【厳選】ママスマ編集部 おすすめ書籍を紹介

新たな生活に踏み出したシングルマザーの私たち。しかし、足元を見ればお金、教育、仕事、養育費などなど、不安と悩みは尽きません。それらの悩みに対し各方面の専門家、そして先輩たちが、書籍を通してたくさんの知恵を提供してくれています。ママスマ編集部では、そんな知恵とアドバイスの詰まった書籍を厳選、内容を抜粋して紹介してまいります。

女性の活躍を成功させるための四つの課題

平成30年6月に働き方改革関連法が成立した。

この新しい法を、女性が子育てをしながらも働きやすい社会づくりに活用したいと考えた。私なりに読み解いていくなかで、この法をマイナスに捉えるのではなく、プラスに捉えられるように伝えていき、女性の働き方に影響を与えるきっかけにするよう、日本シングルマザー支援協会では「働き方教育」を打ち出した。

協会ではメルマガやイベントを通して、シングルマザーのためになる情報を伝え、気づきにつながればと啓蒙活動をしている。しかし啓蒙には残念ながら限界がある。本人の意識に依存するところがあり、働きたい、稼ぎたい、社会復帰したいと考えていても気づきには至らない場合は伝えることができなかった。

方法さえ分かれば自立できるシングルマザーが、ひとりでも多く自分の望む自立を果たせるようにと考えるなかで、「働き方教育」が生まれた。働く女性、働きだそうとする女性が「働き方教育」を知ることで、社会・組織で生きていく上で楽しくいられることを学ぶ場をつくった。

日本シングルマザー支援協会では、女性が社会で活躍するために解決しなければならない課題を、 ①子育てをしながらも働きやすい環境の整備、②子育てとの両立への無理解の払拭、③女性の社会性の欠如、④女性の職業選択の意識改革、の四つとし、社会全体で解決することを次の二つ、①子育てをしながらも働きやすい環境の整備、②子育てとの両立への無理解の払拭、とし、女性自身が解決することを次の二つ、③女性の社会性の欠如、④女性の職業選択の意識改革、としている。

ひとつずつ見ていくと、①子育てをしながらも働きやすい環境の整備は、企業と行政を中心とした社会全体で考えていくことであり、保育園の設立、企業就労規則の変更など、働き方改革の指針となるハード面である。②子育てとの両立への無理解の払拭は、主には男性の意識改革である。

シングルマザーも自立支援活動をしていると、女性活躍の表面的なハードルは男性の意識だと感じることが多い。「男が外で働き、女性が家庭を守る」という意識が50代以上の男性に未だに根強く残っている。50代以下の男性でも母親が専業主婦だった場合にはこの傾向が強い。

男性本人が、働くモチベーションとして家族を養うという大義名分を持っている場合が驚くほど多い。それが悪いことだと言っているわけではなく、昭和まではそれで社会は回っていたが、今の社会が抱える課題を解決するためには、女性も経済力を持つことが必須となる。しかし男性側の働くモチベーションが家族を養うことにある以上、妻を働かせたくないという意識が強く、女性が経済力を持つことが難しくなっている。

男性経営者のなかには、会社では女性に活躍してもらいたいが、「うちの女房はそんなんじゃないんです」と、外で働けるような女じゃないと言う方が驚くほど多い。どこかで口裏を合わせているのかと感じるほど、同じ言葉を聞く機会があった。

また、そのような環境下にいる女性の意識が、「男性が働いて稼いでくるのが当たり前」となっていることが多く、女性が行動を起こさなければならない女性活躍にとっての本質的なハードルとなっている。

そして③女性の社会性の欠如ですが、社会とは言い方を変えるといわゆる男性社会のことで、ほぼ男性の意識でつくられている。働き続けていれば自然とそのなかで生きる術を学ぶが、家庭に入っている、もしくはパート程度の社会との関わりでは、男性社会がどういうものかを学ぶ機会がない。女性と男性は脳の仕組みから違うため、男性社会では当たり前とされる対応だが、家庭に長くいた女性にはできず、結果、能力が低いと誤解されたり、責任のある仕事を任せてもらえないという事態にもなる。

ここで一番問題となるのは、女性自身も何が悪かったのか分からないまま過ぎていくことである。男性にとっての「当り前」と女性にとっての「当り前」は違う。しかし、お互いに「当たり前」と思っているので疑問に思うこともないため、確認作業もしない。

