離婚の際に養育費の話になったものの、満足のいく額が受け取れていない場合や、そもそも養育費自体受け取れていないというケースは意外と多いものです。誰にも相談できず、1人でお金の問題に立ち向かおうとしているシングルマザーも少なくありません。養育費に関する悩みは、1人で抱え込まずに専門家へ相談するのが一番です。今回は、養育費の相談を受け付けている窓口についてご紹介します。
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実際に養育費を受け取れているシングルマザーは多くない

子どものいる夫婦が離婚したら、子どもを引き取って育てる元妻に対して、元夫が養育費を払うのは当たり前……。こんなふうに考えている人も多いことでしょう。
しかし、現実は子どもを引き取って育てているのに、養育費を受け取れていないシングルマザーも多いのです。なぜ、養育費が受け取れないままになっているケースが多いのでしょうか。
シングルマザーが養育費を受け取れていない背景に、「そもそも離婚のときに養育費の取り決めを行っていない」という問題があります。
厚生労働省の「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」にある「母子世帯の母の養育費の取り決めの有無」によると、養育費の取り決めをしているのは全体の約42%です。そもそも、半数以上のシングルマザーたちが、養育費の取り決めを行っていないと回答しています。
さらには、養育費の取り決めを行っていたとしても、実際に養育費が受け取れているかどうかはまた別の問題です。養育費を受け取れている母子家庭は、同じく「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によれば、母子家庭の総数を100とした場合の約24%にとどまり、養育費の受け取るために、現実には高いハードルがあることがよくわかります。
養育費を受け取っていると回答したシングルマザーは、前回調査が行われた平成23年よりも5%ほどアップしていますが、まだまだ低い水準だと言えるでしょう。
母子家庭において養育費の取り決めがされていない理由
なぜ、これほどまでに養育費の取り決めを行っていないシングルマザーが多いのでしょうか。
同調査によると、最も多い理由は「相手に支払う意思・能力がないと思った」というもの。つまり、そもそも養育費の取り決めを行ったところで、相手に支払う意思や能力がないから、取り決めは行わなかったという人が多いのです。これに次いで多かったのが「相手と関わりたくない」という理由でした。
養育費の取り決めを行うには、相手とコンタクトを取る必要があります。しかし、相手に会うこと自体を避けたいと考えているのであれば、養育費の取り決めなど行わず、早く他人に戻りたいと考える人が多いのです。
養育費の問題はどこへ相談すればいいの?
では、実際に養育費の問題に直面した場合、いったいどこへ相談に行けばいいのでしょうか。
これも同じく厚生労働省「平成28年度 全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、親族を相談先に選んだ人が全体の約47%でトップ。次いで、家庭裁判所を相談先として選んだ人が全体の約17%という結果になっています。
これを見ると、まず信頼できる身近な人へ相談をして、公的な機関で引き続き相談をするというケースが多いようです。そこで、ここからは養育費の相談に乗ってくれる専門機関についてご紹介していきます。
養育費の専門機関「養育費相談支援センター」
厚生労働省の委託事業として開設されている「養育費相談支援センター」は、公益社団法人家庭問題情報センターという家庭問題のプロが養育費の相談に乗ってくれる機関です。平成19年度に、母子家庭などの自立を支援する一環として、養育費専門の相談員が配置されました。休日や夜間でも利用ができるので、迅速な対応を必要とするときも安心して利用できます。
住んでいる自治体の「ひとり親相談窓口」
各自治体には、「ひとり親相談窓口」というシングルマザー・シングルファーザーを対象とした相談窓口が設けられています。この窓口には、養育費相談支援センターにて研修を受けた講師や、養育費相談支援センターから派遣された相談員が常駐しています。各地方の弁護士会に所属する弁護士へ、養育費に関する相談ができる機会もあります。
収入がなくても弁護士に相談できる「法テラス」
金銭的に切羽詰まってくると、養育費の問題を弁護士に相談したくても相談料や着手金が支払えないため、そもそも弁護士事務所の門をたたけないというケースがあります。そんな人におすすめなのが、国が設立した公的な機関である「法テラス」の利用です。
法テラスは、無料の法律相談を行っており、収入が基準を下回っている人に対しては弁護士・司法書士費用の分割支払いの制度が適用される機関。法テラスの弁護士は、各都道府県の県庁所在地にある地方事務所や支部・出張所など全国にいます。どこに住んでいても法テラス所属の弁護士に相談できるので、養育費の問題で困っている人は問い合わせをしてみてください。
養育費の請求はできるだけ早く行いたい
養育費は、請求の申し立てを行った時点からの分しか受けとることができません。離婚するときに養育費の取り決めを行わず、あとから養育費の請求を行った場合、離婚したときから養育費を請求したところまでの期間分は、養育費が支払われないのが原則です。
そのため、支払ってもらうべき養育費がある場合は、すぐに調停を申立てたり、内容証明を送るなどして、1日でも早く相手に養育費の請求を行いましょう。
養育費は、過去にさかのぼって請求できないため、早めに相談機関に申し出ることが大切です。1人で悩んだり、法律の知識や資格のない親族に相談をしたりするだけではなかなか解決しません。前述のように相談先はたくさんあるので、まず行動を起こすことが大切です。