお願いする

ひとつずつ見ていきましょう。

夫婦で家事や育児のことを話し合う

夫婦で家事や育児について話し合っているでしょうか。妻がワンオペ育児に悩むケースでは、夫が妻の辛さを理解できず、気持ちにすれ違いが生じていることが少なくありません。

一方で、妻が夫の気持ちを理解できていないケースもあります。夫としては「もっと家庭にかかわりたい」と思っているにもかかわらず、仕事が忙しくて時間がとれないといったこともあるでしょう。

お互いに不満がたまってくると、スムーズな話し合いが難しくなってしまいます。つい相手に対して「わかってくれない」とイライラしてしまうこともよくあります。

イライラした気持ちをいったん落ち着かせ、夫婦で向き合って話し合う時間を作ってみてください。お互いの気持ちを理解できれば、離婚せずにすむかもしれません。

ベビーシッターや家事代行サービスを利用する

夫が単身赴任だったり、仕事が忙しくて時間を作れなかったりする場合は、ベビーシッターや家事代行サービスの利用も検討してみてください。家事や育児に追われることのない時間は、妻がリフレッシュできるひとときです。サービスを利用している少しの間でも自分の時間をもてれば、ストレス軽減につながるでしょう。

ベビーシッターや家事代行サービスのメリットはわかるけれど、費用の面が心配という人もいるのではないでしょうか。確かに、このようなサービスを利用するには費用がかかります。費用や利用頻度などについて、夫婦で具体的に相談できるとよいでしょう。

周囲の人や親などに協力をお願いする

近くに頼れる人がいるのであれば、協力をお願いしてみるのもひとつの方法です。家事も育児もひとりで抱え込んでしまうと、辛くなってしまいます。周囲の人や親などに協力してもらえないか、声をかけてみましょう。

近くに頼れる人がいない場合は、子育てサークルのような交流の場に参加してみるのもおすすめです。家事や育児を代わってもらうことは難しいでしょうが、悩みを共有できるだけでも不安や孤独を和らげることができます。

ワンオペ育児だけが理由の離婚なら冷静に判断することが大切

ワンオペ育児は、夫婦のどちらか一方に非常に大きな負担がかかります。相手からの理解を感じられないと、ひとりで抱え込んでしまい、離婚を考えることもあるでしょう。

しかし離婚したい理由がワンオペ育児だけなら、もう一度夫婦で話し合ったり、なんらかの対策を講じたりすることで、うまくいく可能性があります。後悔しないためにも、まずは夫婦でしっかりと話し合い、冷静に判断するようにしてみてください。