パートナーからモラハラを受けている人の中には、本格的に離婚を考えている人もいるでしょう。精神的な苦痛を受けながら日々の生活を送るのは大変つらいものです。この記事では、モラハラとは具体的にどのような行為なのかをはじめ、モラハラが理由で離婚する際の準備や流れなどを解説します。

監修:弁護士 白谷 英恵

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モラハラとは?どんな行為が当てはまる?

モラハラ(モラルハラスメント)とは、身体への暴力ではなく精神的に苦痛を与える行為のことをいい、精神的DVといわれることもあります。モラハラを受けながら結婚生活を続けていくと、心身ともに病んでしまう可能性が考えられます。

しかし、精神的な苦痛を受けたからといって、そのすべての行為がモラハラに当てはまるとは限りません。モラハラに当たるのか判断することが難しいケースもありますが、一般的には以下のような行為がモラハラに当てはまるとされています。

・大声で怒鳴りながら責め立てる
・「誰が養っていると思っているんだ」などと収入の少ない(ない)パートナーに横柄な態度をとる
・「何をやってもダメな人間だ」などとパートナーの人格を否定することを平気で言う
・人前でもバカにする、命令口調でものを言う
・生活費を渡さない
・外で働くことを禁止し、パートナーの経済的な自立を妨げる
・パートナーが実家や友達と付き合うことを嫌がる
・自分はいつも正しいと信じパートナーの行動を否定する
・パートナーの行動を異常なほど束縛し、監視する
・パートナーの細かい間違いをいつまでも責め続ける
・細かいマイルールがありパートナーや子どもにも守るよう押し付ける
・自分が怒っているのはパートナーのせいだと考えている
・パートナーの大事なものを捨てたり壊したりする
・話しかけても無視し続ける など

パートナーからこのような行為をされている場合は、モラハラを受けている可能性があります。

モラハラをする人は、自己中心的、細かいマイルールがある等といった傾向があるため、冷静に話し合うことが難しいケースが多いです。

モラハラを理由に離婚はできる?

パートナーからモラハラを受けていることを原因として、離婚を考える人もいるでしょう。離婚をするには理由が必要ですが、モラハラを受けているということを理由に離婚をすることはできるのでしょうか。

結論からいうと、パートナーとの合意があれば離婚はできます。原則として、離婚は夫婦間で話し合い、合意が得られれば成立します。そのため、モラハラを理由として離婚の話し合いをした結果、パートナーの同意が得られれば離婚することができます。

しかし、合意が得られない場合や証拠がない場合など、離婚が難しいケースもあります。話し合いの結果、パートナーの同意が得られない場合は、離婚調停・離婚裁判で決めるという流れとなります。調停委員からの説得により、パートナーが離婚に合意するケースもあります。

調停でも離婚の合意が得られない場合は離婚裁判となりますが、その際には、パートナーから受けたモラハラが「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかどうかがポイントとなります。

モラハラの程度が結婚生活を継続できないほど酷い状態にあり、その証拠を提出できれば裁判で離婚が認められるでしょう。反対に、モラハラの程度が軽微であり証拠がない場合は離婚することは難しいと考えられます。

なお、離婚調停・裁判については後ほど詳しく解説します。

モラハラ相手と離婚する場合の準備について

モラハラ行為をするパートナーと離婚したい場合、事前に準備しておくと良いことがあります。離婚を有利に、かつスムーズにすすめられるよう、あらかじめ準備できることを確認しておきましょう。

モラハラの証拠を集める

モラハラ行為をするパートナーと、離婚について二人で話し合うことは難しいことが多いです。その場合、調停や裁判で離婚を決めることになりますが、調停や裁判ではモラハラを受けたという証拠が必要です。

調停や裁判でどんなに「モラハラを受けた」と訴えても、パートナーが「そのようなことはしていない」とモラハラを否定することは珍しくありません。また、調停委員もモラハラ行為をするパートナーの言い分を信用し、夫婦関係をやり直すようにすすめてくることもあります。

こういったことを避けるためにも、意識的に記録をとったり録音しておいたりして証拠を残すようにすることが大切です。

モラハラの証拠となるもの

モラハラの証拠になるものとして、たとえば次のようなものがあります。

【モラハラを受けたことを記した日記やメモ】
パートナーからモラハラを受けた日時や相手の具体的な言動内容を、できるだけ詳しく記録します。日記やメモは手帳などだけでなく、スマートフォンやパソコンなどで記録しても問題ありません。記録したものがパートナーに見つからないように、保管場所もよく考える必要があります。

【モラハラを受けているときの録音・録画データ】
モラハラを受けている状況を録音・録画したデータは、モラハラがあったことを証明する際に有力な証拠となります。なお、一部だけを切り取ったデータは編集した可能性があるとみなされてしまうこともあるので、全体の状況や流れがわかるように録音・録画することが大切です。

ただし、録音・録画していることがパートナーに知られてしまった場合、逆上して暴力をふるわれる可能性もあるので十分に注意しましょう。

【心療内科などの診断書】
パートナーからモラハラを受けて、不眠症やうつ病といった精神的な不調を訴え心療内科や精神科を受診した場合、医師にモラハラの内容をきちんと伝えることで診断書を発行してもらうことができます。

自分で作成したモラハラの記録と心療内科等の通院歴を照らし合わせると、モラハラにより精神的なバランスをくずしたことをより証明できる可能性もあります。

なお、診断書はモラハラが原因で精神疾患に陥ったことが記載されなければ証拠としての効力が弱いため、医師の診察を受ける際にはモラハラの事実や状況をしっかりと話すことが大切です。