日本人が玄関で靴を脱ぐときに、「脱いだほうがいいですか?」とは確認しない。しかし、外国の方で靴を脱ぐ文化がなければ、靴を履いたまま上がろうとするかもしれない。そのときには、「脱いでください」と伝えるだろう。知らないだろうと想像できれば、確認をすることができるが、知っているだろうと勝手に決め付けていると、それは不快な行動と映る。当たり前と思われていることの違いから誤解が生じている。

このようなことが繰り返される環境のなかで、女性は自己否定を受けたと感じることが多くなり、社会に対して恐怖心を抱くようになる。恐怖心を抱くと挙動不審と取られる行動をとることも増えていき、相手に与える印象があまりよくないことが続くと、徐々に自信がなくなり、社会には「やる気のない人」と映り、面接なども通りにくくなる。この悪循環に本人が気づくことはない。なぜなら社会が分からないから。

この悪循環により社会に恐怖心を持っている女性が多いので、それを回避するために家庭と仕事の両立を考え、責任の低い仕事を選択する傾向が女性にはある。④女性の職業選択の意識改革にもつながる要因であると言える。

④女性の職業選択の意識改革とは、女性の社会性の欠如から生まれることでもあるが、①の環境整備、②の男性の意識ともつながる。

生まれてからずっとこのような環境や意識のなかで育つことによって、女性には経済力を持つ必要性が育たない。そのまま行ければ問題は全くないが、男性の所得が減っているなどの要因から、そのままいけないケースが増えている。これからは女性も経済力を持つことが自分自身のリスクヘッジであり、あるいは家庭のなかでリスクヘッジにもなることなので、今まで以上に経済力を持つことを求められる機会が増えている。

それが顕著に表れているのが離婚時である。

昨今、男性からの離婚が急激に増えている。主に専業主婦あるいはパート程度の仕事を持つ経済力を持たない女性が対象のケースが多い。この理由として想定できるのは、女性の社会性の欠如により、夫婦間の意思の疎通が難しくなっていることが一因だと感じている。

社会全体として所得が減っているが、家庭にいる妻にとっては「自分の家」だけが所得が減っている気がしてしまう。SNSなどにより表面的にあらわれた部分だけが切り取られ目につくことが多いので、夫を責めてしまうケースも少なくない。しかし、夫にしてみれば個人的努力で解決できる問題でもないため、徐々に男性側が疲れてしまうのは否めない。

その結果が残念ながら女性に回ってきているのを切実に感じている。また、経済力を持つ女性の場合は、男性から離婚を突きつけられたとしても、心の辛さはあるが、生活には大きく影響しないため、大きな悩みには至らない。

④職業選択の意識改革がなぜ必要か?このような状況になったときでも、子どもを中心とした、主婦目線の仕事を選択してしまうことに疑問を持たない。しかし、時の経過とともに経済的に苦しくなり、悩みが増えていく。これを防ぐには、「世帯主としての自覚」が必要となる。自分が世帯主だと自覚を持つことにより、どれくらいの収入が必要かが見えてくることになり、仕事選びも変化していく。

全体的には①は環境整備というハード面となり、②~④は意識改革というソフト面となる。「働き方教育」は、③と④の女性の意識改革というソフト面の解決策となる。

 
江成道子
1968年東京生まれ。5歳の時に両親が離婚。20歳で中学の同級生と結婚、3人の子供に恵まれるが27歳で離婚。営業関係の仕事で子供を育てながら、再婚するも2度目の離婚。営業関係の仕事で子供を育てながら、再婚するも2度目の離婚。2度の結婚と離婚を通じ、生活が安定した中でシングルマザーを取り巻く様々な問題を考え、一番必要なことは「自立」であり「支援」ではないことに気づく。
2016年シングルマザーサポート株式会社を設立。また、シングルマザー自立のために一般社団法人シングルマザー支援協会を設立、代表理事として現在に至る。2018年2月、全国で初めて横浜市との窓口協定について、斉藤たつや議員と連携し実現。2018年8月号、雑誌「Forbes japan」、日本に影響のある99名に選ばれて掲載される。※画像をクリックするとAmazonに飛びます