「子育てに奮闘しているのはいつも自分だけ」「パートナーが家事や育児をまったく手伝ってくれない」など、いわゆる「ワンオペ育児」がつらくて悩んでいるとき、「離婚」が頭によぎるかもしれません。この記事では、ワンオペ育児を理由に離婚できるのかどうか、解説します。
目次
ワンオペ育児とは

「ワンオペ」は、和製英語であるワン・オペレーションの略で、1人で仕事をこなす言葉として浸透しています。転じて、「ワンオペ育児」は母親、あるいは父親だけが育児を行っていて、片方に育児負担が重くのしかかっている状態のことです。
どこからが「ワンオペ育児」にあたる?
どこからがワンオペ育児にあたるのか、明確な定義はありません。ただ、たとえば「夫婦共働きで対等なはずなのに、家事や子どもの世話は自分ばかりで、相手が何もせず配慮もないことにイライラする」という方は該当していると考えてよいでしょう。
ワンオペ育児がつらい理由
子育ては言うまでもなく大変ですので、できれば夫婦で協力して乗り切りたいところです。子どもが小さいうちはなおさらでしょう。
協力が得られないと、仕事をしながら育児も家事も1人ですべてこなすなどオーバーワーク状態になり、体力的にも精神的にも疲れきってしまいます。
自分がつらいときに、何もしないパートナーから「やって当然」のような扱いを受けたり、できていないところを指摘されたりして怒りを覚え、「もう夫婦としてやっていくのは無理かもしれない」と感じて離婚を考える方も少なくありません。
「ワンオペ育児が原因で離婚」はアリ?
ワンオペ育児が続いて、相手がずっと非協力的で改善の余地が見えないと、離婚したい気持ちがわいてくるかもしれません。ワンオペ育児を理由に、離婚を迫ることはできるのでしょうか。
離婚は「双方の合意」か「相応の理由」が原則
離婚は、1人で決めて実行することはできません。離婚は「双方の合意」もしくは「相応の理由」があって、はじめて成立するものです。
相手が応じてくれたら離婚できる
「双方の合意」は、夫婦がともに「離婚する」という決断を受けて入れている状態です。離婚する理由にはワンオペ育児だけでなく、性格の不一致、不倫、DVなどさまざまなものがありますが、どんな理由であっても、夫婦がお互いに納得していれば離婚は可能です。これを協議離婚といいます。
ただし、離婚前には、あらかじめ子どもの今後やお金のことについても話し合っておくことが大事です。その上で、離婚届を準備し、役所に提出すれば完了です。
相手が応じてくれないときは
いくら離婚したいと思っていても、相手が拒否していたらできません。そんなときに取れる手段が、裁判所を頼ることです。
お互いの意見が割れて話し合いが進まない場合は、裁判所で「調停(ちょうてい)」という手続きができます。これは、裁判よりも手軽で早く、安く解決を図れる方法です。調停では、調停委員という第三者が夫婦双方の意見を聞き、納得いく結論が出せるよう提案や助言をしてくれます。
調停でもうまくいかなかった場合、裁判をすることもできます。裁判では、双方の意見をもとに裁判長が結論を出します。
裁判で認められる離婚理由はどんなもの?
裁判になったとき、裁判長に「離婚に値する相応の理由がある」と認められれば、一方が離婚を拒否していても離婚を成立させることができます。裁判で認められる離婚理由として、民法770条では以下の5つのケースが定められています。
(1)配偶者に不貞な行為があったとき。(不倫や浮気)
(2)配偶者から悪意で遺棄されたとき。(正当な理由なく同居を拒む、生活費を渡さないなど)
(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないとき。
(4)配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
(5)その他、婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき。
ワンオペ育児は、このいずれにも該当しないとされるケースが多く、それだけで離婚に至る理由とするのは難しいでしょう。ただ、ワンオペ育児以外にも相手のモラハラや暴力、長期間の別居などの問題がある場合は、上記の(5)にあてはまると認められて離婚できる可能性があります。
もし離婚したら……。気になる子どものこと
「離婚したい」という気持ちが芽生えたとき、気にかかるのが子どものことではないでしょうか。
もし離婚することになれば「ひとり親世帯」になり、子どもは場合によっては名字が変わったり、引っ越しや転校が必要になったりするかもしれません。それまでの暮らしと大きく違う環境に対応していくことになります。
親権はどうなる?
離婚すると、子どもを引き取って育てていく権限(親権)は夫婦どちらか一方が持つことになります。どちらが親権を持つかは話し合いで決めるのが基本です。
話し合いがうまくいかない場合は、離婚するかでもめたときと同様、裁判所で調停や裁判という方法で決めることになります。一般的には、ワンオペで今まで育児をしてきた側が親権を得られる可能性が高いです。
養育費は受け取れる?
離婚後、子どもを育てていく親は、離れて暮らすことになる親から子どもが成長していくために必要なお金(養育費)を受け取ることができます。いくらずつ、いつまで、どうやって受け取るのか、養育費のルールも夫婦で話し合って決めることになっています。
まとめ:離婚の検討は慎重に
ワンオペ育児を理由に離婚に至る方もいます。離婚は夫婦で話し合って合意のうえ決めるのが基本ですが、場合によっては裁判所にあいだに入ってもらって解決することになるかもしれません。
いずれにせよ人生の中でも特に大きな決断になりますので、子どものことやお金のことも考慮しつつ、慎重に検討しましょう。とくに子どもの養育費は、子どもの将来のために忘れてはいけません。きちんと検討し、夫婦で話し合うようにしましょう。
もちろん、離婚に至る前に、育児や家事について夫婦で話し合う時間を持つ、負担を軽減するためにヘルパーやベビーシッターなどの利用を検討する、周囲に相談するなど、まだできることがないか探してみるのも有効な方法です。
離婚は、時間もエネルギーも消費する、負担の大きなものです。まずは、他にとるべき方法がないか、検討することも必要かもしれません。