【パートナーからのメールやメッセージ】
パートナーからのメールやメッセージに、モラハラと捉えられるような言葉や、行き過ぎた行動制限などの内容がある場合、モラハラの証拠になります。誤って消去しないようにしながら、前後の流れなどもわかるように保存しておきましょう。

【配偶者暴力相談支援センターなどへの相談歴】
パートナーからモラハラを受けていることを、配偶者暴力相談支援センターや精神保健福祉センター、警察などに相談したことがある場合、相談歴もモラハラの証拠として認められることがあります。

相談歴は相談先の公的機関でも保存されていますが、自身の日記やメモにも書いておくと証拠としてさらに効果があるでしょう。

できるだけ早く別居する

モラハラ行為をするパートナーとは、できるだけ早く離れて、安定した生活を取り戻したいと考えるでしょう。とはいえ、「家を出ても連れ戻されてしまうのではではないか」と不安な気持ちになるかもしれません。

しかし、モラハラを受けている状態で生活を続けていても状況が良くなる可能性は低く、離婚の話を切り出してもきちんと話し合える可能性は低いでしょう。それどころか、離婚の話をした結果、モラハラがさらにひどくなることも考えられます。

まずは別居をすることで物理的にパートナーと距離を取り、身の安全を確保しましょう。

なお、自身が専業主婦で収入がない場合や、働いていても十分な収入がない場合、生活費に不安を感じる人は多いです。しかし、別居中の生活費や子どもの養育費については「婚姻費用」としてパートナーに請求することができます。

▶婚姻費用については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
婚姻費用は養育費とは別!どのくらい請求できる?相場は?

専門家へ相談する

モラハラによる離婚をする際には、可能な限り「別居する前に」専門家である弁護士に相談することをおすすめします。「別居して落ち着いてから」と考える人もいるかもしれませんが、同居中だからこそできる離婚対策もあるためです。

また、繰り返されるモラハラにより、正常な判断ができなくなってしまう可能性もあります。専門家である弁護士に相談することで、冷静な判断や対処法を考えられるようになるでしょう。

弁護士報酬の支払いが不安な場合は、「法テラス」の利用を検討してみましょう。法テラスは公的なトラブル解決のための相談窓口です。所得が一定額以下の人に対し無料で法律相談を行ったり、弁護士費用の立て替え払いをしてくれたりするメリットがあります。

最寄りの法テラスの場所は公式サイトから検索できますので、確認してみましょう。

モラハラ相手と離婚する流れ

モラハラ行為をするパートナーと離婚する際には、原則として夫婦間で話し合うことからはじめます。しかし、モラハラ行為をするパートナーと冷静に離婚について話し合うことは簡単なことではなく、話し合いでは合意できないことも少なくありません。

そこで次の方法として、家庭裁判所に離婚調停の申し立てをし、合意に向けて話し合います。それでも合意できない場合は離婚裁判を申し立て、裁判により離婚を決めるという流れとなります。

相手と話し合う(協議離婚)

離婚する気持ちが固まったら、まずは夫婦間で離婚について話し合いをします。話し合いの結果、離婚の合意が得られれば「協議離婚」が成立し、細かい離婚条件などについても取り決めます。

しかし、モラハラ行為をするパートナーは簡単に離婚に応じるケースが少なく、酷い場合は離婚に応じないうえにモラハラ行為がエスカレートする可能性もあります。そうなると、夫婦間での話し合いによる離婚は難しくなるため、次の方法である「離婚調停」に移ることになります。

離婚調停

協議離婚が難しいと判断したら、家庭裁判所に離婚調停の申し立てをしましょう。離婚調停は調停委員が間に入って話し合いをする場です。こちらと相手が交代で部屋に入り調停委員と話をするため、パートナーと顔を合わせずに済みます。

離婚調停ではパートナーから受けたモラハラ的な言動の記録を証拠として提示し、具体的に、かつ冷静に調停委員に伝えることが大切です。パートナーは同席しないので、精神的な圧力を感じずに落ち着いて伝えることができるでしょう。

ただし、調停委員もパートナーの言い分を信用してしまう可能性があります。そうなると、自身の言い分に疑問を持たれてしまう可能性があるため、証拠をできるだけ集めてより実態を伝えやすくすることがポイントです。

なお、別居中の生活費や子どもの教育費に関してパートナーから支払いを受けていない場合は、「婚姻費用分担請求調停」も併せて申し立てましょう。

離婚裁判

モラハラ行為をする人は1つ上で紹介した離婚調停に出席すらしない人も少なくなく、実際のところ離婚調停で離婚の合意を得ることは簡単なことではありません。そのため、最終的に離婚裁判の申し立てが必要になるケースも多いです。

裁判になると証拠が必要になるため、集められた証拠でモラハラの立証が可能かどうかなど、弁護士にしっかりと相談しましょう。

なお、弁護士に依頼する際は、モラハラによる離婚に詳しい弁護士へ依頼することが大切です。そのうえモラハラについての理解があり、精神的なケアについても対応できる弁護士ならより心強いでしょう。

モラハラを理由とする離婚は証拠集めがポイント

パートナーからモラハラ的言動を受けたことにより離婚をしたい場合は、モラハラを受けたことを客観的に証明できる証拠を集めることが大切です。できるだけ早く別居することをおすすめしますが、別居前に弁護士へ相談し、離婚を有利にすすめられるようアドバイスを受けると良いでしょう。


白谷 英恵

【監修】白谷 英恵
弁護士。神奈川県弁護士会所属。同志社大学商学部卒業、創価大学法科大学院法学研究科修了。離婚・男女問題、相続問題などの家事事件を中心に、交通事故や刑事事件など、身近な法律問題を数多く取り扱う。家事案件をライフワークとして、役所での女性のための相談室の法律相談員や弁護士会での子ども人権相談の相談員、相続セミナーなどにも積極的に取り組む。

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